豊富温泉を出る
天気予報は雨から曇りになり、豊富温泉の朝は起きればなんと晴れ間が覗いています。
『おお~晴れてる~、ラッキー!』 と天に感謝を捧げ、豊富温泉郷を後にします。
道道84号
豊富温泉から豊富の町中までは道道84号線の北に自転車道が走っていますが、その道は草に覆われ見晴らしもないとのことなので、しばらく道道84号線を走り、その南を走るカントリーロードを行くことにしました。
ダートのカントリーロード
この道道84号線から入ったカントリーロードはすぐにダートに。一部に深砂利のところがありますが、おおむね締まった砂利で問題なく進みます。しかし一番小さなタイヤのジークはちょっと苦戦。
山間の牧草地
今日は十分に時間があるのでこういったダートものんびり楽しめます。山間には小さな牧草地が広がり、景色もまずまずです。そのうちに青空も広がってきました。
豊富の町中
豊富の町中に着く頃には雲はすっかりどこかへ消えてなくなり、すばらしい青空になりました。昨日までの天気予報はいったいなんだったんだ。。
豊富はこのあたりではとても大きな街で、銀行もコンビニエンス・ストアもあります。北の外れにあるセイコーマートでお昼の弁当を調達。
R40を行く
豊富の街を出れば左手はもうサロベツ原野です。今日はこのサロベツ原野をゆっくり周遊します。
まずはそのサロベツ原野が一望にできる宮の台展望台へと向かいます。
先に宮の台展望台
R40の交通量がちょっと心配でしたが、これはまったく問題ありませんでした。
快調に飛ばし徳満駅から東へ向かうと、そこには本日唯一の坂が現れます。この坂はちょっときついけれど距離は数百メートルと短いので、一気に上ります。ほどなく行く手に宮の台展望台が見えてきました。
宮の台展望台よりサロベツ原野を望む
宮の台展望台は鉄骨造の素っ気ないものですが、そこからの展望は噂に違わず素晴らしいものです。ただただ広がる湿原。そして空に一カ所だけ雲が掛かるそこには利尻島の利尻富士があるはず。
徳満駅
宮の台展望台でサロベツ原野を見渡したあとは来た道を一気に徳満駅へ下ります。宗谷本線の徳満駅は無人駅。一本だけの線路に申し訳程度のプラットフォーム、仮設小屋の待合室とローカル線を絵に描いたような駅です。
宗谷本線を渡る
徳満駅からR40を少し南下したところで宗谷本線の線路を渡ります。その踏切は今でもこんなんで許されるのかというような、遮断機もなにもないものでした。
サロベツ原野に入る
宗谷本線の踏切を渡ればもうそこはサロベツ原野。葦を始めとし、バサバサぼさぼさと草が伸びる原野が広がるだけとなります。まったく交通のない原野の中の道で唯一すれ違ったのはこのトラクターでした。こんな中にも牧場が少しあるのです。
ここでもちょっとだけダート
サロベツ原野の中はもの凄い風でした。強風、いや激風、いやいや烈風! 漕いでも漕いでも前に進みません。この日は南西の風で完全に向かい風。おまけに道はダート!!
利尻雲を背景に
ダートを抜けると良い道に。道脇は牧草地に変わりころころ丸められた牧草が並んでいます。そして青空の中に山形をした雲が。相変わらず利尻富士はあの雲の中です。景色はいいものの風は相変わらずで止む気配を見せません。
木造の展望塔
ギャーとかオ~~とか呻きつつギシギシとペダルを回します。僅かに北へ進路を取るところではペダルを回さないでも勝手に自転車が進んで行きます。でも、進んだ分だけ戻らなくちゃあならないんだよね~
こうしてえっさこらと辿り着いたのは、パンケ沼とペンケ沼の間にある木造の展望塔。風のため予定よりずいぶん時間が経っていたのでここでお昼です。しかしこの塔、風でゆっさゆっさと大揺れ。怖~
赤いペンケ沼
木造の展望塔からはペンケ沼がよく見渡せましたが、その沼の色はなにか赤み掛かっています。その沼までやってくると案内板に、ここは泥炭層があり水にはその中の鉄分が溶け込んでいて赤い、とありました。これでペンケ沼が赤い理由が判りました。
沼に立つ波の凄いことといったらありません。ザブンザブンと今にも沼からこぼれ落ちそうです。風が強いの、これで判りますね。
牛くんたち
真っ赤なペンケ沼を後にし、次に向かうは幌延ビジターセンターです。しばらく進むと再び牧草地が現れその中で牛くんたちがのんびり草を食んでいます。聞くところによるとこのサロベツ原野の一部では暗渠の水道工事が行われており、水を抜いて牧草地化する事業が進行中だそうです。
長沼
風に悩まされながらもなんとか幌延ビジターセンターに到着。この建物にはサロベツ原野の成り立ちの説明や動植物の写真の展示があります。
その裏手には長沼まで続く木道が整備されているので、これを行ってみます。
モウセンゴケ
6~7月には色とりどりの花を咲かせるこの木道周辺も、この時期は残念ながらあまり花はなく、薄紫のツリガネニンジンと食虫植物として有名な小さなモウセンゴケなどが見受けられるだけでした。
このあたりの湿原は徐々に狭まってきており、笹に浸食されつつあります。笹は乾燥度を測る物差しの一つとされ、これが多くなると湿原の乾燥が進んでいることを示すそうです。
コウホネ
長沼に浮かぶコウホネは微妙な色のパッチワークを見せ、小さな黄色い花をいくつか咲かせていました。先のパンケ沼からこの長沼までは細いながらも木道が設えられており、これを歩くのも楽しそうです。
この沼はとてもきれいで気に入りました。
海沿いの風車
幌延ビジターセンターの向かいの長沼展望塔に上ったあとは一路海岸へと向かいます。海岸に出る直前に風力発電の風車がたくさん並んでいるのを目にします。
オロロンラインを疾走
風車があるということはやはりここは風が強いのでしょう。この日の日本海は案の定ジャッブジャブでした。
ついに追い風だ=
道道106号オロロンラインは追い風です。左手にバシャバシャの日本海を見ながらぐんぐんスピードを上げます。ここの最大の見どころの利尻富士さんは、残念ながら今だ雲の中。で、魅力は半減なのですが、なんと巡航速度は30km/h、ワォ!
道道444号
何かに取り憑かれたようにひたすらオロロンラインを10kmほど走った後、道道444号線でサロベツ原野の真ん中にあるサロベツ原生花園へ向かいます。海岸沿いの砂丘林を超えると再びあの何もないサロベツ原野のまっただ中を走るようになります。ここはちょっとのんびり行きます。
サロベツ原生花園レストハウス
真っすぐな道の脇にぽつんと現れた建物がサロベツ原生花園のレストハウスです。向かい風に疲れ、追い風に乗りカッ飛んだオロロンラインの走行に疲れ、ここに到着するなり冷たい飲み物をグビッ!
サロベツ原生花園
レストハウスの後ろに広がる原生花園はこちら。まったくな~んにもなし。ここの花も6月中旬から7月上旬をピークとし、せいぜい7月いっぱいまでだとか。しかしこの広々とした光景は他では滅多に見られないものです。
サロベツ原野の中に建つ宿
サロベツ原生花園からは利尻富士を眺めつつ近くをぐるっと廻る予定でしたが、肝心の利尻富士が姿を見せないのと、もう向かい風はこりごりということで予定変更。ここから真っすぐ宿に向かうことにしました。
本日の宿はサロベツ原野の中にある『あしたの城』。ここは『とほ宿』でもありモーターバイクのライダーがたくさんやってきていました。居間兼食堂でこういった人々とのバイク談義もまた楽し。あちこちの場所に花を咲かせた談義を終え、部屋に戻る前に外に出てみて、はっとしました。あたりは漆黒に近い闇。この建物が放つ光以外には一つとして光が見えません。空を見上げれば夏の星座が目の前にぶら下がっているように思えるほど。星のきれいなところに住んでいたら、きっと誰でも星座の一つや二つは創造できるんだろうな。
ひとこと by ケロガメ
印象的だったのは、「あしたの城」。ミーティングルームには薪ストーブが置かれ、庭に向いた大きなガラスドアから見える光景はまるで額縁に入った絵画の様でした。
それは、美しいと評するにはあまりにも殺風景でありながら、不思議に豊かさが感じられる広大な原野です。夜、外に出ると原野には街路灯一つ無く、遥か遠く仄かな街明かりさえも見えず、見えるのは漆黒の闇です。光と云えば星明かりだけ、天の川が明るく感じられる程の深い闇でした。
人里離れた奥利根のダムサイトにも夜間非常灯はあり、山の端の空は街明かりを映しています。夜の日本海をフェリーで行くときも水平線にイカ釣り漁船の明かりがいくつも見えます。「あしたの城」から見たサロベツ原野の夜に、人工の光は一つもありませんでした。
礼文島のハイキングも良い体験でした。これ以前に長歩きしたのは何時だったのか覚えていません。島の南端から歩き始めて最初の1キロメートルはやや勾配がきつく、足の付け根がビリビリと痛みました。天候は霧。視界が浅い中やがて遊歩道の両側にポツポツと花が現れ、進んで行くほど辺りは花で一杯でした。 いつの間にか足の痛みも忘れて桃岩展望台に着いたときは3時間半も歩いていました。
ここから更に2時間以上歩くなんて無理、誘うサイダーとサリーナを必死に説得して香深に戻り礼文温泉で疲れを癒したケロガメでした。