勝沼ぶどう郷駅より南アルプスを望む
快晴! 中央本線の車窓からは富士山がはっきり見えています。その列車が勝沼ぶどう郷駅までやってくると、この駅の名物の桜はもうほとんど散ってしまっていましたが、その枝の間から南アルプスが姿を現しました。春には珍しくくっきりはっきりで、霞がかかっていません。これはいける!
今日は甲府盆地で花見です。もっともこの花は桜ではなく桃です。都心の桜が終わって一週間ほどで、この地の桃の花は見頃を迎えるのです。あの南アルプスはその桃の花を一層引き立ててくれるでしょう。
塩山駅前の武田信玄像
勝沼ぶどう郷駅を通り過ぎ、次の塩山駅の北口に降り立つと、そこには戦国時代を代表する武将の一人である甲斐の武田信玄像があります。武将像は兜を被った勇ましい姿のものが多いですが、この信玄像は刀は差しているものの甲冑は着ておらず、立像ではなく座像と、ちょっと変わっています。
今日は日中18°Cまで気温が上昇するそうですが、朝のこの時刻はまだかなり寒く、ここが山梨県であることを強く思い出させてくれました。
甘草屋敷
塩山駅の向かいには甘草屋敷が立っています。甘草屋敷は 江戸時代の民家で、漢方薬の原料となる甘草を栽培していたためそう呼ばれているそうです。この屋根は現在は銅板葺きになっていますが元は茅葺きだったそうで、中央が二段に突き上げられているのが特徴です。
この時期はその前に桃の木が並べられ、見事な桃色の花が来場者の目を楽しませてくれます。
甘草屋敷の横を行く
甘草屋敷の桃を楽しんだらその横を通って北東に進み、塩山の桃を見に行きます。
大菩薩嶺と桃
R411を過ぎ重川を渡る頃になると、正面に雪を被った頂が見え出します。あれは大菩薩嶺でしょう。通常今頃はこの山に雪はないのですが、一週間ほど前に降ったものが積もったようです。
その下の畑には濃いピンク色の桃が見えています。どうやらこのあたりは満開のようです。
富士山と桃
道は上り。少しえっこらよっこらして南を見ると、そこには富士山が。
南アルプスと桃
視線を右にずらしていくと、雲が棚引いているような南アルプスが見えます。
赤石岳と悪沢岳
雪山は左から赤石岳(3,121m)、悪沢岳(3,141m)。
塩山下粟生野から南西を望む
さらに右に農鳥岳(3,026m)、西農鳥岳(3,051m)、間ノ岳(3,189m)と超三千メートルの山が並びます。その下、目の前の畑はピンク色の桃の花で埋め尽くされています。この景色を見ただけで、今日は来た甲斐があったという気分になります。
塩山中萩原
そんな桃畑を眺めながら、少しずつ高度を上げて行きます。
景色からはあまり勾配がきついようには見えないと思いますが、どうしてどうして、これがなかなかのもので、すでにうっすらと汗をかき出しており、みんなジャケットの前を開けています。駅前はあんなに寒かったのにねぇ。
菜の花、桃の花、南アルプス
この畑では菜の花も満開です。
ここは、菜の花、桃の花、南アルプスと三役そろい踏み。
満開の桃の花
満開の桃の花。
足下に菜の花、目通りに桃の花
足下に菜の花、目通りに桃の花を見ながらさらに高度を上げて行きます。
慈雲寺の桃畑
慈雲寺の桃畑までやってきました。ここの桃の花はまだ五分咲きといったところでしょうか。
慈雲寺の桜と菜の花
しかし菜の花は満開です。慈雲寺はイトザクラという枝垂桜で有名なのですが、それはどうやら今年はおしまいのようです。
慈雲寺
そのかわり、桃の花はきれいでした。ほんわかピンク色でかわいらしい。
この奥に見えるのが、ほとんど花を落としたイトザクラです。
慈雲寺より南アルプスを望む
イトザクラは残念でしたが、ここからは南アルプスが良く見えます。
富士山に次ぎ日本で二番目に標高が高い北岳(3,193m)は、これまで手前の山に隠れてほとんど見えなかったのですが、ここでは間ノ岳の右にその山頂がはっきり認められます。
向久保日向薬師如来へ向かう
さて、慈雲寺の先には周林寺がありこの枝垂桜もいいのですが、その見頃は慈雲寺のイトザクラとほぼ同じ時期なのでこれはパスすることにして、向久保日向薬師如来に向かうことにしました。
向久保日向薬師如来より
向久保日向薬師如来の桜は慈雲寺や周林寺のそれとは異なりソメイヨシノのようで、ピークは過ぎたもののまだ見られる状態で残っていました。
上から落ちてくる桜の花の先には、下に濃いピンク色の桃園、そして正面に南アルプス。この絵の右端の雪山が北岳です。
向久保日向薬師如来の桜をあとに
向久保日向薬師如来からの眺望を楽しんだら、東の山に沿って勝沼ぶどう郷駅に向かいます。
桃とスモモの畑
この斜面には桃とスモモの木が並んでいて、『うわ〜、きれい〜!』と、思わず叫んでしまいました。あっ、白い花がスモモですよ。
向久保日向薬師如来付近より
青レンジャー:シロスキー、赤レンジャー:マージコ、黒レンジャー:サイダー
桃畑の中に正義の味方、三レンジャー登場!
桃畑とぶどう畑の間を行く
山梨といえば葡萄やワインを思い起こす人も多いでしょう。ここに来てぶどう畑が出てきました。菜の花の上に棚が作られているのがわかるでしょうか。ここ甲府盆地では葡萄もたくさん作られています。
フルーツライン
ぐわ〜んと下ってフルーツラインに出ました。
うしろには扇山(942m)から鈴庫山(1,600m)に続く低い尾根が見えています。鈴庫山のすぐ東には、奥多摩に抜ける柳沢峠があります。
牛奥みはらしの丘付近より
フルーツラインにある『牛奥みはらしの丘』で一服します。
ここは南アルプスが近づき、それが一層はっきり見えるようになります。
桃の花と北の山
『牛奥みはらしの丘』から下ると果樹園が並び、その先にいい感じの桃畑がありました。
その桃畑から北を見返ると、扇山のさらに向こうにちょっとした山が見えます。あれは黒金山(2,232m)でしょうか。
塩山牛奥の桃
盛りの桃の花! 畑では農家の方が棒の先に付けた羽根のようなもので受粉をさせています。
勝沼ぶどう郷駅前
勝沼ぶどう郷駅までやってきました。
二年前にここにやってきた時には桜が見頃だったのですが、これは今回は残念。まだ花は残ってはいますがピークはだいぶ過ぎています。
大日影トンネル遊歩道横を通る特急列車
勝沼ぶどう郷駅の奥には『大日影トンネル遊歩道』があるので覗いてみることにしました。この遊歩道はかつて中央本線の下り線のトンネルとして使われていたもので、全長は1.4kmほどとかなり長いです。
遊歩道のすぐ横には新しいトンネルが掘られており、ちょうど下りの特急列車が出てきました。
大日影トンネル遊歩道
大日影トンネルの内部は煉瓦で仕上げられていてかなり立派です。残念ながら現在は閉鎖されており、この中を歩くことはできません。
うしろに勝沼ぶどうの丘
大日影トンネル遊歩道を眺めたら、駅前にある食堂で郷土料理の『ほうとう』をいただいて腹を満たしました。
さて午後の部は、笛吹市一宮町の釈迦堂周辺の桃エリアからです。勝沼ぶどう郷駅から下り、『勝沼ぶどうの丘』の裾野を通って日川に下ります。勝沼ぶどう郷駅と釈迦堂パーキングエリアの標高はだいたい同じなのですが、間に日川が流れているので、どうしてもこの川まで下らないといけないのです。
宮光園
日川の周辺にはワイナリーがたくさん集まっており、そうしたものを横目に進んで行きます。
日本を代表するワイナリーの一つであるシャトー・メルシャンの向かいには、日本初の観光ブドウ園を開設した宮崎光太郎の家で、近代産業遺産となっている宮光園があります。
葡萄畑の中を行く
ぶどう畑にはこの時期はまだ何もありません。ぶどうの木は今頃はようやく芽吹いたところで、5月になると葉っぱが伸びてきて房を付け出し、7月になるとその房が大きくなり袋が被せられます。そして8月か9月になると収穫されるのです。
釈迦堂PAから甲斐駒ヶ岳を望む
葡萄畑の合間を縫ってえっちらおっちらと上って行きます。R20をくぐり、中央自動車道に沿って進むとようやく釈迦堂パーキングエリアに到着します。
ここまでやってくると、良い形をした甲斐駒ヶ岳(2,966m)が見えるようになります。この山はこのあたりでは存在感抜群です。
釈迦堂PAからさらに上る
釈迦堂パーキングエリアで一休みしたら、さらに坂道を上って行きます。ここは距離は短いですが結構きついです。
釈迦堂の桃園
わっせわっせと上って行った先にはこんな桃園があります。一般の桃畑は食用の桃を取るために作られ、当然ながらその畑に立ち入るのは御法度ですが、ここは観賞用の花桃と食用の桃の両方を作っていて、中に入って見てもいいよ、だたし触らないでね。とあります。
ピンク色の花は食用の桃で、真っ赤なのが花桃です。花桃には真っ白な花もあります。
釈迦堂の桃園その2
桃の花のトンネル
この畑のオーナーはなかなか気前が良く、菜の花と桃の花のトンネルも用意してくださっています。ありがとうございます。楽しませていただきました。
釈迦堂から甲府盆地を見下ろす
このあたりの桃畑も満開です。
甲斐駒ヶ岳と桃畑
午後になって南アルプスは逆光になり少し見にくくなってきていますが、甲斐駒ヶ岳だけははっきりくっきりその山容を見せています。
上るマージコ
午後の部の二番目の見どころは一宮町の花見台です。
この花見台は釈迦堂パーキングエリアよりかなり高いところにあるので、しばらくえっちらおっちらしなければなりません。それもただひたすら上るというのではなく、上ったり下ったり、上ったり下ったりを繰り返すので、かなり疲れます。
中央自動車道を下に
中央自動車道がだいぶ下に見えるようになりました。先ほど休憩した釈迦堂パーキングエリアはあのレベルにあるので、かなり上ってきたことがわかります。
菜の花と桃の花の競演
このあたりには細い川が何本か流れています。大石川沿いには菜の花と桃が混植されている畑がありました。
菜の花と桃のコラボレーションは見る分にはきれいで良いのですが、管理が大変そうですね。ところでこうした菜の花はアブラナとして育てられているのでしょうか。混植は作業が煩雑になり効率が悪いので、最近はほとんど見かけないように思うのですが。
一宮町花見台に向かう面々
菜の花と桃の花、そして山の景色は上れば上るほどに目を楽しませてくれるのですが、それとは逆に足の負担は徐々に大きくなっていきます。
一宮町花見台手前の水道タンク
桃畑の中にコンクリート造の円形の水道タンクが見えてきました。これが見え出すと一宮町の花見台まではもうちょっとなのですが、実はここからが結構きついのです。
一宮町花見台
山合いのどん詰まりに一宮町の花見台はあります。
この花見台周辺の桃の花も、ただいま絶好調。
一宮町花見台より
へとへと〜っと辿り着いた花見台の前には白い桜と赤みの強い八重咲きの枝垂桜が咲いていました。
その間を通って花見台に上れば、眼下にピンク色の絨毯が広がります。甲府盆地を埋め尽くす桃の花のこの景色は壮観です。
一宮町花見台から下る
花見台から甲府盆地を見下ろしたら、御坂町の上黒駒地区に向かいます。
一宮町新巻
山ひだをぐるりと廻るようにして進み一宮町の新巻にやってくると、金川の谷が桃の花で埋め尽くされています。これは見事。
上黒駒R137付近
金川を越え上黒駒の集落を突っ切ると、ここの桃もいい感じ。
上黒駒の桃祭り会場
R137を跨いで進めば、道路に車がたくさん駐車しています。そしてカラオケ大会でもやっているのか、賑やかな歌声が聞こえてきます。どうやらここは上黒駒地区の桃祭り会場のようで、わんさか人が集まっていました。
イベント会場のすぐ裏手には菜の花と桃の畑が広がっています。人ごみを避け、ちょっと横の道からその畑の中を登ると、そこら中菜の花と桃の花です。ここの花の密度は凄い。ただカラオケの歌声があまりに賑やかなので早々に退散しました。
花鳥山一本杉公園に向かう長い坂道
上黒駒地区を抜けたら本日の最後の花見場所の花鳥山一本杉公園に向かいます。桃源郷公園には立ち寄らず、山裾に延びる一本道をどんどこ行きます。
桃源郷公園の先からは、見た目には大したことがないような上りの直線道になるのですが、これが意外ときつくてハヒハヒ。
花鳥山一本杉
いったん下って『花鳥山一本杉公園→』の標識に従って枝道に入ると、そこからもちょっとした激坂です。ちょこっとえっこらよっこらすると右手の視界が開け甲府盆地が一望できるところに出ます。下にはリニア実験線が見えています。
その先に花鳥山一本杉公園が見えてきました。この公園は桜でも有名だそうですが、この時それはもうおしまいでした。しかし奥に杉の巨木があるというので覗いてみました。高さ25m、幹廻りは8mという立派な木です。元々は二本の木だったようですが、癒着して一本になったようです。幹の中は空洞のようですが今なお元気で、葉が生い茂っています。
花鳥山一本杉公園前からリニア実験線を見る
この公園の前からの景色もなかなかです。
リニアカーはこの日は見ることができませんでしたが、伸びやかな甲府盆地が一望にできます。
みさかの湯付近の桃畑
さて、花鳥山一本杉公園で本日の花見は終了。ここからは笛吹川に下ります。
低地の桃は葉が出てもう見頃は過ぎていると思ったのですが、どうしてどうして、まだまだ見られる状態でした。
みさかの湯
4月に入ってだいぶ日が伸びてきたので、このあとは温泉に浸かってから一杯というコースです。笛吹市には安価に入れる温泉が三カ所あるのですが、今回はその中の『みさかの湯』です。
プハ〜 といい気持ち。
笛吹川沿いを行く
みさかの湯からはちょこっと笛吹川沿いを行き、石和温泉駅で上がりです。石和温泉のまちに入ったら、来週からまた中国出張だというシロスキーを、日本の中華料理の方が旨いよと、紹興酒と中華料理攻めに。
ここまで万事順調に進んだのですが、なんと最後にアクシデントが。宴会場は駅から数百メートル離れたところだったのですが、電車の時間が迫ってきて、シロスキーとシュンシュンが先に駅に向かいました。用を済ませたマージコとサイダーが急ぎそのあとを追い駅に到着するも、二人の姿なし。連絡してみるとどこかで道に迷ったといいます。え〜、なんで〜〜 迷うところはないはずなのに!
まあそれはともかく、この桃源郷、桃の花の時期はとにかくすばらしいの一言に尽きます。