梅雨入りが近付いています。この時期になると毎年、どこかで花菖蒲を見たくなります。
今回はこれまで訪れたことのない、さいたま市見沼区にある染谷花しょうぶ園を訪ねます。この園は花菖蒲の時期しか開園せず、その他の期間はこの開園に向けて、一年をかけて準備しているといいます。楽しみ〜
東松山駅に集結したのは、なんと野郎ばかりが七人。れれれ、女子はどうした?
ん〜、女子は花より団子だそうな。(笑)
東松山駅からまず向かうは八丁湖ですが、東松山の市街地を抜けて市野川の畔に出ると、吉見百穴があります。
これは古墳時代の墓で、死者が埋葬された横穴が確認できるだけで219あるそうです。吉見219穴!
吉見百穴の入口で219穴を眺めたら、その奥にあるひっそりとした道に入ります。
ここは森の中の小径で、ひんやりとしていて気持ちいい。
短い激坂を上ってこの森を抜けると、小さな田圃が出てきます。田植えが済んだばかりの田圃にはきれいな緑色の苗が規則正しく並んでいます。
先頭の赤シャツ赤バイクは初参加のビジター、モリちゃん。江戸川を越えた向こう側から遥々やってきてくれました。
小さなアップダウンをいくつかこなし急な坂道を下ると、なにやら威厳がありそうなお寺の前に出ます。ここは坂東三十三所の11番札所安楽寺。通称『吉見観音』です。
開基は坂上田村麻呂だそうで、創建は808年とたいへん古い。カーブの途中にある石段を上ると、正面に本堂、その横にちょっとした大きさの大仏さま。この大仏さまの奥には三重塔も建っています。ここは雰囲気よろし。
吉見観音にお参りしたら八丁湖へ向かいます。
少し細めの道を上って下ると、
八丁湖に到着。
このあたりには田圃の灌漑用に作られた湖沼が多くありますが、この八丁湖もその一つで、周囲は2kmほどです。この奥には吉見百穴とそっくりの黒岩横穴墓群があります。
その黒岩横穴墓群のさらに奥に、花菖蒲に良く似たカキツバタが咲くところがあるので、見に行ってみます。
六月になったばかりのこの時期、湖の周囲の緑は明るくも深い色に変わりつつあり、もう新緑ではなく万緑といったところでしょうか。今日の午後の気温は28度ほどまで上昇するようですが、まだ午前中の上、ここは水面と木陰があるのでかなり涼しく、快適です。
湖の北岸を進んで行くと、湖が終わったところに木製のデッキが現れます。
その足元は少し水気があり、湿地になっています。
目当てのカキツバタはこのあたりに生えているのですが、まったくそれらしい花は見当たりません。
ようやく一輪だけ咲いているのを見つけました。花菖蒲によく似た花にはアヤメとカキツバタがありますが、これらが咲く順番は、カキツバタ、アヤメ、花菖蒲の順だそうです。花菖蒲が咲き出したこの時期、すでにカキツバタの花はおしまいなのです。
八丁湖の次は荒川へ向かいます。荒川の河川敷にポピーがたくさん咲いているところがあるのです。
河川敷のカントリーロードをどんどこ行くと、周囲は黄金色になった麦畑。埼玉県はうどん文化圏として知られていますから、この麦はもしかするとうどんになるのかもしれませんね。
麦畑の次は田圃。青い田圃はやっぱり日本の原風景の一つ。
麦畑と田圃を横目にどんどこ進んで、高尾橋に出ました。ここに流れているのは細い荒川本流。
高尾橋のすぐ北にあるそば屋で昼食にしたら、午後の部開始です。
御成橋近くにある、ポピーが咲くポピー・ハッピースクエアに向かいます。
周囲は相変わらずの田圃で、その中に真っ白な鷺が一羽。
その向こう側は、また麦畑。
この辺に『麦なでしこ』の畑があるのですが、それはどうやらすっかり刈り取られたあとのようで、それらしい姿は見かけませんでした。
御成橋が近付いてくると、赤、黄、白といった鮮やかな色が目に飛び込んできます。
あそこがポピー・ハッピースクエアです。
ポピーはケシ科の一年草で、ヒナゲシや虞美人草とも呼ばれます。
ここの見頃は例年、5月中旬から下旬にかけてのようで、この時は最後の花が残っているといった感じなのですが、まあまあ見られます。
ポピーの花びらはかなり薄く、まるで紙でできているよう。
ポピーの花でもっともよく目にするのは単色のオレンジと赤ですが、ここには様々な色合いのものが咲いています。これはピンクのフリフリ。
紅白。
ピンクから赤というグラデーションも。
この畑の中に一面黄色のゾーンがあります。
これはカリフォルニアポピーと言うそうです。それに対し、先ほど見た方はシャーレイポピーと呼ぶようです。
カリフォルニアポピーはハナビシソウ(花菱草)とも言い、同じケシ科でもシャーレイポピーとはまるで違った姿をしています。
ひ弱そうなシャーレイポピーと違い、花は小さく厚く、しっかりした感じで、実際かなり丈夫だそうです。
シャーレイポピーとカリフォルニアポピーを眺めながら、花畑の中をゆっくり進んで行きます。
この時はもうシーズンの終盤だからか、花の摘み取りができるようで、かわいらしいシャーレイポピーを手にした人が何人か歩いていました。
二種類のポピーを眺め終えたら、いよいよ花菖蒲です。
鴻巣の住宅地を抜け、高崎線の線路を渡り、上越新幹線の高架橋をくぐると、田圃の中になります。午後も一時を過ぎ、少し暑くなってきました。しかしこのあたりの田圃の近くになると、スーと涼しい風が吹いてきます。気化熱って凄いってことを実感します。
道は小さな川で行き止まりになり、田圃の中の用水路沿いの地道をどんどこ。
その先にあるのが久喜市菖蒲町の『菖蒲城趾あやめ園』です。ここは町名に菖蒲が付くのですから、きっと昔から菖蒲がたくさん植わっていたのでしょう。
そうそう、五月五日の端午の節句には菖蒲湯に浸かりますが、その時お風呂に入れる菖蒲と花菖蒲はまったく別のものだそうです。菖蒲はショウブ科で、花菖蒲はアヤメ科だって。
この時期は早咲きの花菖蒲が見頃です。
アヤメや花菖蒲と言えばまず最初にイメージするのは紫色でしょうか。ここの紫色の花は揚羽(あげは)という品種だそうです。
白もきれい。
ティッシュペーパーみたい。。。って誰だ!
ひらひらのうっすらピンク。
あやめ園のすぐそばにある久喜市菖蒲総合支所の前にはラベンダーの堤があるので、ついでに寄ってみました。
昨年の今頃は見頃になっていたようですが、今年はそれよりずいぶん遅く、ほとんどの木がまだこれからといった感じです。しかし堤の手前の花壇に植えられた早咲きのものは、なかなかいい感じです。
花菖蒲とラベンダーを眺めたら、見沼代用水(みぬまだいようすい)に沿って続く歩行者・自転車道の『緑のヘルシーロード』に入ります。
見沼代用水はそれまであった見沼溜井に代えて、江戸時代に造られた灌漑用の水路です。
利根川から取水され、その延長は60kmほどにもなるそうです。
当然ながらその周囲には田圃が広がっています。
最近、田植えの時期は早まる一方のように感じられます。これも温暖化の影響でしょうか。関東では五月中には終わっているところも多いと思いますが、ここは今、田植えの真っ最中です。
見沼代用水の先には元荒川が流れています。普通の川はぶつかると合流し、より大きな一つの流れとなりますが、見沼代用水はこの先も流れて行かなければなりません。元荒川に飲み込まれておしまいというのでは具合が悪いのです。
そこで見沼代用水を造った井沢弥惣兵衛為永という人は、見沼代用水を元荒川の下を通すことにしたのです。これは伏せ越しと呼ばれるもので、逆サイフォンの原理を利用したものです。
先ほどより空には雲が。午後二時を過ぎ、一日で一番暑くなる時間帯に入りましたが、雲のおかげで気温はあまり上がらず、これは助かりました。
見沼代用水はその両側に道があります。一方が緑のヘルシーロードで、もう一方は一般道ですが、この一般道も大して交通量は多くないので、気分次第でどちらを走ってもいいでしょう。
見沼代用水の南には綾瀬川が流れています。そこには幅2mに満たない『伊奈ジョギングロード』が6kmほど続いていて、これもちょっと面白いのですが、今回は緑のヘルシーロードをどんどこ。
蓮田から上尾の瓦葺に入ると、見沼代用水は綾瀬川を伏せ越しでくぐり抜け、そこで西縁と東縁に別れ、さらに先へと延びて行きます。
蓮田に入ってからは、緑のヘルシーロード沿いには密に住宅が建ち並ぶようになります。これは埼玉市見沼区の七里総合公園あたりまで続き、その間、緑のヘルシーロードはこれまでに比べ快適度がかなり落ちるようになります。
そこで東大宮バイパスをくぐったところで緑のヘルシーロードを離脱し、綾瀬川沿いの田圃の縁を行ってみることにしました。
しかし、綾瀬川の土手には道がなかったり地道であったりすることが多いので、このあたりのルートは一筋縄ではいきません。
あっちへ行ったりこっちに来たり、そしてちょこっと綾瀬川の土手を通ったり。しかしまあ、なんとか繋げて行きます。そしてこれが、意外と面白い。
七里総合公園の近くまでやってきました。
ここにはきれいに区画された田圃が整然と並んでいます。
前方に巨大な建物が見えてきました。埼玉スタジアム2002です。
しかしその上には黒い雲が。これはもしかするとこの先、雷雨ということもあるかもしれません。
さいたま市東部環境センターの煙突が遠ざかってきたところで方向転換し、本日のメインイベント会場である染谷花しょうぶ園へ向かいます。
田圃を出て膝子の集落を抜け、見沼代用水を渡って進むと染谷に入ります。
その中に、この時期しか開園しない染谷花しょうぶ園はあります。
先ほど立ち寄った菖蒲城趾あやめ園の花菖蒲は、少ししおれぎみでしたが、ここのものはみんな元気で、密度も高く咲いています。
さらにこちらの方が種類が圧倒的に多い。
これは伝統的な紫。
こちらはやや薄い紫でも、筋目が入ったヒラヒラ。
これは最初の紫とよく似ていますが、場所によるのかそれとも光線の具合でか、やや赤みが強い紫です。
白とヒラヒラの赤紫。
この花はとても大きく、かなり派手。ゴージャスにドレスアップした、すじすじヒラヒラのすみれ色です。
園内を半周ほどしたところでとりあえずの記念撮影。
あれ、何人かいないぞ。
残りの半周を廻って、無事全員そろったところでもう一枚記念撮影(TOP写真)したら、見沼代用水に戻ります。染谷花しょうぶ園は写真の森の向こう側にありました。
空は青い。さっきまであった黒雲はすっかりどこかへ行ってしまったようです。どうやら雷雨には合わなくて済みそうです。
田圃の縁に桜並木が出てくると、見沼代用水はその下を流れていました。
伏せ越しがあった瓦葺で見沼代用水は二手に分れており、こちらは東縁です。
ほどなく見沼代用水東縁は、見沼自然公園とさぎ山記念公園の間を抜けて進むようになります。
緑のヘルシーロードでもっとも緑が多いのがこのあたりです。
そこを抜けると路面はインターロッキングブロックに変わります。このあたりは見沼代用水の原形保全区間で、川岸や川底にコンクリートの護岸工事がされておらず、開削当時に近い姿をしているそうです。
対岸の林は、さいたま緑のトラスト基金による保全地『見沼田圃周辺斜面林』で、一部にきれいな竹林も残っています。
大崎公園を過ぎると、そろそろ本日の終着地です。
見沼代用水の東縁はこの先の見沼通船堀で西縁に繋がり、その通船堀では閘門(こうもん)を見ることが出来るのですが、今回はこれはパスし、JR武蔵野線と埼玉高速鉄道が通る東川口駅に向かいます。
見沼代用水東縁を離れると、いきなり市街地になります。住宅が建ち並ぶ中を進み、JR武蔵野線の線路脇に出ました。東川口駅前は比較的近年開発されたようで、武蔵野線の南北に立派なロータリーが造られ、周辺には高層マンションが建ち始めています。
その駅近くにある一軒の焼鳥屋に飛び込み、本日終了です。おつかれさま〜、カンバイー!