今年の梅雨は大雨。東京の7月は雨が降らなかった日はたったの一日だけしかなかったそうです。各地で連続降雨日の記録が塗り替えられたり、球磨川や最上川の氾濫で熊本県や山形県が大きな被害を受けました。その長かった梅雨もどうやら明けそうです。ということで、一月半ぶりにポタリングに出かけます。
ところが、未明に目覚めると豪雨! え〜〜〜〜! しばらく天気予報と雨雲レーダーとにらめっこをしていると、だんだん状況が良くなってきました。9時まで雨が残る予想が、8時に早まりました。集合時刻を一時間遅くするかどうしようか散々迷ったあげく、なんとかなるか〜、といつもの調子で、結局予定のまま決行することに。
6時、雨はほぼ上がったようです。空は雲で覆われていますが、うっすら陽の光を感じます。7時、お日様が出てきました。よし、行くぞ!
長く身体をうごかしていないので、今日は軽めのコースです。そしてこの時期は暑くなることが予想されたので、少し涼しいところということで、水辺を選択。黒目川とその支流の落合川の周辺には湧水がたくさんあるので、ちょっとパチャパチャやって涼めそうです。
やってきたのは埼玉県の朝霞水門。ここは荒川サイクリングロードが通っているのでみんな知っているものと思いましたが、意外にもみんな、『え〜、それどこ?』ってことらしかったです。
朝霞水門は新河岸川の流れをコントロールし、荒川に流す水門です。出発点をここにした理由は、今日訪れる川はみんな新河岸川の支流で、その新河岸川は荒川水系なのでね。
今朝まで雨だったので新河岸川の水はかなり濁っており、いつもより早いスピードで朝霞水門を通り抜け、荒川に流れ込んでいます。
朝霞水門から西を見れば、新河岸川に内間木橋(手前)と朝霞大橋が架かっているのが見えます。
お天気は絶好調になりました。しかしその分、暑くなりそう。
朝霞水門からは新河岸川と黒目川の落合を目指します。まずは内間木橋へ、と思ったら、この橋は撤去工事が始められたらしく、通行止めでした。仕方がないので隣の巨大な朝霞大橋で新河岸川を渡ります。
朝霞大橋はその西側を通ると新河岸川と黒目川の落合が良く見えたのですが、うっかり東側に入ってしまいました。
しかし東側からは、集合地点の朝霞水門と彩湖を跨ぐ幸魂大橋が見えます。
朝霞大橋を渡ったら、下の道を橋に戻るように進み、新河岸川の土手に上ります。
この土手はご覧の通りの地道です。夏場なので草が心配でしたがここはきれいに刈り取られています。
土手を西へ進んで行くとすぐに、新河岸川と黒目川の落合に出ます。
ちょうど木の陰になっているのでよく見えませんが、右手が合流後の新河岸川で、木の左にちょっとだけ黒目川が見えます。新河岸川はその向こう側から流れてきています。
新河岸川の土手道の先は草茫茫となり、とても進める状況ではなかったので、戻って舗装路を行きます。
東通り(あづまどおり)の東橋で黒目川沿いに出ました。先頭はビジター初参加のリッちゃん。かっこいいロードバイクで颯爽と行きます。
黒目川は延長17kmほどの短い流れで、このあたりの護岸はコンクリートではなく草で覆われていて、まずまずの姿をしています。川面に近づければもっといいのですがね。
先に朝霞秋ヶ瀬通りの笹橋が見えてきました。
ここでいったん黒目川から離れ、旧高橋家住宅に向かいます。柊塚古墳の横を通って、ちょっと坂を上ると、住宅地の向こうにこんもりした森が見えます。それが旧高橋家住宅の屋敷林です。この森の南側に廻り込むようにして進むと、大きな木々を背にして茅葺き屋根の立派な建物が立っているのが見えます。
旧高橋家住宅は江戸時代中期、18世紀前半の農家だそう。
保存建築物の多くはそれが立っていた場所から移築されて保存されることが多いのですが、この建物は元の場所に保存されており、森も畑もみんな残っているのがすばらしいです。
旧高橋家住宅の主屋前に並んだのは、左から、買ったばかりのロードバイクで登場のムカエル、企て人サイダー、赤服アンドレ、ビジター初参加のリッちゃん、最遠方からクロスバイクでやってきたシュンシュン。
この建物が比較的新しい一般的な農家建築と異なるのは、南面に縁側がある全解放型ではなく、壁が多く、開口部も腰窓で、さらにその窓に木製の格子が嵌められていることでしょう。
この格子は『シシマド』というもので、野生の動物などが入って来られないようにするためのもので、様式的には江戸時代より古い中世のものだそう。
黒光りするザシキの床板。土間の側に設えられた囲炉裏。
このザシキには『オシイタ(押板)』という床の間の前身のようなものがあります。
ボランティアの方が裏手にキツネノカミソリが咲いていると教えてくださいました。
キツネノカミソリはヒガンバナ科の植物だそう。ヒガンバナがお彼岸の頃に花を咲かせるのに対し、このキツネノカミソリはお盆の頃に咲くのだそうです。最近はそれも早まっているのか、この時期、花はすでに終盤でした。
旧高橋家住宅からは城山公園の森をかすめ、城山通りの花ノ木橋から黒目川の土手上を行きます。
この土手上は砂利道ですが、かなり良く締まっているので、ロードバイクでもなんとか進んで行きます。
先にちょっと変わった形の橋が見えてきました。浜崎黒目橋です。
この橋は朝霞台駅および北朝霞駅から東武東上線に沿って南東に進むと出るところなので、二次待ち合わせ場所にしていたのですが、この日はここに来るものはいません。
東武東上線の線路をくぐり抜けると桜並木で、春先にはきれいな桜が見られます。しかしその足下は今朝までの雨でかなりグチョグチョで、ロードバイクのリッちゃんは少し苦戦しているようでした。
東林橋に出たら対岸に移動します。この先の左岸の土手上は一応舗装されているので。
二本松通りの新高橋が近づくと黒目川の河川敷が広がり、そこにテントを張ったりして大勢の人が川遊びをしています。
東京都内では川に入ることはまず想像できませんが、この川はかなりきれいだということですね。
その少し上流では渓流釣りを楽しむ人もいます。
今頃は何が釣れるのでしょう。
先に新座市営墓園の森が見えてきました。
あの中にもキツネノカミソリが咲いているようなのですが、これは先ほど旧高橋家住宅で見たので、今回はパスします。
黒目川は相変わらずの調子で流れていますが、ここは道脇に見苦しいネットフェンスが張り巡らされているのがいただけません。
市場坂通りに出るとそこには市場坂橋が架かっています。
この橋は、上りと下りのそれぞれの側に斜張橋がある、珍しい造りです。
市場坂橋のすぐ南には平成の名水百選に選定されており、特別緑地保全地区となっている妙音沢(みょうおんざわ)があるので立ち寄ってみます。
黒目川の右岸に渡り、森の中に向かいます。
森の入口に立つと木製のデッキがあり、それが奥に続いています。
このデッキの足下に、きれいな水が流れていました。
これが湧水です。水が流れてくる方に向かって進んで行くとすぐ、木々の根元あたりから水が湧き出ているところに突き当たりました。湧水の原点といったところです。
足を浸してみるとかなり冷たく、すでに気温がかなり上がってきているので、生き返った気分になります。
静かな森の中をさらに奥へ行くと、先ほどとは異なる流れが現れます。
水量はもの凄く多いというわけではないですが、はっきりとした水の流れがあり、すぐ先でその湧水点に辿り着きました。湧水点は一箇所ではなく、あちこちにあり、どちらかというと線状に分布してあるという感じです。
湧水点から流れに沿って下って行くと、森の出口で子供たちが水遊びをしていました。この清らかな流れが、先ほどの湧水点から湧き出た水です。
そしてこれはこのあと黒目川に流れ込みます。黒目川がきれいなのは、生活排水が流れ込まないという以外に、こうした湧水が豊富であることがその理由としてあげられるのでしょう。
青い草に真っ青な空、その下を流れる黒目川。白い雲は完全に夏の景色。見沼橋のところで昼食をとっている時に天気予報を確認すると、気象庁が梅雨明けを発表したとありました。長かった梅雨がついに明けたのです。
さて、さらに黒目川を遡って行くと、神宝大橋の先で落合川が合流するのですが、うっかり写真を撮るのを失念。この二つの川はどちらもそう大きくない流れなので、この合流点はさらっと通り過ぎてしまいました。
ここからは落合川沿いです。
西武池袋線の線路をくぐったところで川の中を覗いてみると、水草がたくさん。
落合川の周辺にも湧水ポイントがあります。
ここでその一つの竹林公園に向かいます。
竹林は田舎に行けばどこにでもありますが、今となってはこのあたりでそれを目にすることはまずありません。
しかもここは6,000m2の敷地に2,000本もの孟宗竹が生えているといいます。
京都嵐山の竹林を思わせるここは、ちょっとした見どころです。
この竹林の奥にはせせらぎが流れ、やはり湧水点が見られます。
ここは『東京の名湧水57選』に選定されています。
パチャパチャすれば涼しくていいのですが、ヤブ蚊の攻撃にあい、即座に退散。虫除けスプレー、忘れた〜〜
竹林を楽しんだら落合川に戻ります。
落合川には遊歩道が設えられおり、これはまたサイクリングロードでもあるようです。
川の中から楽しそうな声が聞こえてきます。
ここは『落合川いこいの水辺』で、親水ゾーンのようです。子供も大人も川の中でジャブジャブ。楽しそう!
午後になってから空には雲が広がっていますが、気温はかなり高いです。
南沢通りの毘沙門橋が近づくと、そこには小さな滝が落ちていて、浮き輪やボートで遊ぶ子供たちの姿がありました。
毘沙門橋を過ぎると南沢氷川神社の前に出ます。
南沢氷川神社は、場所からなんとなく想像していたものよりだいぶ立派でした。
南沢氷川神社の南は南沢緑地で、ここも『落合川と南沢湧水群』として平成の名水百選に選定されています。
雑木林など25,000m2の緑地の中には落合川の支流が流れ、湧水点が4箇所あるそうです。
この時は蚊が多かったのでここの湧水点には行きませんでしたが、小さな滝が落ちるせせらぎは心を解放してくれるような心地よさです。
南沢緑地を出て落合川の上流端まで進んだら、黒目川にシフトします。
新宮前通りの下里氷川神社の横から黒目川沿いに入ります。
神宝大橋から下流の黒目川はそれなりの流れがありましたが、ちょっと見ないうちにそれはずいぶん細くなっていました。
新所沢街道を渡ると、気分の良い遊歩道が続くようになります。
ここは川と道との高さの差が小さく、川が近く感じます。
両側が団地になると、その中に『しんやま親水公園』が出てきます。
ここでも大勢の子供たちがバチャバチャ。
団地を出ると東久留米市立第十小学校の横の『柳窪けやき森の広場』の鬱蒼とした森が目に入ります。
このあたりから道はちょっとした森の中に入って行きます。その森は黒目川に沿ってできており、川沿いには『さいかちの道』という遊歩道があるのですが、これは自転車進入禁止なので、一般道で迂回します。
この森の中にとてつもなく大きなお屋敷があります。
村野家住宅。
茅葺き屋根のこのお宅は現在も人が居住しているので、通常は内部は拝見できませんが、年に二度ほど特別公開日があります。
村野家の裏手に廻ると、そこには柳窪天神社がひっそりと立っています。
この天神様の前を流れる黒目川は先の竹林公園同様、『東京の名湧水57選』に選定されています。
森の中をひっそりと流れるこの黒目川はジブリの映画に出てきそう。
柳窪天神社を出たら、黒目川の源流点である『さいかち窪』に向かいます。
さいかち窪は小平霊園の中にある雑木に覆われた窪地です。
さいかち窪には通常は水がないそうですが、ここのところずっと雨だったので少し流れがありました。
この流れは窪地の中央部から出ているのだろうと思いますが、道が荒れていてそこまでは辿り着けませんでした。
さいかち窪を眺めたら小平霊園の中を抜けて進みます。
東村山の市街地を抜け、丸山橋で空堀川に出ました。
柳瀬川の支流である空堀川には水がないことも結構あるのですが、この時は少しありました。
丸山橋からは空堀川沿いを下ります。
空堀川は住宅地の中を抜けて流れて行きます。
特に面白い景色ではありませんが、川沿いの道は遊歩道で、主にインターロッキングブロックで舗装されていて、今日の前半にあったような砂利道や地道はありません。
どんどこ進んで小金井街道に架かる清瀬橋の一つ上流の境橋までやってくると、そのすぐ下流で空堀川と柳瀬川は合流します。
ここから下流は柳瀬川になります。
松柳橋までやってくると雨が降り出しました。今日は夕立があるかもしれないとのことだったのですが、これにドンピシャ当たったようです。
どこか避難出来るところはないかなときょろきょろしていると、なんだかお店らしきものを発見。
そこはエミューというパン屋さんで、うれしいことにテラス席があります。
ここで雨宿り&おやつ休憩と決め込みました。
30分ほどで雨は上がったので、再出発です。
清瀬金山緑地公園はダートなので迂回し、その東の金山橋で柳瀬川の右岸に出ました。
柳瀬川の土手はダートが多いです。清瀬市下宿地域市民センターから川沿いの道はまたダートになるので、ここも迂回します。
すると旧森田家住宅の前を通ります。この旧森田家住宅は日曜にのみ公開されるようで、この時は残念ながら入れませんでした。
新座市立第四中学校のところで再び土手に復帰。
ここからは舗装路となり桜並木が続きます。柳瀬川はいつの間にかゆったりしたいい流れになっています。
志木の栄橋に到着。このすぐ下流で柳瀬川は新河岸川に合流します。
栄橋の南側には『いろは樋の大桝』があります。いろは樋は野火止用水の水路橋で、江戸時代に新河岸川を渡すために架けられました。大枡(おおます)は水を一旦貯めるタンクで、これから勢いよく水を落とし、いろは樋に導いて新河岸川を渡したのです。現在のものは明治31年(1898年)に造られたものだそうです。この時代には木製の樋ではなく鉄管が川底に敷設され、大枡も木製から煉瓦製に替えられました。
『いろは樋の大桝』を眺めたら、新河岸川を下ります。
柳瀬川と新河岸川の合流点は土手に上れば見られたと思いますが、うっかり下の道を行ってしまったので、写真はなし。
本日の終着地は武蔵野線と東武東上線の利用者がいるので、北朝霞駅と朝霞台駅。
川を離れて武蔵野線沿いを進みます。
梅雨明け初日となった今日のポタリングは熱中症がちょっと心配でしたが、前半はパチャパチャやって涼みながらゆっくり進んだのと、午後は曇りとなって直射日光を浴びずに済んだので、なんとか無事に走り切ることができました。
まあ、自転車が泥だらけになったのは許してね。