今朝はホテルのバルでゆっくり朝食をとり、9時過ぎにホテル発。空は雲に覆われ、気温はかなり低いので、雨用ジャケットを着込んで出発です。
ホテルの裏の道を行くと、すぐにエブロ川に出ました。昨日はずっと幹線を走ってきましたが、今日はしばらく裏道を通ってみることにしました。
エブロ川を渡り、しばらく行くと教会がありました。アレニージャス・デ・エブロのサンタ・マリア教会です。
この道は農作業のサービス路として使われているようで、とうもろこし畑や牧草地の間を抜けていきます。今日は日曜日だからか、ほとんど人にも車にも出会いません。
前方の小さな丘に黄色い固まりが見えました。ひまわり畑です。下から見ると花はみんな後ろを向いていました。お日様は反対方向だったんですね。というわけで、わっせわっせと丘を上って振り返ります。
8月も中旬なのでひまわりはもう終わりかなと思っていましたが、ここではちょうど満開でした。うん、いい感じ!
エブロ川を介してうしろに見えているのは幹線沿いのルエレロの村でしょうか。
さらに進むと、道が二手に分かれています。右に折れて坂を上っていくと、赤い屋根の教会の塔が見えてきました。サン・マルティン・デ・エリーネスの教会です。
この教会、コレヒアータ・デ・サン・マルティン・デ・エリーネスは、カンタブリア地方で最も古いものの一つと言われる12世紀のロマネスク様式のものです。この地域の中世の教会としてその大きさ、美しさは際立っており、1931年に国の歴史文化遺産に指定されているそうです。
外観では、特に東側に丸く突き出たアプスに存在感があり、緑の芝生にすっくと立っています。教会には鍵がかかり、残念ながら中に入ることはできませんでした。
教会の前には広場があり、人間にはバルが1軒、そして牛たちには水飲み場がありました。幹線からは離れた少し小高い丘の上、のんびりと景色を見ながらくつろげる広場です。
サン・マルティン・デ・エリーネスから丘を下って1.5kmほどで、再びエブロ川と出会います。ここには古いアーチの石橋が架かっており、ハイキングルートの拠点にもなっています。
ここで思案のしどころ。川の右岸を行けばダートのハイキングルート、左岸を行けば幹線の舗装路です。まあ、幹線といっても交通量の少ないほぼ1車線の道路なのですが。
そして当然サイダーはダート好き、ちょっと見た目は走れそうなダートなので、サリーナもOKして右岸のダートを走ることにしました。最初の道は車が通れるくらい広く、ハイキングの家族連れにも出会いました。前には大きな傾斜の台地がどんと座っています。
しかし幅広い道は1kmほどしか続かず、すぐに森の中の細い道になりました。両側から木々が迫っていますが、路面は締まっていて走りにくくはない。
そしてエブロ川のすぐ脇を走る道となります。このあたり、ビジャエスクーサ・デ・エブロ(Villaescusa de Ebro)までは、牧草地や畑もあって走るのには問題なし。
さて、ここからが自転車にとって試練の道です。何せハイキングコースですから。
エブロ川沿いの森の中は、緑豊かで静か、せせらぎありとすばらしい雰囲気です。でも、マウンテンバイクではない私たちの自転車ではなかなか思うように走れません。そして、日曜日というのにほとんど人はいない。
小川を突っ切るところもありました。やっとここで出会ったハイカーは、私たちを見て「大変だね〜」とエールを送ってくれました。
走れるところもあります。落ち葉を踏みしめてハンドルを握りしめ川沿いを行く。それはそれでとっても楽しいです。
でも木の根っこに阻まれたり石段が現れたりして、押しの場面も少なくありません。
こんなダートが1時間以上続き、次第に路面が砂地になってきて走りにくいことこの上ない。さすがのサイダーも「もういい加減疲れた〜」。疲れても、スタート地点の石橋から約8kmほどは対岸に渡る橋は全くありません。
しかし、そのうち森が開けて周囲が明るくなってきました。
そして見渡せば、なんと地層を模様にした奇岩の壁がそそり立って周囲を取り囲んでいます。ちょっと押せばすぐ崩れそうに見えるアーチ型の岩も見える。
そして左手、エブロ川の対岸の丘の中腹には、木々の間から石造りの集落の姿が見えます。ついに、橋のあるオルバネハ・デル・カスティージョに着いたようです。
奇岩の下、待ちに待った橋が現れました。ああ、よかった〜 と記念写真。
エブロ川は奇岩の下、淡々と流れています。ここは、ハイキングコースとしては楽しそうでお勧めです! 自転車は。。?
ところで、ここはカスティーリャ・イ・レオン州です。エブロ川沿いのハイキングコースを走る途中で、ずっと走り続けたカンタブリア州を出ていました。
橋を渡って左岸を少し進むと、オルバネハ・デル・カスティージョの見所その1が現れました。道路を介して右側は、青々とした清水が段状の天然のプールを構成しています。
青い清水、そして周囲には草花が咲き緑が覆い、幻想的な風景です。この水はエブロ川へと注がれています。
そして左手を見ると、上の洞窟から流れ出る清水が集落の中を通り、幾重にも広がる滝となって流れ込んでいます。清らかな水は、石造りの建物と苔に覆われた岩、そして木々の間を伝って間断なく流れ落ちてきます。この美しさが写真で伝わるかどうか。。
オルバネハ・デル・カスティージョはエブロ川や支流の水がつくった奇岩の美しい風景を楽しめる村ですが、実は集落は幹線道路沿いではなく道路から50mほど上った斜面地にあります。車で入れる道もあるようですが、ちょっと離れているので私たちは自転車を押して細い急坂を上ります。上り始めてすぐに後悔。「ああ、自動車の道で入ればよかった。。」へろへろ。
それでも上ってみれば、村は石造りの迷路のようで楽しい。とりあえず飲み物休憩を、と入ったのは、エル・リスコというテラスのあるバル・レストラン。ここでオリーブをつまみにカニャを飲みながら、目の前の奇岩の風景をゆっくり堪能しました。
ちなみに「エル・リスコ」とは、険しい岩山の意味ですね。
休憩を終えて、街の中の細い路地を進みます。集落のすぐ上には地層がむき出しになった岩が張り出しています。
そして、少しにぎやかな集落の中心と思われる場所に出てきました。今日は日曜日、ハイキングコースでは出会いませんでしたが、町には観光客が結構訪れています。
町の中心に、壁のような岩から流れ落ちる小川がありました。この小川が、先ほど見た滝になってエブロ川に注いでいるのです。ここに自転車を置き、まずは周辺の観光スタート。
小川の正面の岩壁には「水の洞窟」と呼ばれる洞窟があります。この洞窟から湧き出たせせらぎが小川になっており、その源泉を見ることができます。
低い天井に頭をぶつけそうになり、足下はゴツゴツした岩で、かつ濡れているので慎重に進むと、水の流れる音が大きくなってきました。
このあたりから水が湧き出ています。こうした流れが石灰岩の岩を浸食し洞窟をつくり、ついには陥没して急峻な谷を構成しているのです。いわゆる「カルスト地形」ですね。
さて、次はハイキングです。といっても往復1.5kmほど、この村を一望できる高台まで上ります。岩壁の隙間の斜面に立ち並んだ家々の間、かなり急な斜面を上っていきます。
小川のある中央の広場からちょっと上ると、すぐにエブロ川を挟んだ向かい側の奇岩の壁が姿を現しました。
さらに上っていくと、対岸の尾根にそそり立つ屏風のような岩の全景が見えてきました。奥の方の岩はすでに崩れているのか、歯が欠けたように見えます。そして、もう間もなく崩れそうに見えるのも。こんな景色は見たことがありません。
そして、オルバネハ・デル・カスティージョの村と谷、それを取り囲む岩山を一望に見渡せる展望スポットにやってきました。(TOP写真)
岩山は地層の段々がくっきりと見えています。私たちが歩いてきた道は、このテーブル状になった1つの地層の上だったようです。
その谷の途中にへばりついているのがオルバネハの集落です。緑の林の中、赤い屋根と石壁が美しい。それにしても、どうしてこんな谷間の斜面に村ができたのでしょうか。
村と反対側の北を眺めてみると、地層の岩山がU字を描いています。こちらにも小さな川が流れてエブロ川に注ぎ込んでいるようです。
これはエブロ川の蛇行に沿って舌状に突き出ている台地。地層の中でも固いところが残っているのでしょうか、段々になっています。
先ほどの場所からさらに進んだところからオルバネハ・デル・カスティージョの全景を眺めると、陥没した台地の中腹に、緑の雲の中で浮遊しているように見えます。思わず見とれてしまう景色でした。
自然のつくりあげた壮大な景観と、人間のつくった集落とのすばらしい景色を堪能し、再び村の中心に戻りました。この小川の脇にあるレストランで昼食です。
日替わり定食はいつも大量なので、今日はコンビプレート(Platos Combinados)にしてみました。1皿にサラダとメインとが盛られて、ちょうどいい感じです。これは、鳥胸肉のソテーとパプリカ、フライドポテトです。
スペイン人はパプリカが大好きですね。いろいろな料理に使われていて、とてもおいしい。
昼食を終え、すばらしい景色を楽しんだオルバネハ・デル・カスティージョをあとに、谷間の幹線を走り出しました。道路の両側には、地層もあらわな台地がそそり立っています。
右手側の台地の上の岩はかなり歯が欠けたようで、今にも落ちてきそうです。
5kmほどで、次の村のエスカラダを通過します。ここにもロマネスクの美しい教会があり、入口のアーチが見所です。素通りで写真がないのは残念。
エスカラダから本日唯一の難所(ダートのハイキングコースを除く)、約200mの上りが始まります。といっても、上りが始まってしばらくは主要幹線のN-623に入っているので道路は広く、勾配はそれほどきつくありません。余裕の笑顔のサリーナ。
上りカーブの途中、先ほど通過したエスカラダの全景がよく見えました。この村も、谷の中で緑に包まれています。
途中で主要幹線を離れて200mの上りを終え、台地の上のなだらかな道に入りました。回りに高い山はなく、緑に覆われた標高800〜1000mの台地が続いています。
そして台地を回り込むと、深い谷が見えてきました。またしてもエブロ川がつくった谷の絶景です。
エブロ川が北に少し曲がったところに展望台があり、そこからは、標高差60mほどの谷底の川から大きな3段の緑に覆われたテーブル状の台地が伸びている絶景が見渡せました。
進行方向にもずっと谷と台地が続く壮大な風景です。ところでこの展望台、目の前の岩のようなところにあるんですよね。そう思うとビビっちゃう。。
展望台から2kmほど下ると、今日の目的地のペスケーラ・デ・エブロ。午後5時過ぎに到着です。
ペスケーラ・デ・エブロはとても小さな村ですが、エブロ川の渓谷ハイキングの拠点として小さなホテルとバル・レストラン、そして小さなスーパーもあります。
今日は35kmのラクチンコースかと思いきや、ハイキングコースのダートでやや苦戦しましたが、すばらしい絶景を眺めることができました。
観光客も少なくのんびりした田舎の村でリフレッシュして、明日はここからエブロ川を挟んで台地の上と下を1日ハイキングです。