天竜川2日目の朝、空は雲に覆われていました。しかし、宿から西を眺めると、雲の切れ目の向こうに何と豪華な中央アルプスがで〜んと連なっているではありませんか!
朝ごはんを食べている間に次第に雲が薄れてきて、これは景色が期待できそうです。
今日はまず、この中央アルプスや南アルプスを全方位360度の眺望で拝めるという、陣馬形山の頂上まで上る計画です。登坂高度は800m、平均勾配は8%とかなりきつそう。
これから帰路につくレイナ(左端)とレイ(カメラ)に見送られて、陣馬形山アタックに臨むのは、右からサリーナ、シロスキー、ジーク、マサキン、サイダーの5人。
望岳荘の前に植えられた桃は赤、白、ピンクで満開です。桃の花にも見送られて颯爽と走り始める5人。
宿の下、西側の道を300mほど北上。道の片側は石垣が積まれ、斜面の等高線上にある道だということがわかるでしょう。
とりあえず平坦路をにこやかに通るサリーナ。
細い道はすぐに終わり、右折して陣馬形山へ続く道路に入ります。
上りになったものの勾配はそれほどきつくはありません。道の脇にはたくさんの桃が植えられ、赤や白の花が満開です。
そして桃の花の間から、左手に中央アルプスが顔を覗かせています。
青空も広がってきて、すばらしい景色にしばしば立ち止まりながら快適に上っていきます。
その一方、道路右手側の景色はすでに山深く、勾配のきつい斜面地に畑がつくられています。
左手の桃の花と白い山の景色を愛でつつ、もくもくと上るジーク、追うマサキン。
出発地点から目指す陣馬形山までの登坂高度は800m、平均勾配8%と聞いて、『タクシーで上ろうか』『途中でダメになったらタクシーを呼べば?』『携帯電話はつながらないんじゃあないの?』 と昨夜は盛り上がっていた2人です。
一般道がぐいっとカーブしているところで、この道路を離れて小川沿いの山道に入ります。
春の小川に土手の細道、と雰囲気はいいのですが、勾配が上がってきました。
『平均勾配8%で、これまではそれより低かったから、これからどうなるの…』 とはサリーナですが、とりあえず先のことはあまり考えないようにして進みます。
考えなくても勾配はどんどん急になっていきます。
『わ、わしはもうだめじゃ〜』 とヨロヨロ上るは、GW前半の美ヶ原で足を使い果たしたサイダー。
『わしはまだまだ大丈夫!』 とペダルを踏むのはシロスキー。
振り返ると後ろには伊那谷の見晴らしが望め、もう随分上ってきたように思えるのですが、まだ1/4くらいと聞いてみんなガックリ。
それでも休まずにはいられない。
小休止の山道の脇には、積まれた薪の奥に歴史を感じさせる民家がたたずんでいました。
勾配はさらに厳しくなり10%超えが続くようになってくると、ついに一人、また一人と押しに入ります。
春の野草に囲まれたのどかな山道を、えっちらおっちらと押し上るジオポタの面々。
激坂エリアを何とか押し上ると、風三郎神社と書かれた石柱のある分かれ道に出ました。ここでまた小休止。
この神社は風の神を祀っており、山を少し上れば祠があるようですが、へなへなと座り込んでたどり着けず。写真もなし。
ここからしばらくは勾配が少し緩くなり、再び自転車にまたがって走り出します。
道の両側は木々に覆われていますが、つづら折れを行ったり来たりしていると、ときどき木々の間から中央アルプスの白い山並みがちらりと見えます。
走り始めの頃は見上げる位置にあった山々が、ずいぶん横の位置に見えてきました。かなり上ってきたんだね〜、とちょっと元気が出ます。
そんな山道の脇に東屋があったので小休止です。
東屋の前の小広場からは、南に南アルプスの白い山並みが広がり、西には木々の間から中央アルプスがちらりと顔を覗かせています。
中央アルプスまで届け、とばかりジャンプするはシロスキーとサイダー。
さらにわっせわっせと上っていきます。すると、正面の山のてっぺんに電波塔が見えてきました。
『あれが陣馬形山の山頂だよ』 とサイダー。
陣馬形山には頂上の手前にキャンプ場があり、キャンプ場に入る分かれ道の前には南アルプスのすばらしいパノラマが広がっていました。いいね、いいね〜
山頂はもう少しだけ先ですが、まずここで記念撮影。満足感溢れるガッツポーズのマサキン、ジーク、シロスキー、サイダー。
そして250mほど進めば、陣馬形山キャンプ場の駐車場に到着です。駐車場には車がたくさん、そして周囲にはカラフルなテントが溢れているのにちょっとビックリ。
駐車場からも中央アルプスの白い山並みは見えているのですが、まだまだこんなもんじゃありませんよ。自転車を置き、駐車場から200mほど電波塔を越えて木の階段を上っていくと、
1455mの頂上には、ババーンとこんなパノラマが広がっていたのでした!
眼下に広がるのは伊那谷で、中央アルプスの峰から手前を流れる天竜川に流れ込む与田切川などの川が扇状地を形成しています。
左手前は烏帽子岳(2194m)、そして雪を冠っている中央には南駒ヶ岳(2841m)、赤椰岳(2798m)、空木岳(2864m)が並ぶ。右に小さく出ているところが宝剣岳(2931m)。
こんなご褒美の絶景が待っていて、がんばって上った甲斐があったね〜! みんな大満足の笑顔です。(TOP写真も)
そして反対側を見れば、こちらには木々で覆われた山並みの向こうに南アルプス連峰が連なっています。どちらを見てもすばらしい絶景。
左は塩見岳(3047m)、中央に荒川岳(3141m)、その右に赤石岳(3120m)と3000m超級がずらり。
しばらく時間を忘れて景色に見とれるジオポタの面々です。
絶景を充分に堪能したら、周辺には食事ができるところはほとんどないので出発地点の宿まで戻ります。
そうそう、この日はキャンプ場の避難小屋で手作りクッキーやりんごジュースを販売していました。へろへろの体に染み渡るようで、とてもおいしかった。
下りの途中に『600年の古木ブナ』という看板があったので、自転車を停めて行ってみました。
実は行きの上りの時にも気づいていたんだけど、行きの途中ではこの山道を上る気になれず、でした。
少し上っていくと、こんな大きなブナが現れました。
このブナさんは「丸尾のブナ」と呼ばれ、樹齢推定600年。御神木に定められたのは1469年というから、応仁の乱の頃ですね。
ブナの根本には大きなウロが穿たれていて、古木の年月を感じさせます。
でも、枝には若葉の芽がたくさん。まだまだ元気そうです。
丸尾のブナからさらに下ると分かれ道に出て、ここから宿までは、通っていない道の方から戻ることにしました。
こちらも静かな山道ですが、より山深い感じです。その中に村の上水道施設がありました。
そしてさらに下ると小さな集落に出ました。
桃や桜の花が咲き、畑にはりんごの花が満開。花いっぱいの桃源郷を思わせるかわいらしい集落です。
この西丸尾から飯沼方面に出る予定でしたが、道路工事中のため通行止め。
それで迂回路を南下してしばらく行くと、今朝通ってきた一般道に合流できました。再び桃の花が歓迎してくれます。
12時半に望岳荘に到着し、隣にある「いろり・なかがわ亭」で昼食です。そばやうどんの他に、鹿肉も食べられるとのこと。
ゆっくり昼食のあと、南に2kmほど行ったところにある大草城址公園に向かいました。
大草城は南北朝時代のお城だそうで、城跡が公園として整備され、桜の名所としても有名です。
染井吉野はもう終わっていましたが、いろいろな桜がまだまだたくさん咲いています。入り口付近を覆うこの見事な枝垂れ桜は八重紅枝垂。
階段を上ると、その上に巨石の組まれた高台があります。ここにお城が築かれていたのでしょう。
八重桜を眺めつつ、殿様気分のサイダー。さらにその先には、
八重桜のはるか向こうに雪を頂く中央アルプスが。桜の季節はカメラマンの人気スポットだそうです。
でも桜だけではありませんよ。公園内の藤棚では、藤の花が咲き始めています。
そして足元には可憐なスミレの花。
大草城址公園を出て、南方面へ。
しばらくは天竜川に並行した丘の中腹の道なので、右手に山並みを見ながら走っていきます。
そして天竜川まで降りていきます。
その道の両側にはりんご畑が広がり白い花が咲いています。その背景には、また中央アルプスの姿が!
天竜川に到着し、ここから今日の宿まではずっと天竜川沿いを走ります。
川沿いを軽快に走るジーク。
いやいや、途中の見どころ「大島城跡」を忘れてはいけません、とはお城が好きなシロスキー。
というわけで城跡に向かいますが、天竜川に張り出すような高台にある大島城跡まではやっぱり上りなのね。それも激坂。。
陣馬形山で足を使い果たして全員が押し。
大島城は、戦国時代に武田氏が築城した伊那郡の拠点となる城でしたが、織田軍の甲信侵攻により落城したそうです。
現在は「台城公園」として整備され、つつじや桜の美しい公園です。「台城つつじ祭り」は今年で38回目を数えるそうですが、本日5月3日は偶然にもそのお祭りの日でした。
『今日はお祭りなので、自転車で入ってもいいですよ』と係の方に教えられて公園に入っていくと、つつじと鯉のぼりが見えてきました。
このあたりのつつじはほぼ満開。
赤や白、紫に咲き誇るつつじの上を鯉のぼりが泳いでいます。
ここ、本丸と二の丸の間にある濠の部分には5000株のつつじが植えられています。
この「台城」とも呼ばれる大島城跡は台地の突端部にあり、「甲州流築城術」の特徴である丸馬出し、三日月堀、枡形虎口などの遺構も良好な状態で残っているといいます。
天竜川を望む最も高いところにある主郭では、お祭りのイベントが行われています。
お囃子の笛と太鼓の音が聞こえてきたので行ってみました。
その正面に回ってみれば、大きな獅子舞です。松川町に伝わる伝統的な獅子舞のようです。
獅子の胴体は車輪のついた櫓になっていて、その中で太鼓をたたいていました。
天竜川が折れ曲がったところに張り出した台地の上にある大島城跡。
その主郭からは、天竜川とその周辺の集落や田んぼが見渡せます。
さて、ここから再び天竜川まで下ります。
というわけで、主郭の脇のお堀跡を自転車を押して下る面々。お城の大好きなシロスキー、お堀下りに大満足そう?
天竜川沿いの土手の道に戻りました。どんどん引くサイダーです。
正面から左手に高森町の町が見えてきます。
それを追うのはサリーナ。
天竜川の水は白みががっていて、何だか氷河の川のようです。
さらに続くはマサキン、ジーク、シロスキー。
『陣馬形山アタックも終えて、平地だから楽チン〜』とスイスイ走っています。
まっすぐな道が続きます。川沿いまで下りてきたので、もう中央アルプスや南アルプスは見えなくなっています。
『早く露天風呂に浸かりたい。。』と先を急ぐサイダー。
真っ赤な鉄橋の阿島橋にさしかかりました。もう飯田市に入っています。
橋の袂の広場では、たくさんの鯉のぼりが泳いでいました。この橋を渡って今度は対岸を走ります。
川幅広く、ゆったり流れる天竜川。
午後4時を過ぎて気温が下がり、風も出てちょっと寒くなってきました。
上着を着込んで最後のひと漕ぎ、ペダルを踏みしめます。
さらに弁天橋を渡ってまた対岸へ。途中には「天竜舟下り」の船着き場がありましたが、明日私たちはもう少し下流から川下りを楽しむ予定です。
そしてついに、正面の対岸に今宵の温泉宿が見えてきました。結構大きな建物でビックリ。
予定より早めの午後5時前に到着し、部屋でほっと一息。窓からは天竜川と、その向こうに飯田の市街地が広がっています。
今日のハイライトは何と言っても、陣馬形山アタックとその頂上からの中央アルプス・南アルプス、伊那谷の絶景。そして城跡の花巡りも加わって、楽しい走りを満喫しました。
さて明日は舟で優雅な川下りの後、天竜川は山深い泰阜村、天龍村、豊根村へと分け入っていきます。
そこに思わぬ苦難の道が待っているとは知る由もなく、温泉と宴会で楽しく盛り上がり、今宵も更けていくジオポタなのでした。
◆ひとこと by マサキン
(その1)陣馬形山アタック
前日の夜(望岳荘)から、陣馬形山アタックについて激論続出?
リーダーのサイダーは、ともかく登り方は別にして、陣馬形山1430mはお奨めだよの超強気(360度の絶景で、アルプスと伊那谷の一望は、ともかく登ってからの話とかで)。マサキンはP組希望だから、タクシーで頂上を目指したら良いとか。
シロスキーは、一緒に登ろうと言い。ジークは、割り勘でタクシーで行こうと言い。
ハムレット?の心境で、ともかく自前でアタックに決め、全員よいしょこらしょ。(本音は、登り始めて、こりゃダメだ!戻ろうかと思ったけど)
なんとまぁ、登り切ってしまった。絶景にはただただ感激!!人生やれば出来る (かも?)!!
(その2)台城公園のつつじ
台城公園(大島城跡)では、折良く「つつじ祭り」が盛大に開催中で、自転車持ち込みOK、本丸跡で賑やかなお囃子と獅子舞を見物しました。
帰路は、掘割り跡(落ち葉で埋まっている、道なき道?シロスキーが見つけた)を辿って、土手道に復帰しました。