不忍池
2025年の私たちの桜は先週の南伊豆から始まりました。そこに咲いていた河津桜(カワヅザクラ)は東京でもそろそろ見頃を迎えつつあるので、今日はほぼ定例コースとなっている、上野〜浅草〜旧中川というルートで河津桜見物といきましょう。
集合は上野公園の不忍池。ここには数種類の鴨などがいるのですが、すでに越冬を終えて飛び立ってしまったのか、ユリカモメを除くとその姿はほとんどありません。最近、鴨にはまっているサリーナはこの光景にがっくり。旧中川に望みを繋げます。
不忍池の面々
不忍池にやってきたのは左から、サリーナ、サイダー、ミッチー、レイナ。今日はどこからでも参加OKなのでこのあとも少し参加者が増えるでしょう。
不忍池中の道
不忍池の中の道は桜並木ですがこればまだ。ここはソメイヨシノですから、あと一月以上待たないといけません。
不忍池東岸の河津桜
しかし東岸には数本の河津桜が植えられており、これは咲いていました。
不忍池東岸の河津桜その2
この桜はオオシマザクラとカンヒザクラの雑種にさらにカンヒザクラが交雑した種で、オオシマザクラ由来の大きな花と、カンヒザクラ由来の赤い色と早咲きが特徴です。
大漁桜と弁天堂
その隣には大漁桜(タイリョウザクラ)というこれも赤みが強い桜が咲いていました。
この桜はオオシマザクラとカンザクラから作り出されたものだそうです。
大漁桜
大漁桜をよく見ると、花は河津桜より少し濃いピンク色で、蕾の色はそれよりかなり濃ように感じます。
五條天神社
不忍池から上野公園の大噴水へ向かうと、その上り口に五條天神社があります。
この神社はそう大きくはありませんが、境内の梅がきれいです。例年だとこの時期はすでに梅の花は終わっている頃なのですが、今年の梅は遅く、ピークは少し過ぎているもののまだ見頃です。
五條天神社のしだれ梅
ピンク色のしだれ梅は豪華な印象です。
五條天神社の白梅とメジロ
白梅ではメジロが蜜を吸っていました。春先の梅が咲く頃がメジロをもっとも多く見かける時期ですね。
五條天神社の河津桜と白梅
五條天神社の入り口には河津桜と白梅が並んで咲いています。河津桜はもう少し赤みが強いものが多いように思いますが、ここのそれは淡く、白梅とのコントラストがちょうどいいように感じます。
上野公園さくら通り
五條天神社で梅と桜を楽しんだら上野公園のメインストリートであるさくら通りを行きます。
ここはソメイヨシノなのでまだですね。
寒桜
そんな中で1本だけすでに葉っぱが出ている桜がありました。寒桜です。上野公園にはこのほか小松乙女というすでに咲き終えている桜もあります。
上野公園大噴水
上野公園の大噴水です。ここはいつも人でいっぱいなのですが、今日はまだ時間が早いのか、かなり空いていました。
東上野から見る東京スカイツリー
さて、上野公園を出て浅草へ向かいます。
正面にはバーンと東京スカイツリー!
浅草六区通り
浅草はだいぶ人が戻ったようで、この時刻でもそれなりに賑わっています。
人力車
人気の人力車も活躍しています。
浅草寺
いつも待ち合わせに使う浅草寺ですが、この日ここで合流する者はいないので、様子をちらっと見ただけで先へ進みます。
台東区立隅田公園から見るスカイツリー
隅田川沿いに出ました。ここは台東区側の隅田公園で、スカイツリーが対岸に聳えて見えます。
梅めぐり散歩道
この隅田公園を北へ進むと『梅めぐり散歩道』があります。
河津桜の季節は梅には少し遅いことが多く、すでにピークを過ぎたものも見られますが、遠目にはまだきれいに見えます。
梅めぐり散歩道の枝垂れ梅
この枝垂れはまあまあかな。
梅めぐり散歩道のピンク色の梅
八重咲きですね。
梅めぐり散歩道の白梅
白梅もまずまず。
ここでコンタとサンダリアスが合流しました。
隅田川の遊歩道を行く
さて、ここからは隅田川に沿って北上します。
うしろには吾妻橋の袂に立つアサヒビールの金ピカタワーが見えています。
桜橋にて
人道橋の桜橋にやってきました。この橋は現在改修中で外側には覆いが架けられていますが、通行には支障がありません。川上側に向かって記念撮影です。左から、ミッチー、サンダリアス、コンタ、レイナ、サリーナ。
このあとは恒例のパターンで山本やで桜もちを買ったのですが、2年前と同じ値段でした。がんばっていると言っていいですね。
白鬚橋
リベットバチバチの白鬚橋を渡り、
荒川区の隅田川の遊歩道
荒川区に入って隅田川の遊歩道をどんどこ。
このあたりで川面に浮かぶのはユリカモメで、この鳥はかつては都鳥と呼ばれていました。このあたりの都鳥の名声は10世紀の伊勢物語に遡ります。
名にしおはば いざこと問はむ みやこどり 我が思う人は ありやなしやと --在原業平--
在原業平が白鬚橋のあたりにあった『橋場の渡し』を渡った際(と思われる)に詠んだ歌です。ユリカモメは渡り鳥で夏になる前にシベリアに旅立ちます。
汐入公園
汐入公園に入ると河津桜が何本か咲いていました。
フクロウ
子供が『あっ、フクロウ!』と叫ぶのでそちらを見ると、ん、どこだ? フクロウは迷彩色なのですぐには発見できないのでした。(笑)
このフクロウ、もちろん野生ではなく、飼い主がいるものでした。
桜もちをいただくサイダー
フクロウにびっくりしたら、河津桜の下で先ほど買い求めた桜もちをいただきます。甘さ控えめの餡子にちょっとしょっぱい桜の葉っぱに包まれた薄い皮が美味しいです。
汐入公園の河津桜
汐入公園の河津桜はこんなです。どの桜も同じように見えますが、やはり場所場所で微妙に違うのが面白いですね。
荒川サイクリングロード
汐入公園で一休みしたら千住汐入大橋で隅田川を渡り、荒川サイクリングロードに入ります。
木下川水門
このサイクリングロードを3-4kmほど下ると、あまり目立たないのですが木下川水門(きねがわすいもん)があります。
荒川の開削により中川は現在の中川と旧中川とに分断されました。その時、荒川と中川、そして荒川と旧中川との間には水門が設置されたのですが、この木下川水門が旧中川との間に設けられたそれです。
旧中川上流部
木下川水門から荒川の土手を乗り越えて旧中川に下ると、そこは河津桜の並木です。
まだ満開ではありませんが7分咲きほどのものもあり、なかなかいい感じです。
旧中川の河津桜の下にて
この桜の下にいたのは最近は自転車のイベントにはまったく顔を出さなくなったルビオでした。ここは家から近いのでやって来る気になったのだとか。
旧中川の河津桜
朝方は曇りだったのがここに来てだいぶ青空が広がったためか、この河津桜は今日これまで見てきた中で一番輝いて見えます。
旧中川沿いを行く
ルビオとひと喋りしたら旧中川を下ります。
旧中川を行くコンタ
コンタは事情があってここのところ走れなかったのですが、つい最近復活して久々に登場です。
ミッチー、ルビオ、サンダリアス、サリーナ
小さなタイヤが並んだ並んだ。珍しく、ミッチー、ルビオ、サンダリアスの3人は14インチホイール!
ルビオとカヤック軍団
ルビオが走るのを見たのは10年ぶりくらいかな。
この日の中川はカヤックの人々で大賑わいです。
レイナ
今日は暖かくていいですね〜 と、正月ポタリングに次いで今年二度目の登場のレイナ。
ここで川に浮かんでいるのは長〜い競技用のボートです。
カモとユリカモメ
川に浮かんでいるのはボードだけではありません。鳥もたくさん。ここにいるのはカモとユリカモメのようです。
ヒドリガモ/オス
カモの仲間は数種類います。黒くて嘴が赤いバン。同じバンでもちょっと大きいオオバン。チビ助でよく潜るのはカイツブリ。
これはヒドリガモのオス。頭が赤茶色で額部分がクリーム色(写真では少しだけ見える)、体の横にはっきりした白い羽があり、比較的見分けやすいです。
ヒドリガモ/メス
そしてこちらがそのメス。
多くの動物はオスはきれいでメスは地味なことが多いですが、カモの仲間もほぼそうで、ヒドリガモもメスは褐色であまり特徴がありません。
総武線の橋梁と平井の河津桜
サリーナとルビオによるカモ講釈を聞いていたらずいぶん時間が経ってしまいました。先へ進みましょう。
総武線の線路が近づくと対岸に桜並木が見えます。平井の河津桜です。あそこへ行ってみましょう。
亀戸中央公園の梅林
その前にサンダリアスが亀戸中央公園の梅林がまだ見頃だと言うので覗いてみることに。
梅林にて
ここの梅はほぼ満開と言ってよさそうです。
亀戸中央公園の梅
淡いピンク色の大きな花です。
都営平井一丁目アパートと河津桜
亀戸中央公園の梅に満足したら、先ほど見た平井の河津桜です。
ここは総武線の北側は物流倉庫らしい巨大ビルで、南側は大きな都営アパートというのがちょっとナンですね。
ふれあい橋より旧中川を望む
人道橋のふれあい橋を渡り、旧中川の左岸へ渡ります。ここは川の先に東京スカイツリーが見える撮影ポイントで、この日はそこにボートがやってきてちょうど良いアクセントになってくれました。
ふれあい橋にて
一人いない・・・
都営平井一丁目アパート前にて
平井一丁目アパートの前にやってきました。ここはほぼ満開です。
この桜、河津桜かと思っていましたが標札に『オオカンザクラ』とありました。調べてみるとここには大寒桜が7本、河津桜が28本植えられているようです。
小村井香取神社
いつもだとこの先は旧中川の出口まで下るのですが、この日は途中ゆっくりし過ぎてだいぶ時間が経ってしまいました。そこで旧中川はこれでおしまいにして小村井の香取神社に向かうことにしました。
小村井香取神社香梅園
この神社は香取神宮の分社で、平安時代の末期の建立と伝わります。ここには香梅園というものがあり、梅まつりが今日まで行われています。
この付近には江戸時代には『亀戸梅屋舗(かめいどうめやしき)』などたくさんの梅の名所がありました。この神社のすぐ東側には1910年(明治43年)まで『小村井梅園』があり、香梅園はそれを再現したものだそうです。
香梅園の枝垂れ梅
ピンク色の枝垂れはそろそろおしまい。
香梅園の白梅
清楚な白梅はいい感じ。
十間橋から見た東京スカイツリー
もう桜も梅もおなかいっぱいということで、亀戸天神には寄らずに帰宅コースに入ります。
北十間川に沿って西へ向かえば、あの東京スカイツリーがバーンと。
東武橋袂の河津桜と東京スカイツリー
そして東武橋の袂には河津桜が咲いています。
大横川親水公園のスカイツリーミラー
東武橋のすぐ西にある大横川親水公園に面白いものがあるので久しぶりに行ってみることにしました。
そこにあるのは大きな凸面鏡と空に向かって伸びるように反り立つオブジェ。鏡を覗き込むとスカイツリーと道路と自分が映り込み、振り返れば道路がスカイツリーの展望台へ続くよう見えます。反対向きになると、自分が道路を登って展望台へ向かっている写真が撮れます。
墨田区立隅田公園
隅田公園は台東区側と墨田区側とにありちょっと紛らわしいのですが、こちらは墨田区側のそれ。スカイツリーができたことで再整備され、様々な店舗もできて賑やかです。
すみだリバーウォーク
隅田川は『すみだリバーウォーク』で渡ります。これができたことで川向こうにとても行きやすくなりました。
山谷堀公園
台東区側の隅田公園を抜けてやってきたのは山谷堀公園。
この公園はその名の通りにかつてあった山谷堀の跡で、その土手は日本堤(にほんづつみ)と呼ばれていました。江戸時代にはここに今戸橋が架かり、その両側には有名な船宿の竹屋と有明楼がありました。
ここからは山谷堀公園を通ってかつて『新吉原』があったところを通り抜けてみましょう。
山谷堀公園を行く
吉原遊郭ははじめは現在の日本橋人形町にありましたが、明暦の大火(1657年)の後に現在の千束3-4丁目に移転させられましました。前者を元吉原、後者を新吉原といいます。このあと吉原という場合は後者を指すことにします。
吉原へ向かうもっとも一般的な方法は、隅田川を猪牙舟(ちょきぶね)という2~3人乗りの小型の船で今戸橋あたりまでやってきて、そこから籠に乗って日本堤を行くというものでした。山谷堀は猪牙舟でも進めなかったようです。
吉原大門交差点と『見返り柳』
吉原の入口となるのがここ吉原大門交差点で、そこには遊廓で遊んだ男が帰りにこのあたりで名残を惜しんで後ろを振り返ったという『見返り柳』があります。現在見返り柳と呼ばれているこの木は、1757年(宝暦7年)の吉原細見『なみきのまつ』の序文では『出口の柳』と書かれています。
見返り柳から吉原の大門(おおもん)へ向かう緩い坂は衣紋坂(えもんざか)と呼ばれていました。その名は遊客がここで衣紋をつくろった(身なりを整える)ことに由来するようです。
五十間道
この衣紋坂から先の『S』の字に曲がりくねった道は『五十間道(ごじっけんみち)』といいました。名は日本堤から大門までおよそ五十間だったことに由来するようで、道が『S』の字になっているのは遊郭へ出入りする客の姿が日本堤から見えないようにするためだそうです。このS字カーブは現在もほぼかつての形状のままのように見えます。
明治時代の吉原の大門
五十間道の先には吉原唯一の出入口である大門が立っていました。この門は当初は質素だったようですが、江戸時代の終わりには黒塗りの冠木門となっていたようです。
明治時代になるとアーチ形に変わり、材料も木から鉄へと変わっていきました。
大門の変遷
その大門の変遷がわかる図が新吉原花園池跡(弁天池跡)にありましたのでここに転載させていだたきます。
さて、この大門をくぐると吉原遊郭です。吉原遊郭は横が約330m、奥行きが250m弱の四角い形をしており、文字通り『郭』でした。遊郭の周囲には塀が張り巡らされ、さらにその外側には『お歯黒どぶ』と呼ばれる、幅が5m以上もある堀があり、遊女たちは抜け出せない造りになっていました。
かつての吉原のメインストリートの仲の町(なかのちょう)には季節ごとの飾り付けが行われ、春には桜が運び込まれて植えられたといいます。この仲の町の両側に引き手茶屋が並び、遊客はまずこの引き手茶屋の世話にならなければなりませんでした。一流の遊女屋は直接客を店にあげないで、引き手茶屋を通すのが習わしでした。花魁らがいる遊女屋は仲の町に直交する通りに並んでいました。
吉原神社
仲の町は現在は仲ノ町通りとなり、これを行くと吉原神社があります。
吉原には稲荷社が五つありましたが、これらが明治時代に合祀され吉原神社が創建されました。今、NHKで放映されている大河ドラマ『べらぼう』で主人公の蔦屋重三郎がお詣りするお稲荷さんはこの五社のいずれかなのでしょう。後に花園池の吉原弁財天も合祀され現在に至ったそうです。ここにはお穴様という神社の土地をお守りしているという地中の神様も祀られています。
新吉原花園池跡
それでこちらが合祀された吉原弁財天の境内で、かつてここには弁天池がありました。
関東大震災で吉原遊郭は壊滅、倒壊した建物から出火し、遊女らは焼け出されてこの弁天池に殺到します。しかし、炎や煙が容赦なく襲いかかったため、次々と池に飛び込んで500人以上が亡くなるということになったのです。現在ここにはその殉難者を慰霊する観音像が立っています。
おとりさまの鷲神社
吉原のすぐ近くにあるのが『おとりさま』こと鷲神社(おおとりじんじゃ)。『酉の市(とりのいち)』、縁起熊手の『かっこめ』で有名なこの神社は、鷲→酉→取り と転じ、水商売の人々の人気を集めてきました。熊手は金を『かき込める』からだそうです。酉の市の日はなでる場所により違うご利益を授かると伝えられる『なでおかめ』がお披露目されます。
酉の祭の日は吉原でも特別な日で、郭の門はすべて開かれ、通常は出入り禁止の女たちも自由に出入りできたそうです。そして遊女はというと、この日は必ず客を取らねばならなかったそうです。
さて、本日は以上で終了。出発地の上野公園に戻りますが、途中松が谷でキムチを買って帰りました。(笑)