今日も晴れ。昨日に引き続きお天気です。しかも昨日より暖かくなるといいます。
子浦の民宿の朝ごはんの目玉は、昨夜の金目鯛の頭と岩海苔のみそ汁です。これをたっぷりいただいて、今日一日のサイクリングのパワーにしましょう。昨日はほとんど海辺のコースでしたが、今日は基本的に山間を行くコースです。
この民宿からは、妻良湾とその手前にへばりついている子浦の集落が良く見えます。
子浦から最初に向かうは松崎で、これにはマーガレットラインを使うのが一般的でしょう。しかし企て人のサイダーはそのマーガレットラインがある坂の上ではなく、妻良湾に向かって下り出します。
『え〜、いったいどこへ行くの〜』 という声も届かなかったようで、サイダーの姿はあっという間に見えなくなってしまいました。あわててその後を追うメンバー。
朝の子浦の浜は、昨夜とまた違った味わいがありました。ひっそりしているけれど、朝日を浴びた美しい海です。
標高0mまで下ってしまった私たちに、次に待っているのはもちろん上り坂。
身体が暖まっていないので、しょっぱなからの上りはきつい。
しかもこの上り、休むことなく200m近く上らなければならないのです。
『え〜、朝からきついよ〜』 とブーブーいう面々でした。
今日は天気予報のとおりとても暖かく、5分もすれば上着を脱ぎ捨てたくなるほど。
えっこらよっこらと上って行くと、下に先ほどまでいた妻良湾が見え出します。もう大分上ったのですね。
妻良湾の眺望ポイントからも少し上りがありますが、ほどなく峠を越え、市之瀬に下ります。
昨日河津桜を楽しんだ下賀茂を流れていた青野川の上流にある市之瀬は、山間にあるひっそりとした集落です。
その市之瀬からやって来た方角を見れば、意外ときつそうな山が。
ついさっきまで、あの山の中で悪戦苦闘していたというわけです。
市之瀬からはr121で蛇石(じゃいし)へ向かいます。
市之瀬からは勾配は穏やかなものの、また上りです。
蛇石の集落の入口までやってくると、どういうわけか大きな伊勢エビの看板が立っています。なんの案内かと思えば、どうも交通安全の標語のよう。
巨大伊勢エビの先の畑の中には、きれいな河津桜が咲いています。
河津桜はこのあたりでは街路樹としてだけではなく、いろいろなところで目にすることができます。
ゆくり上って行くと、蛇石の分れ道に到着。
ここは、右に行けば蛇石峠を経て松崎、左に行けば島見峠を経て同じく松崎に辿り着きます。どちらの峠も標高300m強で、難易度もだいたい同じくらい。
今回私たちは、左の島見峠を選択。ここからえっこらよっこらが始まります。
ここまでは、山の中といえども空が見える程度には開けていましたが、分岐の先はまったくの山の中で、空はほとんど見えなくなります。しかしこの道、バス通りなのにちょっとびっくり。
この峠道は斜度がかなりきついところがあって、そんなところでは押しに入るメンバーも。ま、きついところは押してのんびり、がジオポタ流ですから、まったく問題なしです。
針葉樹林が開け明るいところに出ると、そこが島見峠で、向かいには『ササユリの里 天神原植物園』があります。また『長者ヶ原 山ツツジ公園』も近くにあるようです。
このあたりの景観ポイントを紹介したものに天神原の名があったので、どこかこの付近に眺めのいいところがあるのだと思いますが、この時はそれに気付かず。
島見峠からは一気に、R136マーガレットラインに下ります。
マーガレットラインをわずかに北上すると、石部(いしぶ)の棚田への分岐が現れます。この道は最近整備され直したようで、びっくりするくらい広くなっていました。
その道をゆくっり上って行くと、うしろの山合いから駿河湾が顔を出します。
左手の谷には柑橘類がオレンジ色の大きな実を付けています。
その柑橘類の畑の先で視界が開けると、今度は北西に石部の集落とその先の海が見えてきます。
集落から視線を山に沿ってあげて行くと、段々の棚田とその中に咲く桃色の河津桜が目に入ります。
ここにはこの景色を眺めるための展望台があり、空気が澄んでいれば富士山も見えるのですが、このときは残念。
この棚田の中にはうねうねとした道が続いており、これを使って下って行きます。
途中、茅葺きの小屋の周辺に河津桜が咲く、絶景ポイントがあります。
ここの棚田の側壁はなんと石積みです。よくもまあ、こんなに積み上げたものですね。
『お〜、ここはすごいところですね〜』と、棚田の石垣を見ながら下るマージコ。
棚田から先も下の海辺の集落まで、いい感じの道が続きます。この石部の道はとても感じが良くてお薦めです。
さて、下の集落を抜けたら駿河湾です。伊豆の海は、場所により、天候により、また時間帯によっても雰囲気ががらりと変わります。このあたりは深いエメラルド。
海に見入ったら最後、なかなか動けなくなってしまうほどの素晴らしい色が続いています。
うしろに見えるのは石部の西に突き出る黒崎。
道はオレンジラインからいつの間にか彫刻ラインと名を変えたR136で、道端のあちこちに彫刻が立っています。この彫刻ラインもやはり、アップダウンの連続です。
石部の湾の先は岩地で、ゆったりとした弧を描く白い砂浜と鮮やかなエメラルドグリーンの海の対比が素晴らしい。
この写真は伊豆の海岸の地形を良く現しています。突き出たたくさんの小さな半島、その中の入り組んだ山ひだが海岸まで下りてきているのがわかると思います。
道はあの山ひだを上ったり下ったりしているのです。西伊豆の外周路の標高差は200mほどで、このあたりは100mしかありませんが、とにかくアップダウンの繰り返しです。
岩地の先の萩谷崎が近付いてきました。うしろを振り返れば、凹凸のある山ときれいな色の海の対比が見事。(TOP写真)
そして先には西伊豆最大の街、松崎が見えてきました。この右手の入り江が松崎で、その先に突き出ているのが堂ヶ島です。
萩谷崎を過ぎると松崎への下りです。
ぐわ〜っと下って、ヨットが浮かぶ松崎マリーナを下に見、その奥に流れる岩科川を渡ると松崎の街。岩科川には小さな漁船がたくさん停泊しています。
岩科川の河口には那賀川が流れ込みます。松崎の見どころの多くは、この那賀川沿いにあります。
那賀川の中に立っている人が一人。この人を良く見ると、どうやら岩海苔を採っているようでした。
松崎はなまこ壁で有名。なまこ壁は、壁に平瓦を貼り、その目地を漆喰で埋めたものです。
この漆喰はかまぼこ状をしており、それが海鼠に似ていることから、なまこ壁の名が付いたそうです。
なまこ壁の民家をいくつか見ながら那賀川を遡って行くと、二つ目の橋の袂に白い時計塔が建っています。なんとこの時計には13の文字が刻まれています。あら、不思議。
その裏手には明治商家中瀬邸があります。この建物は明治初期の呉服商家で、現在は当時の室内を再現した博物館のようなものになっています。
中瀬邸の横の蔵は現在、松崎ビジターセンターとしてジオサイトの紹介などに使われています。
この入口扉には、漆喰できれいな絵が描かれています。松崎の漆喰を有名にしたのは、左官職人、伊豆の長八こと入江長八で、この人の仕事は、このあと行く、浄感寺の長八記念館、岩科学校、長八美術館で見ることができます。
松崎ビジターセンターの外側ではなにやら工事が行われています。なまこ壁のメンテナンスをしているのです。通常なまこ壁の補修は職人一人かせいぜい二人で行われますが、このときはたくさんの人が足場の上にいます。そこに近付いて行くと、
『やってみますか。』 と、声が掛かる。
この時はなまこ壁塗りの体験で、多くの人が集まっていたのでした。どれどれじゃあやってみるか、となまこ壁塗りに挑戦するは、シロスキーとサリーナ。
麻がたくさん練り込まれた下塗り用の漆喰はかなり扱いづらく、
『あり〜、はみ出ちゃった...』
楽しいなまこ壁塗り体験のあとは、薬学者だった近藤平三郎の生家へ。
薬問屋を営んでいた近藤邸の横は『なまこ壁通り』と呼ばれ、細い石畳の道の横に、なまこ壁の建物が並んでいます。
このなまこ壁通りから西へ5〜60mほど行くと、長八記念館のある浄感寺で、そのさらに先に伊豆文邸が建っています。
呉服商だった伊豆文邸は明治末期の建物で、店の他二つの土蔵があります。
店には季節がら、雛人形が幾つも飾られていました。そして二階に上がるときらびやかな打掛などが展示されています。
ここはゆっくり時間が流れ、いつまでものんびり過ごしたくなるような、そんなところです。
そろそろお昼にいい時刻になったので、このあたりではまずまずの評判だという寿司屋で新鮮な地魚をいただき、松崎をあとにします。
寿司屋からの帰りに通った那賀川の南の道はなかなか雰囲気が良かったけれど、この時は工事中でこの先通行止めでした。ちなみにこの那賀川をもう少し遡ると、桜の並木が見られます。
午後の部は松崎から蛇石峠に向かいます。
長八美術館の横をかすめ、岩科川の上流へと向かえば、先に蛇石峠を抱える山が見え出します。
ここは岩科川によって作られた田んぼの中。
用水路の横の田んぼ道をどんどこ行くと、
重要文化財の岩科学校です。1880年(明治13年)に竣工したこの学校は伊豆でもっとも古い小学校校舎だそうで、2階の和室には入江長八の代表作「千羽鶴」の鏝絵があります。また、扁額の上の竜の彫刻も長八の作と伝えられています。
ここの売店で桜餅をGET。松崎は桜餅に使う桜葉漬けの全国シェアが7割もある産地なのです。
岩科学校を出るといよいよ蛇石峠への上りです。
徐々に山間が狭まってきますが、序盤の勾配は穏やかで、このあたりはみんな余裕。
道が大きくカーブし、岩科川が二手に別れるところにやってきました。
この道は県道のr121で、山道としてはやや広めで、まだ空も開いています。
カーブを回り切ると民家はなくなり、本格的な上りが始まります。
『いよいよ上りが始まったわね〜』 と、ガシガシ行くサリーナ。
カーブの先の中盤は直線基調です。
『午前中の島見峠より緩いですかね〜』 と上着を脱いで戦闘モードのマージコ。
と言っている間もなく、道は再びカーブし出し、うねうね道に。
『一番ローギアにするとチェーンが落っこちちゃうんですぅ〜』 と、悪戦苦闘するもガシガシ行くキルピコンナ。それにいつもクールなシロスキーが続く。
このあとの終盤はいよいよ道幅が狭まり、針葉樹林の中に突入。ちょっとあへあへです。
いつも元気なクッキーですが、この日はちょっと苦戦。
『あれ〜、おかしなぁ、ギアが変わらなくなっちゃった〜』
といいつつ、のろのろと蛇石峠に到着。
蛇石峠は車がすれ違えるかどうかくらいの幅しかなく、ゆっくり休憩することもできないので、そそくさと下り始めます。
上りの鬱憤を晴らすべく、ぐわ〜んと一気に下る。下って下って、
『あれ〜、下りすぎちゃった〜』 と、朝通った市之瀬まで下ってしまってから気が付くサイダーでした。おい、コラッ!
予定では市之瀬まで下らず途中から東へ向かい、もう少し山の中を走るはずでしたが、もうその分岐点は遥か上。
こうなったらr121で上賀茂に向かうしかありません。しかしこれが幸運だっということがこのあとわかることになるのでした。
市之瀬から上賀茂までは穏やかな下りで快調に飛ばします。
道端には菜の花と河津桜が。
黄色い菜の花と桃色の河津桜を眺めながらルンルンと行くジオポタ。
うしろを振り返ってみれば、先ほど苦戦した蛇石峠を抱える山が見えています。
ススーッと下って、上賀茂に到着。
青野川の土手には昨日も見た河津桜が、依然咲き競っています。
足元の菜の花も満開です。
上に桃色桜、下に黄色の菜の花を見ながらのんびり進みます。
上賀茂からはすぐに一条川沿いに入る予定でしたが、蛇石峠以降の道を間違えたため時間がたっぷり。そこで下賀茂まで下り、少し桜の下で休憩することにしました。
ここで不調だったクッキーのギアがまったく変速しなくなってしまいました。ギアワイアーが切れたのです。トップギアにしか入らないクッキーは、土手のダートでもよろよろ。蛇石峠から再び山に入っていたら、クッキーは生還できなかったかも。。
松崎で入手した桜餅を河津桜の下でいただき、しばしまったりしたのち下賀茂を出発、終着地の下田に向かいます。
下田まではきつい上りはないけれど、ここはなにせ伊豆、それなりのアップダウンがあります。トップギアしかないクッキーは、ケイデンスを下げると失速してしまうので、トップギアで回せるところまで回し、あとは押しという作戦。
一条川沿いの行く手を見れば、ほーれ、こんなふうな山が待っている。
がんばれクッキー。
まあ、あの山は越えないけれど、とにかく八声トンネルまで上らないとね。
ぐわ=っと飛ばしていって、ぱたっと止まったら押しです。で、なんとか八声トンネルは越えたけれど、そのあともまだ上りはあるのでした。
『やっと下りだ〜』 と叫んで、しかめっ面が微笑みに変わるクッキー。下田はもうすぐだよ。
下田付近はできるだけ坂道を避けるため予定を変更し、国道で伊豆急下田駅に直行。
やっと辿り着いた〜
当初予定では踊り子号には間に合わないかなと思われていたのですが、蛇石峠のあとの間違いとクッキーのワイヤー切れとのおかげで、余裕で到着。
金目鯛の押し寿司も、ぎりぎり滑り込みで買えるという幸運でした。