元旦です。今日は朝9時ハバナ発のビアスル(Viazul)社のバスに乗って西へ3時間少々、ハバナから180kmほどのところにあるビニャーレス(Viñales)という村に移動します。ビニャーレスは世界遺産にも登録されている自然豊かなビニャーレス国立公園内にあります。
8時少し前にベダード(Vedado)の民宿を出発しようとしましたが、なんとサイダーの前輪がパンク。急いで修理して再出発しました。バスターミナルは少し離れた新ベダード(Nuevo Vedado)にあるので、少し時間がかかるのです。
20分ほどでバスターミナルに到着。朝っぱらから疲れた〜(笑)
キューバのバスは大きく分けると3種類あります。グワグワと呼ばれる路線バス、アウトブスと呼ばれるツーリスト用の観光バス、そして今回使う長距離バスのオムニブス(Omnibus)です。
オムニバス、なんだかいいね〜 と思ったんですが、アウトブスもオムニブスもスペイン語ではバスを意味する言葉だそうです。
さて、私たちのオムニブスは予定通りの時刻に出発しました。昼間の3時間強の移動は少し長いようにも思いますが、その分景色が楽しめるのが良いところ。
乗り物ついでに車窓から見えたかわいらしい乗り物を紹介しましょう。これはココタクシーと呼ばれる三輪のオートバイのようなものです。ココはもちろんココナッツでしょう。これはタイのトゥクトゥクの現代版ですね。ハバナは道が狭いところが多く一般的な車では走り難いことや、庶民の経済事情に合うように設計されたものだと思います。
ハバナを出てしばらく行くと、次第にヤシの木や畑が広がる景色になります。
この景色、このあとずっとどこまでも。(笑)
長距離バスは日本もそうですが、ある一定時間以上走ると休憩します。今回も一時間ほど走ったあとに15分の休憩が一度ありました。
そこには気持ちのよいオープンエアのカフェテリアがあり、たくさんの人が飲み物を注文していました。
日本は夏は高温多湿で冷房がないと過ごせないほどで、冬は寒いため、残念ながらこういう具合にはいきませんね。
ハバナを出て1時間半。道路が立体交差しているところに人々がたむろしています。今日は元旦なので世の中は休み。それにしてもみなさんぼーっとしていますね。
社会主義国のキューバの失業率は2%ほどと低いのですが、それでも職がない方はいるわけで、もしかすると彼らはここで日雇いの仕事でも待っているのかもしれません。あるいは仕事に行くためのピックアップの車でも待っているのか。
景色がだいぶ変わってきました。ハバナ周辺はほとんど平坦でしたが、ここに来て山が続くようになります。
そして手前は水田でしょうか。土手ではのんびり牛が草を食んでいます。
バスはどこかの小さな村をかすめて行きます。向こうに人をたくさん乗せたトラックが見えます。
あの人々はこれからおそらく仕事に向かうのだろうと思います。そうすると、先ほど橋の下にたむろしていた人たちも、ああしたトラックを待っているのかもしれません。
山並みは先ほどからずっと続いています。地図を見ると良くわかりますが、ハバナの西50kmほどのところから200km近くに渡り、ああいった低い山でできたグアニグアニコ山脈(La Cordillera de Guaniguanico)が続いているのです。この山脈でもっとも高い山は僅かに699mしかありません。
そしてこの山脈は島の北側に寄っていて、南半分はここに見るように平原が続いているのです。
キューバは元々車が少ない国ですが、このあたりは時々先ほどのようなトラックが通るくらいで、バスはほとんど何の障害もなく快調に走っています。
車窓にあまり見掛けない植物の畑が出てきました。サトウキビです。サトウキビの栽培は16世紀中頃からスペイン人入植者によって始められたもので、現在まで砂糖の製造はキューバの主要産業です。そういえばかのカストロはサトウキビ農園の主の息子でしたね。
キューバ西部の中心的な町ピナール・デル・リオ(Pinar del Rio)を過ぎてしばらく行くと、こんな川を渡りました。
このあたりには大河というほどのものはなく、これは比較的大きい方です。
しばらく行くと平野部が終わり、山岳コースになります。(笑)
バスはゆっくり山登りを始め、峠に辿り着くと絶景が広がりました。丸い緑の丘がいくつも連なる不思議な景観です。ここは写真が撮れなかったのが残念。
そして、その丘の間の谷にビニャーレスはありました
定刻にバスはビニャーレスの中心部に到着しました。
ビアスル社のバスへは自転車は折り畳んで入れる必要がないので、荷物室から取り出したら荷物を積んですぐに出発できます。
ビニャーレスはとても小さな村で、この通りが教会や現在は博物館になっている19世紀終わりの植民地時代に建てられた邸宅があるメインストリートです。しかし高い建物はなく、ほとんどが平屋建。
今日は元旦とあってか、街角ではみんなのんびりおしゃべり。
『やあ、どこから来たんだい? ちっちゃい自転車だねえ』 と、おじさんたち。
私たちはビニャーレスの滞在もやはり民宿です。場所を訪ねると、それはメインストリートから数百メートル奥へ入ったところらしい。
教えてもらった道に入るとその両側には、先ほどまでとは違って平屋建のこじんまりした民家が続くようになります。
オレンジ色の屋根は素焼きのスペイン瓦で、これはなかなかいい感じです。
そんな中に私たちがお世話になる民宿のビジャ・エル・モヒート(Villa El Mojito=モヒートのヴィラ)はありました。
出迎えてくれたのはセニョーラ・ティタ。私たちが泊まるのは母屋とは別棟の、快適なパティオがある離れです。(写真)
そこにはセミオープンのバーカウンターがあり、その一角の風通しの良いところに、庭で穫れたパイナップルなどの果物が置かれています。いい感じ。
荷を解いて一休みしたら、さっそく出かけます。
メインストリートに戻って昼食を済ませたら、今日は村の北にある洞窟へ行ってみることにしました。
道脇に並ぶのは住宅ですが私たちの民宿付近で見たものとは少し違い、ここは団地なのかみんな同じ形をしています。
ビニャーレスの景観を特徴づける丸い山々はモゴーテ(mogotes)と呼ばれています。このあたりは石灰岩の地層で、もともと数100メートルの高さだった土地が地下水などで削られて陥没し、残ったところが山のように見えるのだそうです。いわゆるカルスト地形の一種ですね。
どうやら目指す洞窟はあのモゴーテの向こう側のようです。バスから見たのでだいたいわかっているのですが、ビニャーレスはああしたモゴーテの中にある盆地のようなところで、道はごく穏やかなアップダウンはあるものの、ほとんど平坦です。
ここは国立公園の中で、向かっている洞窟も観光名所になっているのですが、観光地といってもほんとにのんびりしたもので、街を一歩出ると車も人もほとんど見ません。
道は先ほどから見えていたモゴーテの端をかすめてその向こう側に抜けているようです。
前方に壁のようなモゴーテが現れました。ごつごつした石灰岩の白い岩肌が露出していて結構な迫力です。モゴーテは大小様々で、小さいものは幅も高さも数十メートルですが、大きなものは幅200〜300メートルほどあります。
モゴーテの手前にある小山の間を行くとそこに小さな集落があり、民家が数軒並んでいました。
小柄な素足の人が乗る自転車はカマキリハンドルでかっこいい!
民家と小さな畑を眺めつつ、前に見えるモゴーテへ向かうサイダー。
少し行くとうしろにもモゴーテが見え出しました。そして、
『わ〜、なんかすごい景色ね〜』 と、サリーナ。
サリーナの目の前にはこんな景色が展開していたのです。
モゴーテの先にまたモゴーテ。その間に小さな平地があります。このあたりには有名な洞窟が二つあり、『サン・ミゲルの洞窟(Cueva de San Miguel)』はこの左手に、もう一つの『インディオの洞窟(Cueva del Indio)』は道の先の右手にあります。
ここは遠い方のインディオの洞窟から見学しましょう。
インディオの洞窟に入ると階段があり、これをどんどん下って行きます。洞窟ですから内部はほとんど真っ暗で、寒くなってきます。わずかな明かりを頼りにしばらく行くと水が流れる音がしてきます。ここは地下にサン・ビセンテ川(Río San Vicente)が流れているのです。川まで下ったらボートに乗ってさらに進んで行きます。石灰岩の洞窟でよく見られる天井から下がる大小の鍾乳石や石筍など、奇妙な形の岩を眺めながら。
鍾乳石や石筍が構成する洞窟内部の造形は面白いのですが、かなり照度が低くて写真になりません。いきなりですが出口に行きます。(笑)
この出口の造形から洞窟内部の様子が想像できるでしょう。
どうです、これ。なかなか面白いでしょう。
サン・ビセンテ川はこののちも続いて行くのですが、洞窟を出るとすぐに、おそらく人工的に造られた滝というか堰というかそんなものがあり、下流へは行けなくなっています。
これが私たちが乗ったボート。
洞窟の出口を外から見るとこんなふう。中から見た方がインパクトが大きいですね。
インディオの洞窟からはやってきた道を戻り、サン・ミゲルの洞窟へ向かいます。
サン・ミゲルの洞窟は右に見える小山の裾にあります。
モゴーテのある景色の中を走るのは爽快! こんな景色の中をだーっと走ってサン・ミゲルの洞窟に到着。
サン・ミゲルの洞窟は、道路から少し奥また所にある山肌を開いた奥が浅く開口面積が大きい洞窟と、その中から延びる長さ150mほどの通路状の洞窟から成ります。洞窟そのものは先ほどのインディオの洞窟ほどには面白くありませんが、通路状の洞窟を抜けるとその先にエル・パレンケ(El Parenque)というバーがあります。このバーは夜はディスコになって観光客がたくさん来るらしいのですが、昼間は本当に静かなもので、まったりとした時間が流れていきます。
ここでのんびり休憩を。
そろそろ街に戻ろうか、とビニャーレスを目指して走っていると、同じ方向に自転車で帰るおじさんと道連れ。
『中国からかい? ヴェトナムかい? ふ〜ん、日本!』 と、おじさん。
『ビニャーレスはきれいですね!』
『そうだろう! でも、まだ行ってないならホテル・ラ・エルミータに行くといいよ。それはすばらしい眺めだからね』
じゃあ行ってみよう、とホテル・ラ・エルミータに向かいます。眺めのよいところって高台にあるのですよね。というわけでしばし山岳コースをこなすと、そこには本当にすばらしい景色が待っていました!
ホテルのプール前面の谷間にビニャーレスの街、そしてその周りにはモゴーテがいくつも連なっています。
『ここは素晴らしいね〜』 と、プールサイドのバルでくつろぐサイダー。オレンジが積んであり、これをしきりに薦められたのでサリーナはフレッシュオレンジジュース、サイダーはそれのラム入りにしてみました。これ、本当においしかったです。。
今日は水着を持ってこなかったのが残念。明日は水着を持って来てここで泳ごう、ということにしました。
ホテル・ラ・エルミータでしばしくつろいだらビニャーレスに戻ります。
街中をうろうろしているとこんなおんぼろな(失礼!)レトロカーがありました。もちろん現役ですよ〜 とにかくキューバでは走ることが大事です!
そして街角では相変わらずおじさんたちが暇そうにぶらぶらしています。
こうしたところにたむろしているのは必ずおじさんたちで、女性でないのが面白いところ。日本で井戸端会議というと女性ですが、こちらの女性は街角では見掛けません。井戸がないですからね、ここには。(笑)
ビジャ・エル・モヒートに戻ったのは18時半ごろ。キューバは緯度が低いのでこの時刻でもまだかなり明るいです。シャワーを浴びて一休みしたら食堂に向かいます。夕食は外で食べても良いのですが、宿にお願いしたのです。
ティタさんは小さな中庭に面したバーカウンターでまずモヒートを作ってごちそうしてくれました。この宿の名は何と言っても『モヒートのヴィラ』ですからね。
このモヒートは最高でした。そしてこのあとのティタさんの料理がまたすばらしい。
素材の味を活かした鶏、サラダ、じゃがいもなどの料理はシンプルだけどほんとにおいしいのです。そしてオレンジもパイナップルもコーヒーも、裏の畑からのとれたて!
こういう宿に当たると本当にラッキーだと思います。ここはハバナのリセットさんが紹介してくれたのでした。リセットさんにもお礼を言わなきゃ。