今年の紅葉狩りは台風の影響やその他もろもろの事情でできなかったので、久しぶりに都心で楽しむことにしました。紅葉狩りには遅すぎると思える時期ですが、今年の紅葉は例年より10日ほど遅く、都心ではまだ見ごろが続いています。いえ、色付きとしては今がピークかもしれません。
この企画は前日開催の予定でしたが、雨雪予報で1日遅らせての開催となり、参加者はちょっと少ないチコ、サリーナ、サイダーの三名。しかし、お天気は気温こそ高くないものの無風の快晴で、絶好のポタリング日和となりました。
東京駅丸の内側と皇居を結ぶ行幸通りの中央はとても広い遊歩道で、その両側はイチョウ並木です。
駅前は超高層ビルの影で遊歩道に陽が当たりませんが、少し進むとその影を脱し、いい光で黄色い並木が現れます。
少し葉を落としていますが、ここはもうちょっとの間、黄葉が楽しめそうです。
行幸通りの突き当たりは皇居です。この日は大嘗祭の舞台である皇居東御苑に建てられた大嘗宮の公開の最終日とあり、周辺の道路に通行規制が敷かれています。
そのため皇居側を行くことができず反対側の歩道を大手門まで進み、そこからお堀側に移りました。この歩道には寒椿が赤い花を咲かせ、桜の木は僅かに残った赤い葉っぱを着けています。
竹橋を通り過ぎ、乾門から北の丸公園に入ります。この公園は皇居のすぐ北側にあり、その名の通りにかつては江戸城の一部でした。現在もお堀の内側に位置し、一角には科学技術館や武道館といった施設があります。
公園内には様々な木があり、どれもこれもなかなかいい色になっています。
科学技術館前に出ました。ここには見応えのあるイチョウの木があります。
順光で輝くこのイチョウは、相変わらず立派です。
科学技術館前のイチョウを眺めたら、いよいよ北の丸公園の心部に踏み入ります。
まだ緑色を残すイチョウもあれば、今が盛期の赤い葉の木、そして赤くならずに茶色くなってしまった木と、ここには様々な木々があります。
芝生広場と池を通り越すと、モミジ山と呼ばれるところに出ます。
ここのモミジは都心では一番でしょう。
地面いっぱいに敷き詰められた赤い落ち葉。
その上は真っ赤なモミジ。
そしてオレンジ色から赤に移ろうとするモミジ。
黄色いモミジも。
中には小さなせせらぎがあります。
ここはうす緑色からオレンジ色までのグラデーションが素晴らしい。
まだ黄色を残しつつも盛期となったオレンジ色が美しいです。
こうして見ると、黄色もいいですね。
モミジ山でたっぷり紅葉を楽しんだら、武道館に向かいます。
武道館の前はイチョウ並木です。
ここには特大イチョウが一本ありますが、その他の木々も立派。
木によってはまだ緑色のところもありますが、ここは黄葉の盛期といっていいでしょう。
武道館から北に向かえば田安門があります。
ここまでが江戸城だったわけですね。
田安門の先でお堀を渡ると、その向こう側には靖国神社があります。
靖国神社は気象庁が指定した東京の桜の標本木があることで知られますが、その参道は桜ではなくイチョウ並木です。これも立派!
靖国神社からは千鳥ヶ淵沿いに入ります。
ケヤキは紅葉する時期が早いのでもうおしまいです。もっとも今年のケヤキは赤くならずに茶色くなってしまったものが多いですね。
桜はなんとか赤くなった最後の葉っぱをかろうじて残しています。
千鳥ヶ淵には遊歩道がありますが、これは歩行者専用なので自転車を押して少し歩いてみました。
遠くに見える高木はアケボノスギ(メタセコイア)でしょうか。この時期、お堀周辺は全体にうっすらとした赤に見えます。
千鳥ヶ淵から半蔵濠、桜田濠と進みます。
この並木はユリノキです。大きい!
国会議事堂前にやってきました。
広い通りの両側はイチョウ並木ですが、今年の色付きは今ひとつです。もう少し経つと良くなるでしょうか。
この通りの北側の国会前庭には日本水準原点があります。
日本水準原点は日本の標高の基準となる東京湾の平均海面を地上に固定するために設置されたものです。この基準点の高さは地震で変わってしまうことがあり、関東大震災や先の東日本大震災のあとには改正が施されています。現在の日本水準原点の標高は24.3900mになっています。
日本水準原点は写真のローマ風の神殿様式の日本水準原点標庫の中にあります。建物下部にある金属製の扉を開けると中に水準原点を示す水晶の板があり、それに目盛りが刻まれています。ここは年に一度、測量の日(6月3日)の付近に公開されます。この周辺には水準原点のチェックに使われる一等水準点が五つあります。なんとその蓋には甲・乙・丙・丁・戊と書かれています。
ちなみに日本経緯度原点というのも都内にありますよ! 興味ある方はどうぞ行ってみてください。
地理の勉強が済んだら国会議事堂を廻るようにして進み、
赤坂見附の交差点から北へ向かいます。すると高層ビル群の中に清水谷公園の目の覚めるような紅葉が目に飛び込んできます。
このあたりは紀尾井町です。紀尾井町の紀・尾・井は、紀伊、尾張、井伊を意味します。ここには江戸時代には紀州徳川家、尾張徳川家、井伊家の屋敷があったのです。この清水谷公園は紀州徳川家の屋敷だったようで、清水が沸き出ていたことから付近は『清水谷』と呼ばれていたそうです。
明治維新の元勲、大久保利通はこの近くに居を構え、このあたりで暗殺されました。
そのためか、公園内には大久保利通哀悼碑が立っています。
公園の奥に珍しいものを発見。江戸時代に整備された玉川上水の石枡です。
玉川上水は羽村から四谷大木戸まで開渠で導水されましたが、それ以降、江戸市中には石樋や木樋によって暗渠で配水されたのです。この石枡はその本管の一部で、四段に積まれていたそうです。右側が下部の二段で左側が上部の二段でしょうか。四角い穴は木樋の挿入口のようです。
清水谷公園にあった湧水は枯れてしまい、現在は人工的に造られた池があります。
その池の畔にはこんな真っ赤なモミジが。
清水谷公園の向かいは1964年開業のホテルニューオオタニです。このホテルは東京オリンピックのために建設されました。江戸時代は井伊家中屋敷であり、そののち伏見宮邸となったところに建てられました。
この入口にはガス灯が立っています。これは開業25周年を記念して、1989年(平成元年)に東京ガスから寄贈されたものです。都内には僅かですがガス灯があることはありますが、これはなんと9灯式で、それらの中でもっとも豪華です。夜、ほのかなボーッとした明かりが見られます。
ホテルニューオオタニからは上智大学の横、お堀端を進みます。
ここは桜並木ですが、残念ながらもうほとんど葉っぱを落としてしまっています。
イグナチオ教会の前の堤の桜はかろうじて赤い葉っぱを残しています。四谷駅の前に出ました。ここに架かるのはレトロな雰囲気の四谷見附橋です。この橋は大正時代に架けられましたが、1991年(平成3年)に架け替えられました。しかし高欄と橋灯は大正時代のものが残されました。
この橋灯をよく見てください。れれれ、これどこかで見たような。そうなんです。ホテルニューオオタニのガス灯にそっくり、というか、ほぼ同じです。違うのはグローブが透明か乳白色かということと、紋章などの細かいディテイルです。ホテルニューオオタニのガス灯のオリジナルはこれなのではないでしょうか。
大正時代の四谷見附橋は多摩ニュータウンの長池公園に移築されています。その長池見附橋の高欄と橋灯はオリジナルを忠実に復元し新規に制作されました。ホテルニューオオタニにガス灯が寄贈された年と長池見附橋が架けられた年は近いので、この両者には何らかの関係があるのかもしれません。
四谷駅から外堀通りを行きます。外堀通りはユリノキの並木ですが、これはほとんど葉っぱが落ちてしまっています。
赤坂迎賓館前に出ました。かつては閉じられていた門が開いています。ここは数年前から通年で一般公開されるようになり、当日受付も可能となったのです。ご覧になったことのない方は一度見学されてもいいかも。さながら日本のベルサイユ宮殿といったところです。
赤坂迎賓館から赤坂御所の脇を通って明治神宮外苑に向かいます。
このあと街路樹はユリノキからトチノキに変わりますが、あのカサコソ音を立てる大きな葉っぱはすでに茶色でした。
安鎮坂を下って上って、明治神宮外苑の権田原交差点に到着。ここでチコが合流。
明治神宮外苑といえばイチョウです。その例に漏れず、ここもイチョウ並木。今年のイチョウの紅葉はとても遅く、まだ青っぽい木も見受けられます。
権田原からは外苑東通りを南下。ここの街路樹は大きなユリノキですが、これはおしまい。葉っぱはほとんど残っていません。
しかし進行方向左手の御所の側からは、目の覚めるような鮮やかな赤のモミジが顔を出しています。
外苑東通りから青山霊園の中へ。
足下のドウダンツツジはいい色。上の桜並木もまだなんとかがんばっています。時々赤いモミジも。
明治神宮外苑のイチョウ並木にやってきました。ここは紅葉シーズンには必ずマスコミに取り上げられるところですが、今年の色合いは今ひとつ冴えません。それでも絵画館を消失点にするこの遠近法的な絵は、やはり魅力的です。
ところでこのイチョウの姿、頂部がやたらに細くありませんか。サリーナが刈り込みでもしてるんだろうか、と言うのですが、どうなんでしょう。
ここでチコとサリーナは妙なポーズを。ウルトラマンのスペシウム光線?
この日、ここではマラソン大会が行われていました。
イチョウを眺めながら走れて気持ちよさそう。
明治神宮外苑に隣接して国立競技場があります。
この施設は設計の国際コンペティションからすったもんだしましたが、建築はなんとか完成したようです。現在は付帯設備などの工事が行われています。
その国立競技場を横目に進むと、千駄ヶ谷の駅前です。ここもイチョウ並木。この並木は明治神宮の北参道まで1kmほど続きます。
ここは日当りのせいか、外苑のイチョウ並木より色鮮やかなものが多かったです。
JR山手線の高架をくぐり抜けたら、明治神宮の北参道に入ります。
明治神宮に参拝される方の多くは表参道の原宿側からアプローチしますが、そちらは神社の中はともかくとして、入口付近はいつでもとても混雑しています。一方、こちらの北参道側はとてもひっそりとしています。
明治神宮には23区で最大級の森があります。原生林ではないかもしれませんが、おそらくそれに近いものでしょう。
私たちはこの一角が大好きです。
その場所は秘密にしておきたいところですが、まあここで明かしてもそう差し障りもないでしょう。それは神宮の裏手にある宝物館のあたりです。
このアプローチは前の写真のような深い森で、本当にここが都心かと思われるようなところです。そして意外にもこのアプローチは短くて、すぐに池の前に出ることができます。
池の付近にはこんな黄葉が。
そして宝物館の前の芝生広場。ここにはいつもほんの数組しかいません。好きなところに陣取ってゴロゴロ。
この日は快晴で暖か。ああ〜、快楽〜〜
神宮の南にも庭はありますが、あっちはお庭です。ここみたいにゴロゴロできませんからね。
さて、明治神宮でゴロゴロしたら次はそのすぐ隣にある代々木公園です。
代々木公園は都内では知らない人がいないくらいメジャーな公園で、いつでも人がいっぱい。隣同士なのに先の明治神宮の芝生広場との人口密度の差といったら驚くばかりです。
普段はあまり近づかない公園ですが、この時期、ここのモミジはなかなか見応えがあるので、今回もコースに加えました。
公園の中のサイクリングコースを行くと、ありました、モミジゾーンが。
どうです。満開〜〜
ここはちょっとくすんでいますが、それも味です。
モミジはやっぱり紅葉の王様ですね。
時は12時半を回っており小腹が空いたので、噴水のところに出ていた団子やさんで、きな粉団子を。
さて、代々木公園を出たら表参道を行きます。
ここはケヤキ並木で有名ですが、車が多く、自転車ではちょっと走りにくいのが難です。そしてこの時期、そのケヤキは最後の残照といったところ。
表参道の交差点を過ぎると並木はケヤキからエンジュに変わりますが、この木はまだ緑色です。
南青山まで下ったら乃木坂へ向かいます。青山霊園付近をもう一度通りますが、ここは桜がいい感じ。
そしてイチョウも。
乃木坂で方向転換してやってきたのは東京ミッドタウン。ここは江戸時代は萩藩毛利家の下屋敷で、明治以降は陸軍、さらに戦後の米軍の施設を経て、20世紀の末まで防衛庁の庁舎が立っていました。
巨大な再開発には常に賛否がありますが、広い公開空地が確保されることは大きな魅力であることは確かです。ここにはイチョウの大木がありますが、剪定のためかあまり葉っぱは多くありません。
奥に進むとこんな並木があります。この樹種はなんでしょう。ケヤキのようにも見えますが、普通ケヤキはもっと枝を広げますね。
下の方にカップのような形状に柵が巡らされていますが、これはイルミネーション用だそうです。そういえばもうすぐクリスマスですね。
東京ミッドタウンの裏手にある檜町公園を抜け、赤坂に下って来ました。すると狭い道の正面にバンと大イチョウが。
このイチョウの木はそれなりに見応えがありますが、立っているロケーションがあまり良くないのが残念です。
この木の下で『勝海舟・坂本龍馬の師弟像』を発見。ここは勝海舟が明治5年(1872年)から亡くなるまで住んだところだそうです。
海舟の旧宅跡はこのすぐ近くの氷川坂下にもあります。そちらは安政6年(1859年)から明治元年(1868年)まで住んだところだそうです。龍馬が松平春嶽の紹介により海舟に面会し、弟子入りを志願したと伝えられるのはこの氷川坂下の方です。
外堀通りに出て、溜池山王から首相官邸の西側を行きます。
首相官邸の人工の庭は通りから見えて○。いい色付きです。
さて、今朝通った国会議事堂付近に戻ってきました。
このあたりはどこも立派なイチョウ並木です。
霞ヶ関の官庁街を下り、先にこんな見事なイチョウの木が現れると、そこが本日の終着地の日比谷公園です。
公園の中のモミジは逆光を受けて絶好調。
そして今日の上がりはいつもの松本楼です。
この庭先にはイチョウの巨木がありますが、それは今年も健在でした。
遅めのランチはオムライス。サイダーはハヤシソース、チコとサリーナは好みの二食ソースで。これ、味はもちろんボリュームもたっぷりの、間違いのない一品です。
今年の紅葉はどこで見ても冴えませんでした。この都心も例年に比べれば鮮やかさが足りないように見えました。しかし、それでもそれなりに楽しむことができました。年に一度の紅葉をこうして気軽に楽しめ、移り行く季節を感じられるのは、やはり素晴らしいことです。