春は近い! 伊豆で輝かしい蒼い海と富士山、そして菜の花と桜を見て、金目鯛を食べよう!!
天気は晴れ。新幹線からは美しい富士山が見え、伊豆急行線の車窓からは、東京辺りでは想像がつかないほど強く輝かしい光が差し込み、外にはその眩いばかりの光を反射した海が見えました。そこに浮かぶは大きな伊豆大島。
伊豆急下田駅に降り立ったメンバーは合計7名。寒いのによく集まりましたね。駅前にはペリー提督が乗ってやってきたサスケハナのミニチュアが置かれています。あの有名な黒船ですね。
下田からはいつもは下田海中水族館の横を通る海縁のルートを使うのですが、この日は風がとても強く飛ばされそうなので、今回は山ルートを行くことにします。
ところがこのルート、初っ端からきつ〜い上りで辛いのでした。
なんとか山を越えR136に出て1kmほど行くと、吉佐見(きさみ)で大賀茂川の流れに出合います。
大賀茂川沿いは河津桜の並木で、今頃はちょうど見頃のはずなのですが、今年は寒かったのでこれはまだ。なんと今年の河津桜は例年より二週間ほど遅れているそうです。(泣)
大賀茂川沿いの遊歩道を行くとボードウォークが現れ、その周囲はハマボウ樹林になります。
ハマボウはアオイ科の落葉低木で、7月下旬にフヨウやハイビスカスに似たやや小ぶりの黄色い花を咲かせます。
ガタゴトと音を立ててボードウォークを進んで行くと、吉佐見大浜に出ます。海には伊豆七島のきれいな形の利島が浮かび、その他のいくつかの島影も見えています。
輝かしい海! あぁ、いいねぇ〜、伊豆。
吉佐見大浜で今回始めての伊豆の海を堪能したら、ここからは菜の花が咲く日野(ひんの)を目指します。海岸を離れようとすると、駐車場の横にピンクの花が。
『あっ、咲いている! 河津桜〜』
大賀茂川沿いはまったく咲いていなかったのに、ここは見頃ですね〜
吉佐見大浜から日野まではいつもは海縁を行くのですが、風が強いのでここも山ルートをとります。
海岸を離れれば、いきなり上りで、ちょっとあへあへ。
小さな川の谷に沿って上って行くと、道脇にみかんのようなものが生っています。
伊豆は柑橘類の産地です。温州みかん、ポンカン、デコポンなどが栽培されていますが、この木はたぶん甘夏みかんでしょう。
道が向きを変え谷を離れると、竹林が現れます。この道、なかなか変化に富んでいて楽しい。
竹林の先に切り通しが現れ、そろそろピークかなと思った頃、先にトンネルが見えてきました。このトンネルが日野までの第一のピークです。
トンネルを抜けると陽が眩い。この強い光こそが伊豆の日差しです。
『わ〜眩しいー。伊豆の陽って強いんですね〜』 と改めて感じた先頭のシュンシュン。
下り出すとすぐ、お馬さんがいる乗馬クラブの横を通ります。その先の道端では、ヤブツバキが赤い花をたくさん付けています。
先ほど大浜海岸から見た海に浮かんでいる伊豆大島は、今頃は椿まつりの真っ最中でしょう。伊豆半島の椿では伊東の小室山公園が有名ですが、このすぐ近くの盥岬(たらいみさき)のものも味わいがあります。これは明日に。
田牛(とうじ)に流れ出る小さな川まで下ると、道は再び上りに。
ん〜ん、この上り、ちょっときついよ〜
案の定、この先のピーク付近ではみんなに押しが入りました。
ぐわ〜んと下って日野に到着。
河津桜が遅れていれば菜の花も遅れています。ここの菜の花の背丈は1m近くになるのですが、この時期はまだ30cmほどしかなく、花はほとんど咲いていません。なんと今年の見頃は、2月末から3月下旬ごろになりそうだとか。
でも、ほんの少しですがきれいな花を付けているものもありました。
今回は圧倒的な黄色一面の花畑は見ることはできませんでしたが、まあちょっとでも咲いていたのでこれで良しとしましょう。
さて、お昼です。伊豆とあればやっぱり海の幸でしょう。ここは、わだつみ定食を。
かつて日本にはあちこちに海女がいました。南伊豆もその例外ではなく、ここでは主に、あわび・さざえ・てんぐさなどを採る素潜り漁がされていました。海辺では普通の食事はなかなかできません。海女たちは自家製の味噌や野菜、そして山菜などを持って行き、収穫した魚・蟹・海老・貝・海草などを大鍋に入れて煮込んで食べていたそうです。わだつみ定食はそんな海女たちの鍋を現代風にしたものです。
ちなみにワダツミ(海神・綿津見)とは日本神話の海の神のことで、転じて海や海原そのものを指すようにもなったそうです。
海の幸に満足したら午後の部開始です。しかし風はますます強くなるばかりで、しかも向かい風となる西風です。石廊崎の観光船はこの風で運休です。このあと予定していた石廊崎を通る海岸ルートはとても進めそうにありません。
そこでここからも山ルートに変更。まず青野川を遡り、次に蛇石峠を越えて松崎に下ることにします。ということで、ここからが本日のメインイベント、青野川沿いの河津桜見物になります。ところが、
『あり〜、咲いてないねぇ。。』
『今年はとても開花が遅れていて、最大で一分咲きだって・・・』
『おっ、ここはちょっとピンクだよ〜』
『もうちょっとだねぇ〜』
・
・
・
『おっ! お〜っ!!』
『お〜、ここはちょっと咲いてるよ〜〜』
『お〜、いいじゃないか、ここ!』
ようやく五分咲きくらいの木に出会うことができました。
河津桜はいわゆる早咲き桜と呼ばれるもので、オオシマザクラとカンヒザクラの自然交雑種と推定されているそうです。
花の色は濃いピンク。桃色というか淡紅色で、ソメイヨシノよりもかなり赤みが濃いです。花期が1ヶ月と長いので、この分だと3月中頃まで楽しめそうな感じです。
この青野川は両岸とも河津桜の並木で、満開になったらそれはそれは見事です。
ここは、川の表情がその桜を引き立てるのも良いところ。
青野川の上流に向かって進めば、川面に二艇のカヤックが。
川面から満開の河津桜を眺めるというのも乙なものでしょうね。
『ちょっとだったけれど、河津桜咲いててよかったねぇ〜』 と満足げな先頭ムカエル。
河津桜の並木の足元では、まだまだ背の低い菜の花ですが、ちょこっとだけ黄色い花を咲かせています。
もう一月も早ければ、その菜の花に代わりに白い水仙が満開だったでしょう。
水仙はまだかろうじて花を残したものもありますが、もうおしまいです。
下賀茂から上賀茂へ上り、北にある低い山を眺めます。
ここからはあの山の中腹にある青野大師ダムへ上ります。
一条川が流れ込んだ先の青野川の土手は地道です。
この土手は桜が咲けばとてもすばらしい散歩道になるのですが、咲かなくてもまずまず楽しい。
この土手道が終わるとr119に入ります。
道は穏やかな上り。
r119はすぐに終わりr121になりますが、そのr121を下小野で離れ、カントリーロードに入って青野の集落へ向かいます。
徐々に山が近付いてきます。
『いてててて〜、石粒が飛んで来た〜』 と青服のシンチェンゾーが急停止。
そして次の瞬間、ブオ〜という音ともつかぬうなりともつかぬものとともに、突風が。これには全員、自転車に乗っていることはおろか立っていることもままならず、近くの民家の影に逃げ込みました。
写真ではまったく表現できていませんが、この時はもの凄い風が吹いていたのです。山でこんな調子ですから、海岸を行っていたらとんでもないことになっていたでしょう。
あとで調べてみると石廊崎では風速16m/sとなっています。これは、樹木全体がゆれ、風に向かって歩けなくなり、転倒する人も出てくるとされる程度です。16m/sは平均なので、瞬間最大風速は30m/s近くあったに違いありません。お〜、怖!
谷が狭まり山影に入ると、だいぶ風が弱まってきました。山ルートにして良かった〜
この谷には青野川の支川である鈴野川が流れているのですが、その流れはごく細く、どこを流れているのかわからないほどです。青野川はかつて、豪雨などによる氾濫でこの一帯に大きな被害をもたらしていたそうです。そのため、洪水の調節機能や水道用水の確保などを目的として、この上に青野大師ダムが建設されたようです。
この道はその青野大師ダムに続いています。
鈴野川の谷を上って行くと、道端に真っ白に輝くものが。
白梅です。河津桜は一分未満の咲きでしたが、これは満開。
真っ白できれいです。
だいぶ上ってきました。道端に柑橘類の実が生っているところまで来ると、青野大師ダムはもうすぐです。
急なカーブを曲がると、突然目の前に青野大師ダムが現れました。
堤高は39.5m。ここから見上げる高さがそれでしょう。
ということで、ダムの堤まではさらに39.5m上らなければなりません。
ちょっとえっこらしてダムの上に到着。上からやってきた方面を見下ろします。こうして見るとこの時、鈴野川にはまったく水は流れていないようでした。
反対側をみれば、そこにはもちろんダム湖があります。しかしこのダム湖、かなり小さいです。素人目にはこんな大きさで本当に役にたつのかな、と思わせるほどの大きさしかありません。
この日は平昌(ピョンチャン)オリンピックでフィギュアスケート男子フリーが行われており、先ほどショートで一位だった羽生結弦選手の演技が終わり、たった今、三位に付けている宇野昌磨選手の演技が始まったところです。ダム湖をちら見したあとはすぐにipadでその演技を真剣に見つめる面々。時々、お〜っ、とがギャーとかわめく声が聞こえます。
『お〜い、いくぞ〜』 とのサイダーの声は届かなかったようで・・・
『お〜、やった=。羽生くん金メダル! 昌磨くんは銀メダルよ〜』 と叫ぶサリーナ。とにかくここはみんなで金銀メダルを祝います。
さて、メダル祝いが終わったら出発しましょう。
『あれ〜、ここからは下りじゃあないの〜』 とサリーナ。
『いえいえ、ここからは林道鈴野線でしばらく上りです。』 とのサイダーの声に、愕然とするメンバーたちでした。ちぇっ、金銀メダルに続いて下りだったら最高だったのにな〜、という声が聞こえてきそう。
林道鈴野線をゆっくり上って行くと、先ほどまでいた青野大師ダムが下に見えます。
その遥か先に見える山の上にはたくさん風力発電用の風車が立っているのですが、この時そのプロペラは回転していませんでした。どうやら風が強すぎるため、運転を停止しているようです。この日の風はそれくらい激しいということですね。
林道鈴野線は最初はダム湖の上を廻るようにして進んで行き、このあたりは明るいのですが、
程なく森に入り、薄暗い中を進んで行きます。
標高320mでピークを迎えると、
『ここが今日のピークですかぁ〜』 とマージコ。
『いえいえ、この先ちょっと下って上り返して林道のピーク。林道を抜けたら蛇石峠に上ります。そこが今日のピークですよ。』 とサイダー。
『ゲ、上り、まだそんなに残っていたんですか〜』
林道序盤の路面は比較的良好でしたが、このあたりになると簡易舗装の表面が剥がれて、その上に落ち葉や枯れ枝が散乱し、所によっては落石が転がっていたりと、少々危うくなります。
そんな路面状況も加わって、この上りの終盤はけっこうきつい。
ようやく二番目のピークに達し下りに入るも、そこの路面も荒れており、せっかっくの下りなのにあまり軽快には下れません。
この道は残念ながら、そろそろ自転車で安心して走れる環境ではなくなりつつあります。
なんとか林道鈴野線を抜けて一般道に出ました。ここから蛇石峠までは1.2kmで100mの上りです。
この道は道幅が狭い割りに車の通行が少しあるので、注意が必要です。
えっこらよっこらと上り詰めて、蛇石峠に到着。
この峠は見晴らしも何もなく、加えて道路幅員が極めて狭くなっているので、長居は無用です。息を整えたらさっさと下り出します。
びゅーんと下ると岩科です。岩科は松崎から山を一つ越えた南側の筋にある集落です。
久しぶりに広い空。
ここは山合に細い岩科川が流れ、その周囲に田んぼが築かれています。
のどかでいい感じ。
その田んぼの先、山が下りてきたすぐのところには岩科学校があります。
岩科学校は1880年(明治13年)竣工の伊豆地域で最古の小学校とのことで、外壁の腰にはこの地方でよく使われるなまこ壁が張り巡らされ、正面には洋風のバルコニーが設えられています。
そのバルコニーの上の龍の彫り物は、伊豆の長八こと左官職人の入江長八が棟梁の鑿を借りて彫ったと伝えられるものです。
長八は漆喰細工の鏝絵を得意とし、この建物の内部の欄間には『千羽鶴』が残されています。
さてここまで来たら本日の宿がある岩地(いわち)まではもうすぐです。
しかし少し開けたところにやってきたので、またあの風が・・・
岩科から岩地までのルートは、海辺へ出てR136富士見彫刻ラインを使う手と山越えとがありますが、やはり海辺は危険と判断し、ここも山ルートを選択。今日は徹底して山ルートになっちゃった。
西を見れば、岩科と岩地とを隔てる山が見えます。これからあの山を越えなければなりません。
日中はかなり気温が上がって暖かかったのですが、ここにきて急激に気温が下がり、寒い寒い。
『早く温泉に浸かりたい〜』 とみんなの声。
さて、これを越えれば温泉だ〜 とばかりに最後の上りに挑む面々です。
この上りの序盤に、運良く富士山の姿を見ることができました。
この日は富士山を見るにはこの上りのピークからさらに山の上に上らなければならないだろうと思っていたのですが、こんな角度から見えるとは思ってもいませんでした。夕方は水蒸気が多くていい富士山に会えないことが多いのですが、この日はラッキーでした。
えっこらよっこらと上り詰め、標高150mほどのピークを越えて岩地へ下ります。
ところが下りになった途端、風がビュービューで怖い。吹き飛ばされそうです。
樹間から海が見えるT字路まで下りてきました。ところがそこは風の通り道で、暴風で本当に吹き飛ばされそうです。ムカエルの跳ね上げ式レンズのメガネは、いつの間にかそのレンズが跳ね上がっていました。驚きィ〜。
用心して進んで、岩地の集落と入り江が見えるところまで下りました。
右手に突き出すのは萩谷崎で、左手に優雅な弧を描く浜が少しだけ見えています。
しかしその浜はいつになく狭く見えます。それがこの時刻が満ち潮だからなのか、はたまた強風の影響でなのかは?
慎重に下ってなんとか岩地の浜までやってきました。そこで見た海は、いつもここで見る穏やかなそれとは大違いで、荒々しい波が押し寄せています。
しかしとにかく、無事に岩地温泉に到着です。さ〜、温泉だ〜〜
今宵の宿は民宿で、そのおじさんとおばさんはとても感じ良く私たちを迎えてくれました。
部屋に案内してもらったら、まずは一日の汗を流すべく温泉に浸かります。ここの泉質は塩化物泉で、舐めるとちょっとしょっぱい。この湯にゆっくり浸かってポカポカに。リラックスしました。
さて、温泉の次はお待ちかねの夕食。伊豆といえばの魚介類のオンパレードで、料理を見た瞬間、全員『お〜っ』という嬉しい悲鳴。低価格の宿なので金目鯛は出ないかな、と思っていたら、ラッキーなことにそれも付いていました。お酒が進むこと進むこと。一升瓶三本空けて、おじさんに目を回されました。(笑)
良い宿でした。伊豆は最高です!