東京は3月21日に桜の開花宣言が出たものの、その後気温が上がらず、花見は翌週末と決まりました。というわけで、空いたこの週末はどうしようか。
最近山に入っていないので、マウンテンバイクでなくてもなんとか入れる山の浅いところを走ろう。仙元山(せんげんやま)ならカタクリが咲いているかもと、行き先は埼玉県の小川町に決定です。
小川町駅を出るとすぐ槻川(つきがわ)を渡ります。その先に見えるのが仙元山です。
山はごく薄いピンク。木々が芽吹きの準備をしている色ですね。
カタクリはあの山の北斜面の裾野に咲いていますが、そこへ行く前に仙元山に上ってみることにします。
この登り口は駅から2kmほどのところにあり、いきなり激坂から始まります。まだ身体が温まっていないので、きついこときついこと。道がうねうねカーブから直線基調になると勾配は少し緩みますが、この坂道は1.6km続きます。標高差は160mほどなので、平均勾配10%ってことですねぇ。
『仙元山見晴らしの丘公園』のゲートが見えると、そこがこの上りの終点です。
ゲートの先では黄色いサンシュユが満開です。その横には早咲きの桜も咲いています。
急激に春がやってきているのが感じられます。
ここには展望台があるので上ってみました。
すぐ横には巨大なすべり台が見えています。いや〜、これは長い長い。上から二人滑ってきました。お尻が熱くならないかちょっと心配して見ていましたが、ダンボールで出来た橇のようなものを敷いて滑っているようです。
さて、展望台からの眺めはというと、下に小川町、その先にこんもりした丘、そして遠方には栃木県の山々がうっすらと見えています。
今日は晴れてはいますが霞んでいて、遠くは薄ぼんやりとしか見えません。空気が澄んでいれば、浅間山、榛名山、赤城山、男体山、筑波山と、北関東の有名どころがほとんど見えるのですが。
展望台で眺望を楽しんだら、見晴らしの丘公園からさらに奥へ進みます。
この先は穏やかな下りの砂利道となり、300mほど進むと道は途絶えます。
道の突き当たりの横の小高くなったところには小さな東屋が建っており、そこからは東に槻川の谷と山が見えます。この東屋からは散策路が奥へ延びており、これは仙元山の山頂を通り、青山城跡を経て物見山(ものみやま)の尾根へと続いて行きます。しかしこの散策路は私たちには難しいので止めて、ここからやってきた道を引き返します。
ちょっと戻ったところでサイダーがストップし、
『これからちょっとしたイベントを開始します。』 と言います。みんな何が起こるんだろうとじっとサイダーを見つめると、
『クッキーが立っているところから山の中へ入りますよ。』 と、サイダー。
『え、ここ、道、ないじゃあないですか。』 と、クッキー。
『よーく見てご覧。ちゃんと道、あるよ〜』
『えっ、え〜〜ぇ、これ、道ですかぁ〜』
サイダーが指し示すところには、人一人ならなんとか通れるか、という獣道のような隙間があるのでした。
サイダーがスッといなくなったのを見て、やむなくその後に続くムカエルとマージコ。
一人取り残されたクッキーは大のダート苦手で、しばし躊躇しますが、ここに置いていかれるのも困ると、マージコの後を追います。
かつてトライアルをやったこともあるムカエルは何なく下って行き、空も飛べるマージコは念力でなんとか凌ぎます。クッキーは自転車に乗ることを諦め、ゆっくり押して進んで行きます。
この道はもう少し暖かくなると伸びてきた下草に埋もれてしまいそうなところがありますが、春の芽生え前のこの時期は、なんとか自転車で通れるのです。
篠の薮を抜け、シングルトラックからダブルトラックになると、勾配が穏やかになり路面も安定してきます。
しかしクッキーはここも押し。
広葉樹の森が杉林に変わり、右手に竹林が現れると、山道も終盤です。
このきれいな竹林を抜けるとパッと空が開き、今度は梅林に。これでやっと山道終了です。都心ではすでに終わった梅ですが、ここではまだ結構花を付けていていい匂いも。
さて、山道のあとはカタクリです。仙元山のカタクリは三ヶ所で見られ、今回はその中の西光寺へ行くつもりでしたが、先ほどの山道の途中、その西光寺方面へ下るつもりが道が見つからず、八宮神社側へ降りてしまったので、そこから一番近い『カタクリとニリンソウの里』へ。
『あ〜、カタクリ、咲いてる〜』 と、クッキーが早々にカタクリ発見。
ここのところ気温がずっと低かったので、カタクリが咲いているかどうか気がかりだったのですが、咲いていてよかった〜
山の一番下にはジオポタの花ニリンソウも。
カタクリもこのニリンソウもスプリング・エフェメラル(春の妖精)と呼ばれるものです。これらが咲くと、もう春というわけです。
林の中を西光寺方面へ進んで行くと、木々が退き空間が開きます。その一角が薄紫色に染まっています。
ここにたくさんカタクリが咲いていました。
林の中のカタクリは日差しが届きにくいので花がまだ充分に開いていませんでした。道からも遠く、あまりよく見えませんでしたが、こちらは充分に花が開き、道のすぐ傍で咲くものもあり、とても見やすいです。
いや〜、カタクリ、咲いててよかったよ〜。山道のダートだけだったら絞め殺されていたかも。。(笑)
ぱっちり目覚めたカタクリも見られたし、これで目的の半分は達せられました。
しかし少し足りないと、次のイベント開始ポイントへ向かいます。
槻川の谷をその流れに沿って下ります。
うしろにはさっきまで上にいた仙元山の尾根が見えています。
その尾根がぐるりと廻って物見山の尾根へと続いていきます。
川幅が広くなった槻川を渡り、坂下の集落へ入れば、ここにも梅の花がまだかなり残っています。
山裾が迫ってきて空間が狭まってくると、サイダーが小さな畑の前で停止。
『さて、ここから山道イベントPart2に入ります。』
『えっ、え〜〜、また山道ですかぁ。。。』
しかも今度は下りではなく上りです。
およよ〜〜
この山道の斜度はきつく、とても自転車に乗っては上れません。押してもきついくらいです。しかしもうここはサイダーに付いていくしかないと諦めて、えっこらよっこらと自転車を押し上げる面々でした。
このすぐ近くに青山城跡や小倉城跡があることからもわかるように、この道には歴史があるようで、難しくて読めない字が書かれた石碑が立っています。いったい何て書いてあるのでしょうか。
この道端には野生のカタクリが。
小さいけれど、たくましく生きています。
通りがかった地元の人によれば、カタクリは最初の数年は花を付けずに葉っぱだけ出すのだそうです。そしてこうやって花を開かせるまでになるには、最低でも七年はかかるのだって。
しかも、春が終わると地上から姿を消し、次の春に葉を出すまで地中でじっとしているのだそうです。カタクリって、不思議な植物なんですね。
この上りの頂部は小倉峠という名のようで、そこは十字路になっており、西からは仙元山から物見山の尾根を経て降りて来る道が出てきます。この小倉峠を東へ向かえば、すぐに小倉城跡です。これは400〜500年前の戦国時代の山城の跡で、巧みな縄張りと石垣が見られます。ここに見られるような大規模な石垣は、関東地方では珍しいものだそうです。
城跡から周囲を見渡すと、急激に落ち込む山の斜面の先にうねった槻川。その向こうにはまた山。ここが天然の要害であったことは瞬時に見て取れますが、こんなところでの生活はどんなんだったのでしょう。
さて、戦国時代に思いを馳せたあとは現実に戻らなけれなりません。
小倉城跡からはそのまま山道を東へ進むこともできますが、私たちは自転車を小倉峠に停めてきたので、そこまで戻って南へ下ります。この道は針葉樹林の中を行く穏やかなもので、なんとか乗車できます。
200mほどで舗装路に出、それを下ると今日何度目かの槻川の流れに出会います。
黄色い菜の花畑が広がり、その先に硬い蕾みをいくらか緩ませてきた桜がほんのりピンク色に見えます。春がやってきている。
先にこれから上る大平山(おおひらやま)が見えてきました。
その裾野の畑の中のピンクは梅でしょうか、それとも桃?
その反対側には小さな寺が建ち、大きな白いコブシが満開です。
黄色いのはレンギョウでしょうか。
その先の日枝神社のうしろでは大きなしだれ桜がかなり赤みを増してきています。これはあと一週間もすれば咲き出しそうです。
そうそう、小倉城跡から東へそのまま進むと、この日枝神社の上に出ることができるようです。
日枝神社の大しだれ桜を眺めたら、そのあとは嵐山渓谷です。
大平山の裾野で槻川は複雑に蛇行し、嵐山渓谷と呼ばれる景勝を作り出します。
渓谷となった槻川を眺め、えっこらよっこらと坂道を上って行きます。急なカーブを曲がり切り道が下りに転じる少し手前に、大平山の北側の登り口があります。
この登り口からは槻川の谷がよく見えます。さっきまであの下にいたのですから、ここまではちょっとした上りだったのがよくわかります。
登り口を入るとまず、かなり急な上りです。ここは押し。
さらに斜度が増し数回ヘアピンカーブを廻りますが、そのあと道が直線基調になると勾配も穏やかになります。ここで自転車に跨がり、なんとか乗って進んで行きます。
しかしなかなか順調には進まず、木の根っこがボコボコしていたり、ちょっとガレ石が多かったりで、押しては乗り、乗っては押しの繰り返し。
ゆっくりゆっくり上り詰めていくと、頂上間近というところで北東に視界が開きました。下に見えているのは嵐山の町でしょう。
ここで小休止し、さらに上って行くと頂上があり、その先に小さな東屋が建っています。この東屋の前は東側が開いていて、空気が澄んだ日にはスカイツリーが見えるそうです。(TOP写真)
東屋からは信仰遺跡である『山の神』を経て東に下りますが、ここでサイダーが派手なジャックナイフを披露してみんなを喜ばせました。(笑)
大平山を下りたら田んぼの中へ出、嵐山の町へ向かいます。山に囲まれたこの田んぼ道もなかなかいい感じです。
R254嵐山バイパス沿いのそば屋で昼食をとったら、菅谷館跡(すがややかたあと)へ。
菅谷館跡は鎌倉時代の武士、畠山重忠の住居と伝わるところですが、現在の遺構はその後の戦国時代の城郭のものだそうです。
ここには真っ白なユキヤナギとコブシが咲いていました。
これまで見てきた槻川は菅谷館跡の南で都幾川と合流し、都幾川となります。
この写真で右手から流れてくるのが槻川です。
その都幾川に架かる二瀬橋を渡ると桜堤です。
桜の木の足元には水仙が咲き、道を隔てた畑には菜の花がいっぱい。ここからは西に外秩父の山々がきれいに見えます。
都幾川の桜堤からは笛吹峠に向かいますが、ここは学校橋から鳩山町へ抜ける通りの一本東の沢沿いの道を行きます。
付近の集落の名に将軍澤の名があるので、この沢が将軍澤なのかもしれません。表通りは結構大型車が通りますが、こちらはまったく車の影なしで快適に進みます。
この道が表通りに出、将軍澤の集落が終わると古道らしい細道があります。これはどうやらかつての鎌倉街道のようです。
道幅が狭まり、下って上ると笛吹峠に到着。ここには東屋とトイレがあるので小休憩を。
笛吹峠の標識の横の案内板には『この峠を南北に貫く道が旧鎌倉街道で…』とあり、続けて、ここで新田義貞の三男、義宗等が足利尊氏との戦いに最終的に敗れ、以後、尊氏は関東を制圧していった旨が記されています。
地図を見ると笛吹峠を通っている道は、今私たちが走ってきた旧鎌倉街道一本に見えますが、実はこの道を横切る細道がもう一本あります。これは慈光寺観音堂と岩殿観音を繋いでおり、『巡礼の道』と呼ばれています。
ここからこの『巡礼の道』を東へ行ってみます。まずは針葉樹林の中に手入れされた砂利道が延びて行きます。ほぼフラットだった道が下り基調になると路面が少し乱れてきますが、これはマウンテンバイクでなくともなんとか走れる程度で、r41東松山越生線まで1.5kmほど続きます。
『あ〜』とか『お〜〜〜』とか叫びつつ、何とかこの砂利道を脱したクッキーは、『もうダートはイヤー!』
ということでここからは舗装路を。
谷津を奥へ向かうといつしか道幅が狭まり、またまたちょっと怪しげに。で、当然のようにこの先は砂利道となってしまうのでした。
『わ、私、もうダメ〜〜』 と、ついにクッキーに泣きが。(笑)
JAXAの地球観測センターの入口までやってくると、その砂利道が終わり舗装路になります。
『これで本日の山道イベントはすべて終了。』 と、サイダーがダート終了を宣言。しかし、
『本当〜、サイダーの言うことだから信じられない〜』 と言い出す者も。
地球観測センターからは静かな快適な道で物見山公園へ。ちなみにこの物見山公園は小倉城跡があった物見山とは別の所です。
物見山公園の前に到着したのはすでに15時半を回っており、大分時間が押しているので、公園散策は止めて岩殿観音へ向かいます。
岩殿観音は坂東三十三箇所の十番札所で、なかなか立派なお寺です。
観音堂の右手は岩の崖で、その中にたくさん石仏が並んでいます。ここには四国八十八カ所に加え、坂東三十三カ所、秩父三十四カ所、西国三十三カ所の百観音、合計188体の石仏があると言われています。岩殿観音は、ここにお参りすると、四国、坂東、秩父、西国の各霊場を巡ったことになるという便利なところなのです。
岩殿観音は樹齢700年とも言われる大銀杏でも有名ですが、それはもう何度も取り上げたので、ここは春らしいものを。大きなコブシが真っ白な花をびっしり付けていました。ところでこれは本当にコブシかな。ハクモクレンじゃあないの、という者も。
コブシは花の付け根に葉っぱが一枚くっついているそうで、モクレンにはこの葉っぱがないそうです。その他の見分け方としては、コブシの花は6枚で細く小さく、あっちこっち向いて開いて咲き、モクレンの花は9枚(内3枚は顎)で大きくぼってりしており、みんな上を向いて閉じぎみに咲くそうです。さてこれはどっちかな。
ここには茅葺き屋根の鐘楼も。
その鐘楼からは下に一直線の参道が見えます。
鐘楼の近くには桜も。
この花は早咲きですでに終盤でしたが、一足早い花見ができました。
コブシと桜を眺め、参道を下ると赤い橋が架かる弁天沼です。
弁天沼の横を流れる九十九川に沿って下って行くと、こども動物公園付近から自転車道になります。
我らがカビロによれば、これは日本一自転車密度の低い自転車道で、川島こども動物自然公園自転車道と言う長ったらしい名が付いているそうです。実際、カビロの言うとおり、ここでは一台の自転車も見かけませんでした。
この自転車道をどんどこ行き、R407東松山バイパス付近から越辺川(おっぺがわ)にシフト。
西には外秩父の山々がきれいに並んで見えます。
ジオポタお気に入りの沈下橋、島田橋を渡って、越辺川の自転車道に入ります。
ここに来て風が強くなってきました。
『激坂上りの次はダートの山登り、ダート、ダート、ダート。。そして最後はこの向かい風か=』 と、切れそうなクッキーなのでした。
土手上の自転車道が砂利道に変わったところで、下の田んぼへ下ります。さすがにこの先ダートが続くとと、本気でサイダーを絞めそうな勢いの面々なのでした。
田んぼの中の道は舗装路ですが、真っすぐな直線で真正面から風がビュービュー。
『この風、きついぜ。ゼーゼー』 と喘ぎつつも先頭を牽くムカエル。
『そろそろ休ませてくれ〜』 と、ムカエルに泣きが入ったところで、ちょうど小畔川の鎌取橋に辿り着きました。
ここまで遅れ気味だった行程ですが、終盤に少し取り戻したようでなんとか予定時刻に川越に辿り着けそうなので、ここで一服。
鎌取橋のすぐ先は入間川で、ここからは入間川自転車道に乗ります。
『ここまで来たら川越はもうすぐね〜』 と、急に元気になったクッキー。
日が暮れる中、入間川の左岸自転車道をどんどこ行き、雁見橋を渡ってさらに右岸自転車道を遡ります。
東武東上線の線路をくぐったら、自転車道から田んぼの中に出てどんどこ。
辿り着いたのは川越のスパニッシュ・レストラン。ここは店先に巨大パエジェーラ(パエリャ鍋)が置かれ、内装はガウディ調でスペインの雰囲気たっぷり。まず登場したのは大皿に盛られた豪華なタパス。色がきれいです。
『やった〜。山道ダートも向かい風も、これがあればこそね〜』 と某。しかしその某はデザートを待たずして、ぐっすり寝入ってしまうのでした。(笑)
いや〜、みなさま、本日はどうもお疲れさまでした〜 ちょっと地道が多すぎたかな。。