桜の季節は短い。先週末、都心の桜は満開でしたが、それらはすでにほとんど花びらを落としています。少し北へ移動すればこの日もまだ桜に間に合うだろうかと、やって来たのは埼玉県の栗橋駅です。
このすぐ近くにある権現堂堤(ごんげんどうつつみ)は私たちもこれまで何度も訪れたことがある桜の名所で、今日はこれをメインに鄙びた中川の景色を楽しみたいと思います。
これまでこのコースはワンウェイで計画してきたのですが、ペタッチとベネデッタが車で行きたいと言うので、今回は栗橋駅発着の周回ルートにしました。
そのベネデッタですが集合時刻になっても姿を見せません。どうしたのかと思っていると連絡が入り、本日のルート上にある近くの大型電気店にいるとのこと。どうやら日光街道が混んでいて遅れたようです。ということで、その電気店に向かいます。栗橋は利根川のすぐ南にある町で、利根川の土手沿いを進んでいきます。
電気店に着いてみるとそれは巨大も巨大。
しかもベネデッタは私たちがアプローチした側とまったく反対側で待っていたので、店の前を完全に往復してしまいました。しかしとにかく落ち合えてよかった。
くしくもこの電気屋さんは権現堂川のすぐ横に立っており、ベネデッタを拾うとすぐにその畔に出ました。
この川辺では釣り人が糸を垂らしていました。バス釣りのようです。
埼玉県と茨城県の県境を成している権現堂川は古くは利根川本流だったこともあるそうですが、現在は利根川から別れていた流頭が廃止されたため流れがなく、調整湖となっていて行幸湖(みゆきこ)とも呼ばれています。行幸湖の名は明治時代に天皇の行幸があったことからその堤を行幸堤と呼ぶようになったことから来ているのでしょう。
権現堂川沿いは桜並木です。道にはびっしり花びらが敷き詰められていますが、花は樹上にもまだしっかり残っています。どうにかぎりぎり間に合ったようです。
その桜の花の下を行くコンタはここしばらくの間、流行病でダウンしていましたが、ようやく復調してきて今回が再起後の初走り。さて走り切れるかな。
足元には黄色い菜の花が咲き、対岸にも桜並木が見えてきました。これはなかなか素敵な景色です。
県道から南は東岸の桜がなくなるので大平橋を渡り西岸に出ました。
こちら側の桜も見事です。
横が権現堂公園になると権現堂川に何艇かのカヌーが浮かんでいます。そのうち道脇にカヌー艇庫が現れました。権現堂川は流れがないのでカヌーにはちょうどいいですね。
権現堂川の南の端まで来ると大噴水が上がり、その向こうに吊り橋の外野橋が見えます。そしてその先に桜の塊が。あそこが権現堂堤です。
外野橋で振り返れば、それが架かる中川とさきほど横を走ってきた権現堂川の水をやりとりする行幸給排水機場が見えます。
ちなみにこの中川の流れは大正時代までは権現堂川で、関宿橋の北の埼玉県と茨城県の県境で江戸川に流れ込んでいました。
外野橋を渡り終えると正面が凄いことに! これには全員『おーっ!』とか『キャー!』とかという反応。堤1kmに渡り千本の桜が咲き、その足元は黄色い菜の花の絨毯。
この光景に、比較的近くに住んでいるもののここは初めてというベネデッタもご満悦。
もちろん復帰第一戦のコンタ、近所なのに車でやってきたペタッチ、遠方から遥々やって来たマコリン、ペタッチの車に同乗させてもらってやって来たコテッチャンも満足げ。皆さん、心も軽やかなら身体も軽やかで空中に見事に浮かんでいます。
堤の桜を外側から眺めたら、今度はその中を歩いてみましょう。
桜のトンネルだ〜
堤の下ではカップルや家族づれがピクニックをしています。ここでお弁当をいただいたらさぞおいしいでしょうね。
権現堂堤の桜と菜の花を満喫したら、中川に沿ってその下流へ。
道は川沿いから少し逸れますが、ここにも桜並木が続きます。
この道沿いには緑道がかなり長い距離続いています。この時期は車道を行って桜を眺めてもよし、緑道の中から眺めてもよし。
緑道の終点は宇和田公園です。
ここで野草研究家のベネデッタは野蒜(のびる)を発見。それをぐわっと引っこ抜いて『これ、おいしいですよ〜』と、マコリンとサイダーにプレゼント。
サイダーはその場でポリポリ。『あ〜、味噌持って来ればよかったな〜。これで今日の晩酌のアテは野蒜のぬたに決まりだね!』と大喜び。
一休みして宇和田公園を出、中川の土手を南下します。
ここは道脇に小学校の校庭にあるような桜の木があり、まだ満開に近い状態でした。
このあたりの中川は昭和初期に開削されたものです。
護岸のコンクリートは僅かで目立たず、菜の花が咲く土手から水面までが近くていい感じです。
先に鄙びた高平橋が見えてきました。この橋は川の開削当初からのものかと思ったのですが実はそうではなく、1959年(昭和34年)の竣工。この付近にはこうした昭和時代のコンクリート製の橋が何本か残っています。
『いや〜、この道はえ〜道やの〜』と、先日ショート・トライアスロンに出場したペタッチ。
今日は競技じゃないからバイクウェアじゃあない方がよかったかもね。派手なスポーツウェアはカントリーロードに合わないよ〜
先ほどの高平橋と良く似た玉子橋を渡ります。この橋も1959年竣工。総重量の制限は2.5tなので車も通れますよ〜
開削された中川の行き先は庄内古川でした。その庄内古川は長間の香取神社あたりに源を発していたようなので、ここはかつての庄内古川ということになります。
玉子橋を渡ったついでにしばらく中川右岸を行きます。この中川右岸の道は船戸橋のすぐ南で行き止まりになり、ちょっと迂回して用水路らしい川を渡り、米谷野で再び中川に出ます。
その米谷野にはまだ見頃を保っている桜の木が数本。
その後も中川右岸を下りますが、そろそろ休憩にしましょう。春日部市上柳の道の駅に向かいます。
ここは関東平野のど真ん中なので周囲は田んぼだらけ。
これらの田んぼはすでに田起こしと基肥を終えているようで、あとは入水を待つだけのようです。
その向こうに三角屋根の『道の駅庄和』が見えてきました。
道の駅庄和に到着。ここは現在は春日部市ですが、一昔前は庄和町でした。
目立つガラス張りの2階には5月3日と5日に江戸川の河川敷で行われる『春日部大凧あげ祭り』の凧が飾られています。もっともこれは子供用で、本物の大凧は、縦15m横11m。これは畳100帖に相当し、その重量はなんと800kg。もちろん日本一!
コテッチャンがキャッチした事前情報では、ここにはキッチンカーが出ていて関西風のたこ焼きが食べられるというので、さっそく頂いてみました。
私はたこ焼きを食べたことはこれまでほんの数度しかなく、関東風、関西風の別があることを知りませんでしたが、関東風は外側がパリッとしていて、関西風はふわふわなんだそうです。ここには数種類の味付けがあったので、一般的なソースとネギ塩とをやってみました。
ん〜ん、なんかよくわからん。たこ焼ってみんなこんなもんかと。逆に関東風ってどんなんだっけ?
たこ焼きのあとは昼食です。道の駅のすぐ近くに蕎麦屋があるのでちょっと移動しましょう。
今日は暑いので、皆さん冷やしたぬきや冷やし山菜などの冷やし蕎麦の注文が多かったです。この蕎麦屋さん、お値段ちょっと高めですがおいしかったです。
お蕎麦で満腹になったら午後の部開始。まずは庄和総合公園の中を行き、道の駅の近くの中庄内排水路へ向かいます。
庄和総合公園を出ると再びあの田んぼが広がります。あと半月もするとこれらの田んぼにも水が入れられるでしょう。
中庄内排水路に出ました。
この水路沿いには3kmに渡り350本ほどの桜が植えられています。
ここの桜はだいぶ花びらを落としてしまっていますが、なんとか持ちこたえています。
ここは田んぼの中で車を停めるところもないからか花見をする人はほとんどいません。ジオポタ専用花見ロードを快適に進みます。
桜のトンネルっぽくて気分よし。
中庄内排水路の桜並木がなくなったところから江戸川に向かいました。江戸川の土手を上ると、河川敷にグライダーが何機か見えます。
ここは明治大学体育会航空部の宝珠花滑空場で、駐機していたうちの1機がスーッと飛び立って行きました。
近くの格納庫から滑走路に向かう学生がいたので話を聞くと、飛んでいる時間は一般的な条件下では7〜8分だそうです。グライダーに乗ったことがあるベネデッタによれば、動力がないので飛んでいる最中の機内はとても静かで現実の世界ではないみたいだそうです。
そのうち先ほど飛んで行った機が戻ってきて着陸しました。飛ぶのも静かなら着陸するのもまったく音無し。
私たちが見ている間に2機が離着陸しました。
さて、しばらくグライダーを眺めて楽しんだらその場を離れ、江戸川自転車道で関宿(せきやど)へ向かいます。
宝珠花滑空場の付近の自転車道は狭かったですが、ここに来てそれがぐっと広がりました。近年各地で河川の土手の補強が行われていますが、江戸川も工事されたのでしょうか。
江戸川の東には関東平野の雄、筑波山が。
ペタッチは毎朝それを眺めながら愛犬とジョギングしています。ペタッチの自転車に付いている622のナンバーブレートを見てやってください。これがこの間参加したショートトライアスロンの証で、記念に付けておくんだって。
コテッチャンも毎日筑波山を見ていますが、こちらはもっぱら昼間で、しかも自転車に股がって。江戸川はデイリーコースの一つなので、この道は何十回と通っています。最近ヒゲを伸ばしたので、もともと怪しげな顔がなんだかゴジラっぽくなってきました。
関宿が近づいてきました。その名も関宿橋を渡って江戸川左岸に出ます。
江戸川は埼玉県と千葉県の県境を成しているので、橋を渡り切るとそこは千葉県です。その千葉県側にも江戸川自転車道は続いています。
この千葉県側の江戸川自転車道を北上して行くとほどなく先に関宿城が見えてきます。
利根川から江戸川が分かれるところに立っているあのお城は、もちろん本物のそれではなく博物館として建てられたものなのですが、天守閣部分はかつてあった関宿城を古い記録に基づいて再現したものだそうです。
その博物館の手前に木立が見えますが、本物の関宿城はあそこに立っていました。
そんな話をしていると、なんとペタッチもコテッチャンも関宿城跡のことは知らなかったと言うのでちょっと立ち寄ってみました。ここにはかつての城の存在を示す石碑と簡単な案内板がある切りで他には特に何もないのですが、まあここまで来たら一度は立ち寄っても良いのではないでしょうか。この城跡を見ると大分狭いように思うのですが、実は2/3ほどは江戸川の土手に埋まっているのだそうです。
あんたら何しとん?
何もない関宿城跡を覗いたら、関宿城博物館で少しの間アイスクリーム休憩です。
この周囲には桜の木がたくさん植えられているのですが、これにはあまり関心を示さない面々でした。まあ今日ここに最初にやってきていたら、また違う反応があったかもしれませんね。
サイダーとコテッチャン以外は関宿城博物館に入ったことはないそうですが、皆さんあまり興味を示さないのでこの内部見学はせずに、江戸川の流頭部に行ってみることにしました。
先ほど述べたようにここは利根川と江戸川の分流点の近くで、東に利根川、西に江戸川が流れています。
お城の裏手に回ると利根川の河川敷に出ますが川面は見えず、流れがあるらしい窪みの遥か先に筑波山がうっすらと見えます。
河川敷に下りて少し行くと道は砂利敷きに。
この砂利道を5分ほど走ると行き止まりになり、その先にとても広い流れが見えます。利根川です。
つまりここが江戸川が利根川から別れる分流点、江戸川の流頭部です。写真の左側が江戸川で、右側が利根川になります。
『へ〜、ここ、ちょっと面白いね。世の中にはこんなところがあるんだね〜』と、ペタッチ。
川の合流点はそこら中にありますが、分流点はそれよりずっと少なく、あってもそこまで行けないこともあり、あまり目にする機会がないかもしれません。特にこのような大型河川では珍しいかもしれません。都心では岩淵水門がある隅田川の流頭部がよく知られていますが、あそこには水門が二つもあるため、ここのように流れがきれいに別れる景色は見られません。
『ここから見ると関宿城も本物のお城みたいじゃね〜』と、あの城をどう攻略するか思案するペタッチ。
『ではペタッチ将軍、先遣隊ベネデッタ、行きます!』と、お城に向かうベネデッタ。
このあとは関宿水閘門を渡り、利根川の土手を行って出発地の栗橋駅へ向かいます。
利根川の土手に入ると、その上の自転車道の広いこと広いこと。この土手もつい最近補強されたようで、路面はピッカピカ。
空は広く、車が通らない道は安心安全で文句を言う筋合いはないのですが、こうも広いとなんだか調子が狂います。なんて言っていると、土手の補強工事がこの先で行われていたので、土手下へ。
土手下は概ね田んぼの中のカントリーロードで、これも快適。利根川の土手道は5分も走ると飽きてしまうので、むしろこちらの方がよかったかも。
広い車の通りの多い道に出てしまったので、今日の最初に通った権現堂川に出ることにしました。
権現堂川の桜は、朝方は逆光でしたがこの時は真横から陽が射していたので、朝とはまた違った見え方をしています。
無事に栗橋駅に到着し、お決まりの反省会に突入。今回は比較的最近できた韓国料理の居酒屋さん。どれもおいしくてリーズナブルでした。真っ黒なあの韓国風ジャージャー麺(炸醤麺=チャジャンミョン)あります!
桜はピークを過ぎておりぎりぎり間に合った感じでしたが、それでも皆さんに満足していただけたようで良かったです。最近ジオポタのメンバーも高齢化が進み、電車輪行がきついという者が増えてきたので、これからは今回のように車でも来られるコースも考えていきましょう。