ここに来て都心の木々も少し色付いてきました。関東地方の紅葉はそろそろ良い頃合いのところも増えています。ということで、やってきたのは秩父です。
私サイダーは朝一番の電車で都心から西武鉄道と秩父鉄道を乗り継いで三峰口駅までやって来ましたが、この乗り換えは西武秩父駅から御花畑駅まで歩かなければならず、さらに待ち時間が30分もあるのが難です。もっとも御花畑駅には最近では珍しくなった駅蕎麦があるので、これををいただいて時間つぶしをしました。
サンダリアスは横瀬で下車し寺坂棚田に立ち寄ったあと、ミューズパークのイチョウ並木を見て来たといいますが、このイチョウはなんとすでに見頃のピークを過ぎていたそうです。
秩父鉄道には蒸気機関車が走っており、ここ三峰口駅には転車台があります。転車台は先日行った鬼怒川温泉駅でも見ましたが、一時はほとんどなくなった蒸気機関車が最近あちこちで走るようになっていますね。
三峰口駅のすぐ西には御岳山が鎮座しています。ここの紅葉はまだ少し早く色鮮やかとはいきませんが、ボチボチ始まっています。
予定では今日は中津川を遡り、『女郎もみじ』を眺め八丁トンネルへ向かうつもりでしたが、9月に起こった崩落による県道の通行止めがまだ解除されないので、栃本の集落と三峯神社にしました。
栃本は荒川上流の狭い谷の南斜面にある集落で、日当りがよくて気持ちのよいところです。三峯神社は三峰山の標高1,100mに位置し眺望が良く、この時期は紅葉が素晴らしいです。
サンダリアスは栃本を午前中の光で見たいとの希望なので、まず栃本を目指します。
今、道脇を流れているのは荒川。この荒川は、あの東京湾に流れ込んでいる荒川です。ここの荒川の左岸を走るR140は交通量が多いので、右岸の静かな道をどんどこ南西へ向かいます。
しかしこの道は1kmほどしか続かず、万年橋を渡ってR140に合流。するとさっそく、真っ赤なもみじに出会いました。
逆光で眩しい。
大洞第二発電所の入口を過ぎるとほどなく紅葉まつりと書かれた駐車場が出てきます。ここは光岩園地というところのようで、時々イベントが行われているようです。
ここで荒川を覗くと、遥か下を流れています。このすぐ上流にダムがあるせいで水量はかなり少なくちょっと寂しい流れですが、対岸の紅葉はいい感じ。
光岩園地を出るとすぐ、真っ赤な紅葉が。
ここには『金蔵落としの渓流』と描かれた看板が立っていますが、金蔵落としが何なのかの解説はありません。
まあ金蔵落としが何なのかはともかく、ここのもみじはきれいです。
最盛期の少し前ですが、このように緑の葉っぱが残っていると、絵に深みが出るので私は好きです。
『金蔵落としの渓流』を出るとすぐに三峯神社の鳥居が立っています。
今はこの鳥居のところから三峯神社へ向かう人は少ないですが、実はここを入って行くのが本来の表参道です。かなりの山道登り!
私たちが走っているR140も、勾配は緩いもののずっと上りですよ。
三峰口駅を出て30分ほどで道の駅大滝温泉に到着。この先はほとんどお店がないので、ここに入っているファミリーマートで弁当を購入。
ついでにスタッフの方に中津川の通行止めの様子を伺いましたが、やはりまったく通れないとのことでした。ということで、ここからは迷うことなく栃本へ向かいます。
道の駅を出て大滝橋を過ぎるとほどなくR140は二手に別れます。右は大峰トンネルを抜けて甲府方面、そして左は私たちが向かう三峯神社・栃本方面です。
この分岐では川も合わさっていて、右から中津川、左から荒川が流れて来ています。
生コン工場を過ぎて道がヘアピンを描くと、その先はかえで並木で真っ赤。
もう一つヘアピンカーブを廻ると、その先で南へ延びる荒川の谷が見え出します。
折り重なる山々が変化に富んだ景色を作り出しています。
緩く上り続けて二瀬ダム(ふたせダム)に到着。
二瀬ダムの上は三峯神社へ向かう道路になっています。この時期は三峯神社の紅葉を観に行く方が多いのでここまで交通量が多かったのですが、この先それはぐっと減って走りやすくなると思います。
二瀬ダムによってでできた人造湖は秩父湖と呼ばれています。その横のもみじも真っ赤です。
これが秩父湖ですが、サンダリアスは、この日の水量はいつもより少ないようだと言います。
二瀬ダムを出るとすぐに、秩父湖沿いを行く道と上へ上って行く道が分かれます。実はここから栃本へ向かうには3つルートがあります。
低い方から紹介すると、まず、秩父湖に沿って川又へ抜ける道。これは雁坂トンネルまでの近道なのでモーターバイクが比較的多く、湖沿いなのにそれはあまり見えず視界が広くありません。次は私たちがこれから行くかつての秩父往還。三番目は秩父往還の麻生から別れる林道麻生線を上り、さらに森林帯の中を行く道。これは高度はあるもののあまり視界が開かず、暗い針葉樹林の中を通っています。
ここから麻生を経て寺井までの上りはかなりきついのですが、サンダリアスはそんなところもガシガシ行きます。
このあたりの集落の家々は伝統的で開放的なものが多く、南斜面に立っているため、陽の光をいっぱい浴びて気持ち良さそうです。
寺井の先は少し勾配が落ち着きますが、それでも依然道は上り続けます。
左手に西へ延びる谷が見えてきました。
そして右手には赤と黄色の紅葉。
こんな景色の中を栃本を目指してゆっくり進んで行きます。
釣り場の案内看板があるあたりはもみじ並木で賑やかです。
荒川の対岸の山は白石山というようですが、山ひだが多くてピークがわかりません。距離が近いのでもしかするとピークは見えていない可能性もありますが。
もうちょっとで栃本です。ここの標高は740m。楓が良い色になっています。
針葉樹によって左側の視界が閉ざされると突然、先にオレンジ色の塊が見え出します。
栃本に到着しました。ここには真っ赤に染まった楓が10本ほど並んでいます。
ここがトイレの横というのがちょっと難なのですが、そのトイレも品よく造られているので良しとしましょう。
ちょうど良い頃合いです。
gooooooooood!
beautufulllllllllllllllllll!
よ、いい男!
サンダリアスの横にある標識の『不動滝』ですが、これは遥か下を流れる荒川の対岸にあるもので、下ったらもうここには戻ってこられませんから行きません。(笑)
これらの楓の木から西に栃本の集落は広がっています。
栃本もここまで連なってきた集落同様に急な南斜面で、そこに家々がへばりつくようにして立っています。
トイレから500mほど進むと関所跡があります。これまで私たちが通ってきた道は甲府と熊谷とを結ぶ秩父往還(甲州裏街道)で、ここはかつてその往来を監視する目的で武田信玄によって設けられたものだそうです。
関所の役宅は江戸時代に焼失しましたが、現在残るこの建物はその時に再建されたものだそうです。元は平屋でその後2階の建て増しや改築がされていますが、関所の面影を留めているとされています。
かつて人々はあの山を越えて甲州とここを行き来していたわけですが、現在は雁坂トンネルができたのであっという間です。もっともこのトンネルは自転車は通れないので、自転車乗りにとっては、ここ埼玉県と山梨県は相変わらず遠いです。
この集落の中には人が棲んでいない家屋がいくつかあるようです。世の中は便利になったとは言え、今日、ここで現代的な生活するのは難しいのかもしれません。
そういった家屋の多くが伝統的な造りで味わい深いものだけに、残念です。
ここは陽当りが良くて本当に気持ちのよいところですが、冬は雪に埋もれることもあるでしょう。学校や病院はどうしているのかな、買いものはどこでするのかな。現実の生活を考えると、様々な困難が浮かんできそうです。
気持ちのよい眺めを楽しんだら、栃本から引き返して三峯神社へ向かいます。
三峯神社へは一般的には二瀬ダムからr247を行くと思いますが、今日は車がとても多いのでこれは止め、大血川林道を行ってみることにしました。
大血川林道は、R140から荒川の支流の大血川に沿って上り、東京都の最高峰雲取山から北へ伸びる尾根にある霧藻ヶ峰を廻って、最終的には三峯神社まで続きます。
この途中にある大陽寺から三峯神社までは数年前から通行止めなので、とりあえず大陽寺まで行ってみることにします。
まずは荒川を大血川橋で渡ります。
この先で荒川の北岸に目をやると、ごつごつした岩場が見えます。石灰岩です。
かつて秩父往還は山の上の尾根を通っていましたが、明治時代に馬車を通すためにあの岩の上のあたりにトンネルが掘られました。それが大達原(おおだはら)の手掘り隧道で、これは今日でも通ることができます。
カーブを廻ると荒川が離れ、道脇を流れるのは大血川になります。最初から勾配きつし!
サンダリアスはあっという間に見えなくなってしまいました。
道は南へ向かっています。
時は12時45分。西側の山は日陰になっていて暗く沈んでいますが、東側の山は陽の光に照らされた紅葉がきれいです。
横を流れている大血川の流れです。
この少し上流はもっと素敵な渓流の様相をしているのですが、勾配がきつくて立ち止まれなく写真は撮れませんでした。
大血川橋から4kmほど行くと大陽寺の入口らしきところに辿り着きます。そこには写真のような小さな石仏が置かれています。
小さな橋で大血川を渡ると、
大陽寺への上り口でしょうか、巨大な灯籠が石段の両側に立っています。
この向かいは観光釣り場でうどん屋もあります。
その先には見事な楓の紅葉。
観光釣り場の駐車場を過ぎると道が分かれます。ここで大血川は西谷と東谷に分かれているのです。大陽寺は西谷の奥にあり、南西方向へ進みます。
この少し先に車の折り返し地点という案内があるガードがありましたしたが、自転車は止めていないようなのでもう少し進んでみます。
西谷はまだ13時を少し過ぎたばかりなのに陽の光が届かず、ちょっと薄暗く感じます。
西谷は谷の名なのか沢の名なのかよくわかりませんが、国土地理院の地形図では沢の名のように見えます。
道の角度が少し変わって、逆光に照らされたもみじが現れました。背後の黄緑色との柔らかな対比がいいです。
道がカーブして日差しを受けるようになるともみじ並木になります。
ここは寒暖差があまりないのかビビッドな赤ではなく、すこしくぐもったような色合い。
背後の山は日影になっていて沈んだ色。
日が当たっているところとそうでないところのコントラストが面白いです。
このもみじ並木を過ぎると、周囲は黄葉が多くなります。
赤いかえでは華やかですが、黄色の木々もデリケートなグラデーションで味わいがあります。
沢に近づいたところでヘアピンカーブを廻ってさらに上って行くと、少し勾配が緩んできました。その先にサンダリアスが待っていました。
大陽寺の入口です。
ここもかえでが並木になっていて、うしろには山が見えます。栃本のようなのびやかな広がりはありませんが、まずまずの景色です。
大陽寺はどこかなと思って見回すと、なんとここから下に続く道がありその奥にありました。お寺の向こうに見えるのは熊倉山でしょう。
大血川林道は大陽寺に下る道の脇にゲートがあり、そこからさらに先へ延びており、標高1,200mまで上ります。
この先は路面不良のため通行止めのようですが、このあたりは清掃されていないため少し小石などが見られるものの、あまり問題がないように見えます。実際に行けるかどうかは別にしても、この先はピークまでさらに高度で300m以上のぼらなければならない上、そこまでのほとんどは日影なので紅葉は期待できないとあり、ここから引き返すことにしました。
再び大血川林道の紅葉を眺めながら、ビューンと下るサンダリアス。
西武秩父駅から帰ろうかと思いましたがまだ時間があるので、サンダリアスが朝行った寺坂棚田に寄ってみることにしました。秩父のシンボル武甲山はこの時刻は切り崩された部分が光の加減であまり見えずに、それほど見にくくは感じません。
秩父までずっと下ってきたので、横瀬から寺坂棚田までの上りはきついです。この棚田は夏に行われる『ホタルかがり火まつり』が有名で、つい先日まで彼岸花がきれいに咲いていたはずですが、この時期は農作業をする人もおらず、ひっそりしています。
上がりは横瀬駅。ここは木造のきれいな駅舎で、階段を上り下りせずに電車に乗り込めるのがいいところ。このすぐ横の観光案内所は食堂兼売店でもあり、ここでビールを購入し、渇いた喉に黄金の液体を流し込みました。
栃本は久しぶりでしたが、相変わらず素敵なところでした。大血川林道は午後になってしまったので陽の光があまり届かなかったのが残念ですが、ここは交通量が少なく、静かで良い雰囲気でした。