小川町駅
春爛漫!
都心の桜は四月を待たづに散り始め、もうすっかり葉桜になってしまいました。でもまだ、山の方は山桜が咲いていそうです。
埼玉県比企郡ときがわ町の慈光寺では、この日、本尊千手観音菩薩の御開帳があります。寺周辺には50を超す種類の桜が植えられていて、これら中には遅咲きのものもあるので、きっと見頃のものもあるはず。
ということで、この日は慈光寺参拝と山のサクラ見物です。
笠山
やってきたのは埼玉県比企郡の小川町駅。駅前の市街地を抜け兜川を渡ると、早々に周辺の山が見えてきます。
南西の目立つ山は笠山でしょう。その手前の低い山は若葉が出てきていて、きれいな緑色に覆われつつあります。空もいい色。
小川町のカントリーロード
裏道をどんどこ行くと、まだ市街地を抜けて間もないのに、緑の草原になった畑の中を行く細い砂利道が現れます。
私たちはこんな道はきらいではありません。どこもかしこもアスファルトで覆わずに、少しこんな道を残しておいた方が楽しいのではないでしょうか。
桃園へ向かう
裏道は下古寺でr273に合流します。このr273を南下すると松郷峠を越えて慈光寺に至るのですが、その前にちょっと寄り道を。ビジターのサトちゃんが、このすぐ近くに桃園があるというので、そこを覗いて見ることにしました。
裏道がr273に合流したところから始まる林道小坂滝ノ沢線に入ります。少しえっこらして森の中に入り、ちょっと下ると空間が開いて、その桃園に到着します。
花が終わった桃園
小さな谷がr273に向かって下り、その先に小川町の西部にある山が見えます。先週末はここできれいな桃の花が見られたそうなのですが、この時はすでにそれは終わっていました。山に囲まれたここは、花があったらさぞきれいだろうと感じさせるところです。ちょっと今回は残念。
桃は終わっていましたが、いい感じのところを教えてもらったので、ここはいつかまた訪れたいと思います。
若葉の山
桃園から降りてr273で松郷峠へ向かいます。
道から見える山々は若葉がきれい。五月ごろに見られる力強さはまだなく、弱々しい緑ですが、デリケートな初々しさが魅力です。
民家のしだれ桜
山辺にある民家の庭先には、大きなしだれ桜が何本も咲いています。
ソメイヨシノはこのあたりでもすでに散ってしまっていますが、桜はそればかりではありません。このあたりではソメイヨシノ以外のこうした桜がかなり多く見られます。
松郷峠への上り
谷が狭まり上古寺で道が森の中に入って行くと、いよいよ峠道らしく、勾配がきつくなります。この勾配がきつくなったところから松郷峠までは1km強で、平均勾配は8%ほどなので、なんとか上って行きます。
松郷峠は切り通し峠で眺望はなく、交通量もそこそこあるので、上り切ったらすみやかに下ります。
林道赤木慈光線入口
松郷峠から下り、森が開くとすぐに、細い後野川の流れを渡ります。そのすぐ先に林道赤木慈光線の入口があります。林道赤木慈光線はここと林道赤木七重線を繋ぐ5kmほどの道で、この入口から1.2kmの地点で慈光寺方面に抜ける道を分けます。
入口に咲く薄紫色の花はミツバツツジでしょうか。
林道赤木慈光線を上り出す
私たちはこの林道赤木慈光線を使って慈光寺にアプローチします。林道赤木慈光線に入るといきなり10%の上りで、そのうち12%を越える激坂に。ここはハヒハヒ!
ここで足のある、シュンシュン、ビジターのサトちゃん、そしてタキスキーがアタック。取り残されたマージコ、シロスキー、サイダーはヨロヨロとその後を追うも、あっという間に三人の姿は消えてしまうのでした。
桜吹雪の中を行く
激坂区間が終わると勾配が弛み、桜並木になります。
『こっちはのんびり行きましょう〜』 と、後続の三人はまったりペースを決め込みます。ここは桜吹雪!
さきほどから時折、バーン、パーンという音が聞こえてきています。雀よけのカーバイト空砲に似ていますが、ちょっと違います。なんの音でしょう。
コンクリート舗装の激坂
後続三人は慈光寺方面に抜ける道の分岐までやってきましたが、先行三人の姿はそこにはありませんでした。
『あれ〜、先行っちゃったのかな。。林道行っちゃうと慈光寺には行けないんだけどなぁ〜』 とサイダー。
まあ、慈光寺に行けば会えるだろう、ということで、ここは慈光寺方面へ。ところがこの先はコンクリート舗装の激坂で、即押しに。
慈光寺北の谷
超激坂区間をなんとか押しで凌ぐと、南側が開けた気持ちのいい道になります。
しかしこのあと谷の突き当たりまで進むと、またまた激坂に。 くじけるぅ〜
ここでまたあの破裂音が響き渡ります。今度はそれがはっきり花火の音であることがわかりました。もしかするとこれは、慈光寺の御開帳を告げるものかもしれません。
慈光寺への下り
激坂を押し上げると林道赤木慈光線から来るダートの細道が合流し、この道のピークに達します。ここにも三人の姿なし。
このピークからは慈光寺へ森の中を穏やかに下って行きます。
慈光寺観音堂参道
下り出すとすぐに慈光寺観音堂の下に出ます。
慈光寺は開山1300年の古刹で、この日は千手観音菩薩の御開帳があります。通常、観音堂にはその正面にある急勾配の階段を上るのですが、この日は交通整理のためか、横の階段でアクセスするようになっていました。
ここにも、三人、いないね。
シャガ
参道の足元にはきれいなシャガが満開です。
胡蝶花と書くこともあるこの地味派手なアヤメ科の花は、一見洋物のようにも見えますが、中国が原産で、かなり古くに日本に帰化したものだそうです。種子ができない植物なので、日本のシャガはすべて同じ遺伝子を持つそうです。
慈光寺観音堂
この寺はかつては75坊もあった大寺院だったそうです。
鎌倉時代には、源頼朝が奥州藤原氏の追討にあたり、ここを祈願寺としたとか。
慈光寺観音堂その2
観音堂には多くの人々が集まっていて、ちょうどお坊さんの読経が始まりました。
この読経はだいぶ長くかかりそうだったので、うしろの空いた席にちょっとだけ腰掛けさせてもらい、高さ1.8mの真っ黒な千手観音菩薩を拝ませてもらいました。
慈光寺の八重桜
お参りが済んだので観音堂から下り、下の駐車場付近で三人を捜しますが、おらん!
ここではきれいな八重桜が満開です。
参道の桜
三人とようやく連絡が付いたのですが、予想の通り林道を先まで行ってしまっていたので、宿(しゅく)のうどんやで待ち合わせることにして、慈光寺から下ります。
最初に紹介したようにこの周辺にはたくさんの種類の桜が植えられていて、この時はその半数以上が見頃でした。
青石塔婆
下り坂の途中に、ちょっと変わった石碑がたくさん並んでいるところがあります。
これらはこのあたりで産出する緑泥石片岩から造られた青石塔婆で、板碑、板石塔婆などとも呼ばれるそうです。鎌倉時代から戦国時代にかけての供養塔で、慈光寺のかつての僧侶名などが記されているのだとか。
ちなみにここは慈光寺の山門跡だそうです。
やすらぎの家
宿まで下りてきました。朝は快晴でお日様が燦々と輝いていましたが、いつの間にか雲が出てきていて、日差しのない下り道はかなり寒かったです。
建具会館の向かいにある古民家を利用したうどん屋『やすらぎの家』に到着。
紅白の桃と巨大トトロ
時は11時前。開店は11時からのようなので、建物の裏手にある巨大トトロとしばし遊びます。その隣には見事な紅白の桃。
30分ほどして三人組がようやく到着。いったいどこまで行ったんだぁ。まあそれはともかく、うどんです。ここはちょっとした人気店なのか、いつの間にか席はいっぱいになっています。埼玉県はうどん文化圏。武蔵野うどんは太く歯ごたえがあり、しっかりした食べごたえのあるものが多いですが、ここのものはそうした中ではやや細めで、地粉の色が良く出ていて、食べやすいものでした。
宿から馬生へ
さて、午後の部はまず、櫟平(くぬぎだいら)の日向根(ひなたね)へ向かいます。この時期の日向根は春の花で満ちあふれているはずです。
宿を出、氷川に沿って南下すると、道端に芝桜やチューリップ、桜に桃と、色とりどりの花が咲き出します。
ツツジ、レンギョウ、芝桜
ここは遠くに薄紫色のミツバツツジ、手前の黄色はレンギョウ、そしてピンク色の芝桜。
馬生
馬生(ばしょう)にやってきました。ここで氷川沿いを離れ、小さな谷を上って行きます。
先には淡い色の花々が黒い針葉樹林を背景にして映えています。
しだれ桜
上り坂も桜を眺めながらだと、少し心が和らぎます。
林道馬生線
視界が徐々に狭まってくると全長寺を過ぎたところから林道馬生線に入り、森の中を行くようになります。
しばらくは眺望のないこの道をえっこらよっこらします。
日向根の山
馬生から2.5kmほど上ると左手が開き、先に日向根の上にある山が見え出します。
針葉樹の濃い緑の中の若葉が初々しい。
山の桜
さらに行くと、左手の視界がフルオープンになり、谷の向こう側の山が見えるようになります。
良く見ればその山の中に真っ白なものがたくさん。あれはみんな山桜でしょう。
日向根
そして民家が現れると日向根に到着です。ここは私たちが気に入っている場所の一つです。
日向根は、四方を山に閉ざされた氷川の谷の南東向きの急斜面にあるこじんまりした集落で、独特のロケーションにあります。今では立派な道が通り、バスもやってくるところになりましたが、一昔前のここの生活はどんなものだったでしょう。
桜、桃、菜の花
斜面地なので、そこに咲く花も全部見えます。
ここには、赤、ピンク、黄色と、眩いばかりの色が溢れています。
お地蔵さんの桃
等高線に沿う道はそのままの高度で谷の突き当たりを廻って進んで行くのですが、ここでひと上りして、くぬぎむら体験交流館へ向かいます。
すると濃淡のピンクと赤、そして白い桃が満開。ここにはひっそりとお地蔵さんが祀られてもいます。
本日のメンバー-1
『ここはいいところですね〜』 と誰とはなしに呟くと、他の面々からも
『いいね〜、ここ最高ですねぇ〜』 と声が上がります。
くぬぎむら体験交流館からの眺め
短い激坂をグワンと上ると、くぬぎむら体験交流館です。この施設はかつては小学校でしたが、現在は山村体験施設という位置づけで、ひもかわうどんも食べられます。
私たちは外のテーブルで一休みさせてもらっただけですが、この時、中はそれなりに賑わっているようで、『え〜、ひもかわうどん、20分待ちだってよ〜』との声が聞こえてきました。
くぬぎの七曲
くぬぎむら体験交流館のすぐ横には『くぬぎの七曲』があります。
ここは斜面地の小径に七種類の植物が植えられており、この時期は花桃とミツバツツジが満開です。
ミツバツツジと花桃と桜の競演
豪華絢爛!
うしろには桜も。
全員集合-1
誰もいないここは穴場の花見スポットです。
自撮り棒を忘れたの、だれだ〜
向尾根
花桃とミツバツツジと桜の競演を楽しんだら日向根を出て、向尾根(むこうおね)を経由して腰巻へ向かいます。
向尾根の稲荷神社では氏子らしき人々が集まって酒盛りをしていました。何のイベントでしょうか。この向尾根の集落には山桜の大木があるはずなのですが、すっかり忘れてしまっていて行けませんでした。
山道を行く
向尾根の集落が終わると砂利道の山道に入りますが、これは良く締まっているので問題なく進みます。
腰巻の林道泉川線上流方面
800mほど森の中の砂利道を行くと、腰巻で林道泉川線に合流します。
この林道泉川線の横を流れるのは泉川で、上流方面に行くと姥樫(うばっかし)と呼ばれる幹が大きくねじれたアカガシや、重なり岩という転げ落ちそうな巨石がありますが、今回は下流側へ下ります。
林道泉川線
林道泉川線は直線基調なので、勾配は大したことがないように思われますが、これが実はかなりのもので13%を越えるところもあり、上りに使うとかなりきついです。
しかし今回は下りなのでらくちんです。
大木戸
腰巻から1.5kmほど下ると大木戸でこの林道は一般道に合流しておしまいになります。
そこには、癒しの隠れ湯鎌倉山荘が建っています。この山荘はちょっと変わっていて、入浴も宿泊も無料で、心付けだけでいいようです。なんでもオーナーが趣味でやっているのだとか。
西河原からの上り
泉川はこのあたりで氷川と名を変え、さらに下って行き、宿のあたりで都幾川に流れ込みます。
その氷川に沿ってちょっと下り、西河原から一山越えて、東に位置する大附に抜けます。
谷を挟んで向尾根
西河原からちょっとえっこらよっこらすると右手の視界が開け、谷の向こう側に先ほど通った向尾根あたりの集落が見えます。
ゴルフ場のクラブハウス
カーブを回ってちょっとした森を抜けると、先に奇妙な塔のようなものが見え出します。ゴルフ場のクラブハウスです。
道はここでピークを迎え、ゴルフ場の間のフェンスに覆われた中を穏やかに下り始めます。
ゴルフ場の谷
フェンスを抜けると弓立山が目の前に迫り、その中腹を巻いて進んで行きます。
右手に開いた谷底はまだゴルフ場で、道端には白、ピンク色、赤と三色の桃がきれいに咲いています。
大附
ゴルフ場が終わると東の視界が開け、広い関東平野が見え出します。ここは関東平野の末端で、今まさに山が立ち上がろうとしているところなのです。
南斜面の陽当たりが良くて暖かそうなところにある大附の集落に入ります。ここはみかんの産地で、とても気持ちのいいところです。
雷電山
都幾川まで下ってきました。ここまで来ると今日の行程も終盤に入ります。
先に見えるのは雷電山。これからあの山をぐるっと廻ります。これが本日最後の上りです。
別所橋から見る都幾川と弓立山
別所橋で都幾川を渡ります。都幾川の上流方面の先に見えているのは弓立山で、先ほどあの山の南側を廻ってここまで下りてきたのです。
別所橋の少し西は三波渓谷と称さるところで、その入口には日帰り温泉施設の都幾川四季彩館が建っています。
雲河原線
都幾川四季彩館の先の養鶏場の入口から、森の中を行く森林管理道雲河原線に入ります。
まずは緩いカーブが連続し、そのあとは大きくうねったうねうね道に。
南東の景色
そして1.5kmほど上ると南東の視界が開けます。
ここの標高は250mほどなので、山というより丘の眺めです。
雲河原
後野から上って来る道に出ると雲河原線はおしまいになり、一般道を上って行きます。
雲河原の集落に着くと、そこには南西の視界が開いており、西の端にぴょこんと飛び出した笠山が見えます。
林道雀川上雲線ピーク
雲河原の集落の少し先で道は下り出しますが、これを行くと松郷峠に出てしまいます。この下り出すポイントに林道雀川上雲線の分岐があるのですが、うっかり入りそびれて、あやうく松郷峠に下ってしまいそうになりました。ここは戻ってやり直し。
林道雀川上雲線は、ここから雷電山の北を廻って雀川砂防ダムまでの4kmほどの線です。上り出すとすぐに雀川上雲線のピークに達します。
雷電山
その後は概ね下りですが、二度ほど小さな上り返しがあります。
最初の上り返しのあとで、右手の視界が開き、雷電山がその姿を現します。
東屋
雀川上雲線でほぼ唯一の展望箇所と言えるここには東屋があって、上には物見櫓もあるはずなのですが、今回は前半のロスで時間がないのでこれはパス。
雀川砂防ダム
東屋の先で二度目の上りがありますが、これは短いけれど急坂。一気に上り駆け上ります。
そのあとは快適な下りで雀川砂防ダムに到着。このダム周辺は公園になっており、ダム湖まで上れば都心の超高層ビル群が見えるのですが、今回は下の公園で小休憩。
雀川砂防ダム公園の桜
ここでは赤みの強い八重咲きの桜が満開です。
雷電山をうしろに
雀川砂防ダムを出たら、あとは本日の終着地の高坂まで穏やかな下りになります。
先ほどまで周囲を廻っていた雷電山が遠ざかって行きます。
雀川沿いの小径
しばらくはダム湖から流れ出す雀川に沿って行きます。
ここは細道で私たちにぴったりの道。
五明のしだれ桜
JR八高線の線路を渡り、ときがわ町の五明までやってきました。時は16時半で陽が傾きつつあります。
少し赤みを帯び始めた太陽の光りが、道端のしだれ桜の赤みを一層強くしています。
鎌形八幡神社
雀川はときがわ町玉川で都幾川に注ぎます。その1kmほど北東には、木曾義仲の産湯に使ったとされる清水が湧く、鎌形八幡神社があります。
ここで清水をいただき、最後の休憩です。
都幾川桜堤
この鎌形八幡神社のすぐ先の都幾川の土手は桜堤です。いつもなら桜が満開のころですが、今年はすでに完全にその花びらを落としてしまっています。
逆に、桜堤の前の菜の花はまだ成長が足りず、こちらもあまり見応えがありません。
都幾川
鞍掛橋までやってきました。
このあたりの都幾川は清流の趣があり、この時間帯もなかなかいい感じです。
鞍掛橋
鞍掛橋はコンクリート造ではありますが、このあたりにまだいくつかある沈下橋の一つです。
川が増水するとこの橋は水の中。
大平の激坂
鞍掛橋から田んぼの中を行き、東松山市の大平までやってきました。ここまで来れば終着地の高坂駅はもうすぐです。
ゴルフ場の間を行く道に続く細道に入ると、そこには激坂が。最後の試練!
さて、春の花を愛でようとやってきたこの日の企画は大正解でした。とにかくそこら中に花々が咲き競っていました。桜はソメイヨシノばかりではありません。山桜しかり、その他名前を知らないのが残念ですが、たくさんの種類の桜が咲いていましたよ。芝桜、チューリップ、レンギョウ、ユキヤナギ、ボケ、ミツバツツジ、桃。あ〜、数え切れないなぁ。