桜の季節は毎年花見に出かける計画をするのですが、早すぎたり遅すぎたり雨だったりと、必ずしもうまくいくとは限りません。そして今回は雨。早朝、参加予定者の半数からドタキャンの連絡が届く中、強行決行と相成りました。
『ジオポタは雨でも走るんですか〜』 と、開口一番はビジターのヒデちゃん。
『いえいえ、雨だったら走りませんよ。今日はもうすぐ雨、上がるから大丈夫です。』 と、企て人のサイダー。
『その言葉に騙された〜〜 乗っちゃって失敗したかも。。』 とは、メンバーのマージコ。
『朝、大雨だったから、駅までタクシー使っちゃいましたよぉ。。。』 と、こちらはちょっと遠方からやってきたビジターのトシちゃん。
本当は来たくなかったんだけどね・・・とみんなの心の中の声。(笑)
まあともあれ、駅前で10分も待つと、サイダーの予告どおり雨が上がってきました。こうなれば完全に上がるまではそう時間はかからないと出発します。
都幾川の土手へ向かうと、民家の庭先や土手の下に桜がいい感じで咲いています。
都幾川右岸の土手上は自転車道です。この自転車道を使って少し川下へ向かい、都幾川を渡ります。
ここで雨は完全に上がったようです。
都幾川の左岸をさらに下り、長楽で都幾川から分流する細い用水路沿いの自転車道に乗り換えます。
この自転車道は比企自転車道(川島こども動物自然公園自転車道とも)と言うそうです。
この自転車道の脇には、あちこちに桜の木が植えられています。
そのどれもこれもが満開。
この自転車道の圧巻はR254を渡った先の梅ノ木桜堤。
ここは小木が多いけれど、1.5kmに渡り桜並木が続いています。
桜の花がびっしり。
『ここは見事ですね〜』 と、桜の花の下をくぐるトシちゃん。
タクシー使った甲斐があったかな?
梅ノ木桜堤は大きな溜池で終わり、自転車道は市野川沿いに入ります。
ここの土手は菜の花がいい調子。
比企自転車道はそのまま荒川自転車道となって、鳥羽井沼、ホンダエアポート方面へ続いて行きますが、私たちは荒川自転車道を荒川上流へ向かい、吉見の桜堤へ。
荒川自転車道はそのまま吉見の桜堤内を抜けていきます。
吉見の桜堤はこのあたりではそれなりに桜の名所とされているところで、お天気だったらかなりの人出になるのですが、この日は運良く?雨が上がったばかりなので、ほとんど人通りはなく、快適に進んで行きます。
『おいらはハナから来る気だったぜ。今日は暖ったかいからねぇ〜』 と、寒いの大嫌いでここしばらく冬眠していたユッキー。お目覚めね。
おぅ〜ぉ、ここは上を向いて走ろうぜぃ!
桜を眺めつつのんびり進む、ユッキー、トシちゃん、ヒデちゃん、マージコ。
ほとんど人のいない堤内の景色。
『雨が上がってよかった〜』 という顔は、手前より、ユッキー、トシちゃん、ヒデちゃん、マージコ。
堤の下の菜の花もきれい。
その堤下からの眺めは、黄色い菜の花と霞んだような薄ピンクの染井吉野の対比が見事。
2kmほど続いた吉見の桜堤を出て振り返れば、この出口からの眺めもなかなかです。
この出口からは土手がもう一本延びており、それに乗り換えて荒川へ向かいます。
この土手上はかつては砂利敷でしたが、最近舗装されたようできれいな路面になっていました。
この舗装はおそらく高尾の先まで続いているのだろうと思いますが、ちょっと不安があったので途中から田んぼの中へ下って、カントリーロードで高尾橋へ。
高尾橋を渡り、そば屋に入って一服していると、
『ところで荒川ってどこを流れているんですか。』 と、ヒデちゃん。
今さっき渡った細い川が荒川だと言うと、
『え〜、荒川って、あんなに細いんですか。下流からは想像できませんね。それにこのあたりの荒川の川幅は日本一広いって聞いていたものですから。』 と。
そうなんです。下流では大河となる荒川も、このあたりではわずか幅10mほどの流れしかありません。
川幅日本一は高尾から2〜3km上流に架かる御成橋あたりで、2,537mもあるそうです。しかしこれは堤防間の距離で、そのあたりでも通常流れている川面の幅はこことそう大きくは変わりません。
おいしいそばを食したら、荒川を下流へ向かいます。
荒井橋をくぐると上には桜、足元には薄紫色のレンゲソウが。
『そうだ、このあたりに確か有名な桜があったな。ついでだから寄ってみましょう。』 と、サイダー。
川沿いを離れ、北へ少し行くとそれはありました。『石戸の蒲桜』。これは国の天然記念物で、エドヒガンザクラとヤマザクラの自然交配種で、珍しいものだそうです。樹齢800年とのことですが、現在の木は老木から株分けされた二代目だそうです。大きいことは大きいですが、一本桜のボリュームとしては巨大というほどではなさそうです。
『石戸の蒲桜』のすぐ近くには松尾芭蕉が詠んだ俳句が刻まれた石碑があり、その周りに、これもなかなか大きな桜の木があります。
原中や ものにもつかず 啼雲雀
石戸からは荒川へ戻り、自転車道をどんどこ。
このあたりの自転車道は土手上ではなく、畑の中を行く細道でやたらにコーナーが多く、雨上がりで路面が不安定なこの日、ここの90度コーナーでスッテンコロリと転がったものが一名。雨上がりには注意しましょうね。
畑の中から土手に上がるところにあったお寺にも満開の桜。
こうして見ると、日本には桜が多いね。
そしてこの土手にも菜の花。
川向こうはホンダエアポートで、空にはカラフルな落下傘が。
白とピンクの桃も。
この土手上の道はすぐに終わり、また河川敷の中の畑の中をどんどこ。
桜と菜の花と桃を眺めながら走って、荒川の畔にある榎本牧場に到着。
お昼のデザートあるいはおやつに、ここでアイスクリームをいただきます。とれたてミルクのアイスクリームはとてもおいしいです。
榎本牧場で一服したら、午後の部のメインイベント、サクラソウを見に治水橋へ向かいます。
一般道に出たり、畑の中を突っ切ったり、なかなか一筋縄ではいかないこのあたりですが、西貝塚環境センターからは土手上に自転車道が続くようになります。
この土手上の自転車道は西遊馬公園の先で砂利道になるので、ここで土手を降り荒川沿いのゴルフ場の横を行くようになります。
治水橋をくぐるとすぐ、錦乃原桜草園に辿り着きます。ここは普段はまったく人気がありませんが、この時は数台、車が止まっていました。
このあたりには戦前まではサクラソウが自生していたようですが、戦後それは各種工事や開発の影響などで消滅してしまいます。
そこでそのサクラソウの自生地を復活させるべく保存会が立ち上がり、サクラソウの育成と管理をおこなっているのです。今日は戦前に比べ周辺環境が大幅に変わってしまったので、夏は頻繁に水やりを行わなければならないそうです。
一般的にサクラソウと呼ばれるものには日本桜草と西洋桜草(多くはプリムラと呼ばれる)があり、全体では400種ほどもあるそうです。
もちろんここのは日本桜草で、これから述べるサクラソウは日本桜草を指します。
日本桜草はたいへん多くの品種が作られ、現在では300ほどあるようです。
その元となったのがここ荒川周辺のサクラソウで、江戸時代の中頃より本格的な栽培が始まったそうです。
ここで見られるサクラソウは、野生種に限りなく近いものなのでしょう。
葉っぱは長楕円形で周囲に浅い切れ込みがあり、少し丸まっています。数枚の葉っぱの真ん中から茎が伸び、その頂部に5〜6輪ほど花を付けます。この時見た花の大きさは3cmほどのものが多かった。
一見同じようにみえるサクラソウの花ですが、色はもちろん、花びらの切れ込みやくびれ具合が微妙に異なります。中には変種なのか、花びらの数が多いものもあるようです。
サクラソウの区画の道縁にはかわいらしい鈴蘭水仙も。
そうそう、ここでは甘酒が振る舞われ、園芸種のサクラソウを下さいました。私がいただいたのは『白蝶の契』という品種です。どんな花が咲くのか楽しみ〜 白蝶だから白いんだろうなぁ。
さて、錦乃原桜草園の次は秋ヶ瀬公園です。秋ヶ瀬公園内の土道の園内路は、雨によって濡れたプラスチックの土流出防止材の頭が飛び出していて、滑ること滑ること。
これはかなわんと早々に退却して、鴨川の桜堤へ向かいます。
鴨川は秋ヶ瀬公園のすぐ東を流れており、桜並木の堤が1.5kmほど続きます。
ここは桜の木の下に遊歩道があり、堤の上はほとんど車が通らない道です。
その堤の上の道の東半分は最近拡幅されたようで、立派な道になっていました。
鴨川の桜堤から秋ヶ瀬公園裏の荒川の土手に戻ると、公園から続くゴルフ場に立派な桜が連なっているのが見えます。
そこから秋ヶ瀬橋の南へ移動すると、さくら草公園です。
田島ヶ原と呼ばれるここはサクラソウの自生地で、国の特別天然記念物に指定されています。
しかし見渡す限りに広がっているのはそのサクラソウではなく、黄色い花を付けた植物。
この黄色い植物はノウルシといい、茎や葉を傷つけると漆に似た白い液を出すそうです。野漆の名はこれから来ているそうです。
元気いっぱいでちょっと毒々しく見えるノウルシ。やっぱりその白い液には毒があり、かぶれたりするそうですから、むやみやたらに触らない方がいいかも。
あ、花、、この花に見える部分は実は本当の花ではなく、杯状花序(はいじょうかじょ)の基部にある総苞葉・苞葉というものだそうな。これは難しくてよくはわかりませんが。
ここにはこんなに生えているのに、このノウルシはサクラソウと同じく準絶滅危惧種だそうです。
さて、肝心のサクラソウですが、ここの見頃は周囲のノウルシがあまり大きくなっていない今頃です。この時のノウルシは20cmほどなのでまだサクラソウは見えていますが、すぐに50cmほどまで伸びてしまうからです。
ピンクのサクラソウ。
これはちょっと紫が入っている。
鮮やかで、いくつかの花がぐるっと四方に向いています。
これはケシ科の植物でジロボウエンゴサク(次郎坊延胡索)というものだそうです。
本当にちっちゃい。長さ2cmほどしかありません。そして、かわいらしいものには毒がある。(笑) なんとこれも毒草だそうな。まあ、食べなきゃ大丈夫らしいけどね。
田島ヶ原のさくら草公園で本日のメインイベントは終了です。
さくら草公園からは秋ヶ瀬橋を渡って浮間公園へ向かいます。その秋ヶ瀬橋から見る荒川は大きい。ヒデちゃんが言ったように、高尾で見た小さな流れの荒川とこれが同じ流れだとはとても思えませんね。
秋ヶ瀬橋からは荒川自転車道で荒川の下流へどんどこ。
そして浮間公園に到着です。浮間公園は桜の名所で、この日は花見にはあまり条件が良くないにも関わらず、それなりの人出がありました。
この公園のすぐ東には浮間ヶ原桜草圃場があり、サクラソウが見られるのですが、それはまたの機会にして、桜の木の下でしばし休憩です。
桜と桜草を堪能したあとは桜風呂で〆ましょう。
板橋区の前野原にあるこの温泉は、塩分が強く鉄分を含むお湯です。露天風呂で汗を流したあと、蒸し風呂へ。この日の蒸し風呂は桜の香りがいい匂いでした。これはリラックスできますなぁ。
桜と桜草の季節のこのコース、晴れていれば★★★間違いなしのお薦めコースです。