047 ハイドン/ピアノ ソナタ集/シュタイアー

アルバムの写真さて、タイトルを見てぎょっとされる方も居られるかも知れません。 古典派としてあまりに有名なヨーゼフ・ハイドン(1732-1809)をここで取り上げたものかどうか、僕も大きく迷います。

確かにここには、すでにバロックとは違う確かな和声があります。 バロックから大きく離れた音楽を感じるのだから、この人をバロックに包括するには無理があるのでしょう。 だけれどバッハとハイドンを繋ぐ音楽はいったいどこにあるのでしょうか。 バッハと同時代といってもテレマンはそもそもずいぶんとバッハからは離れた様式を取っていたし、ヴィヴァルディなんかはずっと現代的だ。 エマヌエル・バッハの多感様式を経ていよいよバロックの、そしてあのバッハの基本である通奏低音(バッソ・コンティヌオ)が失われる。 それはイタリアのコレッリのあとのナルディーニあたりを聴いてみるとよくわかるでしょう。 そして以前紹介したペルゴレージの出現。 もし取ることが許されるなら、僕はチマローザの『レクイエム』を揚げるかも知れない。 そしてようやくグルックだ。

ハイドンに戻ります。 こうした人々の後この人が現われます。 この人のすぐあとにはあのモーツアルトがいる。 バロックからクラッシックへの移り変わりの人としてここで一点だけ取り上げることを許してほしい。 弦楽四重奏や交響曲の父として音楽史上では決して抜かせない人。 そこでこの人のそういったものを取り上げることもありだとは思うのだけれど、それではあまりに古典派に寄り過ぎではないか。 ここではもう少しシンプルなピアノソナタにします。 この人の曲はピアノを習ったことがある人なら誰でも一度は弾いたことがあるでしょう。 そこでは当然のように左手の和音の扱いを習います。 これまでのバロックとは全然違う左手を。

このレコードについて

アンドレアス・シュタイアーが1790年製作のアントン・ウォルターのコピーのハンマー・クラヴィーア(フォルテ・ピアノ)で入れたものを。 現代のピアノと機構的には同一の楽器ですが、当時の楽器を再現したものを使ったものです。 最近ではショパンやもうすこし後の時代まで、当時の楽器でやられることもあるけれど、これは僕が始めてハンマー・クラヴィーアの素晴らしさを知った一枚です。 ここにある響きは現代のピアノとはずいぶん違う。 現代の楽器に比べるとフェルトも薄く、フレームも華奢、箱体の厚さも薄い。 パッと見た目は現代のピアノよりも、現代のでないチェンバロに近い。 ここにある響きはハンマーが弦を叩く直接音が強く、それゆえに音の中心にちょっとした核があるような感じです。 僕は好きだな、この響きは。 そして、シュタイアーという人の演奏。 今までの多くのピアニストときたら、ハイドンをベートーヴェンのように弾いたりするじゃあないか。 そんなんではなくて、ここにはハイドンがいるような気がするな。 少なくとも僕はこんなに魅力的なハイドンってのは他に知らない。

レーベル:harmonia mundi

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uploaded:2004