天竜川4日目、今日は朝から快晴です。
昨日はへとへとのジオポタでしたが、とみやま来富館の前で気分一新、『行くぞ!』と気合を入れるは、左からシロスキー、サリーナ、サイダー、ジークの4人。
昨夜は真っ暗であたりがどんなところか全くわかりませんでしたが、道路を隔ててすぐの少し深い位置に天竜川が流れ、それを若葉眩しい木々が覆っています。
朝日を浴びながら、そんな宿の前をスタート。
今日は70kmを超える距離になりそうで、大丈夫かなあとやや不安げなサリーナであります。
しかし、蛇行する川沿いの道は車もほとんどなく、若葉の木々の木漏れ日を浴びてそれは快適です。
左手には深い渓谷の間を静かに流れる天竜川。
一艘の小舟が波紋を描きながら進むのが見えました。
すばらしい景色に盛り上がるサリーナ。『列車移動にしなくてよかった〜』
昨日の疲れは吹き飛んだようです。
『よかったでしょう〜』、と満足そうなサイダーとシロスキー。
『ここは前に走ってすごくよかったから、列車でパスはもったいないよ』とシロスキー。
渓谷の奥の川は朝日を反射して輝いています。
『ほんまに快適やなあ〜』と鼻歌、いやオペラが聞こえてきそうなジーク。
そして最初のトンネル「一本杉トンネル」に来ました。天竜川に突き出ている猿が鼻の根本を突っ切るトンネルです。
ここまでは緩い上りが続くのですが、すばらしい景色に全く気になりませんでした。
トンネルを過ぎると今度は緩い下り基調の道です。
道のまわりは時に杉林になり、涼し気な林の中を進みます。
あら、少々上り返しです。
そこで天竜川の視界が開けてきました。
深いV字谷に満々と水を蓄えた天竜川。そこに小さな島が一つ。新緑とあいまってのすばらしい景色にご機嫌なジオポタです。(TOP写真)
この静かな流れと豊かな水の天竜川は、実はもう少し下流にある佐久間ダムによってつくられた「佐久間湖」でもあります。
その後2つのトンネルを抜けると砂利や砂を採取している場所に出て、その先に新豊根発電所がありました。
この発電所は、もう少し西にある大入川(おおにゅうがわ)に建設された新豊根ダムによる新豊根ダム湖と、佐久間ダム湖とで水を往来させて発電する揚水発電所なのだとか。
新豊根発電所からもトンネルがいくつも続き、トンネルを抜けては入りを繰り返します。
そして発電所から5kmほど走ったところでついに、佐久間ダムが現れました。でっかいダムの上を走るシロスキー。
佐久間ダムは愛知県と静岡県の県境にあり、1956年に完成した高さ155.1mのコンクリートによる巨大ダムです。
ダム湖の佐久間湖を眺めながら走るジーク。
ダムの下流側を覗いてみれば、天竜川の水量はずいぶん少なくなってV字谷の奥の方を流れています。
ここからは、ついに静岡県に入ります。何と浜松市です。平成の大合併で佐久間町が浜松市に編入されたそうで、浜松市は広いですね。
再びいくつかトンネルを抜けると、飯田線中部天竜駅に通じる赤い橋とそのまわりの半場の集落が見えました。
時刻は10時過ぎ。昼食にはまだ早いのですが、佐久間を過ぎると今日のコース沿いにはなかなか食事のできるところがありません。
でも、食事って感じじゃないよな〜 と言っていたところにグッドタイミングでたこ焼き、たい焼きや五平餅を売っている「大学堂」というお店が出現。というわけで、たこ焼きとよもぎ餅をゲット。
佐久間の先の「豆こぼしトンネル」を抜けた先の旧道に入って休憩し、たこ焼きをいただきます。かわいい名前のトンネルですが、どういう謂れがあるのでしょうか?
ともかくたこ焼きを食べ終えてさらに進めば西渡の集落に着き、赤い榎橋が見えます。
このあたりから、天竜川にかかる橋を眺めたり渡ったりと楽しみます。
次の橋は西渡の集落南端で、天竜川に注ぐ水窪川にかかる大井橋。緑の鉄橋は自転車・歩行者道です。
水窪川は気持ちのよさそうなせせらぎで、その向こうまで山が折り重なっています。
そして車道の本線にかかるのは真っ赤な大井橋。
そのすぐ先で水窪川が天竜川と合流しています。
橋を渡ると国道152号となります。ここは秋葉街道の合流地点でもあり道幅も広くなっています。
3kmほど進めば国道152号は大輪橋で天竜川を渡り、対岸側を通っています。
しかし、私たちのルートは橋を渡らずそのまままっすぐ県道285号に入ります。
天竜川は川幅を広げて薄緑色の水の流れとなり、周囲の山々の斜度も心なしか緩やかになってきたようです。
県道285号に入ると道幅は細くなりますが、車も少なく快適です。
川沿いをどんどん南へ向かいます。
『これはええ道やな〜』とジークが引き、サイダーが追う。
そして次の橋は瀬尻橋。
川を渡った瀬尻の集落には段々茶畑もあるようで、静岡県に入った感がありますね。
対岸の集落を眺めながら、さらにどんどこ進みます。
すると、川の前方に細〜い橋が見えました。どうやら吊り橋のようです。
橋の名前は「みねのさわはし」。『おお、結構揺れる〜』とサイダー。「はねたりしてはいけません」と注意書きがあります。
『ねたらいかんって、誰が橋の上で寝るんや〜』とは、おとぼけジーク。
吊り橋の真ん中からは、広々とした川とそれを囲む山並みが見渡せます。
吊り橋をあとに、さらに南下を続けます。
このあたりはかなり川幅が広くなっているのですが、これも実は秋葉湖というダム湖なのです。
しばらく行くと龍山という地域に入り、「やすらぎの湯」という温泉施設がありました。
『温泉だあ』、と温泉好きなサリーナがつぶやきますが、今日の行程はまだ半分を過ぎたばかり。ここで温泉に入ってもなあ。。ということで通過です。
秋葉湖の湖面を横に眺めつつ走る面々。
沿道は桜並木となっていて、春は特にステキな眺めでしょうね。
そしてほどなく秋葉ダムに到着しました。ここは佐久間ダムに続き、1958年に完成しています。
このダムは水力発電用というだけでなく、上流の佐久間ダムの放流水を調整して天竜川下流域の水量を安定させる逆調整池の役割を果たしているそうです。
秋葉ダムを過ぎると、天竜川は大きく蛇行しています。
ふと振り返れば、ぐるりと回り込んで走ってきた側の山の斜面にジグザグと上る道、そして家や畑も見えました。
うわ〜、家まで上るのは大変そう。。あ、自転車じゃないのか。
この県道285号は車が少なく、ローカルないい雰囲気です。
時には天竜川の眺望が開け、時には杉林に覆われます。
そして道のまわりが開けたと思ったら、そこは一面の茶畑でした。
東雲名(ひがしうんな)という集落に着き、前方には天竜川を渡る真っ赤な雲名橋が見えます。
時刻はちょうど1時。たこ焼きでねばって走ってきましたが、さすがにそろそろお腹がすいてきました。
ちょうどいいところに山あいの里「うんな」があり、ここでゆっくりお昼にしました。
私たちが出発する頃、かごを手に引き上げてきたのはお茶摘み作業を終えた方たちでしょうか。
そうそう、ここ東雲名は秋葉神社の参道の入り口にあたり、参道を示す石碑もありました。
さて、午後の部出発。走るのは引き続きローカルな雰囲気の県道285号です。
振り返れば、蛇行する天竜川の緑白色の水の奥に雲名橋の赤が映えます。
その先、今度は天竜川に注ぐ気田川に架かる気田川橋を渡ります。
橋の幅は車1台分くらい。爽快に駆け抜けるシロスキー。
気田川橋から3kmほど走ったところで県道285号は終わり。楽しい道でした。
そこから右に折れて、天竜川にかかる横山橋を渡ります。ここは国道で車も結構通るのですが、自転車歩行者用の橋が横に付けられていて嬉しい。
橋を渡り終えるとまたローカルな県道に入ります。
天竜川をぐるっと回り込んだ道からは、先ほど渡った天竜川にかかる横山橋が見えます。
県道360号に入ると、ちょっとだけ上りがあります。久しぶりの上りは足にくる。。
その途中、道の脇にあったのは白滝不動尊。滝の前の小さな赤い橋でポーズするジーク、シロスキー、サイダー。
橋には上れましたが右手のお堂には続いておらず、お堂にはどうやって入るのでしょう。
上りはほどなく終わり、再び下り基調になって天竜川沿いを走っていきます。
すると、蛇行して川幅が広がっている水面には何艘ものボートが見えました。
大学のボート部でしょうか。1人、2人、4人などいろいろなボートが川面を滑るように走っていきます。横のボートで1人じっと見ているのは鬼コーチか。
ここは天竜ボート場で、川べりにはボートの船着き場や観覧席、艇庫などもありました。あとで調べてみたら、ここは東海地方の漕艇競技のメッカであり、ボートの甲子園、全国高等学校選抜ボート大会なども行われているそうです。
このあたりの川幅は200mくらいはありそうで、それがS字型に蛇行しています。
蛇行する道の小さな上りをこなすシロスキーとサイダー。
そして伊砂橋に着きました。
ボート場もここも、満々とした豊かな水だなあと思ったら、ここは再びダム湖なのでした。
それがこちら、1977年に完成した船明(ふなぎら)ダムです。天竜川の最下流にあるダムで、河口からは30kmほど。
並んでいるのは巨大なローラーゲートで、世界最大級だとか。そんなゲートの横を走っていきます。
船明ダムを過ぎれば、今日の目的地の二俣はもうすぐ。
もう走行距離は60kmを超えていますが、今日はほとんど下り基調で快調、『予定より早めに着きそうでよかったね〜』と飛ばすサリーナ。
そして、車の本線と分かれてより川に近い土手の道を行きます。
ますます爽快、と飛ばすジーク、シロスキー。
さて、予定ではこの先を右に折れて宿に向かうことになっていましたが、『まだ時間が早いから、二俣のまちなかまで行ってみよう』とサイダーが引きます。
というわけで、宿への分岐点を越えて天竜川にかかる鹿島橋を渡っていきます。
そしてまちなかに入り、向かったのは「本田宗一郎ものづくり伝承館」です。
この建物は昭和11年建築の旧二俣町役場を改修したものだそうです。
建物に入ると、1階にはたくさんのかわいいモーターバイクが並んでいます。
面白いもの発見! 実用自転車にしか見えないこれは、補助エンジン付き自転車「ホンダカブF型」です。
1952年、白いタンクと赤いエンジンカバーがかわいく大ヒットしたそうな。
ものづくり伝承館を出て、まちなかから再び鹿島橋を渡って宿に向かいます。本日の宿は静岡県立森林公園の中にある「森の家」。
しかし県道2号から左へ折れたとたん、なかなかの上りが始まりました。そして森林公園に入ってからも、木々に覆われた道はますます上り勾配を増しています。『ぎゃー、最後にこれ!?』と切れそうなサリーナ。
上って曲がって上って。。やっと「森の家」の看板が見えたときの嬉しさよ。
そして到着してみれば、木の香りが匂い立つような建物が迎えてくれました。
ここは宿泊・研修施設だそうで、宿泊棟のほか、レストラン棟、研修棟、多目的ホールなどの施設があり、どれも木材がふんだんに使われています。
部屋もお風呂も木の香りで落ち着いて快適。そして窓からは何と、松林の向こうに海まで至る広大な市街地の景観が広がっています。がんばって上った甲斐があったというものです。
ゆっくりお風呂に入ったら、レストラン棟で夜景を見ながら夕食。カンパ〜イ!
最後はあえぎましたが75kmを快適に走り終え、天竜川はついに平野部まで出てきました。さあ、明日はいよいよ最終日、太平洋に流れ込みます。
◆ひとこと by サリーナ
今年のGW企画・天竜川には初日の昼過ぎから参加。午前中にすばらしい北アルプス・中央アルプスの眺めを満喫したと聞いて残念に思いましたが、そこからも楽しい道と絶景のオンパレードでした。
絶景の中の絶景といえば、やはり2日目の陣馬形山。へろへろになり押しながらも上りきったあとの360度パノラマには大感動でした。
そして問題の3日目。私の20年ほどの自転車旅歴の中でも最長の押し、最困難旅トップに躍り出ようという行程でしたが、宿に着いたときのビールは最高! 困難の先にはいいこともありますね〜
翌日の4日目は、終日本当に本物の快晴に恵まれ、快適に走りながら、深い谷間の流れから幅広いダム湖の連続へと、緑の中で姿を変えていく天竜川の景色を満喫することができました。
川の源流から河口まで走るというのは、物語があっていいですね。そしてサイドストーリーもいっぱいの楽しい旅でした。