コース紹介
混沌とした中世アラブの街ラグーサからモディカとイスピカそしてノートというバロックの都市を巡り、海辺にある、アテネに次ぐ古代ギリシャ第二の都市と言われ、三千年に及ぶシチリア文化が積層する都市、シラクーザへ。。
発着地 | 発着時刻 | ルート | 累積距離 | 評価 | 備考 |
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Ragusa | 発06:40 | START | ★★★ | Hotel Montreal発 Ragusaの景観が美しい下り |
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Modica | 着07:50 発08:30 |
S115 | 15km | ★★ | しばらくは上りで交通量も多い。 その後は平坦な道が続く。 |
Ispica | 着10:30 発12:00 |
バス | 38km | バス:4,000L | |
Noto | 着12:40 発17:20 |
バス | バス:5,000L | ||
Siracusa | 着18:30 | 44km | 泊:Hotel Panorama/120,000L/朝付 夕食:オルテジア島のダルセーナ91,000L |
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L (リラ)= 0.055円 |
Ragusa
シチリア中央部の自転車の旅も終盤に。
早朝ラグーサを出発。昨日苦しんだ坂を今度は爽快に下る。朝日を受けてピンク色に輝くラグーサ・イブラの混沌とした風景はまさに中世アラブをイメージさせる。
ラグーサ・イブラを横に眺めながら最高の気分で飛ばす。
ラグーサの周辺は荒野。赤茶けた大地にちょぼちょぼと木が生える。
Modica 中世の街をそのまま再建したバロックの街
1時間ほどでモディカに到着。ここは17世紀末の地震後に、中世の街をそのまま再建した街だ。
この街は上の町(アルタ)と下の町(バッサ)に分かれている。
下の町のドゥオモがサン・ピエトロ教会。大きな階段に聖人の像がずらりと並んでいる。
この階段を登ったところで振り返ると、目の前に上の町の家々が迫ってくる。
街中のあちこちに17〜18世紀のモチーフが見られる。
街ぜんぶがバロック!
雰囲気のよい丘の中腹に、美しいバロック様式のサン・ジョルジョ教会がある。
これが上の町のドゥオモで1738年の再建。必見!
この教会の前には250段の階段があり、広場からは下に街が広がる。
Ispica
モディカを出てイスピカに向かうと、しばらくは上りで交通量も結構多い。その後は平坦な田園地帯になり、やっと一安心。10時半にイスピカに到着。ここはさほど特徴がない街のようだ。バールで冷たいグラニータ(シャーベット)を食べてひと休み。
この日は当初ノートまで走る計画だったが、昨日の暑く厳しい一日に懲りて、ここからはバス旅行にきりかえる。このあたりのバスは日本の高速バスのような仕様で自転車は胴体下部の荷物室に簡単に入れられる。もちろん無料!
Noto バロックの舞台さながらの街
12時のバスに乗る。バスはオリーブ畑を抜けてノートへ。
17世紀末の地震で壊滅したノートは、10km離れた別の場所に新たな街を築いた。碁盤目状の街の要所要所にバロック様式の美しい建物がちりばめられている。南斜面の街の東西方向に主要な道路が通り、そこにドゥオモ、市庁舎、サン・フランチェスコ・アッリンマコラータ教会などが、壮麗な階段あるいは坂の小路を介して舞台装置のようにそびえたつ。
その東の入口にはレアーレ門が立つ。
レアーレ門から続くヴィットリオ・エマヌエレ通りに主要な建物が立ち並んでいる。
まず見えてくるのは長い石階段の上に立つサン・フランシスコ・ダッシジ教会。入口から見てこれは純粋なバロック建築だ。その横に見えるのはサン・サルヴァトーレ修道院で、18世紀の典型的なノートの建築様式だという。
ヴィットリオ・エマヌエレ通りには見どころが多いが、その中央に位置するドゥオモはクーポラが1996年に突然崩壊し、現在は大改修中で全面足場に覆われており、残念ながら入れない。
ドゥオモ近くに立つサン・カルロ教会は凹面の三段のファサードを持ち、下から、ドリア、イオニア、コリントの古代ギリシア建築の様式が用いられている。
ラテン十字の平面形を持ち、内部は三身廊型で、付柱によって支えられたボールト天井の中央にドームを持つ。
主祭壇は震災前の教会から救出されたものだそう。
サン・カルロ教会から北に延びるニコラーチ通りは、ヴィットリオ・エマヌエレ通りからカヴール通りに至る直線の上り坂で、その奥にモンテ・ベルジーニ教会が立つ。
1695年から1697年の間に建てられたバロック様式のこの教会は対称の二つの鐘楼を持ち、ファサードはサン・カルロ教会同様、中央が凹面の遠近法を利用した造りで1748年の完成。ニコラーチ通りの上り坂の効果が加わり、見事な演出だ。
そして街歩きを楽しませるのは、バロックの彫像に飾られたバルコニーを持つ貴族の館の数々だ。
この通りに面した1737年築のニコラーチ・ディ・ヴィッラドラータ館の石造のバルコニーは、グロテスク様式の大型の持送りに支えられている。
Siracusa 古代からバロックまで魅力溢れる港町
ノートから一時間ほどバスに揺られ海が見えだすと、その先に現れるのがシラクーザ。
シラクーザはアテネに次ぐ古代ギリシャ第二の都市と言われ、三千年に及ぶシチリア文化が積層する都市。
シラクーザはシチリア島側とそのすぐ先の出島のようなオルテジア島とに別れる。古代都市の最初の核ができたのはオルテジア島だが、これはすぐにシチリア島側にも拡大していった。
見どころはオルティージャ島の中世からバロックの街並と、シチリア島側の丘の中腹にある古代に『ネアポリス』と呼ばれた考古学公園一帯で、後者は眺めのいいギリシア劇場や、古代の石切り場、円形闘技場など見ごたえがある。
オルティージャ島は、シラクーサ発祥の地。青い海に囲まれ、ギリシア神殿から中世やバロックまで、歴史が積層した街の散策を楽しめる。
ドゥオモ広場は、地震後にバロック様式で再建されたドゥオモや市庁舎などが連なるオルティージャ島観光の中心地。ドゥオモは、前5世紀起源のアテナ神殿を7世紀に改造、さらにノルマン時代の改修と地震後のバロックによる再建によって現在の姿になったという。
オルティジア島の旧市街は目の覚めるような美しい海の先にあり、そこにはギリシア時代の遺跡からバロック時代の建物までがぎっしり。
その旧市街の中心はオルティジア島でもっとも高いところにあるドゥオモ広場。ここは前ギリシャ期から至聖所であったといい、17世紀の地震の後にバロック様式で再建された建物が立ち並ぶ。
その中でもモニュメンタルな二層のギリシャ様式の柱を持つドゥオモのファサードは圧巻。
この広場近くの州立美術館には、アントネッロ・ダ・メッシーナ(Antonello da Messina)の『受胎告知の聖母』とカラヴァッジョ(Michelangelo Merisi da Caravaggio)の『聖ルチアの埋葬』がある。
アルキメーデ(アルキメデス)広場から東に延びるマエストランツァ通りは中世からの道で、16世紀にはすでに優雅なこの地域を代表する通りとなっていたらしい。
現在は、バルコニーの彫刻が施された持送りや鋳鉄製の手摺などで装飾された、バロック様式に改修された古い邸宅などがびっしりと立ち並んでいる。
シチリア島側の高台にある考古学地区には、ギリシャ劇場や円形劇場といったギリシャ・ローマ時代の遺構がある。
このギリシャ劇場は紀元前3世紀に、以前あった劇場を拡張して造られたそうだ。現存する客席の段数は46だが当時は61あったらしい。直径138m、収容人員は1万5000人。ここから遠くに海が見えているのがわかるだろうか。
古代ローマの円形闘技場は帝政時代の3〜4世紀に造られた。元々ここは岩場だったようで、大部分はそれを掘って造られている。
この闘技場の規模はヴェローナのそれより少し小さい程度だそうだから、かなりの大きさだ。
考古学地区の建造物の多くが石灰岩の岩盤をくり抜いて建設されたことからもわかるように、ここは石灰岩でできているので、たくさんの石切り場が残されている。その中でもギリシャ劇場の真横に位置するそれは『天国の石切り場』と呼ばれる。この名はたくさん草木が生い茂り、緑いっぱいで美しいことから来ていると言われている。
その中に『ディオニシオスの耳』と呼ばれる洞窟がある。高さ23m、幅5〜11m、奥行65m。この名はその形が耳穴を連想させることから、カラヴァッジョが命名したと言われている。
洞窟に近づくと、外からでも中にいる人たちの話し声が反響して聞こえてくる。伝説では僭主ディオニシオスは、囚人たちがどんなにヒソヒソ話をしても盗み聞きできるように、この洞窟を監獄として使用したとか。
このペイジ冒頭の写真のサン・ジョヴァンニ・エヴァンジェリスタ(San Giovanni Evangelista)は考古学地区の東側にある。6世紀ごろに建てられたシラクーザで最初の大聖堂と考えられており、地下には4世紀のものであるカタコンベがある。
シラクーザにはカタコンベが多い。1100年ごろに建てられたサンタ・ルチア教会(Chiesa di Santa Lucia al Sepolcro)の地下にもそれはある。この教会は聖人が304年に殉教したところに建てられたという。
駅のすぐ南には1世紀後半のものとされる古代ローマのギムナジウムが一部残っている。これはかなり大きな複合施設で、中庭を囲む柱廊、劇場、神殿があったという。
シラクーザは港町、さすがに魚介類の料理はすばらしい。夕食は夜景の美しいオルテジア島の港にある地元客でも混んでいるレストランで。タクシーの運転手のおじさんのお勧めに従って、スパゲッティ・ボンゴレと3種類の魚(スズキ、エビ、イカ)のグリルを白ワインでいただく。こんなにおいしいスパゲッティ・ボンゴレを食べたのは生まれて初めてです! (サリーナ)