街の中心部からウエルガス修道院へ
スペインの首都マドリードから列車で北へ約2時間、到着したのはブルゴス。サンティアゴ巡礼の道の主要ルート上にも位置する古都です。
ブルゴスの街は9世紀に創設され、11世紀にフェルナンド1世王の統合したカスティリヤ王国においてイスラム教徒との戦い(レコンキスタ)の重要な拠点とされ、トレドやマドリードとともに王国の都となりました。
そんな中世の雰囲気が残る街の中心から、まずは西へ2kmほどのところにあるウエルガス修道院へ。アルランソン川に沿った道は並木に覆われたプロムナードとなっています。
正面には白いサンタ・マリア門が見えます。ブルゴスの街にはかつて12の入口があり、そのうち5つの門が残っているそうです。
サンタ・マリア門や大聖堂はあとにして、さらに川沿いを西へ歩いていきます。
並木は両側からの枝同士がくっついて、木の枝の天蓋を構成しています。
サンタ・マリア門の前の橋を南へ渡ると、ラ・メルセッド教会の塔が見えます。
15世紀の終わりから16世紀にかけて建てられたゴシック様式の教会です。
アルランソン川に沿って、さらに西へ。また教会に遭遇します。
こちらはエスクラバス・サグラド・コラソン・デ・ヘスス教会というそうです。こちらの建物は比較的新しそうですね。
川から離れてまっすぐ西へと進むと、アンパロの門があります。
この門をくぐれば、すぐ前にウエルガス修道院があります。
ただし、修道院の入口は敷地の塀に沿って北に回り込んだ端にあります。というわけで、アルフォンソ8世通りを北へ。
その途中の通り沿いにあるサン・アントニオ・アバッド教会。
東側の塀の外側から見たウエルガス修道院。
アルフォンソ8世とその妻のレオノールによって創設されたシトー会の修道院で、建物は1181年から1222年にかけて建設されたそうです。
ここは、王妃レオノールが男性修道士と同等の力を持つ女性修道士の育成を目指した女子のための修道院です。
修道院には教会や回廊、学校や生活の場など様々な建物があり、数世紀にわたって増改築が繰り返され、ロマネスクやムデハール、ゴシックなど様々な様式が見られます。入口のアーチをくぐると、広い中庭に入ります。
中庭からアーチをくぐるとコンパス広場に入り、その前に教会があります。
教会の横のコンパス広場側に設けられた通路。
そして教会の内部へ。
白い壁の教会内部は鉄柵によって祭壇や聖歌隊席と区切られています。
教会に隣接した南側には、13~15世紀のゴシック様式の回廊があります。
ゴシック回廊が囲む中庭。壁で仕切られているのでちょっと閉鎖的な感じもします。
回廊から聖具室への木の扉には、美しい星型のイスラム風の模様が施されています。
回廊の角に、ひときわ豪華な装飾の入口がありました。
こちらは集会室。ゴシックの柱が並び、15世紀の絵画が飾られています。ステンドグラスも美しい。
ゴシック回廊に戻ると、その天井の一部にムデハール様式の模様が残っています。これらは1240年~1260年頃のものだといいます。
装飾された円の中に描かれているのは孔雀。正面と横向きとが交互に描かれています。
ゴシック回廊を出て、バラの咲く庭をさらに奥へ。奥の建物の入口は、アラブ風の馬蹄形アーチです。
そこを入ると、美しい庭を囲んだ小さなロマネスクの回廊がありました。
細い2本組の柱が並ぶ回廊の床にはアーチ型の日差しが落ちています。
12世紀の終わり頃に建てられたこの回廊とそれに付属する部屋は、修道院の中でも最も古い時代に建てられた部分だそうです。
中庭の中央には泉が設けられ、静かに細い水流を滴らせています。
美しい回廊の中でしばし佇みます。風の音や鳥の声を聞きながら、ここでならずっと瞑想を続けられそう。
そして、回廊に付属する小さなチャペルの天井には美しい星が散りばめられていました。
このチャペルはもともとアルフォンソ8世の宮殿の一部だったそうです。
ムデハール様式の装飾で、こちらは花や唐草のような文様の間に鳥や動物がいます。動物は猫かな?
ブルゴスのカテドラル
ウエルガス修道院の見学を終え、アルランソン川に沿って再び街の中心部へ。
カテドラルの尖塔が見えてきます。
そして、サンタ・マリア橋を渡った正面には、サンタ・マリア門がどんと構えています。(TOP写真も)
14~15世紀に建設されたこの門は16世紀に改修され、ブルゴスやカスティリヤの歴史的に重要な人々の像が設置されました。その中には、レコンキスタの英雄エル・シド(上段右)も見ることができます。
サンタ・マリア門を抜けるとレイ・サン・フェルナンド広場に出て、その前面にカテドラルが聳えています。
この壮麗なゴシック教会は、1221年に着工し3世紀もかかって完成したものだそうです。
ここは教会の南の翼廊にあたり、階段を上った入口はサルメンタルの門(Puerta del Sarmental)と呼ばれています。
この門は1230~1240年頃につくられたもので、上部中央にはキリスト、その周りに4人の福音史家が配置されています。門の上部には大きな薔薇窓。
この門のすぐ東にあるのが尖塔形のヴォールトが続くゴシックの回廊で、13世紀末頃につくられました。
回廊は2層になっており、下の回廊は当初は墓地としてつくられたそうですが、1900年前後に大きく改修され現在は展示などに使われているとのこと。
教会の中に入ります。奥の大祭壇(Capilla Mayor)の飾り壁は16世紀につくられたものだそうです。
その祭壇の前で白い衣装の女性たちが並び、何やら儀式が行われています。
先頭の女性はトーチを掲げており、そういえばギリシアで聖火を採火するときの雰囲気に似ていますが、どうでしょうか。
女性たちは西のサンタ・マリアのファサードの中央門から外へ出て行きました。周囲には観光客が集まっています。
このファサードの3つの門は、元は13世紀のゴシック様式だったのですが、傷みがひどいため両側の2つは1663年に修復され、中央の門は1790年にネオクラシック様式の門にされたとのこと。
そして、これがサンタ・マリアのファサードの上部です。中央には薔薇窓とゴシックの細い柱にかたどられた窓、その両側に2つの双子の塔が聳えています。
中央部及び塔の3層分は13世紀の建築ですが、15世紀の半ば、塔の上に八角形の面が角錐形に伸びていく頂上が追加され、これがブルゴスのカテドラルの特徴的なシルエットとなりました。
カテドラルを他の方角から見てみましょう。
サンタ・マリアのファサードの広場から北側へと階段を上っていきます。正面に見えるのはサン・ニコラス教会。
カテドラルの北側の道は広場よりかなり高いところにあります。
この道からサンタ・マリアのファサードの塔と、後ろの交差部のドームを飾る尖塔群が見えました。
この交差部のドームは頂上を8つの尖塔に飾られ、まるで王冠のようです。
当初1400年代後半につくられたドームは1539年に突然崩れ落ち、その後ゴシック様式の装飾を継承しつつ1568年に再建されたのが現在のドームだそうです。
カテドラルの北東側に回ってみると、ここにも小さな広場がありました。
こちら側はあまり観光客もおらず、のんびりムード。階段ではゴム跳びをする地元の女の子たちがいました。
再びサンタ・マリアのファサードまで戻ります。壮麗なゴシック教会の姿を目に焼きつけて、次の教会へと向かいます。
こちらはサンタ・マリア広場のすぐ北にあるサン・ニコラス教会です。1408年の建築だそうです。
この教会で目を引くのは、祭壇奥の飾り壁です。1505年につくられたそうで、人物や物語のレリーフでぎっしりと埋め尽くされています。
上部には天使に囲まれたマリア像、その下中央にはサン・ニコラスの像があります。
ブルゴスの街歩き
さて、ここからぶらぶらとブルゴスの街歩き。
ブルゴス城に上る東側の入口付近に、赤い馬蹄形アーチのサン・エステバン門があります。ここは、かつてブルゴスの街への北の入口でした。
ムデハール様式のこの門は12世紀に建造され、15世紀に拡張されたとのこと。
ところで、ブルゴスはサリーナの一人旅でしたが、同じく一人旅のマリイさんと出会い、一緒に楽しく観光しました。
マリイさんはメキシコ在住、動物を愛するフランス人です。
それで、教会の塔のてっぺんにコウノトリを見つけると大喜びのマリイさん。『あそこに巣があるわよ。あ、2羽もいる! ほら、写真写真』
サリーナも盛り上がり、気がついたら10枚以上も写真を撮っていました。
そんな私たちがおかしかったのか、窓から笑って挨拶してくれる女の子たちです。
さて、ここからは街で見つけた風景をいくつか。
これはパン屋さん。まだ朝早いので準備中ですね。かわいい2階建ての建物は、旧市街の中でも珍しいです。
こちらはプラサ・マヨール。
このページの最初の写真が朝の一枚で、その時は誰もいませんでしたが、夕方近くなってくるとどんどん人が集まってきます。
しばらく眺めているとさらに人が増え、座りきれない人たちが立っておしゃべりを続けています。
子どもたちも広場で走り回って遊んでいます。プラサ・マヨールはブルゴスの人たちが大好きなコミュニケーションの場のようです。
突然、通りをクラクションを鳴らしながらハデなピンクの車が疾走してきました。結婚式をあげたばかりのカップルです。
白いヴェールをなびかせ、ガラガラとカンを引きずって去っていきました。お幸せに!
ブルゴスは、カスティーリャ・イ・レオン州ブルゴス県の県都であり都会と言えますが、壮大なカテドラルやウエルガス修道院など素晴らしい建築があり、ぶらぶらと旧市街の街歩きも楽しいところでした。
次は、同じカスティーリャ・イ・レオン州にあるソリアに向かいます。