師走に入りました。今年もあと僅かですね。今回は久しぶりに中央線沿線です。相模川の上流は山梨県では桂川と呼ばれます。今日はその右岸をメインに走ります。左岸はR20が通り騒々しいですが、右岸は鄙びた集落があるだけののんびりしたところです。
やってきたのは猿橋駅。天気予報ではこの時刻の気温は5°Cとのことで、ちょっと寒さを感じます。
都心ではまだ紅葉がわずかに残っていますが、このあたりの山はもうおしまいですね。
北に見えるは百蔵山(ももくらやま)と中央自動車道の巨大橋梁。
猿橋駅からは中央本線の南側の道路を使って猿橋に向かいます。
猿橋の袂に辿り着くと、赤い鳥居の山王宮が立っています。
このお宮では毎年7月の第3日曜日にその年に生まれた子供を祝う祭りが行われます。子供神輿5基と大人神輿1基が町内を練り歩き、最後に猿橋を渡るのですが、面白いことに神輿に乗っているのは座布団を何枚も敷いたお猿さん。そのお猿さんが神輿によって違うのも面白い。周りには今年生まれた子供の名前の提灯が並びます。
猿橋の袂には真っ赤なモミジの木がありました。
周囲の木々はみんな紅葉は終わっていますが、これはまだ盛期です。
山王宮にお詣りし、モミジを眺めたら猿橋を見学します。
猿橋は桂川に架かる刎橋(はねばし)で、日本三奇橋のひとつに数えられています。
刎橋とは『持ち送り』を使った橋のことで、『持ち送り』はこの写真に見られるように、岩にしっかりアンカーした材の上にそれより少し長い材を載せ、その上にそれよりさらに少し長い材を載せ、これを繰り返すものです。
その材は『刎ね木(はねぎ)』と呼ばれます。
刎ね木に屋根があるのは、雨などから木材を保護するためです。こうしたところはうまく処理しないと野暮ったくなるのですが、ここではいい塩梅に収まっています。
猿橋の上から桂川を見下ろすと、その渓谷は狭く深いことがわかります。
高いところが苦手なシュンシュンは橋の端に寄れず、この景色を見られませんでした。
下に降りて猿橋を見上げてみます。やはり渓谷は深く猿橋まではかなりの高さです。ここを歌川広重が『甲陽猿橋の図』で描いています。最初この絵を観たときは渓谷の高さはデフォルメだろうと思いましたが、こうして見ると実際に近いことがわかります。写真の奥に写っているのは八ツ沢発電所施設第1号水路橋です。
猿橋に戻り水路橋側を見てみます。この水路橋は現役で水を流しているそうです。
その向こうに見えるのはR20に架かる新猿橋です。新猿橋はもう一本あり、それは猿橋のすぐ西側を通るr505小和田猿橋線に架かっています。橋の名、変えてよね。(笑)
これはr505小和田猿橋線の新猿橋からみた図。
三本の特徴ある橋が楽しい。
猿橋を堪能したら桂川の右岸のR513梁川猿橋線(やながわさるはしせん)を下ります。今日は気温はそう高くないのですが、無風の快晴なのですごく暖かく感じ、みんな着ていた中着を脱ぎ出しました。北には猿橋駅から見えた百蔵山がいい形で裾野を広げています。
今日は距離が短いので比較的時間にゆとりがあります。そこでできるだけ鄙びた道を選んで行くことにします。
地図を見ればわかるようにこのあたりの桂川はかなりくねくねとうねっています。猿橋の東にも大きくうねったところがあり、その中に御伊勢山自然公園というのを見つけたので、梁川猿橋線を離れそのあたりを通ってみることに。
ん〜、山道〜 ちょっとだけだったけどね。(笑)
御伊勢山自然公園を廻ったら桂川の河原に降ります。桂川は狭い山間を流れているので河川敷と言えるようなところはほとんどなく、降りられる河原もあまりありません。このあたりではここが唯一、近くに寄れる河原でしょう。
ここには猿橋のところで見た桂川とはまるで違う流れがあります。日当り良好でポッカポカ。暑いくらいで、いい気持ち。
ここに中央東線(ちゅうおうとうせん)と書かれた巨大な橋梁がありました。
中央東線? 中央線に新しい線ができたのかな、と思いましたが、このあとこの上を特急あずさが通過して行きました。中央線は塩尻駅を境にJR東日本とJR東海に営業区分されていて、JR東日本側、つまり塩尻駅から東京側を中央東線と呼ぶのだそうです。へ〜ぇ、知らんかった〜
河原は一番低いところにあるので、まずはえっこらよっこらやってきた道を上り返します。梁川猿橋線もこのあたりはほとんど車の通りのない道なのですが、さらに鄙びた道に入ります。
ここは津成(つなし)から小篠へ向かう途中で、南側からは山が下りてきていて、ちょっと山道風です。
この山道風のところを過ぎると小篠の集落。
ここにはちょとした畑が広がっています。
そんな畑の中に石塔がいくつか立っています。
この道は梁川猿橋線から外れていますが、かつてはこちらがメインルートだったと思われます。
鄙びたいい道。
小篠に続いて下畑の集落を通り抜け、桂川に下ります。
そこに架かる下畑橋から下を覗けば、結構な高さがあり、びっくり。ちょっと足がすくみます。
下畑から下流の桂川右岸に道はないので、R20甲州街道に出てこれをどんどこ。
梁川駅(やながわえき)を過ぎたところで甲州街道を離脱し南側の道に入れば、これがとってもいい道!(笑)
それを抜けると畑道で、寛政年間に建てられた石仏塔があります。
甲州街道と反対側に下ると塩瀬大橋です。
ここもまだかなり川面まで距離があり、桂川は相変わらず渓流の様相。
塩瀬大橋を渡りずずいと行くとまた橋があります。
塩中橋は桂川に落ちる『ごんだぶち』に架かっています。
その『ごんだぶち』を覗いてみましたが、木々に埋もれ流れはほとんど見えません。
かなり細い流れなのですが谷は意外と深いようで、シュンシュンはちょっと覗いただけで橋の中央に移動。(笑)
道の右手すぐのところまで山が降りてきています。左手に狭い畑があり、そこから向こうは桂川に落ちる斜面。
のんびりしたいい景色。
このあたりにはまだ伝統的な民家がいくつか残っています。屋根勾配は緩いので、雪はそう多くはないようです。
庭先に生っている柿はもがれて軒下に吊るされています。
塩瀬の集落を出ると、次に現れるのは新倉橋です。新倉橋の横には旧橋の吊り橋が残っています。これはかつては4t車両が通れたのですが現在は通行止め。いずれそう遠くない時期に撤去されてしまうと思います。
そういえばこのあたりに人道橋の吊り橋があったように思うのですが、今回それを見つけることはできませんでした。なくなっちゃったのかな。
桂川は相変わらずの渓流。
道端に真っ赤な実を付けた植物が。これはピラカンサ(トキワサンザシ)でしょう。
赤と緑色ですが、クリスマスという雰囲気とはちょっと違いますね。
川合地区の大島神社をかすめて少しすると小さな石塔がいくつか並んでいるところがありました。
この道もまた古くからあるようです。
そしてすぐ先にもう一箇所。
形状からするとこちらは墓石かもしれません。
穏やかな坂道を下って行くと、眼下の民家の庇の上に干し柿と干し椎茸がずらり。
農村部ならではの景色ですね。あ〜、おいしい干し柿食べたい〜
やっぱり田舎はいいね〜と思っていたら、前方に巨大構造物が。(笑)
これは中央本線からもよく見えるのでご存知の方も多いと思いますが、四方津駅の北にあるジャイアント・エスカレーターです。
せっかくここまで来たのでそのジャイアント・エスカレーターを見学してみることにしました。
四方津の駅前までやってきましたが、その乗り口は駅から少し離れたところでした。ん〜〜ん、駅に直結できなかったのでしょうかねぇ。
このエスカレーターはバブル時代に丘の上に大規模な団地を造った時に合わせて設置されました。驚くことにこの所有者はその団地の管理組合のようです。
標高差88mを中央にあるエスカレーターとその両側に配された2基の斜行エレベーターで結んでいます。
駅からは上まで、斜行エレベーターで4分、エスカレーターで8分だそう。もっとも斜行エレベーターは待ち時間があるので実際はもっと掛かるでしょう。
外観は威圧的で一工夫ほしいと思いますが、乗った感じは思ったほど悪くありませんでした。
さて、エレベーターとエスカレーターで遊んだら、桂川の左岸を行きます。
道は中央本線と桂川の間の狭いスペースを行きます。
久保から先は山の中に道が入って行ってしまうので、R20に出てこれをどんどこ行き、上野原に入ります。
上野原で昼食を済ませたら、桂川橋を渡り桂川の右岸に渡ります。
ここまで来ると桂川はこれまで見てきた流れとはまるで異なる姿を見せます。
この絵は桂川橋から桂川の下流を見たものですが、この広さ、あの猿橋から見た流れと同じとはとても思えません。
これはこの少し下流に相模ダムがあるからで、そこで塞き止められた川の水は相模湖を形成します。その影響がこのあたりまで及んでいるということなのでしょう。
このすぐ下流で桂川は大きなふくらみを見せます。
そこは島田湖と呼ばれ、いつも浚渫作業が行われています。
島田湖が終わると神奈川県に入り、道は名倉への上りとなります。
桂川は神奈川県では相模川と名を変えますから、この横を流れているのは相模川かもしれません。
名倉で桂川(相模川)を離れ南に向かいます。
この道は『芸術の道』と呼ばれ、道端にアートが置かれています。これは『雨』。この手前に四角い縁だけの窓があり、そこから雨を眺めるものらしい。このあともいくつかアートが現れます。
さて、ここからはアップダウンの連続です。
これまでしんがりを務めていたシュンシュンはここでダッシュ。前三枚の威力発揮です。
サリーナもなんとかがんばってピークに到着。
このピークは第一のピークと言うべきもので、このあと小さいながらもたくさんたくさんピークが出てくるのでした。
下に桂川がちらっと見えます。こうして見るとすいぶん上ってきました。
左手前に写っている馬の背状の岩は包丁岩だそうです。英語というか登山用語で言うならナイフリッジかな。
包丁岩のあたりはほぼ平坦でしたが、また上りが始まりました。
エッサコラサ。
そして薄暗い針葉樹林を抜け出ると、陽の光がとても眩しい。
秋山川の谷の日向(ひなて)に出たのです。ここからはあの谷底に向かって急降下。ビューン。
ドーンと落っこちて行った先、急に道幅が狭くなると秋山川に流れ込む田野入川で、その横には絶壁が立ち上がっています。
この岩壁はかなり荒々しいです。
下には小さな滝。
ここは明るいところから暗いところへの変化に、頭がクラクラ。
下ったら上りです。(笑) でも道幅が広くなり、勾配も緩やかなのでまあなんとか上って行きます。
奥牧野に上ると斜面が変わり南斜面に。日当り良好。
田野入川までだいぶ下ったと思ったのですが、それからそれなり上り返したようで、まだ谷底までは落差が結構あります。
さらにちょっと下るとこんな石塔群がありました。
この道もまた、歴史ある道なのでしょう。
この石塔群の横の細道を入ると、 秋山川に架かる前川橋に出ます。
この前川橋、吊り橋にして木造のトラス橋で、一風変わっていて味があります。
高所嫌いのシュンシュンがここは橋から川の写真を撮っています。
これくらいの高さだったら大丈夫なんだって。
前川橋からは秋山川の支流の綱子川沿いを行きます。道はダートでルンルンのシュンシュン。ダートが苦手なサリーナは遅れ気味。
この道、綱子川とはそれなりの高低差があるのですが、そちら側には簡単なロープが一本張られているだけで、落っこちそう。ここは慎重にね。
綱子川沿いの道は綱子の集落を抜けて道志に至るのですが、去年の台風以降通行止めになっているので、r517奥牧野相模湖線へ向かいます。
道はアスファルト舗装になったのですが、これがまた上って下り。(笑)
奥牧野相模湖線に出てもアップダウン、アップダウンで、今日の午前中とはまるで雰囲気が違います。
やまなみ温泉の近くまでやってきました。そこにあった民家の軒先には干し柿がずらり。いい感じですね。
やまなみ温泉の北のやまなみ公園は公園と名は付いていますがほぼ未整備で、あまり休憩したい雰囲気ではなかったので、枝道から再び奥牧野相模湖線に出たところで道端に腰を下ろしました。
そこには山間に小さな畑があるどこにでもあるような景色が広がっていました。
今日の最終目的地は相模湖駅にしました。最後に桂川の下流である相模川の相模湖を眺めて上がりということにしたのです。ということで、このまま奥牧野相模湖線を行きます。時は15時半。山間部なのですでに陽は山に隠れ、すっかり夕方という雰囲気で気温もぐっと下がりました。
川上川まで落っこちたらまた上りが始まります。今日何度目の上りかもう忘れましたが、これを含め上りはあと二つ。エッコラヨッコラ。
上ったら篠原川沿いのr518藤野津久井線まで落っこちます。
さあ、ここからが最後の上りです。
ほどなく最後のピークが近づきます。北を見ればまだ山が続いていますが、遠くに見える尾根は相模湖の向こう側の山のものです。
あの手前に相模湖は横たわっています。
なんとか最後のピークを越えました。あとは相模湖に下るだけです。
グワ〜ンと下って行くと前方に大観覧車が見えます。相模湖ピクニックランドです。と言ったらシュンシュンが、今はプレジャーフォレストという名になりましたって。(笑)
そのプレジャーフォレストから道はR412になり、車がぐんと増えます。みなさんプレジャーフォレストに入って行きます。どうやらプレジャーフォレストでイルミネーションをやっているようで、これはかなり人気みたいですね。
R412は相模湖まで下りなので、ちょっとだけがまんし相模湖に到着。時は16時半で、ちょうど陽が沈んで行ったところでした。
あ、最後、相模湖から駅前までは上りでした。。。
今日のコースは前半と後半とでまったく印象が異なりました。桂川を下る前半は多少のアップダウンはありますが、下り基調でらくちん。深い桂川の渓谷と点在する鄙びた集落が印象的です。後半は山の中で、高度差はあまりないもののアップダウンの繰り返しで、結構へばりました。最初の猿橋と最後の相模湖はアクセントとしてとてもいいですね。