夏です。そろそろ東京近郊を走るのは困難になりつつあります。しかし6月いっぱいは走りたい。ということで、今回は狭山茶と花菖蒲を眺めに出かけました。しかし、気温はかなり高くなりそう。
やってきたのは西武池袋線の元加治駅です。このすぐ近くには入間川が流れ、その向こうに小高い加治丘陵があります。
入間川周囲は河岸段丘になっており、湧水があちこちで見られるといいます。そこで序盤はこの湧水巡りを。
まずは元加治駅のすぐ近くの円照寺です。この寺は駅名にも残っている、かつてこの地を治めていた豪族・加治氏の菩提寺で、湧水によってできた弁天池があります。
正面が本堂、左手に見えるのが弁天堂です。
弁天池にはきれいな睡蓮が咲いています。
入間川の上橋に出ると、そこには大きなケヤキの木が三本立っています。
この三本は元々は別々の木だったと思いますが、至近距離に生えたので根っこあたりがくっついて癒着してしまっています。
入間川をいったん離れ北へ向かうと、住宅地の中にちょっとした木立があります。
その中にはこのあたりの総鎮守の白鬚神社が建っています。
R299を渡ると急に住宅の密度が低くなり、周囲は畑になります。
この畑の先で道は急坂に。この坂は一般的にはハケと呼ばれるもので、入間川の河岸段丘です。
ハケの上に上るとこんもりとした森になります。
この森の中には『谷田の泉』という泉が湧いています。
谷田の泉から流れ出た小川の中にモズクのようなものが生えています。
これは藻の仲間でカワモズクというものだそうで、環境省のレーッドデータブックでは純絶滅危惧種になっています。
谷田の泉を眺めたあとは、ハケの上の茶畑の中を進んで行きます。
ここの茶葉はすでに摘まれていました。
茶畑の先は森。
森を抜けると下に茶畑、遠くにこんもりした木々に覆われた丘が見えます。あの丘は入間川の南にある加治丘陵です。
こうして見ると、ここが茶畑から一段高くなった河岸段丘の上であることが良く分かります。
ちょっとした眺望を楽しんだら、入間川に戻ります。
かわに近い三叉路に、庚申塔や馬頭観音などが並ぶ山王塚というものがあります。こうしたものがあるということは、ここは古くからある集落だということです。
入間川に戻ってきました。下には河川敷が広がり、その先に加治丘陵が見えます。河川敷内は野田河川公園になっています。
しかしこの公園へは、なんと階段を降りなければなりません。
その階段というのがこれで、三階分ほどあります。
ここも河岸段丘なのです。
河川敷を進んで中橋を渡ります。
西には秩父から奥多摩に掛けての山並みが見えています。
入間川の南岸にはアミーゴというちょっと変わった形の建物があります。これは旧埼玉県繊維工業試験場で、現在は音楽や演劇などの文化活動の練習や発表の場として使われています。
暑いのでここでアイスクリームでも食べたかったのですが、残念ながら飲食できるところはなく、売店もありません。
アミーゴを出たら入間川の河川敷内にある歩行者自転車道を行きます。
最初この道に『歩行者専用』と書かれていた気がして、横の砂利道を進みましたが、あとでこれは『専用』ではなくどうやら『優先』であったらしいことが判明。
ところがしばらくこのことに気付かなかったので、武道館のところで土手に上らざるをえなくなりました。
堤の桜がなくなると、その先は森に。
ワイルドでちょっと楽しい。
この森を抜けると一般道になります。そしてほどなく河川敷に下る小径があります。
この道の入口には『歩行者優先』とはっきり書かれていたので、これを行きます。
テニスコートや野球グラウンド、サッカー場などの横を行き、ぐるりと廻った道は入間川からその支流の霞川沿いに入ります。
入間市駅の近くには旧石川組製糸西洋館があるのですが、うっかりこれは失念してしまいました。暑くて頭がぼーっとしてたのでしょう。
高倉寺に駆け込み、東屋の下で冷たい飲物を飲み干します。
ここの観音堂は国の重要文化財で、本堂に向かって左手にありますが、うっかり写真を撮り忘れ。
高倉寺を出たら茶畑の中を進んで行きます。
茶畑の先に広がる森が加治丘陵です。
住宅地の中に入ると八津池があります。この池は現地の案内板によると『江戸時代初期から昭和30年代まで水田を潤してきた溜池』とあります。しかし現在、この周辺に田んぼはありません。みんな茶畑になったのでしょうか。
ここにはかつて焼物の工房もあったようです。案内板には谷津池窯跡とあり、武蔵国分寺に使用された瓦などを焼いた窯跡と瓦工房跡が発見されているそうです。
八津池を出たら、武蔵野音楽大学付属幼稚園のところから加治丘陵の遊歩道に入ります。
この入口は超激坂!
実に面白いことにこの道は、かつてはサイクリングコースだったそうです。ところがかなりのアップダウンの連続で、ヘーコラ。こりゃあ、サイクリング初心者には無理だわよ。
たぶんそんなんで誰もサイクリングする人はおらず、必然的に遊歩道になったんだと思います。
上級サイクリングコース(笑)をガシガシ行きます。
あけぼの子どもの森公園のすぐ南までやってくると道は下り基調になり、桜山展望台への散策路入口に出ます。
この展望台へは旧サイクリングコースを下まで下って、戻るようにして上れば自転車でも行けますが、この上りはかなりきついので、私たちはここに自転車を駐輪し、歩いて展望台へ向かいます。
山道を5分ほど上ると展望台です。
南には入間の茶畑が広がり、
北西には秩父の刈場坂山や関八州見晴台あたりが正面に見えます。
空気が澄んでいれば南西に富士山も見えるようですが、この日それは残念。
桜山展望台で眺望を楽しんだら、加治丘陵を下ります。
平地に出ると、そこには加治丘陵に入る前に見た霞川が流れていました。
ひとまずここで午前の部を終了して昼飯にします。霞川に沿って西進し、金子駅前にあった中華料理店でランチ。
午後の部は入間の茶畑から。
きれいに並んだお茶の木がきれいです。もうとっくに八十八夜は過ぎたので、多くの茶畑では茶摘みが終わっているようです。
茶畑の一角にこのあたりの景色に似合わぬ建物が出てきました。その建物の入口には幟が立っており、茶摘み体験と書かれています。
ここは埼玉県茶業研究所で、この日はお茶関係のイベントをやっているようです。ちょうどこの時、スピーカーから『茶摘み体験の方は始まりまから〜』と聞こえてきました。なんだか面白そうなので、ちょっと覗いてみることに。関係者に伺うと茶摘み体験は誰でも参加できるというので、私たちもこれに参加。
お茶の葉っぱの上から3〜4枚目の茎を摘んで引っ張り上げると、うまくもげるそうです。それより下だと力を入れてもなかなかもげず、お茶にしてもこの上から3〜4枚目くらいまでが、味も風味も良いとのこと。
どれどれ、とさっそく試すと、確かに3〜4枚目くらいのところで、ぷつっともげます。しかし一本一本手作業ですからかなり根気が必要で、私たちは10分ほどでこの体験を切り上げました。このあとイベント会場で、お茶のソフトクリームや茶葉の天ぷらをいただきました。茶葉の天ぷらは始めてですが、ほんのり苦くてなかなかいけます。
さて、摘んだ茶葉はどうなったのか。サイダーは蒸して煎って揉んで緑茶にしましたが、これがなかなか大変。ビニール袋一杯に摘んだ茶葉を使ってでき上がったのは、たった二三回分の煎茶でした。お味のほどは、、、 まあ、自分で作ったお茶だからね!
お茶摘み体験というちょっと面白いイベントの後は、『オッパケの坂』を下ります。
この坂もまたハケで、これは二万年前の古多摩川の浸食によってできたものだそうです。
オッパケの坂から前方を見ると、こんなふうに土地が下がっているのがよく分かります。
東京近郊の道はほとんどがアスファルトで覆われていますが、このあたりの茶畑の中のそれは公道ではないのか、砂利道だったり地道だったりと、ちょっと楽しめます。
前方にこんもりした森が見えてきました。狭山丘陵です。
入間の茶畑は先ほどの加治丘陵とこの狭山丘陵に挟まれた土地に作られています。
狭山丘陵の裾には出雲祝神社があります。
この神社には神楽殿があるのでそれなりに由緒ある神社だと見当が付きますが、なんとここは今から約2000年ほど前の創建といわれているとのことでびっくり。
この出雲祝神社のところから狭山丘陵を上ります。
いつしか道は地道に。ここはかなりの激坂なので、ちょっと自転車は無理。
地道の激坂を押し上げて進むとほどなく、尾根に出たようで、勾配はフラットから下り基調に変わります。
ここはなんとか乗車できます。
その後狭山湖の周回路(砂利道)に出てこれをどんどこ行くと、シロスキーがどうやらスローパンクのよう。修理してチューブをチェックしてみましたが、パンクの原因が荒れ道にあったのかどうかは不明でした。
ほどなく狭山湖の山口貯水池ダムに到着です。ダートを抜けてほっとひと息付きます。
このダム堤からは、先の森の中に巨大な白い構造物が見えます。
あれは西武ドーム球場です。
狭山湖を眺めて一服したら、ダム堤の上を南に進んで、
山口観音に下ります。
観音様にお参りした気分になって、その先の多摩湖の横を通っている多摩湖自転車道に入ります。
その横には狭山湖から見えた西武ドームが建っていました。
この時は西武ライオンズと阪神タイガースの試合が行われており、誰かがホームランでも打ったのか、大歓声が湧き上がっていました。
多摩湖自転車道を下って、西武園の入口付近にあるコンビニで休憩です。
ここまで補給箇所がなく暑かったので、多くの方がアイスクリームで身体を冷やしていました。
多摩湖の村山下ダムに出ました。ここでシンチェンゾー、
『あれ〜、さっきのところに戻っちゃったの〜』
そう、先ほど通った狭山湖とこの多摩湖のダムから見る風景は瓜二つで、始めてここに来るシンチェンゾーはぐるっと廻ってまた狭山湖に戻ってきたと勘違いしたのです。
多摩湖のダムのところで多摩湖自転車道はおしまいになり、一般道に出て北山公園に向かいます。
北山公園到着。
この公園の北には八国山緑地があります。アニメの名作『となりのトトロ』の舞台は狭山丘陵とされており、サツキとメイちゃんのお母さんが入院した病院がある七国山は、この八国山緑地がモデルではないかと言われています。かつてここには結核治療の隔離病棟があり、それは現在も病院として残っています。
それはさておき、北山公園は花菖蒲で有名です。
この時はすでに日が傾いており、今日一日暑かったせいもあってか、花菖蒲の花は少し元気がありませんでしたが、それでもなかなか見応えがありました。
ひらひら。
この花びらは花菖蒲にしたら細い方ですね。
外花被が三枚であることが分かります。花菖蒲には、3枚の弁が大きく目立つ三英咲き(さんえいざき)と呼ばれるものと、6枚の弁が広がる六英咲き(ろくえいざき)、そして八重咲きなどがあるそうです。
この時期、花菖蒲にはちょっと早いかなと思っていましたが、今年は例年より早いのか、ちょうど良い頃合いでした。
芯と呼ばれる雌しべが立ち上がる姿が美しいのが、よい花とされているようです。
清楚な感じの白もいいです。
北山公園の花菖蒲を鑑賞したら、本日の終着地の所沢駅へ向かいます。
暑いので一風呂浴びようと思ったら、他の面々はそれより、早く冷たいビールが飲みたいと言うので、風呂屋はパスして居酒屋に直行です。グビッと最初の一杯が喉を通れば、ウッッパーッという喘ぎ悶え声が。
いや〜、今日は暑かった〜