奥多摩駅
2017年の紅葉企画も第三弾となりました。今回は東京の山奥の奥多摩です。実はこの企画、一週間前に開催予定だったのですが、その日は雨でこの日に持ち越しとなったのです。
その結果、天気は見事な快晴! 暖かく、最高の紅葉日和となりました。
奥多摩駅前
旧青梅街道を行く『奥多摩むかしみち』は、奥多摩駅から奥多摩湖までを繋ぐ約10kmで、人気のハイキングコースになっています。
いつもは奥多摩駅からすぐに青梅街道に出るのですが、今日は日原川を渡り、日原街道に出てみました。下に多摩川に注ぐ直前の日原川が、先には紅葉が終わりかけ色が浅くなった山が見えます。
むかしみち入口の蔵
日原街道から青梅街道に出るとすぐ、奥多摩むかしみちの大きな案内板が建っています。
その角を入ると、古そうな立派な蔵が現れます。
羽黒坂
この蔵の先にもう一つ蔵が現れると、その前に今度は小さな案内板があり、それに描かれた矢印に導かれて曲がると、目の前にはコンクリートの坂が。
これがむかしみちの入口となる激坂の羽黒坂です。当然ここは押し。
羽黒坂の先の砂利道
青梅街道は今でもそう広くない道ですが、昔はもっと狭く、人がやっとすれ違えるくらいだったようです。羽黒坂の先は道幅が狭まり、その砂利道が森の中へ延びていくのが見えます。
この砂利道に入るところで息を整えている間に、うしろからやってきたハイカーに先に行ってもらいます。ここはハイキングコースなので、ハイカー優先を心がけなければなりません。
水根線の線路
森の中の狭い砂利道を上って行くと、少し広いスペースが現れます。前を見ると今はもう使われていない鉄道の線路が残り、その反対側のうしろ側にはトンネルも見えます。
この線路とトンネルは奥多摩湖の小河内(おごうち)ダムを建設するための資材運搬用として敷設された水根貨物線の残骸です。むかしみちはこの水根貨物線を辿る道でもあります。
むかしみち序盤
目線に逆光に輝く紅葉を、下に線路を見ながら狭い道を上って行くと、左手の空間が開きました。
このあたりの紅葉は全体としては終わりかけですが、まだデリケートな色がそこら中に残っています。
最初の地蔵堂
道は針葉樹林の中を行くようになります。下に水根貨物線のコンクリート橋を見、小さな沢の鉄橋を渡って進めば、右手に小さなお地蔵さんが現れます。
ここでむかしみちは、上から下ってきた道に合流します。この上の道に上れば、そこにはたくさんお地蔵さんが並んでいます。こうした地蔵などが、ここがかつての街道だったことを教えてくれます。
槐からの下り
このお地蔵さんから道は舗装路となり、すぐに槐(さいかち)のトイレの前に至ります。トイレの横に立つのは槐木(さいかちぎ)と呼ばれる大きな木で、この木がこのあたりの地名となったのでしょう。
ちなみにこの聞き慣れない槐とは、実はエンジュのことです。槐木の向かいの赤松の根元には、馬頭観音が祀られています。
檜村の紅葉
槐から道は下りになります。むかしみちの序盤は砂利道の上りで苦しかったので、この舗装路の下りは天国のように感じます。
ぐわ〜んと下って行くとすぐに檜村の集落に入り、逆光の中、見事な色が浮かび上がった紅葉した木が目に飛び込んできます。中にはこの木のように、今が紅葉のピークというものも結構あります。
檜村橋から見る多摩川
半島のように突き出した檜村の集落からいったん青梅街道に下りると、すぐ先には檜村橋が架かります。
その下を流れるのは多摩川。羽田空港の横で東京湾に注ぐあの多摩川ですが、ここから見るその流れは下流の姿からはとても考えられない渓流です。
檜村橋から先のむかしみち
むかしみちは檜村橋の手前を多摩川に沿って奥へ入っていきます。
すると遠方の山の中に高架橋を発見。あれは境の集落にある水根貨物線のものです。これの紹介はのちほど。
不動の上滝
ザワザワという音が聞こえると小さな沢を渡ります。先にはトイレがあり、その奥にひっそりと小さな滝が落ちています。沢は小中沢、滝は『不動の上滝』と呼ばれているようです。
このあたりの多摩川はうねうねと蛇行しており、この不動の上滝から道は大きく方向を変えて行きます。
水根線の鉄橋
ほどなく小さな境の集落に入ります。上には先ほど見えた水根貨物線の鉄橋がドーン!
下からその鉄橋方向に延びているのは資材運搬用レールですが、これは一体何に使われるのでしょう。
境の集落
山勝ちなこのあたりの集落の家々は、みんな急斜面にへばりつくようにして建っています。
南斜面で陽当たりは良いけれど、やっぱり生活するには不便そうですね。
白髭神社
むかしみちの第二部はこの境の集落で終わり、この先は暗い森の中の地道に。
するとすぐに白髭神社の入口が現れます。
白髭神社の紅葉
薄暗い森の中で石段の上に鳥居が見え、その先は燃えるような紅葉。
斜めの大岩
鳥居をくぐって先へ進めば、社に覆い被さり、まさにそれを押しつぶさんとしているように見える大岩が現れます。
この岩は石灰岩の断層が露頭したものだそうですが、上に生えている木の根っこがそこに食い込んでいて、今にも上部が崩落しそうに見えます。
大岩を支えるジオポタ
大岩を見上げた写真を撮りたいけれど、なんだか倒れてきそうで怖い。そこで、
『この岩、ちょっと支えておいておくれでないか。』 と、サイダー。
『へいよ〜。おいらが支えておくからへっちゃらだよ〜』 と、マージコ。
そのマージコを支えるマサキンとシロスキーでした。
大岩と紅葉
その隙に撮った一枚がこちら。
白鬚神社からいろは楓へ
白鬚神社にお詣りしたら先を急ぎます。紅葉がきれいで立ち止まっては写真を撮っていたからか、なんだかここまでで、すでに予定からだいぶ遅れてしまっています。
さて、第三部の道はというと、こんな砂利道になりました。白鬚神社付近は森の中ですが、それ以外は陽当たり良好で快適です。
いろは楓
白鬚神社の先には『弁慶の腕ぬき岩』と耳神様があります。
しかしこの時期の見所はこれらのさらに先にある『いろは楓』です。
いろは楓その2
奥多摩には山もみじがたくさん自生していますが、中でもこの木の紅葉は特に優れていると言われています。
ごく僅かにピークを過ぎたようですが、それでも紅葉で名高いいろは楓だけあり、この鮮やかさはさすがの一言。
白髭橋梁
いろは楓の直前には青梅街道の白髭トンネルがあり、その西口の上には水根貨物線の高架橋、白髭橋梁が見えます。
いつの間にか道はアスファルト舗装に戻っています。
薪が積まれた民家
むかしみちはこのあたりから佳境に入ります。
この山奥ではまだ薪を使う生活があるのか、軒先にたくさん薪が積まれた民家の前を通ります。
しだくら橋
そして、惣岳不動尊と、ただの小さな丸い石にしか見えない『がんどうの馬頭様』を過ぎると、惣岳渓谷に架かる『しだくら橋』です。
この橋は長さ67.15mの吊り橋で、定員はかつては五名でしたが、現在はその案内板の表示が訂正されていて、三名になっています。渡るとぐらぐら揺れてちょっと怖い。
惣岳渓谷
惣岳渓谷は度重なる多摩川の氾濫によって『しだくら谷』より押し出された大きな岩が川を埋めています。
かつてはこの渓谷を、切り出した木材を筏に括り付けて下ったというから驚きです。
惣岳渓谷際を行く
荒々しい惣岳渓谷ですが、その横のむかしみちは穏やか。
縁むすび地蔵
しだくら橋の先には、人にしられずにこっそりと二股大根を供えて一心に祈れば結縁成就 という『縁むすび地蔵』があります。それにしてもなぜ二俣大根?
その先には、馬の水飲み場、牛頭観音、むし歯地蔵と続きます。
柚子をゲット
しばらくぶりのむかしみちですが、なんとこの先で茶屋がオープンしているのを発見。その隣では、おばあさんが直売所を営業中。八つ頭、いもがら、里芋、そして柚子が売られています。ここでシロスキーは柚子をゲット。
いもがらは聞いたことがないので何か尋ねてみると、これは八つ頭の茎でズイキともいうものだそうです。
『煮物にしたりするんだけど、今の若い人には食べられん。』 だそうです。
上方に中山の集落
行く手の上方を見れば、何と集落が見えるではないですか。方角からすればあれは中山の集落に違いありません。このあたりは谷が複雑に入り組んでいるので、こんなところから中山の集落が見えるとは思いもよりませんでした。
これからむかしみちはあそこまで上り、一山越えて水根に下るのです。
道所橋から見る渓谷
茶屋と直売所の先にはしだくら橋に良く似た道所橋(どうどころばし)が架かります。この吊り橋はしだくら橋より少し短く、定員は五名で、これは訂正されていません。
ここから見る惣岳渓谷は、独特の緑色をしています。その川面をたくさんの落ち葉がゆっくり流れていきます。
紅葉と惣岳渓谷
さらに進めば、真っ赤な木の先にうねった渓谷が見える絶景ポイントに出ます。
2013年に訪れた際のレポートのトップ写真はここからのものですが、それと比べると今回は葉っぱがだいぶ落ちているように感じます。しかし赤みでは勝っており、充分に見応えがありました。
道所から西久保へ
時は11時を廻り、陽当たりのいいところに出るとポカポカで気持ちいい。
ここから左手の谷が開けてきます。
燃えるような赤
先に赤の塊が見えます。燃え盛る炎のようなカエデの赤!
紅葉の下を行く
その下をのんびり行くジオポタです。
西久保
西久保の見晴らし広場にやってきました。ここにはピクニックテーブルがあり、先客がおいしそうにお弁当を広げています。
この広場の先で道はVターンし、むかしみちはその先でもう一度Vターンし、山の中の階段となります。この道は自転車では行けないので、私たちは車道を進みます。
中山の上り
西久保トンネルをくぐり抜け、橋に差し掛かると、左手の上にはあの茶屋の先で見た中山の集落が見えます。ここから見るとその集落はもの凄く高い所にあるように見えますが、とにかくあそこまで上らなければ水根には抜けられません。
青梅街道に出る前に細道に入れば、そこには激坂が待っていました。むかしみちの第四部が開幕。
中山トンネル手前からの上り
なんとかこの激坂を上り切ると、青梅街道です。中山トンネルの直前を左に入ると、そこからも激坂が続いています。
一呼吸置いたら、わっせわっせとこの激坂を上り始めます。
上の中山の集落
ゆっくりと上り詰め、ヘアピンカーブを廻り、さらにVターンすると斜度は益々上昇したように感じます。
ここが本日一番の激坂で、押しに入るものあり。
中山から多摩川の谷を望む
上の中山の集落に到着すれば、そこには多摩川の谷が開いています。
ここから見ると山の紅葉はもうすっかり終わっているように見えます。
中山の突き当たり
集落の突き当たりまで進むと、道は下りになります。この道が西久保から山の中を抜けてくるむかしみちです。
ここで無事、むかしみちに復帰。ここからは下り坂の右に見える上りの細道に入って、青目立不動尊を目指します。むかしみちの最終幕が切って落とされました。
奥多摩湖と小山内ダム
この細道は一軒の民家の軒先をかすめて、人一人がやっと通れるほどの地道になります。
その地道を進んで行くと、すぐに右手に浅間神社の入口が現れ、左手に奥多摩湖と小山内ダムが見え出します。
山の中のカエデ
見上げれば、ここにも真っ赤なカエデが。
中山の集落から見た時は、すでにこのあたりの山の紅葉は終わっているかと思われましたが、どうしてどうして、まだこんな木がそこら中に残っていました。
水根へ向かうむかしみち
中山から水根へ向かうむかしみちの様子はというと、こんな感じ。一方は落ち込んだ崖で、その反対側からは岩山が迫ってきています。
路面には落ち葉がびっしり敷き詰められていて、歩くとカサコソといい音。
続く紅葉
自転車は押したり引いたり担いだりと、ちょっときついのですが、続く紅葉がその苦労を忘れさせてくれます。
浅間神社の先でむかしみちはピークを迎え、その後は下りとなり、小さな沢を二つ跨ぎます。
小山内ダムその2
多摩川を堰き止めて造られた小河内ダムは1938年(昭和13年)に建設が始まり、戦争での工事中断を挟み、1957年(昭和32年)に完成しました。
それによって作られた奥多摩湖は、竣工当時は世界最大規模の貯水池だったそうです。
青目立不動尊から見る奥多摩湖
二つ目の沢のあとは再び上りが始まります。ここはぼぼ担ぎになりますが、距離は200mほどなのでなんとかふんばります。
最後に石の階段を担ぎ上げると、青目立不動尊に到着。眼下に陽の光を反射した奥多摩湖が一望に出来ます。ここでお昼にしたかったのですが、お休み処はしばらく休業とのことで、おいしいこんにゃくが食べられなかったのが残念です。このお休み処は来春の4月から再開する予定だそうです。
青目立不動尊からの下り
さて、青目立不動尊で奥多摩湖を眺めたら、水根沢に下ります。
久しぶりの自転車乗車で、ビュ〜ン。
水根沢と木橋
下の道に合流するとすぐ水根沢の流れがあり、そこに小さな木橋が架かっています。
以前ここを通った時にこの木橋が気になったので調べてみました。するとこの対岸は『見晴らしの丘』というもので、上には奥多摩湖を一望できる八方岩展望台があるのがわかりました。
水根沢右岸
そこで今回はその八方岩展望台に上ってみることにしました。
木橋を渡り水根沢の右岸に出ると、そこは落ち葉に埋もれた道で、ハイカーもあまり通っていない様子。
ジグザグ道を押し上げる
この落ち葉道を下って行くと、突き当たりに青梅街道が見えてきます。
『あれ〜、この道、行き止まり?』 と思ったら、突き当たりのすぐ手前の右手にフェンスの門扉があります。八方岩展望台へはこの門扉を開けて進むようです。
森の中を上る
道は急勾配のジグザグ道で、まずは北東に開けた山の斜面を這うようにして上って行きます。しばらく上ると、
『もうだいぶ上ったかな、半分くらい来たのかな?』 と、マサキン。
『いや、まだ一割りくらいしか上っていないよ。』 と、サイダー。
『え〜っ、、、』 と、マサキンが呻く。
そこからも相変わらずジグザク道が続きますが、後半は森の中を行くようになります。
八方岩展望台から見る奥多摩湖
エッコラヨッコラと自転車を押し上げて、空が明るくなったと思ったら、奥多摩湖への眺望が開きました。
特に展望台という標識はないのですが、小さなベンチが一つと奥多摩湖の案内板が設えられています。ここが八方岩展望台でしょうか。
八方岩展望台にて
とにかくここからさらに上に上る気は起こらず、この眺望ポイントで一休み。青目立不動尊から見た奥多摩湖は逆光でしたが、ここは少し角度が変わり、その湖面の緑色が良く見えます。
ここで奥多摩駅からほぼ行動を共にしたハイカーさんが写真を撮ってくれました。いや〜、ご迷惑をおかけしました。写真、ありがとうございます。
見晴らしの丘
見晴らしの丘の名に恥じぬ展望を満喫したら、奥多摩湖へ下ります。
奥多摩湖側の道は上ってきた側よりなだらかで、自転車に乗ろうと思えば乗れなくもありませんが、何せ道幅が狭く、落っこちたらひとたまりもありません。ここはのんびり自転車を押して下ります。
奥多摩湖湖畔の大麦代の駐車場まで下ったら、自転車に跨がり、小山内ダムの袂にある『水と緑のふれあい館』に向かいます。
水と緑のふれあい館
水と緑のふれあい館は小山内ダムと奥多摩の自然などを紹介する施設ですが、最上階にレストランがあるので、ここで昼食です。ところがこのレストランが超満員で、座席に着くまで30分待ち。あわわわわ〜
ところで先ほどの八方岩展望台への上りですが、自転車はお荷物になるだけなので、このふれあい館近くの駐車場に駐輪し、歩いて登った方が良さそうです。
数馬隧道
なんとか食事にありついたものの、奥多摩湖を出たのが30分遅れの14時半。帰りもむかしみちを行きますが、上りがあるところはショートカットし、青梅街道を使います。
奥多摩駅前まで戻ったら、あとは上がりに喉を潤すため、青梅駅に向かいます。このあたりの見所は、白丸トンネルの旧道にある素掘りの数馬隧道(かずまずいどう)とその上にある数馬の切り通しでしょう。切り通しは時間の関係で行きませんでしたが、なかなか雰囲気のあるいいところです。
鳩ノ巣渓谷
鳩ノ巣駅付近までやってきました。ここで雲仙橋の西に架かる小さな橋に下りて、鳩ノ巣渓谷を覗いてみました。
ここは上流の惣岳渓谷に似ており、清流が巨岩や奇岩の間を縫っています。鳩ノ巣大橋、寸庭橋と渡り、林道で丹三郎へ抜けます。
奥多摩フィッシングセンターの橋
丹三郎の先は都道に出てしまいますが、今回、御岳美術館から軍畑駅付近までの川辺に細道を発見したので、試しにこれを行ってみます。
ここで右岸から左岸に渡るには奥多摩フィッシングセンターのところに架かる橋を使うと良さそうなのですが、どこからその橋に行くのかよく分かりません。フィッシングセンターで聞くと、その敷地内を通らせてくれました。
御岳渓谷遊歩道
現地に表示はなかったのですが、この細道は御岳渓谷遊歩道というもののようで、一応舗装はされていますが凹凸も結構あります。
この時はすでに夕暮れが迫っており、歩行者は僅かしかいませんでしたが、遊歩道ということですから自転車はあまり薦められないかもしれません。
ライトアップされたイチョウ
御嶽駅前に架かる御嶽橋をくぐると、対岸に玉堂美術館が見えてきます。その前にある大イチョウがライトアップされており、大勢の人がカメラを構えていました。
ここで日没時刻となりました。青梅駅まではもうそう遠くはないのですが、ここいらで上がりとします。次の沢井駅近くの多摩川縁に、清酒澤乃井の小澤酒造がやっているレストランがあるのを思い出したので、そこへ向かいます。ところがこの澤乃井のレストラン群はなんと17時で閉店とのこと。あちゃ〜
結局ジオポタらしく、この先は輪行で青梅駅へ向かい、駅前の居酒屋で宴会となったのでした。