サンワプタ滝を出発
今日はバンフからジャスパーまでの旅の最終日。
サンワプタ滝の入口を出発すると、アイスフィールドパークウェイの標識には『ジャスパー53km』とあります。 残す所あと僅かです。
エンドレスチェーンリッジを後ろに
後ろを振り返れば、エンドレスチェーンリッジのギザギザした稜線がリズミカルに続いています。
遠くにエイディス・キャベル山
前方遠くに一際目立つきれいな形の山が見えてきました。 あれがエンジェル氷河を抱くエイディス・キャベル山(3,368m)です。
今日はジャスパーにまっすぐ向かわず、まずあのエイディス・キャベル山に上り、エンジェル氷河を見るつもりです。
この先しばらくは、このエイディス・キャベル山が目印になります。
不明山
かっこいいけれど名前がわからない山が左手に。
奥にドラゴンピークを抱える山塊ですが、地図にこちらのピークの名は見当たりません。
アサバスカ川とクリスティー山
アサバスカ川が現れると、その対岸ではクリスティー山がピョコンとその頂を見せています。
アサバスカ川は今日の出発地のサンワプタ滝付近で、昨日まで脇を流れていたサンワプタ川にチャバ川が合流した流れです。
大きくなってきたエイディス・キャベル山
進むにつれ、あのエイディス・キャベル山が徐々に大きくなってきます。
後ろにクリスティー山
このあたりはフラットに近い穏やかな下りで、快調に進みます。
左にフライヤット山、先にエイディス・キャベル山
クリスティー山が後ろに去ると次に現れる山の塊は、フライヤット山(3,361m)です。
その頂は、手前のにあるいくつかのピークに隠れて見えないようです。
フライヤット山展望所にてエイディス・キャベル山を背後に
道が穏やかにカーブするところで路肩が膨らみ、駐車スペースができています。 こういったところはたいてい山の展望所になっています。
正面にフライヤット山が手前の丸みを帯びた三つの塊を見せ、先には山頂の尖ったエイディス・キャベル山が。
ミュール鹿
この展望所の先、道が穏やかに上り出したところで鹿さんと遭遇。
道端で木の芽かなにかをむしゃむしゃ。 このあたりの鹿さんは二種類いて、それらはとても良く似ているのですが、こちらはミュール・ディアーでしょう。 耳が大きく、尻尾は白だけれどその先端が黒いのが特徴だそうです。
もう一方はホワイトテール・ディアーといい、尻尾の外側は茶色ですが内側が白く、走る時にこの尻尾を立てるので内側の白がよく目立ち、白尻尾の名が付いたそうです。
白岩ヤギ
そしてすぐその先ではこんな方がお出ましに。 白岩ヤギ(マウンテン・ゴート)さんです。
この方、普通は標高の高いサブ・アルバインゾーンやアルバインゾーンの目もくらむような岩場に住んでいるそうです。 どうしてそんなところで生活できるのか。 それは開閉できる特殊なひづめを持っているからで、このひづめで岩をガシッと掴むのだそうです。
山羊の名が付いているけれど、どちらかというと山羊よりカモシカに近いそうです。 夏場の今は体を覆う毛が少なく身軽な感じですが、冬になるとふかふかの毛が生えるそうです。
展望所からアサバスカ川と山々を臨む
このあたりには動物が多く出現するようです。 それはこのあたりに動物が好む塩分などを含んだ地面が露出した、アニマルリックと呼ばれるところがあるからです。
坂の上に展望所がありました。 現地には標識もなにもなかったのですが、ある資料には『ヤギと氷河の展望所』の記載があります。
中央にフライヤット山のピーク
『ヤギと氷河の展望所』から道は再び穏やかな下りとなります。
後ろではフライヤット山の山頂がようやく顔を出しました。
アサバスカ滝
アイスフィールドパークウェイが旧道と分れるところにはアサバスカ滝があります。
この滝も昨日のサンワプタ滝同様にかなり小さいのですが、ここは廻りに巡らされた散策路の造りが秀逸。 滝はいろいろな角度から見渡せて、かつて水の流れがあったところだという谷底の散策も楽しめます。
旧道93Aのリーチ湖
アサバスカ滝からはアイスフィールドパークウェイを離れ、旧道の93A号線を行きます。 この道は旧道だけありほとんど車は通らずひっそりとしていて、のんびり進むことができます。 しかしちょっと上りです。
リーチ湖の先には、あのエイディス・キャベル山が尖った山頂を見せています。 このあたりから道は下り出し、周囲は深い森となり少し寂しい感じに。
『なにか出てきそうね~』 と言っていたら、でた~~~~、黒クマさん。 森の中をのっそのっそと歩いています。 以前出会ったような子グマではなく、今度は立派な大きなクマさん。 カメラを取り出している隙に森の中へと消えて行ってしまいました。
アサバスカ川とウィールプール川の落合
クマさんをカメラに納められなかったのを残念がりながら先へ進むと、森が薄くなり、川に出ました。
ここはアサバスカ川とウィールプール川が出合うところで、手前と向こう側とで川の色が変わっているのがわかります。
アサバスカ川沿い
めずらしくここは川岸のすぐ近くを道路が通っていて、川面が近くいい気分です。
いよいよエイディス・キャベル山への上り
下りだった道が上り出し、少しするとエイディス・キャベル山方面への道が分れます。
この道を入ると本格的な上りになります。 道はいくつかヘアピンを描いて高度を上げて行きます。
正面にエイディス・キャベル山
ここは14kmで500mの上り。 斜度はほぼ4~5%と一定で大したことはありませんが、少々長い!
えっちらおっちらとペダルを回し続けます。 朝はお陽さまが顔を出していたのに、ここに来て空には重い雲が覆い被さっています。
上って上ってさらに上ると、前方にバ~ンと岩の壁が。 ついにあのエイディス・キャベル山が間近に姿を現しました。 その山頂はどうやら雲の中のようです。
上部にエンジェル氷河がちらり
樹間からキャベル湖のエメラルド色が覗くと、終点はもうすぐ。 空からは冷たい粒が落ちてきました。
白い縞々岩山の手前に茶色の岩の塊が現れると、その向こうの縞の一部がとても厚いことに気がつきます。 あれがエンジェル氷河です。
上にエンジェル氷河、下にキャベル氷河
これまで上りだった道が思いがけず下り出すと、茶色の岩山の前の駐車場に到着しました。 ここからはまだエンジェル氷河の全貌は見えません。 その全貌を確かめるためにちょっとしたハイキングに出かけます。
まずエンジェル氷河の下にできている湖に向かって歩き、途中からちょっと大きな石が積み重なったモレインを上ります。 このあたりでようやくエンジェル氷河はほぼ全貌を現します。 その下にはかつてはエンジェル氷河と繋がっていたキャベル氷河も見えます。
キャベルメドウへ向かう
このモレインの間からはピー、ピーという鳴き声が。 探してみると、いたいた、ピカ(ナキウサギ)ちゃん。
トレイルはモレインからいつの間にか針葉樹林の中を進むようになり、足元には高山植物が花を咲かせるようになります。
正面にエンジェル氷河
やがて道は二手に分れ、一方はさらに高みにある花畑のキャベルメドウへと続き、もう一方はエンジェル氷河の展望所へと続きます。
雨降りではゆっくり花畑を歩くこともできないので、先の展望所へと向かえば、そこからはエンジェル氷河が真正面に。
しばし佇んでこの氷河を眺めていると、突然の雷! ドーン、という音が氷河の上から聞こえてきます。 しばらくしてまたドーンという音。 しかし雷にしてはちょっと変で、光はなく音も少し雷とは違うよう。 どうやらこれは氷河の一部が落ちてたてる轟音のようなのです。 エンジェル氷河はこの上のどこかでその一部を落下させているのでしょう。
山の麓がジャスパー
帰りはキャベル氷河とその前にできた湖に寄り、最近まで氷河があった後に残ったモレインから木が芽を出し、これから森になろうという様を見ながら駐車場に戻りました。
自転車の下りはあっという間。 山の上では雨だったお天気も、高度が下がれば雲が高くなり、雨は上がります。
93A号線に戻ると先に山並みが見え出します。 あの山々の麓にジャスパーの街は広がっているはずです。
アイスフィールドパークウェイとピラミッド山
93A号線がアイスフィールドパークウェイと合流すると、車がぐっと増えてきて、先にはジャスパーの裏山、ピラミッド山が大きくなってきました。
ワプティ・トレイル
車の多さが気になり出す頃、ワプティ・キャンプグラウンドの入口に辿り着きました。
そこからはアイスフィールドパークウェイに沿ってダートのトレイルが延びています。 路面は固く締まっていて走りやすそうなのでこの道を行ってみます。
再びアサバスカ川の流れに出合う
トレイルはいつの間にかアサバスカ川の脇を走るようになり、ヘイゼルアベニューに入ればカナディアンパシフィック鉄道の線路を超えて、ジャスパーの街中に到着。 ジャスパーはバンフほど観光客が多くはなく、もっとのんびりした雰囲気の街です。
ここになんとか、カナディアンロッキーの背骨となるバンフからジャスパーまでの道のりを走り切ることができました。
明日からはちょっと背骨から枝を伸ばし、ジャスパー付近を散策します。