桜の開花時期はここ何十年もの間早まり続けているように思いますが、特に去年はメチャクチャに早く、3月14日に開花し、今頃はもうピークを過ぎていました。ところが今年はそれより10日以上遅くなりそうで、ちょっと感覚がおかしくなりそう。で、逆に今年は早咲きの桜や桃が良さそうな時期になっています。
寄居町の鉢形城公園のエドヒガン桜はまだ咲き始めですが、東秩父村大内沢の花桃の郷と小川町の桃源郷はそろそろいい頃のようです。
ということで、久しぶりに埼玉県の西部に出かけることにしました。
やってきたのは東武東上線の小川町駅。案内が前日だったので参加者は企て人のサイダーの他はコムランただ一人。まずは寄居町の鉢形城公園に向かうのですが、途中に国の重要文化財に指定されている吉田家住宅があるので立ち寄ってみます。
小川町から寄居へは国道254号線が通っていますがもちろん私たちはこれは使わず、八高線沿いの裏道を行きます。
ほどなく蟹沢沼緑地の横を通ります。この中にある池状のものが蟹沢沼なのでしょう。池岸にフェンスがあるので親水性は低そうですが、小さいながらも水深は3mほどあるそうです。
兜川沿いに出ました。先ほど通った蟹沢沼の水はこの兜川に流れ込んでいるようです。この川を遡って行くと私たちが訪れようとしている吉田家住宅にたどり着きます。
兜川がうねって道から逸れて行くと、先に山が見えてきました。あれは今日の午後に行く予定の花桃の郷の上にある登谷山(とやさん、668m)あたりでしょう。
小川町のこのあたりは薄くですが町が続いてはいますが、徐々に田畑が多くなってきます。
南には低い菅ノ倉山あたりが見えています。そのうしろには今日の終盤に廻る予定の笠山や天文台がある堂平山があるはずなのですが、今日はどうやらそれらは見えないようです。
東武竹沢駅前郵便局を過ぎ、東武東上線の線路をくぐると、伝統的な造りの酒店がありました。サッシはアルミ製に置き換えられていますが、木造の構造が表しになっていて素敵です。
八高線の竹沢駅が近づくと、踏切がチンチン言いだしました。そのうち小川町駅側から列車がやってきました。
このあたりは初めてだというコムランはこの線がJRの八高線だとは知らなかったようで、群馬県の高崎まで行くと分かってびっくりしていました。
竹沢駅を過ぎると吉田家住宅はすぐです。八高線の線路を渡り、飯能寄居線に出ると横には再び兜川が流れるようになります。その兜川が二方に別れ、左側のそれに沿って進んでいくと右手のこんもりした山裾に勝呂(すぐろ)の西浦の集落が見えてきます。
よく見れば、その一番上に茅葺きの屋根が見えます。あれが吉田家住宅です。
短い激坂を上ると吉田家住宅のぼほ正面が見えてきます。
圧倒的な存在感!
この住宅は建築年が判明しているものとしては埼玉県で最古の民家であり、今から300年以上前に建てられています。
外観からもおおよそ察しが付きますが、正面から見て右半分は土間で、このうちのさらに右半分は厩(うまや)でした。腰窓があるところでは紙が漉かれていたそうです。
この地方は古くから養蚕と製紙で知られていました。座敷の上に養蚕用の二階が作れれており、この二階がある妻面の屋根の軒先が切りあげられ、採光が取られています。家の造りに養蚕の影響が現れた最も早い例だそうです。
日本の古い民家は土間の隣は板の間と決まっています。土間の一部とこの板の間が実質的な居住空間で、囲炉裏が生活の中心の場と言ってよいでしょう。
この向こう側に見える空間は座敷で、その上に養蚕用の二階があります。
今日は比較的時間があるのと、朝一番でやって来たので人が少ないため、この囲炉裏端でゆっくりすることにしました。コムランはお餅を、サイダーはお団子をそれぞれいただきました。ここは最高にまったりできます。
みなさんは胡麻(ごま)はご存知ですよね。アタシは大好きでよく胡麻の実を擂り粉木でスリスリしていただいています。でもその胡麻がどのように実るのかを知らない方は結構多いと思います。この前ジオポタのメンバー間で話題になったのですが、大半の方が知りませんでした。たまたまですがこの吉田家の軒下にその胡麻が立てかけられていたので紹介します。このヤサの中にあの胡麻の実がいっぱい詰まっているんです。
吉田家の囲炉裏端でまったりしたら、来た道をちょっと戻って鉢形城公園に向かいます。
今日の前半で唯一の上りとなる梨子ノ木林道に入ります。ここはちょっとだけエッコラヨッコラ。でも距離は短いので問題なし。
先ほどの梨子ノ木林道は後ろに見える山の中を通っています。
折原駅を過ぎ、八高線の線路を渡ってその西側に出ると、畑の中のナンテンの木が真っ赤になっています。ナンテンは子供の頃庭にあったのである程度知っているのですが、こんな時期にこんな色になるんでしたっけ。この畑のものが特別なのでしょうか。
鉢形城公園が近づいて来ました。この時どこからともなく蒸気機関車の汽笛のような音が聞こえてきました。確か秩父鉄道ではSLを走らせていたと思うので、きっとその音でしょう。
公園入口にある諏訪神社の前までやってくると桜の花が満開です。この時期満開になるのですからこれはソメイヨシノではありませんね。このあと尋ねる鉢形城公園内の有名な氏邦桜(うじくにざくら)はエドヒガンですからこれももしかするとそれかもしれません。
エドヒガンは『江戸彼岸』で彼岸とあるようにお彼岸の頃に咲くそうですから時期的には合っていますね。エドヒガンはまた彼のソメイヨシノの母親として知られています。
鉢形城公園にやってきました。これが氏邦桜と名付けられたエドヒガンザクラです、この桜の木の名の氏邦は北条氏邦にちなんでいます。北条氏邦は鉢形城の城主でした。
今年の氏邦桜は周辺のソメイヨシノ同様に開花がだいぶ遅く、まだ二分咲きといったところです。おそらく満開になるのは来週末あたりでしょう。
鉢形城公園内にはカタクリの群生地が何箇所かあります。氏邦桜のすぐ横にも咲いていました。
カタクリは小さく、みんな下を向いて咲くので、地面に這いつくばらないと花が写真に撮れないのですが、ここは斜面地なのでなんとか写すことができました。
来週晴れたら、ここはきっと素晴らしいでしょうね。
氏邦桜は株立ちでなかなかいい姿です。
鉢形城公園はかなり広大ですが、この写真は二の曲輪と三の曲輪の間の堀で、この左手には復元された四脚門が立っています。
時は11時半。ここで昼食にしましょう。鉢形城公園から南に少し戻ったところにある定食屋さんです。
私は久しぶりに生姜焼をやってみました。この生姜焼、生姜が効き過ぎずにほんのり甘く、どこか優しくなつかしい味付けで、おいしいです。そうそう、おかみさんが蕗味噌をサービスしてくださいました。これもおいしかったです。ごちそうさまでした。
さて、午後の部は大内沢の花桃の郷から。その花桃の郷はあの山の向こう側です。
道が車山を廻り西向きに進むようになると、前方に小高い山並みが現れます。あのどれかが登谷山で、花桃の郷はその中腹にあります。
春になってきました。道端に菜の花。
梅もまだ咲いていますが、これはそろそろおしまいですね。
坂本寄居線に出るとここから小谷野田峠まで上りが続きます。
1.4kmで100mの上り。平均7.1%ですが、最近めっきり体力が落ちているようで、私はよろよろでした。しかし先日新たにロードバイクを購入したというコムランはしっかり上っていきます。
『東秩父村 和紙の里』と書かれた柱が現れると、そこが小谷野田峠です。この峠の少し手前が寄居町と東秩父村の境界で、ここから先は東秩父村になります。
小川町も和紙の生産で有名なところですが、その隣村である東秩父村もまた、それが現在まで続くところです。
小谷野田峠を過ぎると目的地の大内沢の花桃の郷はすぐ。
ぐわ〜っと下って、おっと、行き過ぎた〜 花桃の郷は下ってすぐに右に入らなければならないのです。
しかもその枝道に入ると再び上りでショック! えっこらよっこら上って行きます。
先に見えるカーブを廻ると、
パッと視界が開け、一面が華やかなピンク色に。大内沢の花桃の郷です。
ここの花桃は1970年代ごろに数人の有志が植えたのが始まりで、その後、景観形成のために地域ぐるみで休耕地を利用して本格的に植えられるようになったのだそうです。
この桃の木は根元は太くそれなりに年代もののように見えます。花が付いている枝はみんな細いところを見ると、これは新しい枝なのでしょう。桃は花が終わると新しい枝を伸ばし、その新しい枝に翌年に咲く花芽を付けるのです。
これが桃色!
花桃の郷はここから上部に展開していますので、とりあえず中心地らしい展望台の下にある駐車場まで上って行ってみましょう。
展望台はあの小山のてっぺんに立ち、その下には霞のような薄いピンク色の花が咲いています。あれば桜ですね。
駐車場の前にはこんな真っ黄色の菜の花とオレンジ色のボケの花が咲いていました。
辺りを見渡すと上に茶屋があり、その周辺からさらに上部に桃の花が多いようです。ということで展望台には上らずにまず茶屋に向かうことにしました。
上りだすとすぐに黄色い花が咲いています。今頃咲く黄色い花はレンギョウがサンシュユでしょう。樹形と大きさからしてこれはおそらくサンシュユでしょう。
茶屋まで上ってきました。この茶屋には無料のコーヒーサービスがありました。そのテラスからの眺望は最高で、おいしいコーヒーをいただきました。ごちそうさまです。
こちらも黄色と桃色。
コムランのうしろに見えている三角形の山が展望台がある大内山。
ここの地名は大内沢、山は大内山。なんだか紛らわしいな〜(笑)
茶屋で休んでいると急に暗くなってきたので天気予報をチェックしてみると、あれれ〜、1時間後に雨! 今朝の予報では夜まで雨は降らないはずだったのに、、、
このあとの予定は笠山をぐるりと廻って小川町の桃源郷に寄り、小川町駅上りでしたがそれは到底無理です。県道で小川町駅に直行すれば行けなくはないですが、県道はあんまり魅力的ではありません。そこで今日はここでおしまいにし、最寄り駅の寄居駅に向かうことにしました。
寄居駅まではすぐなのでもう少しだけ時間がありそうです。茶屋の上の桃も見たかったのですが、コムランはここは初めてなので、駐車場まで戻って展望台に上ることにしました。
この展望台からの眺めは素晴らしいです。
展望台からは茶屋の上部で咲く桃の花もよく見えます。
集落の西の奥にも良いところがありそう。
14時になりました。そろそろ下山しなければなりません。予報の雨まであと30分。
花桃の郷から小谷野田峠まではほんの少ししか上らないのでこれはあっさりパスし、ぐわ〜っと下ります。あっという間に花桃の郷がある山が後ろに遠ざかって行きます。
寄居のまちの入口に架かる正喜橋で荒川を渡ります。
正喜橋からまっすぐ進むと正面が寄居駅です。この時、駅前のYottecoというイベントスペースで若者が楽しげに歌っていました。
14時半の少し前に寄居駅に到着。雨には当たらずに済みました。
寄居駅には秩父鉄道、東武鉄道、JRと3社が乗り入れていますが、私たちが使うのは東武鉄道です。東武鉄道は小川町から東京方面はよく使うのですが、この辺りではほとんど使ったことがありません。寄居から森林公園までの電車はレトロなカラーなのか、私たちが通常乗るのとは異なるものでした。そういえばこの前、春日部辺りでリバイバルカラーだというオレンジとベージュ色の車両を見ましたから、これもそうしたものなのかもしれません。
今日は後半の予定を断念することになりましたが、前半はとても良かったです。タイミングが合えばこのコースはまた走ってもいいですね。