クチ、タイニン
今日はホーチミンから北西へ、クチとタイニンの一日ツアーです。私たち2人に運転手とガイドさんがつくプライベートツアー。
ホーチミンを出て1時間半ほど、まずはクチに到着。ベトナム戦争時に解放戦線の拠点が置かれ、ゲリラ戦が展開された総距離200kmもに及ぶ地下トンネルの一部を見学することができます。まずはビデオや地図などで概要を教えてもらいます。
続いて森の中に入っていくと、落ち葉に埋もれて小さなトンネル入口があります。
この入口を見つけるのは難しいし、この狭さ。私たちには無理だ〜
無理、と思いましたが、やってみたら2人とも何とか無事入りました。
別の入口から入ってトンネル内を見学。腰をかがめながら入っていくと、そこには作戦会議室や病院、寝室、台所などがあり、戦時の地下での生活の様子をうかがうことができます。観光用に広げられているそうですが、狭くて息苦しい。
そして、外には地雷で動かなくなった本物の戦車が。
ベトナム兵たちがつくった罠を展示してありました。鋭い切っ先を仕掛けた落とし穴、扉式、回転式の罠など、まさに手づくりで、身がすくむものばかりです。
ツアーの車は続いてさらに50kmほど北西へ進み、カンボジアとの国境にも近いタイニンへ。
タイニンはタイニン省の省都ですが、ここで訪れるのはこのテーマパークのような派手な門をくぐった先です。
そこは、カオダイ教の総本山。パステルカラーに彩られた寺院の形は2つの塔を持つキリスト教寺院のようでもありますが、その屋根、庇などに中国・ベトナム風のテイストが。
カオダイ教は1919年に創設されたベトナムの新興宗教で、この寺院は1933〜1955年に建てられたそうです。
側面に回ってみると、通路に並ぶアーチはイスラム建築を思い起こさせます。
カオダイ教は、儒教、道教、仏教、キリスト教、イスラム教の5つの宗教を土台とした宗教で、人類の救済を図るため東西諸宗教を統合したとされ、信徒は約200万人、タイニン省では人口の7割がカオダイ教の信者だと言われているそうです。
寺院の内部もかなり派手です。青い天井、黄色の壁、ピンク色の柱には黒と金の鱗の龍が巻き付いています。
もうすぐ12時、昼の礼拝が始まります。カオダイ教では1日4回の礼拝を行うとのこと。
礼拝が始まる前にさっと堂内を見学。
柱や壁、天井にはカラフルなレリーフや絵が描かれ、その周囲の布などの飾りも赤、黄色、青と鮮やか。
そして最も奥の祭壇に祀られているのは、地球儀のような球体に描かれた『目』です。
これは、カオダイの神の目で『天眼』と呼ばれ、『宇宙の原理』『宇宙の至上神』の象徴なのだそう。この目は心臓に近い方の左目だそうで、カオダイ教のシンボルマークでもあります。
そろそろ12時の礼拝が始まります。私たち見学者は階段を上って堂内を見下ろすバルコニーへと移動。
信者は男女分かれて正面の入口から入ってきます。
ところで堂内にはいろいろな人の銅像が見えます。カオダイ教にはさまざまな聖人や使徒がいて、例えばキリスト、釈迦、観音菩薩、ムハンマド、孔子、関羽、ソクラテス、トルストイ、ヴィクトル・ユーゴー、だそうです。
白い衣装に身を包んだ信者たちが整然と入ってきて、きれいに並んで床に座ります。
位の高い僧は色のついた装束をまとっており、黄色が仏教、赤が儒教、青が道教を表しているのだそう。
2階では楽士が音楽を奏で、女性たちが合唱しています。
祈りを捧げる女性たち。
極彩色の寺院、その広い堂内に流れる合唱とともに行われる荘厳な礼拝。不思議な体験でした。
時刻はお昼過ぎ。ツアーは昼食付きということで、案内されたのはここです。む、何だか広い~
この部屋には私たちのみで、真ん中にポツンとテーブルと椅子。ツアー団体用の部屋で、今日はお客さんが少ないのでしょう。お料理は美味しくいただきました。
というわけで、お店のお姉さんと記念撮影。
さて、ツアーはこれでおしまい。ここからは車で一路ホーチミンへと戻ります。帰り道は仲良くなったガイドさん・運転手さんとクイズなどで盛り上がり、あっという間に到着。
そして、ホーチミンの夜。屋台でビアホイ(生ビール)とバインセオ(ベトナム版お好み焼き)を味わい、ホテルのオイルマッサージでとろとろと更けていくのでした。
ホーチミン
翌日。今日はベトナム最終日です。ベトナムの最後を締めるのは、やはり市場でしょう。
泊まったホテル・コンチネンタルは市の中心部、『プチ・パリ』と呼ばれたサイゴン時代の面影を残す地区にありますが、そんな道端にも露店が出ています。よく熟れたちっちゃいバナナ。
ホテルから500mほどのベンタイン市場にやってきました。野菜売り場には日本でもお馴染みの野菜が豊富に並んでいます。レタス、ピーマン、トマト、カリフラワー、玉ねぎ。
普通の買い物にはいいけれど、観光的にはもうちょっとディープな市場に行こうか~、ということでチョロンに行くことにしました。
チョロン地区はここから5kmほど西にあり、そこにはホーチミン在住華僑の大半が住むと言われています。チョロンはベトナム語で『大きい市場』を意味するそうで、そこには『ビンタイ市場』という大きな市場があります。
路線バスに乗ってビンタイ市場まで。車掌さんは女子中学生みたいにかわいい。
ビンタイ市場に着きました。市場は時計塔の入口のある2階建の大きな建物です。
お店は市場の建物内だけではありません。市場の周りの広場や路地は露店で埋め尽くされています。
コーヒーとお菓子を出す露店、小皿でつまみを出す露店、その隣にはブルーシートやすげ笠を売る店。何でもありです。
チョロン地区は、18世紀後半、ベトナム中部に住んでいた華人がホーチミンに移住してきたことが始まりなのだそうです。
チョロンを舞台にしたフランスとイギリスの合作映画『愛人/ラマン』の時代設定は1929年ですが、その雰囲気を想い起させるような古い建物も見られます。
そして、お茶のお店を発見。お土産にしようと、ペンを手に張り切って交渉するリカちゃんです。しっかりした女主人がお茶の種類などを丁寧に教えてくれるいい店でした。
さらに周囲を散策。通りの露店のタライに入っている黒い魚はナマズ?
野菜・果物のエリアにやってきました。大きな緑のものはウリのようです。
建物の足元にはテントが張り出し、通路まで野菜を入れたザルが溢れています。
大きなカゴに入っているのは、たくさんの唐辛子。
しばらく歩き回ったので、ここらでちょっと一服しましょう。市場の中のカフェに立ち寄りました。
ベトナムでは、コーヒーはフランスからもたらされ、フランス式の深煎りです。アルミ製のフィルターをコップの上に乗せ、お湯を注いで抽出されるのを待ちます。
カフェや隣の店の女の子たちが『どこから来たの~』など話しかけてきました。明るくて元気です。おしゃべりして、記念撮影。
街歩きを続けます。次に通りかかったのは、赤い柱に緑の屋根の立派な牌坊です。
中国式の牌坊ですが、門の真ん中上の赤い十字架に注目。ここは1900年創建の歴史あるカトリック教会なのです
門を入ると正面に、黄色いゴシック様式のチャータム教会が迎えてくれます。薔薇窓の上には、漢字で『天主堂』の文字が。
別名聖フランシスコ・ザビエル教会と言うそうですが、その理由は不明とのこと。喧騒のチョロンの中で、少しホッとする空間でした。
チャータム教会の正面の通りを東へと進みます。まだまだ市場の雰囲気は続きます。
この辺りは布の問屋街だそうで、布地が山のように積まれています。
そして、また露店のテントで覆われている通りもあります。ここは果物が満載。
そんな街角にあったのは『 ティエンハウ寺』(天后宮)。ここは、1760年に建てられたベトナム最古の華人寺の一つだそうです。
福建省出身の華僑の多くが信仰する航海安全の守り神ティエンハウ(天后聖母)が祀られています。
天后聖母はホイアンの福建会館でもお参りしました。福建省ゆかりの寺ではお馴染みの神様です。
天后聖母の祭壇です。ここには渦巻き状の線香が吊り下げられています。線香に付けられている赤い短冊は、ここに名前を書いて奉納するのだそうです。
この渦巻き型線香は、香港や台湾のお寺でも見かけました。大型のものでは、ひと月近く燃え続けるものもあるそうです。
ティエンハウ寺を出て1ブロック北の通り周辺は電気屋街です。小さな家電の店が並んでいるのは秋葉原のよう。
そして、目を引いたのはすげ笠の歩行者の標識。車道を歩くな、あるいは歩道を歩くときは注意して、ということかな?
そんな中、唐突な感じもしますが、このお店は何でしょうか。新婚さん用の枕とかお祝いグッズなのでしょう。店中にピンク、赤が溢れています。
ともあれチョロンの観光と買い物をすませたら、楽しかったベトナム旅行もこれで終了。このあとホテルに戻り、預けていた荷物を受け取ってホーチミン空港へと向かいます。
ベトナムは、その歴史の過程でさまざまな文化が入り混じり、そんな多民族の息づかいを感じながら南北に長い国の特徴ある街を散策することができました。
活気ある市場の喧噪はいつも楽しく、そしてさまざまなハーブが山盛りのベトナム料理はどれもおいしく、充実したベトナムの旅でした。