サイクリングしよう! って、さてどうする?
サイクリングを始めたばかりの初心者のための、サイクリングの計画の立て方を中心としたメモです。
サイクリングと一口で言っても、街中をブラブラするのが好きな人もいれば、とにかく速いスピードで走りたい人もいます。 人それぞれですが、ここではサイクリングを小さな旅と位置付け、私たちの例を元にコメントします。
by GEO POTTERING
有名な観光ポイントだけを巡るパッケージツアーは効率的ですが、点と点の間は空白で線はありません。 サイクリングは自分の足で『線』を作る旅です。 サイクリングにもなにがしかの点はありますが、それよりも重要なのは、どのような『線』を描くか、だろうと思います。
サイクリングには、何キロ走らなくちゃあならないとか、どんなところを走らなくちゃあならないというような決まりはありません。 まずは身近なお気に入りのところを気ままにブラブラするといいでしょう。
今まで行ったところより少し先へ行ってみたいと思ったら、新しいサイクリングの世界の始まりです。 5kmから始めて10km、20kmと距離が延びれば、そのうちいくつかのお気に入りのコースができるでしょう。 それはきっと、車があまり通らない景色のいい道であることでしょう。
お気に入りのコースができたら、そのコースを地図で見てください。 自分が好きな道はどのような性格を持つ道なのか、きっと地図が教えてくれます。
もう少し遠くへ行きたくなったら、どこへ行こうか? と考えるでしょう。 この『どこ』は好きなところでいいです。 海を見に行きたい、東大寺へ行きたい、なんでも結構です。 その目的地に辿り着いた時の達成感はなんとも言えないものがあるでしょう。
でもちょっと待ってください。 ある目的地に行くことだけが目的なら車や電車でもいいはずです。 ではなぜ自転車でなのか?
汗をかくのが気持ちいい、風を切って走るのが壮快、行くまでの景色を楽しむ、様々な理由があるでしょう。 これらは目的地に到達することと同じかそれ以上に重要なことだから、自転車で行くことを選んだ訳です。 サイクリングでは目的地で過ごす時間よりも、そこまで辿り着くためにより多くの時間を費やすのが一般的です。
そう考えると問題なのは、目的地そのものよりもそこまで行くルート、どこ(どの道)を走るかです。 安全で景色の良い道を走ることが快適で楽しいサイクリングの第一歩ではないでしょうか。
一般的には大きな道より小さな道、つまり国道より県道、県道より町道の方が車が少なく安全です。 景色は好みですが、ジオポタ的には田んぼや畑のすぐ脇などを通る田舎道の景色が好みです。 一般的にはより小さな道のほうが快適だと言えるでしょう。 ルートを検討した結果が、車が多い大きな国道を走る割合が多いなら、きっとそのサイクリングはあまり楽しくないと思います。 『どこ』を別の場所に変えた方がいいでしょう。
『どこ』を決めるのではなく、走る道を先に決める方法もあります。 たとえば評判の良いサイクリングロードを走ることなどです。 そもそもサイクリングの目的は、目的地に到達することよりも、道中を楽しむことだとも言えるのですから。
大きな道は本当にダメなのか? 使い用です。 ある地点からある地点に行くのに、大きな道を使った場合の距離は小さな道を使うより短く、路面も良好、またアップダウンも少ない、という傾向にあります。 時間を節約したい場合や田舎道のアップダウンを回避したい場合には、国道の利用も有効かもしれません。
ルートの検討になくてはならぬ地図。 見やすい紙の地図は検討初期に、機能が豊富な電子地図は中盤に、詳細は1/5万図で。
初期の荒検討:道路地図 1/20万~1/10万 等高線表示のあるものが良い。
中盤の検討:Googleマップやルートラボ ルートの自動作成機能が便利。 林道などの細道は表示されない。
詳細検討用:国土地理院の地形図 1/5万 林道などの細道の検討に。 (1/2.5万の電子地図あり)
まず道路地図でおおまかなルートを設定します。 次にそれを元にGoogleマップなどで複数のルートを引き、距離、アップダウンなどの比較をします。 林道などの細い道があるようなら国土地理院の1/5万で確認します。
走行時には地図をハンドルバーに付けるマップホルダーに入れて行きます。 この地図は多くの場合1/10万の道路地図が適当だと思います。 1/20万では本当に概要しかわからないし、1/5万ではマップホルダーに入り切らないので。 この地図に主要ポイントの通過予定時刻を記入しておくと、スケジュールの管理をしやすいでしょう。
現代的なツールとしてGPSがあります。 地図表示ができるGPSは大変便利で、細い複雑な道でもよっぽどの山の中の電波の届かないところでなければ、まず迷うことはありません。 このGPSを利用することで、走行時に1/5万図は不要になりました。 こうしたGPSはGARMINなどから出ていますし、iPhoneなどにも同様の機能があります。 ということで、GPSにルートを入れて行けばよりいいでしょう。 持っていない場合は、場合により1/5万の部分コピーを活用するといいでしょう。
走行時にGPSがあるなら紙の地図は不要という方もいますが、紙の地図のほうが瞬時に全貌を把握しやすいので、コース全体が把握できる地図とGPSの併用を薦めます。
走る距離や速度に決まりはありません。 どうぞあなたの好みや実力に合わせてください。 ここでは初心者に走れる速度や一日に走れる距離の一応の目安として、私たちの例を挙げます。
私たちの巡航速度は17~18km/h。 信号待ちなどの一時停止時間を差し引くと12km/h。 一時間のうち10分ほど休憩をとるので走行時間は50分で、12km/h×50分/60分=10km/h。 つまり、
一時間の平均速度=10km/h (休憩を含む)
9時から16時まで走るとして、昼食1時間を差し引くと6時間の走行。 10km/h×6h=60km
ゆっくりした休憩や見学などに1時間使うとするなら、10km/h×5h=50km が一日で走れる距離となります。 よりアバウトに考えるなら、
一日の平均速度=8km/h (昼食、休憩、ちょっとした見学を含む)
これを上の例に当てはめれば、8km/h×7h=56km。 だいたい合っていますね。
いずれも微風の平地、舗装路という条件付き。
夜の走行は危険が倍増します。 日の明かりがあるうちに目的地に到達できるように計画しましょう。
サイクリングにパンクは付きもの。 途中で道を間違えるかも。 こうしたアクシデントも考慮して、一日のサイクリングなら1時間の余裕はほしいですね。 日没後30分はかろうじて明かりがある状態なのを勘案しても、日没30分前までには目的地に到達できる計画とするのが良いでしょう。
前項からも、朝できるだけ早い時刻に出発し、午後はなるべく早めに切り上げるのが理想的です。 誰でも疲れてくると走行速度が遅くなり、注意力が落ちやすいので、後半に余裕を持った計画が望まれます。
前半と後半にある二つの見どころのうちどちらか一つを選択するなら、後半の方にして、前半の元気なうちに距離を稼ぎます。 疲れが出てきてちょっと長く休憩したくなるころ、目当ての見どころに到着するなら一石二鳥ですね。
昼食時間や見どころの見学の時間は全体のスケジュール調整に役に立ちます。 後半に纏まった時間があるというのはこの点からも有用です。
一日サイクリングを楽しむなら、きっとどこかに坂道があるはず。 きつい坂は押しましょう。 無理して乗って上るより押した方が肉体的なダメージが少ないですから。
坂道にはどれくらいの時間を要するか? これは勾配と距離、そして個人差によりずいぶん違いがあります。 おおよそですが、勾配により3つの段階に分けてみました。
5%---初心者がなんとか上れる
7~8%---初心者にはきつく、押すことになるかもしれない
10%以上---初心者にはまず上れない
まず、自分が上れる坂はどれくらいの勾配までか、そしてどれくらいの距離までなら走れるかを知ることが大切です。 ちょっと特殊な器具ですが、自転車用の斜度計というものがあるので、それで勾配を確認するのがいいでしょう。
想定したコースの勾配のおおよその判定にはカシミール3D+山旅倶楽部オンライン地図や、ルートラボの断面図を使うといいでしょう。
坂道が続く山は初心者は避けた方が無難です。 でも少しサイクリングに慣れてきたら、ちょっとした山があるコースを走りたくなるかもしれません。 山を上るにはどれくらいの時間が掛かるのか、参考までに私たちの経験値を示します。
高度差500m、平均斜度5%
これは10km走って500m上るということです。 平均斜度はあくまで平均なので、5%勾配がずっと続くわけではなく、中には10%を越える坂があることもあり、かなりきつい印象を持つでしょう。
ケースA:上昇200m/h(平均速度4km/h)
ケースB:上昇250m/h(平均速度5km/h)
ケースC:上昇300m/h(平均速度6km/h)
ケースAは自転車を押した時間が長く休憩も頻繁。 ケースCはほぼ自転車に乗って上れたケースです。 私たちが時間当たり上れるのは200m~300mだということです。 まずは200m上昇/hで計画したらどうでしょう。 これは平均速度4km/hですから、かなりの区間を押したとしても、乗って上った場合に比べ大きな時間差が生じることはないでしょう。
上りがあれば下りもあります。 当然下りは平地よりスピードが出ます。 平地の2~5割増くらいだと思いますが、計画上は平地として扱い、余った時間は予備としましょう。
前項を参照するなら、総距離50kmで500mの上りと400mの下りがある次のケースの必要時間は6.5hとなります。(食事、見学時間を除く)
距離10km、高度500m上り:500m/200m/h=2.5h > 10km/10km/h=1h → 2.5h
距離15km、高度400m下り:15km/10km/h=1.5h (平地として計算する)
距離25km、平地:25km/10km/h=2.5h
山のような大きな上りではなく、小さなアップダウンはよくあります。 そこでコースの難易度を判定する材料の一つとして累積登坂高度(獲得標高や累積標高と呼ばれることも)に着目してみます。 累積登坂高度とは上りだけの高度差の累積で、累積登坂高度100mとは以下のようなことです。
標高0mから標高100mまで上る
100m-0m=100m
標高20mから標高40mまで上り、標高30mまで下り標高70mまで上り、標高40mまで下り標高80mまで上る
(40m-20m)+(70m-30m)+(80m-40m)=100m
累積登坂高度の判定はカシミール3D+山旅倶楽部オンライン地図で『グラフ表示』し、表中の『累積標高(+)』を参照します。
初心者はこの値が500m以下としたほうがいいでしょう。 この500mというのは、かならずしも500mの山を上ることを意味するわけではありません。 50kmほど走った場合にはほぼ平地と感じるコースでも、この値が200~300mになることはよくあります。
距離50kmでずっと1%の上り勾配、これは走れそうじゃあないですか。 では高度差5mの上りが100回は? 高度差100mの上りが5回は? これらはいずれも累積登坂高度500mです。 同じ値の累積登坂高度でも条件により肉体への負担も印象も変わります。 まあ、一般的なところで500mくらいならなんとかなるだろうということです。 条件が良ければ700~800mくらいは上れるかもしれません。 でも1,000mとなるとちょっと難儀するでしょう。
じゃあ、2,000mを超えたらどうかって? そりゃあこれは、とってもとっても、とってもきついです!
道はきれいな舗装路ばかりとは限りません。 昔ながらの地道や砂利道のことがあるかもしれません。 こうした道は当然舗装路を走るより時間が掛かります。 路面の状態によりますが舗装路の場合の5割増しとか倍近く時間が掛かるかもしれません。 やっかいなのはこうした道は地図からは読み取れないことです。 林道や田舎の極細道はこういった道である可能性が高いので避けるか、充分な情報収集を。
情報収集のためのヒントを挙げると、国土地理院の地形図1/5万で破線は、道がないか自転車で走るのはむずかしいと思ってまず間違いありません。 またGoogleマップの写真や動画に参考になるものがあるかもしれません。
日本で自転車は左側通行。 したがって左側の景色がいいほうが楽しいですね。 ということで、海辺なら時計回りに進むと左手に海が広がります。 湖の場合は逆に反時計回りに進むと左手が湖になります。 川なら左手に川の流れが見えるようにすると楽しいでしょう。
水辺で注意すべきことは風向きです。 風を遮るものが少ないこうした環境では、風は大きな味方にもなり敵にもなります。 風の予報をチェックして、景色とどちらを選ぶかということも起こりますね。
遠くに行くには家から走り出したのでは限界があります。 車や電車である場所まで自転車を運んで、そこから走り出すことができます。 電車に自転車を載せる場合には、輪行袋と呼ばれる自転車を収納する袋が必要です。 自転車は折り畳んだり、車輪を外したりしなければなりませんが、これは慣れれば簡単です。 ぜひトライしてみましょう。
サイクリングの最中になんらかの都合で走れなくなった時にも、この輪行袋があれば、電車やタクシーで移動することも可能です。
escapeは逃亡する、脱出するという意味で、ここでは元の計画から脱け出す、という意味で使います。
何事も予定の通りうまくゆくとは限りません。 思わぬ出来事で目的地まで辿り着けそうにない、ということは起こりえることです。 こんな時は目的地を変更したり、通る道を変更したり、途中でサイクリングを止めることになります。 エスケープするわけです。
前項にあるように、途中から電車やタクシーに乗るのもこのエスケープの方法の一つです。 しかし、人里離れたところや山の中など、いつでもそうできるわけではありません。 長距離の場合には短縮ルート、困難な山なら迂回ルートなどをあらかじめ用意しておくことがベターです。
・飲料水
・地図、GPS
・身分証明書(万が一のために運転免許証や健康保険証)
・ライト
・手袋
・ヘルメット
・予備チューブと携帯ポンプ&携帯工具
・輪行袋
動きやすいものならなんでもOK。 ジーンズはごわごわして動きにくいのでお薦めではないですね。 靴は一般的な運動靴で問題なし。
少しこだわるなら下着。 化学繊維のものがお薦めです。 スポーツ店や登山店にある高機能素材のものなら言うことありません。 綿は汗で湿ると乾きにくく、不快な上、気温が下がると体温を奪うので、良くありません。 中着や上着にも下着と同様のことが言えますが、優先順位は肌に近い方からです。
薄手でコンパクトになるウィンドブレーカーはちょっと冷え込んできた時や少し長い下り坂の時など、何かと役に立ちます。
基本は半袖、長袖、フリース、アウターなどと重ね着を。 暑くなっても脱ぎやすい構成に。
雨具は、高価ですがゴアテックスのものがお薦め。 薄手の上着ならウィンドブレーカーとしても使えます。 万が一の場合の備えというなら100円カッパも有効。
サイクリングが楽しくなったら、友達を誘いたくなるでしょう。 グループで走るのは一人で走るのとはまた違った楽しみがありますが、問題もあります。 グループ・サイクリングで注意すべき点を挙げます。
大人数になればなるほど、何をやるにも時間が掛かります。 トイレしかり食事しかり。 トラブルの発生確率は人数倍になります。 参加メンバー全員の実力を把握できないこともあるでしょうから、時間は多めに取り、走行距離は短めに設定します。
少人数ほどまとまりが良く、コミュニケーションが取りやすいのは言わずもがなです。 一人で無理なく把握できる人数は4~5人です。 これ以上になると、走っているうちにバラけてしまったり、指示が伝わらないことなどが起こりやすくなります。 リーダーはいた方が良いですが、4~5人ならいなくてもなんとかなる人数です。
より大勢の場合はリーダーが必要でしょう。 またサブリーダーもいた方がいいでしょう。
リーダーの役割は道案内と走行ペースの設定、安全の確保、グループ全体の統括、スケジュール管理で、走行にあってはグループの先頭を走ります。 グループ前方に位置するメンバーの走行上のコントロールも行ないます。
サブリーダーはリーダーの補佐で、グループの最後尾を走ります。 遅れたメンバーをフォローし、メカトラブルの対処も担当します。 走行ペースが適切かどうかなどの判断をし、必要があればリーダーに報告します。 グループ後方に位置するメンバーの走行上のコントロールも行ない、グループがバラけてしまった場合は、後方のグループをリードします。
リーダーとサブリーダーの役割のうち、道案内とメカトラブルの対処は別の人が担当してもいいです。 また、サブリーダーになるような人がいない場合でも、最後尾を走る人は決めておいた方がいいでしょう。 行方不明者が出ないようにね。
走行ペースはグループの中で一番力のない人に合わせます。 そのためにはリーダーはグループ全員の実力をできるだけ早めに把握する必要があります。 力のない人をできるだけ前方に配置し、その人が無理なく走れるペースとします。
グループ走行ではちょっとしたことから後方が遅れることが良くあります。 こんな時、前方のグループが曲がり角を曲がって先へ行ってしまうと、後方のグループは迷子になってしまいます。 曲がり角では全員が後方を確認し、追走者があることを確認してから進むようにします。
後ろを走っている人は前方の状況はわかりません。 また前を走っている人は後方の状況がわかりません。 前からあるいは後ろから車が来た、道に穴ぼこが開いているなどの情報は出来るだけ早く全員で共有したいものです。 このような場合には声を出したり、手信号で合図を送るようにします。 手信号はグループで共有できる合図として、前もって取り決めておくと良いでしょう。
一緒に走るメンバーを募る場合には、まず定量的で客観的な情報の提示が必要です。 加えて、その企画に参加したくなるような案内文があるといいでしょう。 私たちの例を挙げます。
タイトル 保田見林道・をくづれ水仙郷
開催日 01月31日(日) 雨天中止
集合場所 上総湊駅(JR内房線) 駅前ロータリー
集合時刻 08:40
解散予定時刻 16:00
解散予定場所 上総湊駅(JR内房線)
走行予定距離 50km
予想累積高度 1700m
予想難易度 中級
ルート図 Googleマップなどで作ったURLなど
持物 健康保険証、緊急時連絡先(実家など)のメモ、ライト
決行案内 開催前夜
企画者 サイダー
備考 上総湊駅の西側、上総湊湾海浜公園に駐車場あり
コース紹介 暖かい房総で保田見(ぼてみ)林道と水仙祭りの最中の『をくづれ水仙郷』を楽しみます。 加えて都心近郊では珍しい棚田が見られる大山の千枚田を巡ります。 全般に鄙びた田舎が楽しめるでしょう。 保田見林道にはアップダウンがかなりありますが、ここはゆっくりのんびり行きましょう。 きっと房総の小高い山々を望むいい景色が見られると思います。 ダートが少しあるので細いタイヤのロードバイクは避けたほうが無難です。
ではみなさん、良い旅を!
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