島田の朝、自転車でちょっぴり散歩しました。駅から1.5kmほどのところに、大井川に架かる蓬莱橋(ほうらいばし)があります。全長897.4mのこの木造歩道橋は「世界一の長さを誇る木造歩道橋」としてギネス社に認定されています。入口には料金箱があり、歩行者(大人)100円、自転車100円。
さっそく自転車で渡ってみました。川の上をまっすぐに延びた897.4mは、大井川の風を受けながら広い景色が見渡せ、走りごたえありです。
蓬莱橋は、明治12年に島田町の農家の人たちが対岸(西岸)の谷口原の開墾地に通うために架けられたそうで、今でも東岸の農家の人たちが茶園の管理のために使っているそうです。
ホテルに戻り朝食を終えて、まずはJRで清水駅まで移動します。今日の自転車走行組はジーク、シロスキー、ヨンチェス、サイダー、サリーナの5人。昼過ぎから雨の予報なので、雨天走行の準備を整え、静岡ツーリング最終日スタート。
清水駅から東海道の海より、工場などが多い地域をしばらく走り、静清バイパスと交差すると、清水清見潟公園の脇に出ます。4~5kmに渡る細長い公園で、芝生広場や子どもの遊び場などがあります。
その公園の北側道路に面して1.5mくらいの高さの石垣が築かれていました。そこをびゅーんと通り過ぎようとすると、「ちょっと待ったあ~」とサイダー。この石垣の上に見どころがあるらしい。それがこちら、『坐漁荘』(ざぎょそう)です。
坐漁荘は、明治時代の元老、西園寺公望公が1920年にこの地興津(おきつ)の東海道沿いに建てた別邸です。本物の建物は明治村に移築されましたが、ここで復元して2004年より一般公開しています。
京風の和風建築で、1階には洋間もあります。竹の欄間など精緻なつくりが見事です。建てられた当時は海辺で、ここから三保の松原が眺められたとのことですが、残念ながら今では高架の道路やビルの間からちらりとしか見えません。
坐漁荘のすぐ近くにあるのが清見寺。奈良時代の創建とされるこのお寺は、興津の高台にあり広く駿河湾を臨めます。写真正面の斜面途中にあるのが総門。
総門にはまっすぐ階段がありますが、別に右手から斜面の通路がつくられ、総門の奥を上るとお寺に向かってブリッジが架けられています。このブリッジで越えるのは、実は東海道本線の鉄道線路。明治22年に開業した興津駅は、興津宿や清見寺町の住民が熱心に誘致して誕生したもので、その際に清見寺の境内の一部が鉄道敷地として召し上げられたとか。ブリッジを渡ると山門にたどり着きます。
山門をくぐると、緑の木々を背景に仏殿、大方丈、庫裏と、荘厳な建物が並んでいます。大方丈と書院に囲まれた庭園は国の名勝に指定されていますが、雨が降り出しそうな気配のため残念ながら拝観せず先を急ぎます。
清見寺から降りて抜け出たのは、静清バイパスの横に設けられた自転車道?です。この右手は海のはずですが高い堤防で全く見えず、高速の車が行き交う脇をもくもくと進みます。2kmほど行くと抜け道があって、静清バイパスを離れます。
そして今度は興津川沿いの自転車道。路面がやや荒れてはいますが、川や対岸の緑、正面の山並みなどを楽しみながら走れます。
1kmほど川を遡ったところに、興津川を渡るコンクリート橋の自転車道がありました。橋を渡ると、そろそろ本日の峠『さった峠』が近くなっています。峠を案内する小さい看板もいくつか見かけ、自転車乗りが結構来ている気配が漂っていました。
そして『さった峠』に突入! この峠、東海道五十三次の興津と由比の間に位置し、標高は90mなのですが勾配のきついのなんの。最初はがんばって踏んでいた面々も続々とノックダウン。押すのもきつい~とサリーナ。
よれよれよれと上った峠の向こうには、広重の描いた絶景が、絶景が…
海の向こうに見えたのはどんよりした雲のみでした。陸地の奥にそびえる真っ白な富士を想像しましょう。このあたりは海に山が突き出すような地形で、古くは海岸線を波にさらわれないよう駆け抜けるという東海道の難所だったので、山側の迂回コースとしてつくられたのが、この峠なんだそうです。
富士山を想像しながら景色を眺めていたところで、ポツポツと雨が降り出してきました。あわてて本格的な雨装備を整え、さった峠を下ります。
みかん畑と海の間の急勾配の道をどんどん下っていきます。本当は絶景なんでしょうねえ。雨で滑るので注意しながら下ります。最後のところはものすごい勾配の激坂下り。
そして下り終えたところには昔ながらの街道の雰囲気が。どうやら由比宿の西端にたどりついたようです。
車一台やっと通れるような道の両側に平入の家々の軒が連なり、緩やかに曲がる道が続いています。自転車には楽しい道ですね。
しばらく行くと、木塀となまこ壁の「小池邸」があります。この建物は明治期に建てられた名主の館で、低い軒の瓦葺き、正面の潜り戸付き大戸などが当時のこの地域の民家の特徴をよく残しているといいます。
中には古文書などが展示され、庭に面した休憩スペースもあります。庭は雨を受けてしっとりと美しく、そして水琴窟も。シャリーンときれいな音が響いて、うっとりと聞き惚れるジークです。
ここ由比は、日本では駿河湾だけで収穫される桜えびの町。桜えびは年2回、春漁(3月中旬~6月初旬)と秋漁(10月下旬~12月下旬)のみで、桜えび漁の許可証を持つ船は由比・蒲原・大井川地区の合計120隻なんだそうです。ということで、今は旬ですね。
桜えびを食べたい~ ちょっと早いけどお昼にしようということで、由比の町を疾走。
旧街道の橋のそばにある料理茶屋「玉鉾」(たまほこ)に入り、さっそく「桜えび定食」。生桜えび、釜揚げ桜えび、桜えびのかき揚げ、桜えびのみそ汁、それに追加でしらすも頼んでゴージャスなお昼となりました。桜えびはほんのり甘く、かき揚げはサクッと軽く香ばしく、さすがは本場と大満足です。
ゆっくりお昼を楽しんだ後、由比の見どころ『由比本陣公園』へ。ここは、参勤交代の大名の宿「本陣」の跡地に江戸時代の由比宿の面影を残しつつ整備された公園です。
由比本陣公園の門をくぐると、芝生広場があり、観光や地域情報の拠点となっている『由比宿交流館』、明治天皇が休憩された座敷を復元した『御幸亭』、そして『東海道広重美術館』があります。東海道広重美術館では、浮世絵の展示のほか、浮世絵の歴史や浮世絵版画摺りの技術を解説したコーナーなどもありました。たくさんの版木で摺りを重ね合わせていく過程がよくわかります。
さらに東に進んでいくと、ここはもう次の宿、蒲原です。街道で目を引く白い木造洋風建築は『旧五十嵐歯科医院』で、国登録有形文化財となっています。もともとあった町家を1914年に洋風に改装してできたものだそうです。
ここは評判の歯医者さんで、遠くから患者さんが来て泊まっていく人もいたそうです。庭から見える蔵と横の建物の一部は改装して宿泊にも対応していたとのこと。
そして2階に治療室があります。なぜ2階かというと日当りがよく明るいからだそうで、とても気持ちのよい部屋ですが、治療のための椅子と器具を見ると歯がうずいてきそうです。。隣は技工室です。
すぐ近くにある志田邸は、醤油、味噌、油などを扱っていた元商家で、こちらも国登録有形文化財。昭和初期まで「やまろく醤油」という醤油を製造・販売していたそうです。この志田邸では、蒲原の地図や見どころなど地域情報もいろいろと提供してくれます。
志田邸の母屋は安政地震(1854年)で大きく被災しましたが、すぐに修復し現在に至っています。みせの間、中の間、居間が通り土間に沿って続き、特別展示されていたのは「天神人形」という“男児のおひなさま”でした。天神様(菅原道真)にちなんだヒゲのおひな様にちょっとびっくり。
そして奥には醤油の醸造が行われていた工場も残っています。安政地震でも倒れなかったというこの工場、周囲は竹を芯にした土塀で囲み、外側は石積の防火構造で、江戸時代からの貴重な工場建築です。
こちらは『お休み処』。江戸時代には「和泉屋」という屋号で旅籠として使われていた建物で、国登録有形文化財です。入口の看板かけや2階の手すりは天保年間当時のままのものだとか。休憩・観光案内として、また織り、染めなどのクラフト体験などもできる施設として運営されています。
蒲原にあるこうした建物は、地域のいくつかの住民団体が運営を担っています。訪れると笑顔で暖かく迎えてくれて、建物や地域の歴史などを丁寧に説明してくれるのが嬉しいですね。見どころは他にもあるようでしたが、雨がかなり強くなってきたのでこの辺で引き上げることにしました。
もよりの新蒲原駅は旧街道から南に少し下ったところ。濡れた服を着替えて自転車を畳んだら、駅前のショッピングモールの中華屋バーミヤンでカンパ~イ! 最終日は東海道の宿場の雰囲気を充分味わって、4日間にわたる静岡ツーリング無事終了です。
◆ひとこと by ジーク
美しい富士山は高速で走る新幹線の中からほんの数回「あっ!」という間にしか見たことがなかったので、美保の松原からの富士山を、雲の上とは言え見ることができて幸せでした。
今回の旅・・・みずみずしい新緑と蒼い川面と澄んだ青空と数々の橋とご馳走とそしてしっとり雨、後日またHPの記録を繰り返し見て楽しむことになります・・・今年もまたそれほど楽しい旅でした。
さてそのGEO POTTERINGのGW企画には2001年の「紀伊半島周遊」以来欠かさず参加していて今年で14年目になります。
関西に住んでいるため普段は首都圏が中心の企画になかなか参加できず、毎年GW企画を待ちわびているのですが、今年とりわけ感慨深かったのは、まだ50代だった参加1年目の7月に走った「大井川」を再訪したことでした。
というのも凄い激坂だった記憶があり、もう70の大台になった自らの体力で大丈夫かと心配していたのにそれほどでもなくクリアできたことで、仲間と一緒に全行程を完走できて大いなる達成感が得られました。
仲間といえば、1年ぶりのサイダー&サリーナ、2006年秋の「京都紅葉狩り」以来8年近くぶりのペタッチ&マーコンとのうれしい再会、そして4人のみなさんとの新しい出会い・・・ 何と総勢9人! こんなに大勢で走るのは初めてで、道行く人に好奇~羨望の目で見られるのも楽しみでありました。・・・もう来年のGW企画に思いをはせるジークです。