地下神殿! 首都圏外郭放水路の調圧水槽であるこの巨大空間は、一度は見ておいても損はありません。今日は埼玉県春日部市の江戸川沿いにあるこの地下神殿を見学します。
ルートは東京湾から、旧江戸川、新中川、中川、大落古利根川、江戸川と川沿いを行くことにします。
本日の集合地は旧江戸川を挟んで東京ディズニーランドの対岸にある葛西臨海公園です。集合時刻より少々早く着いたメンバーで葛西臨海公園の先にある東京湾を見に行きました。
正面にガラス張りの素晴らしい展望台が見えます。その真ん中を突き抜けると、先に東西のなぎさが見え、さらにその先に東京湾が広がっています。右手の彼方には東京ゲートブリッジが恐竜のような姿を見せています。
葛西臨海公園駅前には続々とメンバーが集まってきています。
この日は都心部の平地企画とあって参加者は少々多く、総勢14名。途中合流の二名を除く12名がここに集結しました。
全員揃ったところで駅前を出発します。まずは葛西臨海公園の中の自転車道を東へどんどこ。
するとすぐにJR京葉線の鉄橋が見えてきます。その下を流れるのは旧江戸川です。
東京都と千葉県とを隔てるこの川はかつては江戸川の本流でしたが、1919年に開削された江戸川放水路が江戸川の本流となったことから、この旧流路を旧江戸川と呼ぶようになりました。旧江戸川は1943年に造られた江戸川水閘門(篠崎水門)から始まり、途中、新中川を合わせ、ここ葛西臨海公園とディズニーランドの間から東京湾へ注いでいます。
鉄橋をくぐり抜けると旧江戸川右岸の自転車道に入ります。これは広くて快適。
3kmほど行くとこの快適な自転車道は整備中になり、一般道を走らされましたが、間もなくその工事は完了しそうです。
新川の東水門までやってくると、その先で旧江戸川の自転車道に復帰できました。しかしその幅員はぐっと狭くなっています。
新川は中川と旧江戸川を結ぶ人工河川で、主に行徳塩田の塩を江戸に運ぶことを目的に造られました。お正月に通った小名木川も同じ目的を持っていましたね。つまり行徳塩田の塩はこの新川から小名木川を通って運ばれていたということです。かつては運河として賑わったこの水路ですが、残念ながら現在はすでにその役目を終えているそうです。
新川から先の自転車道はあまり長くは続かず、下今市のバス停のところでなくなってしまいます。このあと再び自転車道に復帰できるのは、旧江戸川に新中川が流れ込む今井水門付近です。
車道を走る区間は短いのですが安全確保に集中していて、瑞穂大橋の手前で写真を撮るのを忘れてしまいましたが、旧江戸川はここから少し東にある篠崎水門から流れてきて、この今井水門で新中川を合わせます。
今井水門から先は新中川沿いの自転車道を行きます。
かつては中川放水路と呼ばれた新中川は葛飾区の高砂付近で中川より別れ、今井水門で旧江戸川に流れ込むまでの僅か8kmほどの川です。東京東部の水害を解消する目的で開削され、1963年に完成しています。
川岸にはモータボートが所狭しと並んでいます。我らがアンドレのボートはどれだったかな。
先に、四本の塔を持つアーチ橋の明和橋が見えてきました。自転車道をそのまま進むとこの明和橋の袂は突っ切れないので、いったん新中川を渡って戻ってくることにします。
明和橋からやってきた側の新中川を見ると、橋の先に今井水門が横たわっているのが見えます。あの先が旧江戸川です。
明和橋では例外的に平面迂回を強いられましたが、このあたりのその他の橋にはアンダーパスがあるのであまり問題はありません。
少し問題なのは橋の数がかなり多いので、そこではいつも下って上ることになるということでしょうか。
今回の自転車道はみんな狭いので、ロードバイクでカッ飛ぶ人々がいないのが良いところ。
このあたりは極めて静かで、気持ち良く進んで行きます。
ユリカモメものんびりひなたぼっこ。
総武線の鉄橋までやってくると、ここはアンダーパスがなく、階段で自転車道から下の一般道へ降りさせられます。この先の蔵前橋通りも同じで、ここまでかなりがんばって造ってきた自転車道の整備に少し陰りが見え始めます。
新中川沿いではちらほらと桜を見ることができます。
都心の桜は今日明日で満開になりそうですが、ここはまだ三分咲きといったところでしょうか。
高砂に入ると、新中川の分流点が近付きます。
高砂諏訪橋を渡り新中川左岸を北上していくと、先に斜張橋の高砂橋が見えてきます。その下を流れているのは中川です。
高砂橋のすぐ南で、新中川は中川から分れているのです。
振り返ると、先ほど渡った高砂諏訪橋の下を新中川が流れて行き、その先に東京スカイツリーが聳え立っているのが見えます。
もう一方の中川の方は、ここから南西へうねうねと流れて行き、荒川に沿って流れてきた綾瀬川を合わせ、東京湾のすぐ手前で荒川に合流します。
高砂橋を渡り中川右岸に入ると、そのすぐ先で、京成本線がガタゴトと音を立てて中川の鉄橋を渡っていきました。
中川は埼玉県羽生市に流れを発し、江戸川に並行してその西を流れ、春日部で首都圏外郭放水路に接続します。この首都圏外郭放水路が本日のメインイベント会場である地下神殿へと繋がるのです。
その後この中川は、大落古利根川(おおおとしふるとねがわ)、新方川(にいがたがわ)、元荒川を合わせ、先ほどまで横を通っていた新中川を分けるのです。
このあたりの川はかなり複雑に絡み合っていて、時々、いや、いつも頭がこんがらかります。
東京慈恵会の葛飾医療センターのあたりは桜並木です。ここはなかなかきれい。
R6にぶつかると迂回を余儀なくされるもその北の中川沿いに入ると、この自転車道は最近整備されたようで、広くてきれい。
中川の護岸も丁寧に整備されています。
対岸に高い煙突が見えてきました。水元の葛飾清掃工場です。
その手前には中川を渡る極太の水道管。
これまで江戸川区、葛飾区と通り抜けてきましたが、いつの間にか足立区に入ったようです。
左手に水門が見えてきました。中川と綾瀬川を結ぶ花畑川の水門です。
この運河の歴史は比較的新しく、主に都心から出された大量の糞尿を肥料として農耕地帯へ運ぶため、1931年(昭和6年)に完成したそうです。肥料が化学肥料に取って代わると、この運河の利用度は急激に減少し、現在はたまに東京湾行きの釣り船が通るだけになっているそうです。
この花畑川の水門のところで自転車道は終わり、一般道に出ます。するとすぐに東京都足立区から埼玉県八潮市に入りますが、この県境には垳川(がけがわ)が流れています。垳川は花畑川同様に中川と綾瀬川を繋いでおり、江戸時代初期までは綾瀬川の本流だったそうですが、新しい綾瀬川が開削され、両端が閉じられて川としての機能を失いました。
その垳川の向かいには水元公園から流れてくる大場川の水門が見えます。この水門は逆止水門で、中川の流れが大場川に入っていかないようにするためのものだそうです。
垳川を過ぎるとほどなく道は中川の縁を離れ、少し内陸を行くようになります。
河川敷に造られた大瀬運動公園を過ぎると、中川遊歩道という極細の道が始まります。
この中川遊歩道は河川敷に造られた畑の縁を大きなカーブを描いて進み、『中川やしおフラワーパーク』に辿り着きます。
この時、中川やしおフラワーパークでは花桃まつりが開催されていました。
ここで私たちを出迎えてくれたのは八潮市のマスコットキャラクターのハッピーこまちゃん。
パーク東端にはかつての河川なのか、池のようなものがあり、
そこで櫓舟が子供たちを乗せて遊覧しています。
池の横が花桃園です。
この花桃園はさして大きくはありませんが、薄紅色の花桃が満開です。
枝にびっしりと花が並んでいます。
この色、桃色って言うかな?
花桃の西は菜の花畑。
こちらはまだ満開とはいきませんが、それでもかなりの程度、黄色に染まっています。
ここにユッキーとコンタがやってきて、本日の参加メンバー全員が集まりました。
中川やしおフラワーパークから北は広い自転車道になります。
それをどんどこ行くと、道端にふっくらモコモコの動物が。なんとこれ羊さんじゃあありませんか。なぜ、どうしてこんなところに羊さんが? 近くに飼い主らしき人がおられたのですが、他の方と会話中だったので、残念ながらこの羊の謎を解くことはできませんでした。
八条橋を渡って八潮市から中川左岸の三郷市側へ移ります。
ここは土手の菜の花がいい感じ。
三郷市から吉川市に入り、JR武蔵野線の吉川駅前に出ました。
今日は参加人数が多いので昼飯は弁当です。駅前のスーパーマーケットで各自お好みの弁当を見繕います。
吉川駅のすぐ東には二郷半用水が流れ、それに沿って桜並木が2.5km続いています。
この道はさくら通りと呼ばれているそうです。
そのさくら通りの中程にある関公園で休憩することにします。
桜はまだ咲き始めですが、ここで花見を。
マウンドの上に登り、二郷半用水側に植えられた桜を眺めながらお弁当を広げます。
関公園からも桜並木は続きます。
ここはその下に遊歩道が設えられていて、なかなか良いですよ。
ちょうど咲き始めたサクラです。
満開の染井吉野はマッスとして見るにはいいですが、花そのものを楽しむならこの程度がいちばんきれいだと思います。
松伏町の下赤岩で中川を離れ、大落古利根川に入ります。
何だか妙な名前のこの川は古利根川の名から想像できるように、江戸時代以前は利根川の本流で、その頃の利根川はこの河道を流れて行き、東京湾へ注いでいました。利根川はその後幾度となく河川改修され、流路を変えて現在の流れになったのです。
少し行くと大落古利根川の河川敷を走れるようになります。
その後は桜並木の小さな土手の上を行きます。
この川沿いは大変静かで、のんびり走るのには打ってつけです。
松伏町の田中で大落古利根川を離れ、東へ進路を取ります。
田島で渡るのは吉川までその横を走っていた中川です。ここでは大分その幅を狭めていますね。
中川を渡ったらさらに東へ歩を進めます。
赤いモクレンと白いコブシ、そして紅梅が満開。春がいっぺんにやってきた。
このあたりにはたくさんの川が並走しています。越谷を通る元荒川、そのすぐ北に新方川、そして大落古利根川。これらはみな中川の支流で、これらのさらに北に中川が流れています。
田んぼの中をどんどこ行くと、先にまっ黄色の土手が見えてきます。
江戸川です。
江戸川は利根川の分流で、千葉県野田市と茨城県猿島郡五霞町との境界付近にある関宿で利根川から分かれています。
その後、千葉県と埼玉県、東京都の境を流れ、千葉県市川市付近で旧流路である旧江戸川を分けます。
江戸川は旧江戸川河口からの流路延長が60kmほどある、ちょっとした川です。
江戸川の土手上には広〜い自転車道があって気持ちいいのですが、時々、暴走自転車がやってくるので注意を。
この土手をどんどこと上流方面に遡って行きます。
東武野田線とR16春日部野田バイパスの鉄橋をくぐると、先に地味な煉瓦色の建物が見えてきます。これは首都圏外郭放水路の庄和排水機場です。本日のメインイベント会場の地下神殿はこの建物の地下にあります。
首都圏外郭放水路は春日部市のR16直下50mにある世界最大級の地下放水路です。この施設は、これまで通って来た中川や大落古利根川などこの周辺の河川による洪水を防ぐために、容量を越えた水を貯水し、江戸川に放水する目的で造られ、2006年度に完成しました。
一定量を越えた河川の水は、まず、直径30m、深さ70mにおよぶ4本の巨大立坑に入ります。そしてこれらから延びる直径10m、延長6.3kmのトンネルの中を流れて行き、その末端にある第一立坑に流れ込みます。そしてそこから江戸川に放水されるのですが、この時の水の勢いを調整するために巨大な調圧水槽が設けられました。
地上から階段を降りて行くと、その調圧水槽が見え出します。
『お〜〜』とか『わお〜』とかいう声がそこら中から聞こえてきます。一般的な建物でいうと6階建て相当の116段の階段を下ると、ようやく調圧水槽の底に到達します。ここが通称地下神殿と呼ばれる空間です。
調圧水槽はサッカーグラウンドほどの広さで、幅78m、奥行177m、そして高さは18m。この内部には59本の巨大なコンクリート柱が林立しています。
柱は、幅2m、奥行7m、高さ18mで、その重量は、な、なんと500t/本! 地下神殿の天井を支えると同時に、地下水による揚圧力で建物が浮かないようにする重しの役割も担っているそうです。
第一立坑と反対側の調圧水槽の先には四機の排水ポンプがあり、これで1秒当たり25mプール一杯分(200m3 )の水を排水しているといいますから驚きです。
この施設が昨年可動したのは七回だそうです。流れ込んだ水が排水されたあとは底部に汚泥が溜まるので、見学場になっている今私たちがいる場所は、その都度人力でかき集めて排出するとのこと。人力だってよ、人力! まあその他の場所については年に一回、ブルドーザーで行うってことですが。
いや〜、地下神殿、凄いです! ここに実際に水が入っている映像を見てみたいものですねぇ〜。地下神殿という名と水から連想する世界的な施設で思いつくのは、イスタンブールにある地下宮殿と呼ばれる貯水槽ですが、さて、どちらが凄いでしょうか。
迫力の地下神殿に満足したら、本日のイベントはこれにて終了。あとは春日部駅前の宴会場に急ぐだけです。
田んぼの中をどんどこ行き、
まだ咲かぬ中庄内排水路の桜並木を眺め、
道の駅庄和で一休み。
ジオポタ主婦族はここで良い食材はないかと場内をくまなく巡り、鞄いっぱいに買い物を。
買い物が終わったら一路春日部駅へ向かいます。
途中、今日の前半でお世話になった中川の上流部をかすめ、
春日部に入って桜咲く大落古利根川沿いを行き、
麦わら帽子をイメージしたという古利根公園橋が見えると、春日部駅はもうすぐです。
駅前に着いたらいつものように宴会に突入。
『いや〜、今日は平地でよかった〜』 という声があり、
『やっぱり地下神殿は見て良かった〜』 などと言い合いつつ、楽しい宴会は続いていくのでした。
このコース、地下神殿はやはり一見の価値ありですが、その周辺のいくつもの川を辿るのもなかなか楽しいです。コース上には桜の名所もいくつかあるので、桜の季節にぴったり合えば二重丸でしょう。