千葉県は成田空港の近くの千葉ニュータウン。このニュータウンのために通された北総鉄道北総線にゆられて、印西牧の原駅にやってきました。
この駅はさすがにニュータウン開発に合わせて作られた新しいものだけあり、プラットフォームの上の改札階のデッキから自転車に乗り出すことができます。このデッキで大通りの上を通り越し、スロープで通りに下ります。
このあたりの開発は比較的新しく、駅前には出来たばかりのマンションや工事中の建物があります。近代的というか現代的というか、とにかく大きくて立派な建築群が目に入ります。
広くて立派な大通りから一歩入ると、がらりと雰囲気が変わりました。高層建築は後ろに去り、周囲はせいぜい二階建ての民家と畑、そして養鶏場といったものになります。
畑の突き当りはこんもりした林です。その中へ道は続いています。この道を行けば林の中に赤い屋根の稲荷神社が現れます。正面入口には『正一位稲荷大明神』のノボリが二本建っていたので、位の高いお稲荷さんなのでしょうか。
この林を抜けると田んぼに出ます。その淵に沿って進むと今度は鬱蒼とした森に。『草深(そうふけ)の森』は里山の自然をできるだけ残すようにして整備された自然公園で、現在はNPOが管理しているようです。高層建築が建ち並ぶニュータウンの近くにこんな森があるのが、にわかには信じられない。
というわけで、ここは地道。ちょっとぬかるんだところもある、土の道を行きます。
森の次はまたまた田んぼ。このあたりは田んぼと森なのです。刈り取られた稲の後に新しい緑の葉っぱが出ています。千葉ニュータウンは実はこんなところを切り開いて開発されたのですね。
その田んぼの畦をどんどこ行きます。快晴の中、のどかな景色の中を走るのはとっても気分がいいです。道は運が良ければ舗装路、そうでなければ砂利道か土の道ですねぇ。
田んぼの先に赤い屋根が見えると、それが結縁寺(けちえんじ)。結縁寺は奈良時代のお寺で、ここには秘仏、国指定の重要文化財、銅造不動明王立像があるようですが、御開帳はお彼岸の頃のよう。
寺の前の蓮池には大きなオタマジャクシが。
このお寺は彼岸花でも有名で、門前には終わりかけの花がまだかろうじて残っていました。この周辺の地区の名もお寺と同じ結縁寺です。このお寺を中心とした地区であることがわかりますね。
結縁寺のすぐ近くには源頼政の塚があります。これは頼政の首が葬られているとの伝承のある塚ですが、頼政の墓は宇治の平等院にあり、京都府亀岡市にもここと同様の首塚があります。先の結縁寺には、頼政の首を葬って建立されたという伝えがあるそうですから、この地はなにがしか頼政と関係があるのでしょう。
そしてどういうわけかこのあたりは、お寺や神社がとても多いところです。この多聞院もそうしたもののうちの一つです。境内は小さいけれど、お寺の裏まで木々に覆われており、ひっそりとしていて感じのいいお寺です。お堂の隣には大きな銀杏が実を付けていました。
田んぼを抜け、お寺を巡り、丘を越えて、畑の中を進みます。赤い花はケイトウ。鶏の赤い鶏冠に似ているから? 鶏頭かな?
その畑の突き当りにあったのが火皇子神社(ひのおうじじんじゃ)。このお社、どうしてこんなところに神社が、と思わせるような、辺りにはなにもない、畑の隅にぽつんとあります。
100mほどの参道の廻りには木が植えられているように見えますが、おそらくこれはかつては周辺全部が森だったものを、この参道脇のみを残して、周辺を畑として開墾したのでしょう。
火皇子神社は小高い丘の上にあります。ここからは下の田んぼへ向かいます。畑の突き当たりの小さな林の中に、こんな抜け道がありました。人一人がやっと通れるくらいの巾で、木の根っこが出っ張り、苔むしていてすべるすべる。
おっとっとっと~~、と下った先は、
やっぱりさっきと同じような田んぼが広がっていました。こういった山間の狭い田んぼはその中央に用水が引かれ、そこから水を引いています。その水の元になるのは印旛沼から流れる花見川です。
こんもりした林の高台に沿って、田んぼの縁をぐるっと廻るように進みます。この道脇には灌漑用の用水が流れています。
まだ10kmほどしか走っていないのにもうお腹が空いてきました。丁度前半の結縁寺周辺の探索が終わったのでここでお昼です。
宮崎邸は18世紀の終わり頃建てられた農家作りの民家で、200年以上経った建物を現代の居住水準に合うように改築し、現在は『茶房宮崎邸』としてお茶や食事ができるようになっています。屋敷林や庭もきれいに手入れされています。
でっかい梁が縦横に交差する天井は見事。座敷では、ある作家の陶芸展が開かれていました。
お昼のあとは千葉ニュータウン中央駅近くの団地の脇にある自転車道を抜けて、北総花の丘公園へ出ます。歩行者道や自転車道を計画的に整備できることが、ニュータウンのいいところの一つですね。ここは距離は短いけれど緑が多くて気持ちのいい自転車道です。
北総花の丘公園は大きな公園で、芝生広場は家族連れで賑わっていました。北総花の丘公園から木下(きおろし)を経て利根川に出るまでは繋ぎ区間です。r4の一本東側の道は交通量が少なく、問題なく走れます。この周囲にも田んぼが広がります。
木下の踏切近くはさすがに少々交通量がありますが、それもせいぜい1kmほどなのであまり問題ではないでしょう。利根川に出れば、もうその土手上には快適なサイクリングロードが延びています。
今日は快晴。半袖に半ズボンで丁度いいほどの陽気です。大きな利根の流れを眺めながら、ルンルンと進みます。
栄橋を渡り、さらに利根川を2kmほど遡ると小貝川と出会います。そこからは小貝川のサイクリングロードに入ります。このあたりのサイクリングロードはとても広く、3人、4人と並んでおしゃべりができるほどの広さです。
穏やかな小貝川の流れの向こう、遠くに筑波山が顔を出しました。土手の下には田んぼが続くばかりで、このあたりは広々とした関東平野を実感することができます。
土手上のサイクリングロードには樹木がないので日影がなく、暑い。これは川沿いのサイクリングロードのウィークポイントですね。
このサイクリングロードは、アップダウンもなく景色の変化も少ない単調な道なので、長く走ると飽きてしまいそうです。ここまで言うのはあまりに快適な道だからで、贅沢な悩みですね。
その単調な景色に変化が現れました。高層建築が見え出し、土手脇は田んぼから民家へと変わります。藤代や佐貫といった街に近づいたのです。そのころ川の流れは二手に別れ、左手方向は本流になり、右手方向は牛久沼へと続きます。
右手方向へ進むと急に川幅が狭まり、自転車道もぐっとその巾を狭めます。
赤い橋が見えると、その向こうをスーパーひたち号がゴーという音をたてて通過して行きました。常磐線です。この線路を越えると牛久沼まではすぐです。
高架になっているR6の藤代バイパスの下に牛久沼は現れました。岸には葦が生い茂り、竹竿が幾本も湖面に刺さっています。湖というよりは確かに沼という感じです。
その沼の一角に白鳥が群れを成していました。このあたりにはまだ今年の白鳥は飛来していないでしょうから、餌付けされ越冬したものでしょう。
R6を少し走り、牛久沼の周回ルートに入ります。R6沿いには鰻屋さんが並んでいます。どうやらここ牛久沼は鰻が名産のようです。
R6周辺は少々ざわざわしていますが、そこから一歩中へ入ると、だれも通らないような田舎道になります。
その田舎道をさらに入ったところには、小川芋銭(おがわうせん)の記念館、雲魚亭があります。小川芋銭は河童の絵で有名な画家で、この雲魚亭はアトリエとして建てられたものだそうです。庭からは牛久沼を見ることが出来ます。
牛久沼の周りにももちろん田んぼが広がります。その脇を行く道は本当に田舎のいい感じの道です。
沼に稲荷川が流れ込む橋の袂にアヤメ園があります。今はアヤメの季節ではありませんが、この小さな公園の中には河童の像が建っています。そしてその先の橋の上にも。
河童の像のある橋を渡り、小さな半島状のゾーンに入ります。少し先でメインロードから逸れ、激坂を上った先にはこんな畑が広がっていました。その周りは林で、今日は田んぼと畑と林のオンパレードです。このあたりではまったく牛久沼を見ることはできません。
r46に出、谷田川に架かる茎崎橋を渡ったあとは、沼沿いを南下しようと思いましたが、その道はボコボコの砂利道だったので、一本内陸側の舗装路を行くことにしました。周りは相変わらずの田んぼです。
大きな半島状の凸先にあるのは七浦大明神。確か七浦とは霞ヶ浦や北浦などこの周辺の七つの湖のことじゃあなかったかな。それはともかく、この神社は参道側ではなく沼の方を向いて建っています。水や魚関係の神様なのでしょう。
ここは茨城県。その茨城には茨城百景というものがあり、ここ牛久沼もその内の一つだそうです。七浦大明神のすぐ裏手の高台には眺めのいい泊崎大師堂があり、その近くにこの茨城百景の碑が建っているようですから、牛久沼の眺めはこのあたりがいいのかもしれません。
七浦大明神で休憩したのちは凸先をぐるっと廻るようにして西谷田川に入ります。のどかの一言に尽きる道が続きます。
細見橋で西谷田川を渡り、右岸に出ます。
右岸の土手は砂利道でした。しかしここは比較的締まった砂利なので、なんとか走れます。川面も眺められるのでそれなりに快適ですが、このあとに水たまりが多数出現!
2kmほどこの砂利と水たまりと格闘しながら進むと、沼の出口にある牛久沼水辺公園に到着。静かな夕暮れの沼の向こうに、筑波山が小さく頭を出していました。(TOP写真)
今日は利根川を挟んだ千葉県北部と茨城県南部の二つの田舎を楽しむコースでした。この二つ、同じ田んぼでも少し雰囲気が違いますね。しかしどちらも田舎のいい感じのところだと思います。それらを繋ぐ利根川と小貝川の自転車道もまた楽し。