この週末はどうやら晴れるらしい。先週も出かけ、来週にも企画が予定されているのですが、秋晴れとあっては出かけないわけには行かないでしょう。富士山を観に行くことにしました。
同行のシュンシュンとシンチェンゾーは道志道を使って山中湖に上るのが月例イベントのようになっている人々なので、今日はそれとは別のルートにしました。やってきたのは富士急行線の東桂駅(ひがしかつらえき)です。
ここに着くまでの間、車窓から富士山がはっきり見えたのですが、それは残念ながらカメラには収まりませんでした。それはともかく、今日は素晴らしい富士が見られると思います。
R139の富士みちからr713大野夏狩線に入り桂川を渡ると、前方に山が見え出します。今日はあの山の合間を縫って二十曲峠(1,150m)へ上ります。二十曲峠は富士山眺望ポイントとしてとても有名なところです。
ここの住所は都留市鹿留(つるしししどめ)。『ししどめ』です。『しかどめ』ではありませんよ。
道脇がこんもりした林になると右手に今宮神社が現れます。
道端には杉の巨木が並び、その奥にもの凄い太さの大ケヤキが立っています。その横の社殿はそう立派なものではありませんが、これらの木々がこの神社の歴史を物語ってるように思えます。
今宮神社を出ると先にとんがり帽子のお山が見えてきます。あれは御正体山(みしょうたいやま)でしょうか。
東桂駅には都留市ニ十一秀峰案内板が設置されていましたが、そこに登山道がある山として御正体山も記載されていました。
小川を渡り門原という集落に入りました。
横を流れる鹿留川に橋が、そしてその袂にグラススキー場の看板が現れるとそこでr713大野夏狩線は終わり、この先は林道細野鹿留線になります。
この入口付近はごく普通の道で周囲に民家も立っているのですが、赤い鳥居がある神社を過ぎ、釣り堀りらしい池の横を通り過ぎた辺りから、林道らしい雰囲気になってきます。
周囲は針葉樹林になり、これまでほぼ平坦だった道の勾配が僅かに上昇したのを感じます。
池のすぐ先に林道細野鹿留線のゲートがあります。
この林道は2019年の台風で被害を受け、その後今日までずっと工事中です。ゲートの前に出されている三つの工事看板によると、それらのうち最長のものは令和4年4月26日までとなっていますから、あと半年で終わるかもしれません。
ここまで来ると鹿留川がぐっと近づき道脇を流れるようになります。サラサラといい音。
ゆったりとしたS字カーブの道がなかなかいい感じ。
『この道は来週行く予定の裏ヤビツに似ていますね〜』 と、裏ヤビツが大好きなシュンシュン。
確かに道の勾配が穏やかで道脇にせせらぎが流れ、下の方は針葉樹林なのがとても裏ヤビツに似ていますね。
ゲートから少し行くとこれまで道脇の樹間からちょっとだけ見えていた鹿留川がその姿を表します。
ゴロゴロ石の河原に浅い流れ。やっぱり山の中の川の姿をしていますね。
さらに進むとほんのちょっとの区間砂利道になり、その先に小さな古い橋が現れました。橋の袂には比較的新しそうな石造の観音様が祀られています。
橋の親柱には『てんがんはし』とあります。反対側のそれには漢字が彫られていて第1文字は天、しかし次の『がん』の字は解読できませんでした。この橋はだいぶ老朽化しており、横に新しい橋が工事中です。
この『てんがんはし』のあたりになると周辺の木々は針葉樹から広葉樹に変わっています。麗しい緑色の広葉樹とサラサラという鹿留川のせせらぎが心地いい。
橋を渡ると工事用の小屋があり、その先の路面は最近やり直されたらしいアスファルト舗装で、このあとは走りやすくなります。
『今日はブロンプトンじゃあチーとばかしきつそうなんでKHSで来たぜ。まあ、ロードでくるほどじゃあないからね。』 と、ジオポタに来る時はいつもブロンプトンなシンチェンゾーでした。
一方のシュンシュンもやはり、『あっはっは〜、あたしもジオポタの山企画はブロじゃあきついんで、最近は娘のために買ったこればかし乗ってますです。』 と、娘のバイクがなんでドロップハンドルなのよ、のシュンシュンでした。
ここは鹿留川が道脇をずっと流れているので大変気持ちいいです。
夏ならば自然の冷房で快適なサイクリングができますし、冬場以外ならとにかくこの流れは心に優しい響きです。
東桂駅から7kmほど行くと林道細野鹿留線から鹿留線が分岐します。その起点に架かるのが『虹の木橋』です。
細野鹿留線はここから先も続くのですが、それは行き止まりとなり御正体山への登山道になります。私たちはここで細野鹿留線を離れ林道鹿留線に入ります。
虹の木橋は集成材によるアーチ橋で、これは日本ではかなり珍しいものだと思います。
日本の国産材、がんばれ〜
この虹の木橋は鹿留川本流に架かっているものとばかり思っていましたが実はそうではなく、なんとそこに流れ込む小さな川に架かっているのでした。
鹿留線の序盤の勾配はこれまでの細野鹿留線とほとんど同じで緩く、問題なく上って行きます。
しかし川と反対側に、モルタル吹き付けの切り立った崖が現れるようになりました。
そしてしばらくすると正面にきれいな山容の石割山(1,412m)が見えてきます。今目指している二十曲峠はあの山頂から西(右)へ下った鞍部にあります。
えっ、まだだいぶ上らなあかん・・・
林道前ヨリ沢線の黄色いゲートが見えると、そのすぐ先で鹿留川の支流に架かる落合橋を渡ります。
ここは日影の谷で落ち葉がいっぱい。この葉っぱは一昨日の雨で少々濡れているので慎重に行きます。
落合橋はヘアピンカーブの頂点にありそれを廻ると、山肌を覆うモルタルは鮮やかな緑の苔で覆われるようになります。
ここで道の勾配が急激に上昇。ここからアヘアヘが始まります。いつもカッ飛んで行くシンチェンゾーはこの日はゼハーゼハーとちょっと苦しそう。自転車のポジション調整がうまくいっていないようです。
道の向きが変わり日向に出ると、周囲の木々が紅葉し始めているのに気付きます。
木々の変化がちょっとずつ標高を上げてきたことを教えてくれます。
盛期の紅葉はもちろん素敵ですが、この微妙な変化を始めたばかりの時も私は好きです。
木々の色合いの変化は楽しめるようになってきましたが、実はこのあたりから道の勾配がきつくなり、アヘアヘからハヒハヒに。
再びヘアピンカーブで橋を渡るとその先もまた強烈な濡れ落ち葉の山。これをなんとか過きると勾配が緩んで急に空が明るくなります。
道脇の木々が去り、これまで上ってきた鹿留川の谷が右手に開いて、対岸の山が見えるようになりました。空が近くなったことで二十曲峠が近いことを感じます。
正面にあの石割山の頂が見え出しました。だいぶ上ってきました。
道は上りではあるものの勾配は穏やかなままで、さらに下りも出てきて、これまでとは様子が明らかに異なることを感じます。
道はほぼ等高線上を走っているようですがカーブが連続し、穏やかに上ったり下ったりを繰り返します。
向かっている二十曲峠の名はこのカーブの多さから来ているのでしょう。
治山施設管理用の黄色いゲートを横目に進むと、すぐ上にカラマツが少し纏まって生えているのが目に入りました。
針葉樹でもこのカラマツはデリケートに変化し、きれいに紅葉します。
上の方でも落ち葉がたくさんのところがあります。
このあたりは乾いているのでそう問題はないのですが、微妙な影と色合いから、小石なのか落ち葉なのか判別できません。とにかく落ち葉ゾーンは慎重に行きます。
右手が開いて二十曲峠の北西に位置する杓子山(しゃくしやま、1,597m)が見え出しました。この山が見えると二十曲峠まではすぐです。
ほどなく林道鹿留線ゲートに到着。これを出ると、
『お〜っ!』 というシュンシュンとシンチェンゾーの叫び。
じゃ〜ん! ここが二十曲峠です。
正面に富士山がバーン! 上ってきた甲斐があるというものです。ご褒美ご褒美。
富士山の写真家として有名な岡田紅陽は若き頃ここ忍野村から観た富士に圧倒され、以後富士山の撮影に生涯を捧げたそうです。
二十曲峠で富士山を楽しんだら忍野村に下ります。
峠からの富士もいいですが、下の富士もまたいいですね。
ここで快調に飛ばしていたシュンシュンがパンク。ありゃりゃ。
ちょうどそこに『たまご屋』さんがあったので、ベンチをお借りして修理です。
忍野村は湧水で有名なところなので蕎麦屋が多い。またすぐ隣の富士吉田市は吉田うどんで売り出しています。もっと大きなくくりでは山梨県はほうとう。さて、お昼はどうしましょう。シンチェンゾーはこの前ほうとうを、シュンシュンは蕎麦を食べたというので吉田うどんということに。近くにあるうどん屋から当たってみましたが、最初の店は休みだったので二店目に入店。
吉田うどんの特徴は太く腰の強い麺にあります。肉は馬肉、そして野菜はキャベツ。ここの店の麺は太さばらんばらんの上にひっついているものもあり。
さて、お腹を満たしたらどうしましょうか。忍野村の観光名所といえばもちろん忍野八海ですが、あそこはいつも観光客がわんさかで、まあほとんど人を見るために行くようなものです。しかしコロナ渦の今は外国人観光客はいないので、いつもよりはうんと人出は少ないはず。
毎月のように山中湖に来ているシンチェンゾーはあろうことか忍野八海には行ったことがないといい、シュンシュンも何十年も来ていないというので、行くことにしました。
忍野八海は富士山の伏流水を水源とする湧水池で、八つの池があります。今回は北から巡ってみます。
まずは菖蒲池。この池にはサトイモ科のショウブが生えています。これは花がきれいなアヤメ科のハナショウブとは違う植物で、菖蒲湯に入れる方です。蒲の穂に似た花を咲かせます。
次は鏡池。
その名の通りにこの池は条件が整うと鏡のように平らな湖面を作り、そこに逆さ富士が映るといいます。
鏡池のすぐ南が忍野八海の中心部で、そこに大きな中池があります。
これはおそらく人工的な池で、忍野八海の八つの池には含まれていませんが、周辺に土産物屋があるのでいつも観光客で混雑しているところです。
この大きな池のすぐ南に水車小屋があり、それを挟んで二つの池があります。
水車小屋の東にあるのは湧池(わくいけ)。
湧水量が豊富でゆらゆらする水面が美しい池です。
西にあるのは濁池。かつては濁っていたのかもしれませんが、現在は井戸水が混入しているそうで透明です。
この池の水は横を流れる阿原川に流れ込んでいます。周辺の木々は紅葉が進んでいました。
付近にはあと三つの池があります。ここからは西から順に巡ります。
阿原川は濁池から西へ200mほどのところで新名庄川に流れ込みます。その新名庄川を僅かに下ったところにあるのが、お釜池。
お釜池は忍野八海の中で最も小さな池ですが、意外と水深があるようでインクのような色をしています。
お釜池から阿原川を少し戻ると銚子池(ちょうしいけ)があります。
この池では底から水が湧いているのを見ることができます。
さて、中心部まで戻って『榛の木林資料館』に入ります。
この屋上には、池の畔に立つ茅葺き屋根の民家の向こうに富士山という絶景があります。
茅葺き屋根は手前から水車小屋、隠居屋、母屋で、18世紀後半に建てられた忍野村に現存する最古の茅葺き民家である渡邉家です。屋根裏は蚕の養殖場として使われていたようで、蚕棚が残っていました。
この渡邉家の奥にあるのが底抜池(そこなしいけ)です。
小さな池ですが、底抜の名に見えるようにどこまで深いのかわからないような、そんな雰囲気があります。
さて、これで忍野八海の七つの池を巡りました。
残る一つ、出口池(でぐちいけ)は少し離れたところにあります。
出口池は八海の中でもっとも広い池で、静かなこんもりした丘の裾にあり、出口稲荷大明神の神社がそれを見下ろしています。
ここは雰囲気が他の池と異なりひっそりとしており、観光客の姿もまったくありませんでした。
出口池からは山中湖へ向かいます。山中湖まではファナック通りを使うと近道ですが、私たちはより鄙びたr717山中湖忍野富士吉田線を使いました。
深い林の中に真っすぐに延びるこの道は独特の雰囲気があります。
山中湖に出ました。
薄暗い林の中から突然明るい湖畔へ、そしてその先に富士山という展開は、気持ちをわくわくさせます。
山中湖の湖畔には自転車道が設えられているので安心してサイクリングができます。
湖畔の木々はうっすら紅葉しています。
山中湖の北岸を通って『平野の浜』までやってきました。このへんで休憩をと、まず国道にあるセブンイレブンでコーヒーを買い求め、浜に戻りました。
湖の中に白鳥のオブジェが置いてあると思ったら、それは本物の大白鳥でびっくり! こんな巨大な白鳥を見たのは初めてです。
さて、以上で本日の主要なイベントは終了です。帰路はどうしましょうか。シンチェンゾーとシュンシュンはいつも道志道を使うので、今回は三国峠越えにしました。
あのススキのお山が三国山で、三国峠は左の凹みあたりにあります。
平野の浜を離れr730山中湖小山線に入れば、道はすぐに上りに。
周囲にススキの原が広がるようになります。
序盤に出てくるヘアピンカーブに駐車場があり、そこは富士山と山中湖の眺望ポイントになっているのですが、ここは車やモーターバイクが多いのでちょっと立ち止まっただけで先へ進みます。
振り返れば富士山と山中湖の絶景という中を、えっこらよっこら上って行きます。
三国峠が近づいてきました。するとススキの原の中にちょっとしたスペースができています。
ここは車はせいぜい一台しか停車できないので、蜜にならずに展望が楽しめるポイントです。
展望を楽しんだらすぐに三国峠です。ここにはちょっとした駐車場があり、登山の起点になっています。
ここでウィンドブレーカーを着込んで下りの準備をします。
三国峠は山梨県・神奈川県・静岡県の県境付近に位置しており、私たちは山梨県側から上ってちょっとだけ神奈川県に入り、静岡県に下ります。
静岡県に入ると道の番号が変わりr147山中湖小山線となります。
三国峠の東には明神峠(みょうじんとうげ)がありますが、この明神峠は北側から上ってくる場合のピークで、今回のルート上は下り坂の途中に位置します。
明神峠のバス停を過ぎると路面はコンクリート舗装に変わり、ノンスリップの○○印が現れます。横の標識には18%の表示が。ひょえ〜〜〜 反対側からは上りたくないですねぇ。右手には富士山の南に位置する愛鷹山が見えています。
今日の終着は御殿場と決めました。r147山中湖小山線を下り終え、カントリーロードに入ったところで畑の向こうに富士山が姿を見せました。
山中湖では山頂は雲の中だったのですが、ここに来て再び頭を見せてくれました。今日の富士山は大当たりでした。
予定時刻より少し早めに御殿場駅に到着です。
最近はほとんど上り企画を発せられず、身体が山に反応できるかどうかかなり心配でしたが、今日はなんとか上り切ることができました。これから関東地方は紅葉シーズンに突入するので、少しは山に足を慣らしておかなければなりませんから、今日はちょうど良かったです。