大洗に鮟鱇を食べに行く企画の一案として、初級者でもなんとか走れそうな少し長めの120kmコースを作ってみたのですが、これは長過ぎるとあえなく没に。そこでそのコースを走ってみることにしました。
この方面は都心を脱出するまで30kmほど走らなければならないので、初級者にはちょっと辛い。そこでJR常磐線の北柏駅まで輪行としました。上野方面からの快速電車は一つ手前の柏駅に停車するので、乗り換えが面倒だという方は柏駅出発でもいいかもしれません。
北柏駅の南口を出てr268を500mほど南西に行くと、手賀沼に流れ込む大堀川に出ます。
この川沿いには自転車道が整備されています。
左岸を下れば北柏ふるさと公園に出、右岸を下れば手賀沼南岸の手賀沼自転車道に繋がります。
今回は右岸に入りました。
左手を流れていた大堀川が芦原の向こう側に遠ざかると、そこからが手賀沼です。
大堀川沿いの自転車道はそのまま何の障害もなく、手賀沼沿いに入って行きます。
道が右に緩くカーブすると、先に手賀沼が広がっているのが見えてきます。
地図で見るとそんなに大きくは見えない手賀沼ですが、こうして見ると、なかなか雄大です。
と言うより、対岸の様子もわかり、スケール感が丁度良い。
手賀沼に細い大津川が流れ込むちょっと手前にパーゴラとベンチが見えたので、ここで今日のルートを確認しました。
このパーゴラは藤棚になっているので、春にはきれいな花が下がるでしょう。
藤棚を後にすると、北には手賀沼の向こうに我孫子のまちが見えます。
手賀沼でも一際広いところに出ました。ここは手賀沼の一般的なところの幅の倍くらいあるので、とても広く感じます。
鵜が一羽、棒切れの先に羽根を広げて留っていました。シャッターを切った時には閉じてしまいましたが、どこかで見た絵のような姿でした。
このもっとも幅が広いところを通り過ぎると手賀曙橋で、ここで手賀沼は終わり、車道を渡ります。
手賀曙橋から先は手賀川です。この手賀川沿いにもずっと自転車道は延びていますが、舗装の程度が少し落ちます。
土手下には車道が通り、その先に用水路、そして田んぼが連なっています。
その田んぼの向こう側はこんもりした丘で、その中に谷津が入り込んでいるのが見えます。
右岸の自転車道は下手賀沼から流れて来る川で途切れるので、どこかで左岸に渡ろうと思っていたのですがうっかりしていて、その川の合流点まで来てしまいました。
しかし発作橋を渡るとすぐに自転車道になるので、これはあまり問題ではありませんでした。
その発作橋の上にはユリカモメがずら〜り。
手賀川に戻ると、川面に白鳥が浮かんでいます。
ゆったりと進む白鳥は、いつでもほんわかした気分にさせてくれますね。
関枠橋を渡って左岸に移るとすぐ、JR成田線の橋梁が現れます。
手賀川の自転車道はここまでで、この先は現在工事中である旨の標識が出ていました。
一般道に入りR356に出ると、そのすぐ先に利根川が流れています。手賀川はここで利根川に合流しておしまい。
この先は日本で二番目の長さを持つ利根川に沿って延びる利根川自転車道です。
坂東太郎の異名を持つ利根川は、古くは現在の荒川の流路を通り東京湾に注いでいましたが、江戸時代の利根川東遷事業により、銚子を河口とするほぼ現在の流路に変えられました。
逆にこのあたりを流れ、銚子に注いでいたのは鬼怒川でした。その鬼怒川は現在は守谷で利根川に合流し、利根川の支流となっています。
穏やかな蛇行を繰り返しながら利根川は銚子方面に流れて行きます。
先に大きな水門が現れました。印旛沼から流れて来る長門川の印旛水門です。
印旛水門を過ぎて最初に見えて来る橋が赤い三連アーチの長豊橋です。
どこかで利根川の左岸に渡らなければならないので、とりあえずこの橋を使ってみることに。
今回のルートは実行の予定がながったので、詳細は詰めておらず、どの橋を渡るのが最適かは検討していなかったのですが、この長豊橋には歩道がなく、路肩も狭いので自転車向きではありませんでした。
調べてみるとこれより下流の常陸大橋には両側に歩道があり、さらに下流の神崎大橋には独立した歩道があるので、これらを使うべきでした。
長豊橋から利根川を眺めてみると、さすがに坂東太郎だけあり、かなり幅があります。
しかもこの日は川面にはさざ波一つなく、まるで鏡のようでした。
左岸に移ってさらに自転車道で下流に向かうと、向こう岸に根木名川の久沼水門が見えます。
利根川の自転車道には特に休憩に適当なポイントがないので、ここで小休止。空には次から次に旅客機が飛んで来ます。ここは成田空港が近いのです。
このあたりの河川敷には黒牛が繋がれていました。
先ほど利根川左岸に渡ってきたので、ここは茨城県。この牛さんは常陸牛でしょうか。
川面に一艘の小さな舟が浮かんでいます。
近くに魚網が見えるので、なにか漁をしているのでしょう。
川の中に小さな木杭がたくさん並んでいます。ここには水鳥がたくさん。
自転車の音に驚いたようで、何十羽かの鴨が一斉にザワワ〜っと沖に移動して行きました。
そろそろ利根川を離れ、霞ヶ浦に向かわねばなりません。
利根川は少しづつその幅を広げているようで、このあたりは気持ち良いくらいに広々としています。先の千葉県側は香取あたりか、低い丘が連なっています。
走り出して50kmになろうというところ、稲敷市の結佐あたりで利根川自転車道を降り、下の田んぼの中へ。
田んぼ道をどんどこ行って霞ヶ浦に出る直前で小さな水路に出たのですが、その先は水溜まりのダート。これを回避しようと北に進むも、次の道も同じ。もう一本回避しようかどうしようか迷ったのですが、次も同じかもしれないのでこの道を行くことに。
結果、自転車は泥んこに。
なんとかR51に出て常陸利根川の北利根橋を渡ります。
この北利根橋は霞ヶ浦の出口から数百m下流に架かっており、まだはっきりとは霞ヶ浦の広がりは認識できません。
R51を降り、常陸利根川の畔にやってきました。
今日はここまで、大堀川、手賀沼、手賀川、利根川と辿ってきたので、この常陸利根川が四番目の水辺です。
この南東は潮来市牛堀です。このあたりで葛飾北斎は富嶽三十六景の第19景『常州牛堀』を描いています。これは富嶽三十六景の中でもっとも東、かつ富士山からもっとも遠い地点から描かれたもので、小屋が架けられたかなり大きな荷船から、船頭が朝飯の仕度でコメのとぎ汁を船外に流しているのが見えます。その音に驚いて飛び立つ二羽の白鷺。
この日は残念ながらここから富士山は見えませんでした。
北を見れば、すぐそこに日本で二番目に広い湖である霞ヶ浦が広がっているのがわかります。
霞ヶ浦の湖岸にも自転車道があります。ここからはこの自転車道を北上します。
今日はここまでほとんど風はなかったのですが、ここに来て風を感じ始めました。周囲に何もない水辺なので、特に風が強くなります。この時期は大抵北風なので向かい風です。このあと強くならないといいのですが。
2kmほど行ったところにちょっとしたベンチと自販機があったので一休み。岸辺には水鳥が浮かんでいます。
さらに2〜3kmほど進むと、松が植えられた天王崎公園があります。
ここには東屋とベンチがあるので休憩するには良さそうですが、自販機はないようです。
霞ヶ浦の陸の近くには人工の岩礁帯とでも言うべきものがあちこちにあります。
これは漁業関係の何かだと推測しますが、具体的な目的はわかりませんでした。何のために造られたのでしょうね。
霞ヶ浦の自転車道は自転車専用ではなく、車も通れます。まあ、釣りに行く人と地元の方が時折通る程度ですが。
ほとんどのところは車がやっとすれ違える程度の幅員なので、車道と自転車道の区分けはありませんが、ちょっと幅員が広いところは、こんなふうに自転車道が車道と区分けされています。
ところがこの区分けされたゾーンが不連続なものだから、ちょっと走り難いです。
遠方に白い塔が見え出しました。あれはR354沿いにある霞ヶ浦ふれあいランドの展望塔である虹の塔です。
この写真では判然としませんが、先にはうっすらと筑波山の姿があります。広々とした霞ヶ浦と筑波山の眺めは、雄大な関東平野を象徴する景色の一つです。
虹の塔が近づいてきました。これまでずっと自転車道を走ってきたので、ルート上には食事ができるところはありませんでした。そろそろ食事をしておくべき時刻です。
虹の塔の東に巨大施設が集まったゾーンがあるので、その一角で昼食にしました。
昼食後もしばらく湖畔の自転車道を行きます。
レンコンは茨城県で全国の80%が生産されているそうで、特に霞ヶ浦周辺でその栽培が盛んです。そのためこの辺りにはたくさんレンコン畑があります。レンコンは蓮の地下茎ですから水の中で栽培されます。畑というより田んぼのように見えますね。
レンコン畑を横目にどんどこ。筑波山はまだはっきりとは見えません。
湖面は、小さな堤防で遮られたゾーンは波がなく雲を映していますが、沖合は細かい波があるようで、空は映っていません。相変わらず少し風があります。
行方市の羽生にやってきました。そろそろ霞ヶ浦を離脱しなければなりません。
R355に出る道があったので、そこの湖畔で休憩。北西にはようやく筑波山が写真に写る程度に見えるようになりました。
霞ヶ浦を離脱したらr360大和田羽生線に入ります。しばらくはこの県道をどんどこ行きます。
私たちはポタリングの時はできるだけ県道は避けているのですが、この日はある程度距離を走らなければならないので、こういった道を使うのもやむをえません。しかしこの道、田舎の県道だけありトラックはたまに通りますが、交通量は大したことないので心配には及びません。
そのr360ですが、霞ヶ浦からはまず丘の上に出なければならないので、ちょっとした上りから始まります。これは標高差にして20〜30mといったところなので、初級者でもまったく問題ありません。
丘の上に上れば、畑、林、谷津田といったものが繰り返し現れるようになります。
茨城空港を横目に見て、その先で県道を離脱し、旧道らしき道に入ります。
鉾田市紅葉には立派な塀で囲まれた民家が並んでいました。
その後は針葉樹林を抜け、
耕されて種まきの準備が整った畑を突っ切り、
谷津に入りました。
谷津はいつでも低いところと相場は決まっていて、そこから脱出する時は大抵上りです。
それもこんな。(笑)
上った先には畑が広がっていました。手前のそれはすでに収穫を終え、次のシーズンを待っています。その向こう側にはビニールで覆われた畝が見えます。
この畑の先で道はドーンと落っこちて行きます。
標高差20mほど落ちると、そこには涸沼川沿いの田んぼが広がっていました。
この田んぼに適当に入ったら、そこは砂利道でした。。しかしこれはすぐに舗装路に。
田んぼの中を進んで涸沼川を渡ります。涸沼川はこのすぐ東で涸沼に流れ込み、さらに那珂川に合流し、那珂川は大洗で太平洋に注ぎます。
当初企画はここから涸沼を経由して大洗までで、あと15km。総距離はちょうど120kmになります。その大洗までは自転車道があるのですが、今回は水戸方面に目的地を変えたのでこれは使いません。
西を見れば、うっすらと筑波山が見えています。
筑波山は360°どこからでも望められる良い山です。
さて、涸沼川まで下ってしまったので、ここからは河岸段丘を上らなければなりません。
この河岸段丘はどこを上ってもそれなりにきついですが、やはり標高差は20mほどしかないので、エイ・ヤ〜っと行きます。
こんもりした木立の中に小さな天神社が見えてきました。ここまで来ると水戸駅までは10kmほどで、こちらの総距離も大洗同様、120kmになります。
さて、今日はほとんどフラットなコースでした。筑波山があまり良く見えなかったのが残念ですが、景色は雄大でとてもきれいです。しかし上級者には少々変化に乏しく、もう少しパンチが欲しいと感じられるかもしれません。一方、まだハードな山坂に慣れていない初級者には、平坦であることと100km少々という距離が、ロングライドに挑戦するのに魅力的であるかもしれません。
水辺に広い空がどこまでも続く世界は、なかなか経験し難いものだと思います。ここで雄大な関東平野の片鱗を感じていただけたら、うれしいです。