日本列島を寒波が襲っています。昨日、裏日本では大雪のため信越線で15時間も乗客が閉じ込められ、北陸自動車道では400台もの車が立ち往生る騒ぎがありました。関東地方はここのところずっと快晴続きですが気温は低く、今日の東京は最低気温が零度を下回り、最高気温もわずか7°Cほどにしかならないようです。
この日私たちは房総に繰り出すつもりでしたが、山道は路面凍結の恐れがあるため急遽予定変更し、近場で暖かそうなところをポタポタすることにしました。
選んだのは東京西部のかつて武蔵野と呼ばれたあたり。そこには開発される前の武蔵野の面影を残す公園がいくつも残っているのです。きっとそのどこかで、ポカポカの日だまりを見つけられるでしょう。
西荻窪駅から北上すると、すぐに善福寺川に出ます。この川は神田川の支流で、川というよりは道に埋められた大型のコンクリート製U字溝といった趣で、残念ながらほかの多くの都内の川と同じで、見るに耐えません。
この善福寺川を辿っていくと、すぐに善福寺公園に辿り着きます。
善福寺公園には善福寺池があるのですが、この池には氷が張っていました。お〜寒。ブルブル! 池の氷、見たの何年ぶりかな〜
しかし凍っていたのは東の端のところだけで、その他の部分は凍っていません。この違いは陽当たりのせいでしょうか。気温は低いものの風はないので、陽射しを浴びていると暖かいです。
善福寺公園は道を隔てて南北二つに分れています。
先ほど凍っていたのは南側の下の池ですが、北側にある上の池の周囲では、小学校一年生くらいの子供たちのかけっこ大会が行われていました。寒いのにみんなとても元気に走っていました。
善福寺公園からさらに北上すると、千川上水の流れがあります。
千川上水はわずかに幅1mほどの小さな堀で、ここから少し西の武蔵野市と西東京市の境に架かる境橋で玉川上水から分水されています。
江戸時代に小石川御殿(現在の小石川植物園)や湯島聖堂・上野寛永寺・浅草御殿(浅草寺)などの将軍家関係地への飲料水の供給を主目的として造られましたが、余水を江戸の北部市中に給水していたそうです。江戸に存在した6つの主要な上水道での一つで、江戸の六上水の一つに数えられています。
かつては巣鴨まで20kmほど続いていたそうですが、現在はその役目を終え、青梅街道より下流側は暗渠化されています。
『ここは水の流れがあるし、車が少なくていい感じですね〜』と、ミルミル。こんな小さな流れですが、水というのは人をなにかホッとさせる力があります。
千川上水に沿う道は狭く、あまり車の通りがないので気分良く走れます。そんなんでどんどこ行くうちに曲がらなければいけない角を通り過ぎてしまいました。
もどってやり直して辿り着いたのは、武蔵関公園。
武蔵関公園には富士見池があります。富士見池というのですから、きっと昔はここから富士山が見えたのでしょう。
この池はこのあたりにある他の池と同様に、武蔵野台地の湧水によってできたものだそうです。ただ現在はその湧水量が減り、地下水の揚水などによって池の水が維持されているようです。
この池も半分ほどのエリアに氷が張っていました。今日は本当に気温が低いのですね。しかし陽のあたるベンチに座ってボーっと池を眺めていると、ほんわか良い気持ちになってきます。
ちなみにこの池は、地図上では石神井川の一部のように見えます。
石神井川はこのあと訪れる小金井公園付近に流れを発し、富士見池のすぐ外側を廻って下って行くのですが、富士見池との間には堰が設けられていて、水のやりとりができるようになっています。
その石神井川がこちらで、進行右手は早稲田大学の東伏見キャンパスです。
武蔵関公園から石神井川を遡っていくと、東伏見稲荷神社の前に出ます。
東伏見稲荷神社はその名から想像できるように、京都の伏見稲荷大社を分祀したものだそうです。
お稲荷さんといえばきつねですね。お稲荷さんはどうしてきつねなのか。きつねは稲荷神の使いなのだそうな。だけどどこでどうして稲荷神のお使いがきつねになったのかは、もちろん誰にもわからないでしょう。
大きな赤い鳥居をくぐり階段を上り出すと、横にきつねがいます。たまたまそこにいた方が教えてくださったのですが、このきつねが口にくわえているのは鍵と水晶で、これらは稲荷神の徳の象徴だそうです。そしてその方によるとここは今年、最強のパワースポットなのだとか。
階段を上り切ると正面に社殿が建っています。
正面左右には犬の大きな絵が掲げられています。一瞬なんで犬の絵があるんだろうと考えてしまいましたが、そういえば今年は戌年でしたね。
社殿にお詣りしたらさっさと帰ってしまう人が多いのですが、ここは社殿の後ろ側が面白いですよ。
京都の伏見稲荷といえば千本鳥居が有名ですね。ここではそうした赤い鳥居が並ぶのが社殿の後ろ側なのです。
京都を始め、お稲荷さんの赤い鳥居は大抵整然と並んでいますが、この東伏見稲荷のそれはなんというか、バラバラというか、あっちを向いたりこっちを向いたりというのか・・・
どうしてこんなにあっちを向いたりこっちを向いたりしているのかというと、ここにはもの凄い数の小さな社があり、それらに向かって鳥居が並べられているからなのです。
鳥居をくぐり出すと、途中でその鳥居が二手に別れ、また別れ・・・ なんだか迷路のようでちょっと楽しく、ちょっと迷子になりそうです。そして、あちこちにいるおきつねさまが、なんだかかわいくもあり不気味でもあります。
東伏見稲荷で最強パワーをゲットしたら、再び千川上水沿いに戻り、小金井公園を目指します。
千川上水沿いを行くと、関前五丁目の交差点のところから多摩湖自転車道が始まります。この自転車道はそこから多摩湖まで、10kmほどまっすぐに続いています。
10kmもの真っすぐな道というのはかなり珍しいですね。実はこの道は水道道路なのです。
この水道は村山貯水池(多摩湖)から和田堀給水所まで続くのですが、その上流部の境浄水場までの部分が多摩湖自転車道になっているのです。
住宅と小さな畑が続く中をどんどこ行きます。基本的にこの周囲は市街地なので、自転車道を横切る車道がたくさんあり、そうしたところは注意して渡らなければならないのがちょっと残念。
多摩湖自転車道をちょっと外れ、小金井公園に入ります。
この公園は東京でも有数の大きな複合公園で、スポーツ施設、江戸東京たてもの園、大きな広場などからなっています。
広〜い広場はポカポカで気持ちいい。今日は子供たちの凧揚げ大会があるようで、凧がいくつか舞い上がっていました。
小金井公園でちょっとまったりしたら、次は野川公園へ向かいます。
小金井公園を出ると、そのすぐ南に玉川上水が流れています。
玉川上水は多摩川の羽村取水堰で取水され、江戸市中へ飲料水を供給していた上水道で、千川上水同様、江戸の六上水の一つです。六上水の中で江戸時代を通じて使用されたのは、この玉川上水と神田上水の二つだけだそうですから、この上水がいかに重要であったかがわかります。
玉川上水を渡ったら小金井の住宅地を真っすぐ南下します。このあたりは戦後に都市計画されたところなのか、道は狭いですが、ほぼ真っすぐに通っています。
その道がいきなり階段になると、そこは『ハケ』です。ハケは国分寺崖線を意味します。国分寺崖線は簡単に言うと多摩川によって形成された河岸段丘です。
ハケを下ると野川の流れに出合います。
野川は多摩川の支流で、国分寺にその源を発し二子玉川で多摩川に注ぐ、わずか20kmほどの小さな流れです。
その野川沿いには、自転車でポタポタするのにちょうど良い道が続いています。
特にこのあたりは、武蔵野公園と野川公園があり、緑豊か。周囲の雑物があまり眼に入って来ないのがうれしいです。
野鳥博士のルビオからメーセッジあり。このあたりにイカルがいるから探してみたまえ、と。
イカルいるか、イルカいるか、あれ、イクラだっけイルカだっけ、なんだっけ? となんだか名前が覚えられない私たちですが、大きさはムクドリほどで、形態は文鳥みたい。黄色い嘴だそうですよ。
眼をこらしてあちこちイカルを探したけれど、見つからず。これは午後の部に廻しましょう。
野川公園を出たところでお昼です。今日はおしゃれにおフレンチです。ここ、リーズナブルでとてもおいしかったです。
野川公園のすぐ南には調布飛行場があります。
800mの滑走路を持つこの施設は都営で、新島、大島、神津島、三宅島との定期航路があります。
折よく13時半着の新島便がやってきました。
乗客19名という小さな飛行機ですが、すぐ頭の上を飛ぶので、結構迫力があります。
この調布飛行場の様子を見るのに格好の場所は、滑走路のすぐ北にある武蔵野の森公園の展望の丘です。
ここにはちょっとしたマウンドが築かれていて、その頂上にはベンチが置かれています。風がない日はポカポカで最高の眺望箇所です。
このすぐあとにもう一機が着陸するのを見届けて、展望の丘を下ります。
武蔵野の森公園を西へ進めば、
鴨さんが泳ぐちょっとした池があり、芝生広場や雑木林もあります。
このあたりにイカルがいそうな気がしたのですが、残念ながらここでも発見できず。
武蔵野の森公園から向かうは多摩霊園です。
多摩霊園は都立の霊園の中でも最大規模で、130ha近くもある広大なものです。
お寺のお墓だったら仮に場所を忘れてしまったとしても、住職に尋ねればたいてい分かりますが、ここは番地を知っていなければ決して辿り着けません。
多摩霊園の南西端には浅間山(せんげんやま)があります。今日巡る公園の中ではこの仙元山が、昔の武蔵野の面影をもっとも良く残しているところです。
多摩霊園から仙元山に上り出すと、すぐに道は細い地道に。
『へ〜、こんなところも通るのですか。』 と、ビジター初参加のモトちゃん。
浅間山の一部は多摩霊園の敷地内にあるのですが、残りは道路で寸断され、その向こう側にあります。
向こう側に渡るには道路の上に架かるキスゲ橋を使います。
キスゲ橋を渡り小高い丘を上ると、そこは標高80mの堂山山頂で、浅間神社があります。
こちら側のエリアは浅間山公園になっていて、堂山・中山・前山の三つの頂があります。
堂山山頂で少し休憩したら中山方面へ向かいます。この公園はほとんどが雑木林で、この時期はふかふかな落ち葉が楽しい。
『なんだかこういうとこ、楽しくてわくわくするよ。』 と、毛糸帽子で防寒対策バッチリのムカエル。
この公園内ではムサシノキスゲの札をたくさん見掛けます。ムサシノキスゲはここ浅間山公園だけに自生するユリ科の植物で、有名なニッコウキスゲの変種だそうです。
今はまだ芽を出していないムサシノキスゲの上にはあのイカルがいるはずですが、それを見つけることはついに出来ませんでした。しかし案内板の野鳥の中にはしっかりイカルの絵が載っていますから、運が良ければ見つけることができるのでしょう。
中山の山頂を廻り込むようにして進むと東屋があり、その先で『関東の富士見百景』に選定されているところに出ます。そこにはたくさんベンチが並べられていますが、残念ながらこの時は富士山は見えませんでした。でもここはひなたぼっこにはちょうどいいところで、しばしまったり。
富士見百景からは前山の北側を通って浅間山を下ります。ふかふか落ち葉ライドがとっても楽しい。(TOP写真)
浅間山の落ち葉ライドの次は『府中の森公園』です。このあたりには軍関連施設がまだ数多く残っているようす。
府中の森公園の北は旧米軍府中基地の跡地で、この中に残る巨大パラボラアンテナ二基が、浅間山からよく見えていました。東は航空自衛隊の府中基地になっています。
府中の森公園はその旧米軍府中基地の一角だったところで、スポーツ施設、美術館、大きな広場、日本庭園などからなります。
中央を貫く大通りは桜並木で、春には花見客で賑わいそうです。
大通りの正面には噴水があります。
噴水の維持にはお金がかかるので、貧乏な自治体では噴水が噴水で無くなってしまっているところも結構あるのですが、府中市はこれには当てはまらないようです。ここはしっかり噴水が吹き出る噴水です。
府中市が貧乏かそうでないかは本当のところは良く知りませんが、ここにはこんなものが建っています。超巨大施設の東京競馬場。通称府中競馬場です。
近くには多摩川競艇場もあり、府中市はこうした博打施設からたくさん税収を上げていることだけは間違いないでしょう。
湿った空気が一切ない現代的な東京競馬場の下から、なつかしい匂いが漂ってきました。いったい何だろうと思っていると、ガード下に一杯呑みやがずらり。
なんだか立派な競馬場本体とこの一杯呑みやの落差が激しすぎて、ちょっとついていけない感じです。
JR南武線の線路をくぐると、ケヤキ並木のしゃれた道に入ります。
ケヤキ並木の先で南へ進路を変え、中央自動車道の高架橋をくぐると府中市の郷土の森公園です。この公園も巨大複合公園で、いくつかのブロックに分れています。
博物館の南にある、古い建物が展示されているブロックはなかなか雰囲気がいいのですが、かつては開いていた門扉が閉ざされてしまいアクセスしにくくなってしまったので、東側の池があるブロックで小休憩します。
いつもならこの池の中にある小さな岩で亀が甲羅干しをしているのですが、この日は気温が低いためか、亀さんは姿を見せず。
時は15時少し前。まだ15時にもなっていないのに、なんだかすっかり夕方といった雰囲気です。さすがにこの時期は日が落ちるのが早いですね。
ここまでだらだら走ってしまったので、予定より少々遅れています。暗くならないうちに終着地に到達しないといけないので、ひと息ついて出発します。
郷土の森公園からは多摩川自転車道をしばらく下ります。下流に入ったと言って良いこのあたりの多摩川は、たっぷりの水量でおおらかな流れです。
ここまで風はなかったのですが、多摩川自転車道に入ったとたんに、ちょっとした向かい風が吹いてきました。向かい風の川辺はきつく、踏んでも踏んでも進まず、まるで坂道を上っているみたいです。しかも悪名高い狛江市に入ると砂利道に。羽田の旧穴守稲荷鳥居前から羽村取水堰までの多摩川自転車道で非舗装なのは、確かこの狛江市のところと上流のごく一部だけだったと思います。
45分走って砧浄水場に到着すると路面はアスファルト舗装に。世田谷区に入ったのです。
ここで私たちは多摩川を離れ、水道道路を北上します。
都道428号高円寺砧浄水場線は通称荒玉水道道路と呼ばれます。
荒玉の荒は荒川を、玉は玉川(多摩川)を指すそうです。この水道は先ほど通ってきた多摩川の砧浄水場から、中野区野方と板橋区大谷口にあった配水塔まで送水するためのものだそうです。
砧浄水場から都道428号までの都道11号も真っすぐで、428号に入ったところに写真の標識が出ています。
とにかくどこまでも真っすぐな道が10kmほど続きます。この道、真っすぐな割には比較的狭いので、交通量が多くないのがいいところです。
小田急線と京王線の線路を渡ると杉並区に入ります。そして井の頭線の線路も渡って方南通りに出ると、そのすぐ先に大宮八幡宮があります。ここで水道道路を離脱し、この八幡さまにお参りします。
大宮八幡宮の大宮はおそらく大きなお宮の意味で、埼玉県の大宮とは関係ないようです。武蔵国の三大宮の一つとされ、境内の面積は都内で三番目だとか。とにかく立派な神社です。
大宮八幡宮にお参りしたら和田堀公園に入ります。和田堀公園の辺りはかつてより地盤が低く、善福寺川の氾濫などで自然に池ができるような地形だったそうです。昭和時代の河川改修の折りにそこに人工池が造られ、その周囲が公園として整備されました。
ここの池の水は完全に抜かれていました。かいぼりがされたのです。最近、各地の池の水を抜き廻るTV番組がありますが、それでもやってきたのでしょうか。とにかく1m級のソウギョやアカミミガメ、昔流行ったというドイツゴイなどがいたそうです。ところで日本の池や川などそこら中にいる鯉ですが、あれって外来種なの知っていましたか。日本の鯉は今や琵琶湖の野鯉しかいないそうです。
さて、かいぼり池を眺めたら、いよいよ本日の終着地の阿佐ヶ谷駅へ向かいます。
和田堀公園は善福寺川に沿って細長く続くので、しばらくこの和田堀公園を北上します。
宴会開始タイムの17時ちょうどに阿佐ヶ谷駅前に到着。この駅前には、クリスマスツリーのような巨大な電飾ツリーが立っていました。
昼はおフレンチだったので夜はアジアンです。路地を100mほど入ったところにあるタイとラオスの料理屋にしました。ヤムウンセンとプーパッポンカリーがナイスでした。
今日はかなり気温が低かったですが、あまり風がなく、のんびりポタポタできました。武蔵野の公園はまったり過ごすのに良いところです。