010 トルヴェール&ミンネゼンガーたち/十字軍の音楽/マンロウ
前回いきなり中世までタイムトリップしてしまったので、今回もその続きを。
私たちが『中世』と一言でいって退けてしまう世界は実は、今から1000年くらいの時間の隔たりがある。 ベートーヴェンまで200年、バッハまで300年。 これを思うと中世までってのはとてつもない時間なのです。 日本なら鎌倉時代ころです。 そしてその『中世』という時代そのものは、何百年もの時間から成り立つのです。 あなたはそのころの時代の何かを想像できますか?
僕は残念ながら歴史に疎いから、そのころの時代がどんなものであったのかはまったく想像がつかないのですが、少し歴史の本を紐解くと、ヨーローッパではキリスト教がのし上がり、暗黒の時代を形成していたともいわれているようです。 キリスト教の聖地イェルサレム奪還の為の十字軍が、3世紀にもわたり派遣された時代でもあります。 ですからキリスト教の宗教音楽は当然のように栄えました。
でも、どうなんでしょう? 歴史に登場する事柄というのはエポック・メイキングなことや、他の時代との繋がりで関連付けしやすいことが取り上げられやすいわけです。 誰も一般民衆のことを歴史に載せようなんて思わない。 しかし当然、民衆の音楽はどこかにあったわけです。 日本の琵琶法師が語りついだように、ヨーロッパにも世俗の音楽が生まれ語り継がれたころがあったのです。 彼らは吟遊詩人と呼ばれました。 残念なことに彼らの音楽は楽譜として残されていないので、それらがどのようなものだったのかはわからないようです。 世俗の音楽で現在知ることができるもっとも古いものは、騎士や貴族階級の詩人たちでミンネゼンガー(独)、トルヴェール(北仏)、トルバドゥール(南仏)などと呼ばれた人々のものです。 ここではそのなかのほんの一部を紹介します。
このレコードについて
王のエスタンピー(作者不詳)
最高に楽しい舞曲! 最も古い器楽形式の一つとのことで、太鼓とカラムスというダブルリード(ひちりきみたいな)の楽器で演奏されています。
パレスチナの歌/ワルター・フォン・デル・フォーゲルヴァイデ(1170-1230)
十字軍が聖地に辿り着いた感動を歌ったものだそうです。 非常に美しい旋律の曲です。
五月、この新しき季節に/ギイ・ド・クゥーシー( -1203)
十字軍遠征中に死んだこのひとが、愛人への心残りと運命を呪った美しい歌。
演奏:マンロウ+ロンドン古楽コンソート
レーベル:LONDON