春の彼岸、都心の桜は昨日開花しました。ということで、染井吉野の満開まではあと一週間待たねばなりません。
そんなには待っていられないと、今日は染井吉野ではない早咲きの桜見物を。
大きな池の畔に風車のある浮間公園には染井吉野と里桜がありますが、これはもちろんまだ。かわりに黄色い菜の花が満開です。
今日は埼玉県の見沼田んぼ周辺を巡ります。まず向かうは、見沼田んぼへのアプローチとなる芝川自転車道の入口にある都市農業公園。
浮間公園から荒川の土手に上ると、ゆったりとした流れの荒川の向こうに、川口の超高層ビル群が見えています。
前方のJR東北本線の鉄橋が近付くと、進行右手には新河岸川が流れるようになります。
荒川とこの新河岸川を眺めながらどんどこと行く、先頭デニちゃん。
JR東北本線の鉄橋をくぐると左手の河川敷は野球場になり、右手の土手の法面にはピンクの芝桜が咲き出します。
この法面はJR東北本線の鉄橋からR122新荒川大橋まで続いており、もう一月もすれば一面がピンク色に染まることでしょう。
芝桜で目に栄養を与えたら、さらに荒川自転車道を下ります。荒川と新河岸川がぐっと近付いたところで岩渕水門を渡ります。
岩渕水門で荒川から分岐するのは隅田川。先ほどまで横を流れていた新河岸川はここで隅田川に合流します。
岩渕水門の先の鹿浜橋を渡って僅かに荒川を遡ると、都市農業公園に到着。
この公園は花がいっぱいで、この時期は遅咲きの梅が満開。入口付近には寒緋桜も。
梅には様々な種類があり、長い期間花を楽しめるのがいいですね。
これは梅ではなく、桜だそうです。桜にもたくさん品種があり、この公園には何十種も植えられていますが、早咲きのものはごく僅かのようです。
ここで有名なのは、かつてこの周辺にあったという五色桜。戦後これらの桜はなくなってしまいますが、かつてここからワシントンに寄贈したのものが里帰りし、33種の五色桜が植えられているそうです。五色桜は一本の木に五色の色の花が咲くわけではなく、白、黄、淡紅色、濃紅色など多様な色の花を咲かせる複数の種をまとめて呼ぶものようです。これらは染井吉野よりさらに遅く咲くので、この時は残念。
他には、真っ白なコブシがきれい。ところでコブシと白いモクレンの見分け方って知っていますか。
我らがミルミルによれば、花の付け根に葉っぱが一枚くっついているのがコブシだそうな。モクレンにはこの葉っぱはないそうです。
その他の見分け方としては、モクレンの花は9枚(内3枚は顎)で、大きくぼってりしており、みんな上を向いて閉じぎみに咲く。コブシの花は6枚で、細く小さく、あっちこっち向いて開いて咲く。
これはエンドウ豆の花。こうしてみるときれいですね。
花の構造はかなり複雑そう。一体どうなっているの。
温室の中に咲いていたチューリップ。
モクレン同様、花びらに見えるもののうち、三枚は顎なんですね。
あっ、スズランが咲いている! あれ〜、おかしいな、スズランってまだ咲かないよね〜 だいたい葉っぱがスズランじゃあないし。
これはスズランスイセン、大待雪草とかいうやつかな。
真っ白な花がもう一つ。
おなじみのユキヤナギですが、こうしてじっくり花を見てみると、一つ一つがちゃんと花の形をしている!
都市農業公園でたっぷり花を楽しんだら、新芝川沿いの芝川自転車道に入ります。
この川の荒川との合流点付近には桜の木がびっしり並んでいますが、これは染井吉野らしく、まだ一輪も開花していません。
その木の下を先頭でどんどこ行くは、久々に登場のユキちゃん。
芝川自転車道は巾が狭いため、荒川自転車道のようにもの凄いスピードで走るレーサーに跨がるサイクリストはおらず、時折散策している人を見かける程度で、のんびりポタリングには打ってつけです。
そんな自転車道を進んで行くと、行く手にピンクの塊が。
所は新芝川が90°曲がって芝川マリーナに差し掛かったところ。r104を渡ったところです。
『お、咲いてる咲いてる!』
木は間違いなく桜。花は赤みが強いピンクですが、これはまさに桜。早咲きで赤みが強いのは河津桜と同様ですが、そんなには花が固まってモコモコしておらず、もうちょっとあっさり目。
雨でか風でか、はたまたここでは既に満開のピークを過ぎたのか、花びらを落としたものもありますが、まだ見頃といっていいでしょう。これがこのあたりの桜として知られる、安行桜でしょうか。
この赤みの強い桜に混じって、白い桜も咲いていました。
こちらはまだ咲き出したばかりで、ほとんどは蕾みですが、幹から出た細い枝には、今開いたばかりの花が見えます。葉も同時に出ているのでこれはきっと、八重咲きの大島桜でしょう。
芝川自転車道を離れ、毛長川沿いをどんどこ行く先頭ミルミル。
向かっているのは本日の桜のメイン所、安行の密蔵院です。
住宅地の中を行き、首都高速川口線をくぐり、ちょっと広い通りに出ました。
この通りを行けば、民家の庭先にピンク色の大きな桜が咲いています。真っ赤な緋桜も。
朝はかなり雲が厚く寒かったのですが、ここに来て青空が見えてきて、ちょっと暖かくなってきました。
その民家の先には、同じピンク色の桜の塊が。
この辺り一帯は安行ですから、これはもう、安行桜に間違いないでしょう。
近付いてみると、地面にはかなり花びらが落ちていますが、まだまだ見頃といっていい状態です。
芝川の桜は葉を出していましたが、ここのはそれもまだで、この赤みの強い花を充分に鑑賞できました。
この安行桜から通りに出ると、そこには『安行原の蛇造り』という標識が。安行原はここの地名ですが、蛇造りとはいったいなんでしょう。良く見れば、高い櫓が組まれ、その上に藁の塊が置かれています。この塊がどうやら蛇の頭ようで、頭から上には胴体らしきものが延び、うしろの木に巻き付けられています。
ここ安行原では、五穀豊穣・天下太平・無病息災などを祈願するため、毎年五月に藁で10mほどの大蛇が造られる祭りがあるそうです。この藁の蛇は、かつては手前に見える大ケヤキの木に置かれていましたが、その木が枯れた現在は櫓がその変わりになったようです。
安行原の蛇造りを見たら、いよいよ安行桜で有名な密蔵院へ向かいます。
このあたりはあらかたが住宅地化されてしまっていますが、かつては自然豊かなところだったようで、そうした片鱗がこの周辺には少し残っています。
大きな木々が残るところをかすめ、ちょっとした通りのr103を越して進めば、突き当たりに安行桜が咲いている公園が見えてきます。
これは『安行原自然の森』で、密蔵院はこの森のすぐ北にあります。
密蔵院の参道に入れば、そこは両側とも安行桜の並木です。
『うわ〜、きれい〜〜。ここはすごいですね〜』 と、ミルミル。
『地元なのに、こんなとこあるの、知りませんでした〜』 とはユキちゃん。
染井吉野の並木も満開になるときれいですが、それより色の濃い安行桜の並木は、圧倒的な迫力。
本日のメンバーは左から、シロスキー、ユキちゃん、サイダー、ミルミル、マージコ、デニちゃん。
みんな、この見事な並木にうっとりです。
この参道は100mに満たないものですが、ゆっくりのんびり安行桜を眺めつつ進み、境内に入ります。
正面の本堂はかなり立派で、その手前にも安行桜が植えられています。その木の反対側にあるのは染井吉野で、時期が合えば安行桜と染井吉野を同時に楽しめるそうです。
この境内には安行桜よりもっと赤みが強い、台湾緋桜も咲いています。
極めて強い赤と釣鐘状の花が特徴のこの桜は、単に緋桜とも台湾桜とも呼ばれるようで、また緋寒桜、寒緋桜も同じものを指すようです。台湾の名が付くことからして台湾あたりで良く見られるのだろうと思いますが、沖縄で桜といえばこれを指すとのことです。
密蔵院で安行桜を堪能したら、安行原自然の森で花見を。安行桜を眺めながらお昼の休憩です。ミルミル、手作り料理おいしかったです。ありがとう。
午後の部はまず、密蔵院のすぐ近くにある興禅院へ。r103に面したこの寺の参道周辺はほとんど森で、密蔵院の桜の参道とはまた違った趣があります。ひっそりとした参道を進んで行くと、山門の前に小さな小僧さんの石仏が立っています。彼岸だけあり、その前にはきれいな菊の花が添えられています。
山門をくぐると正面に本堂が現れますが、これは、まあ普通。
ここにはスダジイの巨木があり、その根元にはお地蔵さんが抱かれているといいます。確かに立派なスダジイがありましたが、お地蔵さんは台座だけが残され今はどこかへ行ってしまったようです。木がより大きくなり、壊れてしまったのでしょうか。
この寺の裏手は『ふるさとの森』になっており、そこへ向かう途中には安行桜とハクモクレンがいい対比を見せています。
密蔵院から興禅院にかけて、その北東部は低地になっており、見沼代用水の支線である赤堀用水が流れています。この高台と低地の間の斜面部には森が残り、イチリンソウ群生地もあるそうです。興禅院の裏手の斜面地を下ると、古池があり弁天様が祀られています。この御神体はなんと蛇の像でちょっとびっくりですが、このあたりには大蛇の伝説が残るそうです。午前中見た『安行原の蛇造り』はきっとこの伝説と関係があるのでしょう。
これはその低地にではなく、上に咲いていた安行桜です。
ちなみに安行桜は、このあたりにあったある木から接ぎ木して、昭和20年代初頭ごろから作られ始め、安行緋寒桜と命名されますが、そのうち安行桜が通称となったそうです。
たっぷりと安行桜を鑑賞したら、見沼代用水へ向かいます。
しばらくはこんな何の変哲もない住宅地をどんどこ。
住宅地の横に畑が現れるようになると、その一角がもの凄いことになっている。
『え〜、あれなにー!!』
白、ピンク、赤と眩いばかりの色の木々が植えられた畑です。ここ安行は植木で有名な町なのです。
白はユキヤナギ、その向こうの赤はボケ、そしてさらに奥に梅と桜。
いつの間にか真っ青になっていた空に、強烈な色彩が映えます。
どんどこ進んで、見沼代用水の東縁に出ました。
見沼代用水は江戸時代に造られた農業用の灌漑用水で、東縁と西縁があります。
東縁沿いの道は、グリーンセンター付近では『ふれあい歩道』の表示があり、路面はインターロッキングになっています。
どこまでがふれあい歩道なのかはよく分かりませんが、中にはこんな狭いところも。
いつの間にか標識は『緑のヘルシーロード』に。緑のヘルシーロードは歩行者と自転車のために整備された道で、ここの路面はインターロッキングですが、一般の道となったり、アスファルト舗装や砂利道となったりもします。
緑のヘルシーロードには桜並木が続きますが、これは染井吉野で開花はまだ。蕾みが少し大きくなってきたという程度です。
住宅地から少し周囲が開けてきて、グラウンドや畑が見え出すと、ほどなく見沼通船堀に到着します。
見沼通船堀は見沼代用水の東縁、西縁の双方と芝川とを結ぶ閘門式運河です。昭和初期以降この運河は使用されておらず、遺構として残るのみになっています。
芝川と見沼代用水の距離は数百mで、水位差が3mほどありました。この勾配では舟は通れなかったので、東縁側、西縁側とも二つづつ関を設け、水位調整して舟を通したのです。閘門の開閉は人力で木の板を差し込んだり引き抜いたりしなければならず、かなり大変な作業だったようです。
閘門式運河の代表は太平洋とカリブ海を結ぶパナマ運河ですが、この近くで見ることができる閘門には、荒川と旧中川を結ぶ荒川ロックゲート、旧中川と隅田川を結ぶ小名木川に設置されている扇橋閘門があります。
私たちはここで見沼代用水の東縁から西縁に移ります。
その真ん中を流れるのが、見沼田んぼの排水路として造られた芝川です。
見沼通船堀の西の端には見沼通船堀公園があります。
見沼通船堀公園の大部分は竹林です。
筍にはちょっとまだ早いか。
通船堀公園の先は見沼代用水の西縁です。東縁は『緑のヘルシーロード』でしたがこの西縁は一般道で、砂利道になるところも東縁より多いようです。
こちらの並木も染井吉野ですが、やはり開花までは今しばらく時間がかかりそう。
用水沿いの桜はまだなのですが、これまたあっと驚く光景が目に飛び込んできました。
黄色い菜の花畑の向こうが一面のピンク。
桜の植木畑です。ここは満開!
染井吉野より花は少し小ぶりで、花びらは細い気がします。小彼岸桜?
桜の畑を見るために代用水沿いを離れたので、しばらく見沼田んぼの中を行きます。見沼田んぼはここではすでに本来の姿はなく、ほとんどの所が畑に変わっています。
そんな中にはやっぱり先ほどと同じような、植木のきれいな畑があるのでした。
ちょっと見沼田んぼの様子を覗いたら、再び代用水の西縁に戻ります。
午後になり気温はだいぶ上昇しており、このあたりは暑いくらいで、みんな中着を一枚脱いで走ります。
ポカポカな中、見沼氷川公園に到着。
ここは童謡『案山子』の発祥の地だそうです。この作詞者はこのすぐ横にある氷川女体神社の神官の長男で、見沼田んぼに立つ案山子を謳ったものだそうです。
山田の中の一本足のかかし 天気のよいのにみの笠着けて 朝から晩までただ立ちどおし 歩けないのか山田のかかし
山田の中の一本足のかかし 弓矢でおどして力んで居れど 山では烏がかあかと笑う 耳が無いのか山田のかかし
ここにも咲いていました、桜。赤みが強いのは安行桜と同様ですが、こちらはもっとモコモコしています。
表示によればこれは河津桜だそうです。本家の伊豆でも、都心でももうおしまいになった河津桜ですが、ここでは満開です。
見沼氷川公園の横にある氷川女体神社。女体というからには男体もあるのか。もちろんあります。それは大宮駅近くにある氷川神社です。
そしてこの二つの神社の間には中山神社というのがあり、それは子供なのだそうです。
氷川女体神社からは本日後半の見どころ、円蔵院へ向かいます。
しばらくは代用水西縁を行きましたが、路面が悪いので芝川自転車道にシフト。この自転車道は快適、と思ったら、橋でぶち切れ。そのたんびに自転車を担いで下の道に下りなければならないのでした。
円蔵院は大イチョウと枝垂れ桜で有名だそうです。
大イチョウの大きさはこうして見ると良く分かりますね。たぶん25〜26mあるのではないでしょうか。
有名な枝垂れ桜は大イチョウの反対側、本堂に近い位置にあります。
この木はかつて台風で倒れましたが、枝を切り詰め植え直され、枯死を免れたという歴史を持っているようです。少し小ぶりになったそうですが、それでもなかなか立派です。
枝垂れ桜は染井吉野より一週間ほど早く咲くので期待して来たのですが、ここはもうひと息。見頃になるまで、あと一週間ほどかかりそうです。
円蔵院から再び芝川沿いに戻り、みぬま見聞館(大宮南部浄化センター)に入ります。
ここは自然庭園というか、ビオトープのようなものでしょう。
同じようなビオトープがある合併記念見沼公園を抜け、代用水西縁を北上すると、大宮第二公園に到着します。
この広大な公園の土手には染井吉野が植えられていますが、もちろんここもまだです。
調整池を眺めながら、斜面の日だまりで最後の休憩をしていると、かなり冷え込んできました。
今日はもう桜はいいよね、ということで、大宮公園には寄らず、氷川神社の前をかすめて、大宮駅へ向かいました。
早咲きの桜、これまでは河津桜くらいしか知りませんでしたが、こうしてみると色々ありますね。中でも安行桜は新しい発見で、畑で栽培されている桜も楽しめました。
今度の週末は都心で花見、その次の週は比企丘陵で花見ポタリングと、しばらく桜が続きます。