034 プレトリウス/テレプシコーレ/マンロウ
重い音楽を聴いたので、今回は軽いのを。
そういえば、ドイツ・ルネッサンスを紹介していませんでした。 実はドイツの音楽はバロック以降はともかくとして、このルネッサンスあたりまでは、フランスやイタリアそしてイギリスなどからずいぶん遅れを取っていたのです。
ようやく16世紀ころから徐々にその独自の音楽を切り開きはじめ、17世紀の初頭ころにレオン・ハスラーやミヒャエル・プレトリウス(1571-1621)らが出てくることになります。 ここでは後者の舞曲集『テレプシコーレ』を揚げましょう。 ちなみにテレプシコーレとは、ギリシア神話の女神の一人の名でその本来の意味は「踊り興ずること」だそうです。 もろもろの舞曲を集めたこの曲集は、さながらルネッサンスの舞曲全集といった趣きです。
またこの人は音楽理論家としても重要な存在で、音楽百科事典の先駆けとも言うべき『シンタグマ・ムジクム(音楽大全)』を表わしたことでも知られています。 最初のころ紹介したオッテンのグループであるシンタグマ・ムジクム・アムステルダムの名は、ここから取られています。
このレコードについて
デイビット・マンロウ+ロンドン古楽コンソートのものを。この人の音楽を聴くたびに思う。 どうしていつもこの人は、こんなに活き活きと魅力的にあらゆる曲を演奏できるのだろうかと。 そしてそこにはいつも、ちょっと陰りがある。
舞曲なんていうのは、そもそもそんなに内容のあるものじゃあないでしょう。 あけっぴろげで楽しいだけでも充分なのです。 そしてそういう演奏もいくつかある。 だけれどこの人がやると、どれもみんなすばらしい本物の音楽にしてしまう。
後半には同じ作曲者のモテット集『ムーサエ・シオエニア』などの宗教曲が納められていて、舞曲と同時に楽しめるのがいい。 もちろん演奏もこの上ないものです。
レーベル:EMI
※ 少し残念なのは、これはほぼ一般的にいえることでもありますが、LP時代の録音がCD化されたものは、少し痩せて聴こえ、音の立上がりや輪郭が曖昧になっているということです。