多摩センター駅に降り立つと、寒い! やっぱり多摩地方は都心より数度気温が低いようです。
今回はこの季節のほぼ定番になっている多摩丘陵の紅葉狩りです。しかしこの日、多摩センター駅にやってきたのは地元のシュンシュンと企て人のサイダーのみ。あれれれ、この企画は地道が多いからか、なんだか人気がなかったみたいです。(泣)
多摩センターは多摩ニュータウンの中核となる街として開発されました。
駅前にはとっても広いスーパーデッキが延びており、サンリオピューロランドの入口となるところには巨大なクリスマスツリーが飾られていました。
このスーパーデッキの突き当たりはパルテノン多摩という公共施設で、それをぐるりと廻ると多摩中央公園に出ます。
多摩中央公園の紅葉はいつもよりパッとしないようです。シュンシュンによれば、今年の多摩地方の木々は紅葉せずに葉を落とすものが多いそうです。これは都心でも感じましたが、多摩もそうだったんですね。
公園の一角で大型の工事が始まったらしく、いつものルートは通行止めでしたが、逆コースで池の向こう側に廻ってみました。
すると真っ赤な楓が。これはきれい。
多摩中央公園を出たらいったん下の道に出て、落合団地の中を行く歩行者自転車専用道に入ります。
多摩ニュータウンでは歩行者と車とを分離した動線計画が作られたのです。これによって自転車も車に煩わされずに移動が出来ます。
この歩行者自転車専用道の横に作られた小さな雑木林はなんとか最後の葉を残していました。
南多摩尾根幹線道路をオーバーパスする橋の上からは、彼方に富士山が。
今日は空気が澄んでいて良い見え具合です。
南多摩尾根幹線道路を越すと一本杉公園に入ります。
この公園の今の時期の紅葉は楓。それは少し盛期は過ぎていましたが、いつものところで私たちを出迎えてくれました。
良い色。
ああ、よいよい。
べりーぐっど!
一本杉公園の横にある恵泉女学園大学のメタセコイア並木がいい色でしたが、これは手前の楓に隠れて絵にならず。
その楓はなかなか見事な色付きでした。
恵泉女学園大学の前を通って妙櫻寺の駐車場と駐車場の間から小野路の細道に入ります。
急な坂を下ってカーブを一つ二つ廻ると畑の中に出ます。
ここは谷戸の上で、現在この畑は恵泉女学園大学が研修農場として使っているようです。
その奥に多摩丘陵の原風景を思わせるところがあります。
なだらかな傾斜地に狭い畑が築かれ、その向こうに広葉樹の森が広がっています。
森はまず成長が早い針葉樹が勢力を伸ばします。そしてそのあとから広葉樹がゆっくりと成長し、やがてその枝を広げて針葉樹に陽の光が届かなくなると、森全体は広葉樹で覆われます。ですから広葉樹の森というのは自然の中ではかなり年月を経たほぼ完成された形態なのです。
また、かつては燃料としてナラらクヌギといった広葉樹が好んで用いられたので、集落近くには薪炭林としてこれらのが植えられることが多かったのです。
この谷戸を下って下の道と合流したところに小さな小さな無人販売所がありました。
下の駕篭に黄色い果実が入っていました。最初は蜜柑かなと思いましたがよく見るとそれは柚子。ちょうど柚子がほしかったサイダーは即ゲット。
多摩センター駅で寒いと感じましたがここの地面には霜が下りていました。明け方には零度以下になったということですね。
この道は布田道といい、江戸時代には甲州街道の布田五宿(現調布市)と小野路とを結ぶ重要な道だったようです。こんなに狭い道なのに。もっとも当時はせいぜい人馬が行き来する程度だったでしょうから、これで充分だったのかもしれません。
布田道が突っ切っているのは一本木谷戸。このあたりには小さな谷戸がたくさんあります。
布田道を西へ向かうと関谷の切り通しと呼ばれるところに出ます。
ここは鎌倉時代、このあたりの有力御家人だった小山田氏が関所を構えていた場所と伝わります。
この切り通しから竹林の中に延びていく小径があります。
はっきりはしませんが、この小径が古くは鎌倉街道であったとする説もあるようです。
このあたりには鎌倉街道を始め古くから様々な道が通っていました。
関谷の切り通しを抜けたらそうした道の一つである鎌倉裏街道に入ってみます。鎌倉裏街道は鎌倉街道本道のサブルートです。
ど〜んと掘割道!
鎌倉街道は『いざ、鎌倉』という時のための軍事道路であり、敵から攻撃されないように外部が見渡せる尾根を通ることが多く、また敵に気付かれないように掘割りにしたところが多いようです。この裏街道も短いものの掘割りが続いています。
その鎌倉裏街道の紅葉。山の中の紅葉は里で見るそれとはだいぶ印象が異なります。
『すごい色ですね〜』 とシュンシュン。真っ暗な道に赤や黄色の光が射し込んできます。
かつての小野路宿を貫く町田日野線を横切り、小野路の西側のゾーンに入ります。
この西側ゾーンにはさらに深い森が広がっています。
そしてその森は人々の保全活動によって守られています。
森の中に築かれた段々畑の管理は大変そう。
ボランティアの方々に感謝しつつ、森の中を行きます。
森が開かれたところには牧場があります。
臭い匂いをかいで牛さんに挨拶します。牛さん、今日は牛舎の中でした。
再び森の中に入って行くと萬松寺の入口に六地蔵が並んでいます。
写真に写っているのは六体だけですが、実はここにはなぜかもう一体立っていて七地蔵になっています。
この七地蔵の先で空が開くと、そこは万松寺谷戸です。
この谷戸は今でもなんとか田んぼが作られています。
春先にはここにきれいな桃の花が咲きますが、この時期は水仙が一輪。
万松寺谷戸からは激坂をえっこらよっこらと上ります。ここはかなりきつい。
そして空間が開くとそこは小さな畑。写真に写っているのは里芋、ブロッコリー、ネギ。人参、白菜、キャベツなどを眺めつつ息を整えます。
息が整ったらさらに奥へ。この先には民家が現れるのでそのまま森が開くのかと思ったらこれは大間違い。
森はぐっと深くなって行きます。
この先には小野路城跡があるのですが、そこに続く道は周囲より少し下がっています。この道も古道と考えられ、少し浅いですがおそらく掘り割りであろうと思います。
この時期、道は落ち葉がびっしりで写真ではわかりませんが、ここには鋭利な大きめの砂利が敷かれていて、私たちの自転車では走行不可能です。
小野路城跡にやってきました。この城址は上の写真の道から一段高いところにあります。
小さな鳥居と小さな社がありますが、道からはちょっと気が付き難いです。
しかしその先に案内標識があり、ぐるっと廻って社の後ろ側に出る道があるのでこれを行きます。
するとそこはちょっとした平場になっています。ここはひっそりとしていて、これまで一度も誰にも出会ったことがありません。
シュンシュンが言ったように今年の多摩丘陵の紅葉はあまりパッとしません。
ここの紅葉はいつもはもっと鮮やかなのですが、この日はほとんどの木が葉を落としており、残った木々の色も茶色に近いものでした。それでも僅かながら紅葉を感じさせてくれます。
小野路城跡を出て奈良ばい谷戸へ向かいます。
二三日前に雨が降っており今回のルートはちょっと厳しいかなと思ったのですが、森の中は落ち葉が多いのでそう問題なく進めました。しかし奈良ばい谷戸へ下る坂は粘土質の土がむき出しで、滑る滑る。
その坂道を慎重に下って奈良ばい谷戸です。
ここからは丹沢の向こうに真っ白な富士山の頭が見えます。冬の特典。
富士山を眺めたら炭焼小屋に向かいます。
炭焼小屋の前ではこの日もボランティアの方々がせっせと忙しそうにしていました。
奈良ばいは谷戸ではありますが、その上部では畑が作られています。
ぽかぽかでいい陽気!
田んぼが出てきて平坦部が現れると、そこには藁ボッチがあり、一筋の白い煙が立ち上っていました。
これは籾殻を燻炭にしているのです。籾殻燻炭は籾殻を低温で燻して炭化させたもので、酸性土壌の土壌改良材として使われます。お芋さんがあればあの中に入れておくと焼き芋ができます。(笑)
田んぼには二番穂が出た稲がまだ残っており、その向こうに黄色からオレンジ色までの紅葉が見えます。
空の青を合わせるとほぼ三原色ですね。花は薄曇りといいますが、紅葉には青い空が似合います。
奈良ばい谷戸からは小山田緑地に向かいます。
そこでは大欅がいい色になっています。
小山田緑地の本園入口でシロスキーが合流。ここからは三人で見晴らし広場に徒歩で向かいます。
ここは自転車進入禁止なのです。
小山田緑地は広大で様々なゾーンからなりますが、見晴らし広場からは、
じゃ〜ん、丹沢と富士山!
気温が上がり水蒸気が多くなってきているようで富士山は朝見た時より少し薄ぼんやりしていますが、いい眺めです。ここで出会った近くに住む少年は、この場所がこのあたりで一番の富士山眺望ポイントだと言っていました。
富士山を眺めたら自転車に股がり小山田緑地のトンボ池に向かいます。
小山田緑地本園とトンボ池の間にはゴルフ場になっている丘があるでそれを越さなければなりません。この上りがまたかなりきつい。
ゴルフ場の間の道を行き丘のピークに達すると、その下に広がる斜面は一面の草もみじです。
草もみじは尾瀬などの高原でよく見られますが、こんな低地でも赤くなるんですね。
丘をグワ〜ンと下ってトンボ池です。トンボはもうこの季節になると飛んでいませんが、この池の中にはその幼虫のヤゴがたぶんいるのでしょう。
湖面では鴨のカップルが仲良く泳いでいました。
トンボ池を眺めたら武相観音巡礼道の代官坂に向かいます。
大久保の林の中を行き、
いったん通りに出たら山中谷戸に分け入り西へ。
ちょっとした激坂を上ると、そこは『多摩よこやまの道』から分岐してくる代官坂と呼ばれた坂です。
このすぐ上には傘を差したお地蔵さんがおられます。
代官坂から南へ下って行くと森の中に小さな畑があります。この畑、見事な色分けで楽しい。
代官坂の上の『多摩よこやまの道』は奥州古道常磐道だったもので、この武相観音巡礼道は下小山田の大泉寺方面に向かっています。
大泉寺はこのあたりの地名ともなっている小山田氏の館があったところと伝わります。その小山田氏は平安時代末期の豪族ですから、この道は古くからある鎌倉街道の一つであったのかもしれません。
この道の下の方は数日前の雨でぐちゃぐちゃ。ほぼ押しとなってしまいました。
なんとかぐちゃぐちゃ道をこなして善治ヶ谷戸(ぜんじがやと)に下ってきました。
このあとは大泉寺の小山田城跡に向かうつもりでしたが、予定時間をオーバーしてしまったのでシンチェンゾーと待ち合わせた昼飯処に直行します。これで本日の前半の地道は終了です。
今日はルート上に見つけたイタリアン。ここでシンチェンゾーが合流。
私はパスタだけでいいと思ったのですが、他のメンバーが前菜とデザート付の豪華ランチにしたので仕方なく付き合いましたよ。しかしここはとてもリーズナブルでおいしかったです。
午後の部はシンチェンゾーを含めた四人でまず尾根緑道に上り、それをどんどこ西へ。
尾根緑道は午前中のダート三昧コースとはえらい違いで、スイスイ!
紅葉はと言うと、楓が最後の輝きを僅かに残してくれています。
星谷戸トンネルの上部に来ると南西の視界が開きました。丹沢はまだうっすらと見えますが、富士山はこの画面の右端あたりになり視界から切れているのか、それとも水蒸気でか、見えません。
ここで今後の予定を検討。終盤には七国古道を予定していましたが、先ほどの代官坂の様子からすると走れない可能性が高いのでこれは止め。代案はいくつかあったのですが、みなさん今日は早く呑みに入りたいって。(笑)
ということでいつもの居酒屋に連絡すると、少し早めに入っても良いというので、尾根緑道をゆっくり進み、橋本に向かうことにしました。
おいおい、まだ15時だよ〜ん! しょうがないな〜(笑)
クヌギやナラなどのブナ科の植物は黄色系で、楓は赤系で、最後の残照。
路面にびっしり敷き詰められた落ち葉をカサコソ踏んで進んで行きます。
この響きが楽しいですね。
小山内裏公園の西の端までやってきました。
先には鑓水小山給水所の塔が立ち、その先に紅葉した小高い山が見えます。遥か彼方にはうっすらながら奥多摩の山々も。
多摩美術大学の横を通り抜け、鑓水にダウンヒル。
鑓水からはR16を南へ向かい、境川沿いに入ります。
するとそこに眩いばかりの紅葉がありました。これはほぼピークといっていいでしょう。
その先にもう一本。
先ほどから見えていた橋本駅前のタワーマンションが大きくなってきました。
あっけなく橋本駅前に到着です。時は16時15分。ちょっと早すぎるんじゃあないの? と思うも、裏口で大将と目が合い、OKが出たので中へ。この日もおいしいお酒をいただきました。
なんだか今日はサイクリングじゃあなくてただ呑みに出てきたような・・・(笑) あっ、紅葉狩りですが、少なくとも1週間は早く来るべきでした、というのが今回の感想です。
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