都心の桜はほとんどおしまいですが郊外ではまだいくらか残っていそうと、埼玉県の比企丘陵にやってきました。
比企丘陵と聞いてNHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を思い出された方がいらっしゃるでしょうか。そうなのです。ここは、それに出てくる比企尼の夫であった比企 掃部允 遠宗(ひき かもんのじょう とおむね)が、源頼朝の伊豆配流に伴い、郡司職となって妻と共に都から下向した地なのです。比企氏は元は藤原姓でしたが、この地にちなんで比企氏と称したのです。
武蔵嵐山駅から南へ1kmほどのところに菅谷館跡があります。ここも『鎌倉殿の13人』の登場人物と関係があります。源頼朝の挙兵に際して当初は敵対したものの、のちに幕府創業の功臣として重きをなした、畠山 重忠(はたけやま しげただ)の館跡です。
その菅谷館跡のすぐ南を流れるのが都幾川で、右岸には2kmにわたって続く桜の堤があります。
近づいてみると桜は予想の通りかなり散っていましたが、足下がまっ黄色!
学校橋を渡って右岸に出るとそこは菜の花畑で、見事としか言いようのない咲きっぷりです。
『ギャ=、これは凄い〜っ』と喚起の雄叫びを上げるシンチェンゾー。
香しい菜の花の匂いを嗅ぎながら、桜の下を行きます。
みなさんもう桜は見飽きたのか、この日ここにはほとんど人はいませんでした。自転車の方は私たち以外にはたった一人だけでした。
ここの桜は周囲の畑、そして西にある山との調和が素晴らしいです。
どこまでも続く桜です。
桜堤が終わって八幡橋の袂に着くと、そこに一本だけ満開の桜が立っていました。これはソメイヨシノではなく花がもう少し小さい桜です。
この桜の先に見える杉の木立があるところは鎌形八幡神社で、実はそこも『鎌倉殿』と縁のある場所です。鎌形八幡神社は源氏の氏神として仰がれたところで、源義賢(みなもと の よしかた)が小枝御前(さえごぜん)と結婚した際に下屋敷を設けたところです。その小枝御前が産んだ子がのちの木曽義仲で、義仲の産湯の清水と呼ばれる湧水が今日も神社の境内に湧いています。
鎌形八幡神社の横を通り、薄暗い小山を越えて小倉に下ると、ぱっと明るくなり視界が一気に広がります。
そこには春うららかな景色が広がっています。
右手には新緑が眩しい大平山。
民家の庭先には三色の桃。
大福寺の周囲には桜がたくさん。
山があると桜がとても映えますね。
日枝神社の枝垂桜はとっくに散ってしまっていますが、桃がいい感じ。
槻川の谷川橋を渡ると遠山です。
遠山は周囲をぐるりと山に囲まれた鄙びた集落で、その中に十本桜と呼ばれる桜があります。
ここの桜はピークは少し過ぎていますが、まだ十分にきれいです。
静か〜
ピークを外すのも悪くありませんね。
遠山をゆっくり流す、最近ほとんど自転車に乗れていないサイダー。
遠山の桜を満喫したらを近くの槻川を覗いてみます。
このあたりの槻川は京都の嵐山に似ているとかで嵐山渓谷と呼ばれており、甌穴(おうけつ=ポットホール)が見られます。
遠山の西は下里で、新緑の山がいい感じ。
旧小川町小学校下里分校で休憩をし、
『カタクリとニリンソウの里』へ。
カタクリはもうおしまいですが、私たちジオポタの花であるニリンソウが満開です。
ニリンソウを眺めたら、東武東上線の線路をくぐり抜けて勝呂(すぐろ)の吉田家住宅へ向かいます。
道端ではシバザクラが満開。
桃も。
棟に煙出しがある民家の庭先には真っ赤な桃。
南に、なだらかな堂平山ととんがった笠山が見えてきました。
今日は最後にあの笠山の向こう側をぐるりと廻り、堂平山との間にある笠山峠を越えるつもりです。
角山に入り、赤浜小川線を渡って小径を進むと突然、かつての畑の向こう側に大きな桜が現れます。この桜は一本立ちではなく二本なのですが、それが一体となってかなり立派に見えます。
その先は小川町原川という地名で、そこを流れる川も原川という名なのでしょうか。この川は道路側の護岸がコンクリートなのであまり雰囲気は良くありませんが、対岸の赤い桃と遠景の山の取り合わせが良いです。
堂平山と笠山の稜線は重なり合ってはっきりしなくなり、官ノ倉山あたりが見えてきました。
東武竹沢駅のすぐ南までやってくると、古い民家を改修した酒屋がありました。
写真では黒く潰れてしまっていて判然としませんが、木造の構造が表しになっていて素敵です。
その隣もちょっと古そうです。こちらは現役の住宅です。
JR八高線の竹沢駅を過ぎるとそろそろお昼です。
ここで昼食をとらないと今日のコース上にはしばらく食堂がないので、勝呂のいつもの蕎麦屋に向かいます。
JR八高線の線路を渡り、『吉田家住宅←』の標識がある信号機から左へ入るとすぐに、目的地の蕎麦屋に到着するのですが、そこにはなんと臨時休業の看板が。がび〜ん!
しかしその隣の、立ち寄るつもりにしていた吉田家住宅でも蕎麦が食べられます。
この吉田家住宅は1721年(享保6年)の建築ですから、300年も生き存えていることになります。すばらしい!
広い土間の東半分は厩だったところで、現在はそこに囲炉裏が設けられており、蕎麦はこの周辺か土間の横の板の間でいただきます。
この時は座敷で春芸展が行われており、そのためかお客が多くて蕎麦は売り切れ! これから打ちますから時間が掛かりますがいいですか、とのこと。ここでいただかないとお昼を食いはぐれるので、お茶をいただきながらのんびりとした時間を過ごしました。
打ち立ての蕎麦はとてもおいしかったです。野菜天ぷらは超大盛りでした〜
吉田家住宅の周囲にものどかな風景が広がります。
吉田家住宅からは小高い丘を越えてその北へ廻り込みます。ここはきつかった!
それから八高線の線路を渡って寄居町へ入るのですが、ここにも小さな峠があります。この二つのピークを越すだけで、私サイダーはへろへろ。ここのところアクシデント続きで身体を動かせなかったので、体力が相当に落ちているようです。後半の笠山峠が心配になってきます。
それに比べて、最近はテニスとロードバイクのトレーニングに励んでいるシンチェンゾーは絶好調!
寄居町西ノ入五ノ坪に下ると、先に色鮮やかな花が見えます。
白は桜、黄色はレンギョウ、薄紫色はミツバツツジ。
特にミツバツツジが見事な色に輝いています。
眼に眩しい!
午後の部の最初の目的地は東秩父村の『花桃の郷』ですが、その入口となるところに八高線の折原駅があるので覗いてみました。
すると運良く寄居方面から列車がやってきました。国鉄がJRになってからローカル線はどんどんなくなりましたが、この八高線はなんとか残ってもらいたいものです。
折原駅から西へ向かうと外秩父の山々が見えてきます。
左端の山は登谷山(とやさん)でしょう。
r294坂本寄居線に合流すると、そこから本格的な上りが始まります。
えっこらよっこらとゆっくり上っていきますが、サイダーはここでもへろへろ。この日は気温がとても高く、25°Cを越える夏日でしたから、これも応えたようです。
寄居町から東秩父村に入ると写真の大きな標識が立っており、ピークに達します。ここには峠の表示がないなと思っていると、この先のカーブミラーに小さな木の板がくくり付けられていて、そこに小谷野田峠と書かれていました。
小谷野田峠からちょっと下ると今度は『花桃の郷』への上り。
『花桃の郷』は東秩父村の大内沢周辺の荒廃した農地に、地域の人々が景観形成のために桃や桜の木などを植えたもので、複雑な地形の中でこれらの花が楽しめます。
大内沢のピークにちょっとした駐車場があり、その上に展望台があったので登ってみることにしました。
この展望台までは強烈な階段が続いており、その途中に巨大なコブシが真っ白な花を付けていました。
向かいの集落は上ノ貝戸。
こうして見ると桃の木が少ないですが、畑単位で根元から伐採された木が見えます。病気かなにかで伐採する必要があったのでしょうか。
まあそれはともかく、この複雑な斜面地は見ていて飽きません。
これで、あの桃が伐採された畑にピンク色があったら、どんなにきれいだったでしょう。
展望台で少しゆっくりしたら、花桃の郷から下ります。
桃の花はこの時すでに最終盤で、日当りの良いところはかなり散ってしまっていました。
大内沢の下の集落は白石で、そこにはこんなミツバツツジが。
r294坂本寄居線に出てこれを南下すると、ほどなく『虎山の千本桜』です。
ここは山一面に桜が植えられています。
山一面が桜というのはかなり珍しいですが、どうしてそんなことになったのかというと、ここは元は採石場だったそうですが、それが行われなくなるとあまりみっともよくない姿になったため、これをなんとかしようと人々が桜を植えることにしたのだそうです。
通称は千本桜で通っているようですが、現地の案内では2kmに1,700本の桜があるとのことで、途中が雛壇状になっており、これも含めると5kmに及ぶそうです。
驚いたことにこの日はここでコスプレ撮影会が行われており、もの凄い数のプレイヤーとそのお付きのカメラマンで一杯でした。あとで調べたら、ここでは桜の時期にいつもコスプレ撮影会が行われているようです。
中腹まで行って帰るころには皆さん引き上げたので、写真にその姿はありませんが。
さて、このあとは笠山峠の予定でしたが、私サイダーはもうバテバテで上れそうにないので、ここで本日終了、小川町へ向かうことにしました。
そう決めたら、脇目を振らず槻川沿いを下って行きます。その槻川のうねりに合わせるようにしてr11熊谷小川秩父線が大きくカーブした先で、ワーレントラス橋の矢岸歩道橋があったことを思い出したので、これを渡ることにしました。その欄干には大正12年とありますから、これは1923年で、今からほぼ100年前にできたものです。
小川町に戻ってきたところで後ろを振り向けば、上る予定だったあのとんがり帽子の笠山がくっきり見えています。
今日は爽やかな気候でしたが、今年はじめての夏日となり気温が高かったこともあり、この3ヶ月間ほとんど身体を動かしていない私にはきつかったです。しかし、やはり春のこの季節の花々は眼を楽しませてくれ、来た甲斐がありました。