コース紹介
トスカーナのシエナから城壁で囲まれた小さな中世の街モンテリッジオーニを経て、その後はクリスタルガラスで有名なコレ・ディ・ヴァル・ド・エルサの街を散策し、いくつもの塔が青空に突き出るサン・ジミニャーノまでのまったりポタリング。
朝日を浴びたシエナの城壁の門を後にすると、道はどんどん下り。 イタリアの都市は大抵丘の上にあるので街を出るといつでも下りです。 5分も走れば建物は無くなり、10分も走れば周辺は畑。 でも今までとちょっと違うのは、ぶどう畑はなくなり、畑は次の作物の為に耕されているところが多いことでしょうか。
そんな畑の中を小一時間も走ると、とある下り坂の畑のむこうに奇妙なものが見えてきました。 小高い丘の上にぐるっと城壁が廻り、いくつもの塔がそれにへばりついて建っています。
『あれっ、今の、今の…』
『あ~、あれあれ!』
と言っている間にも道はどんどん下り、私たちの自転車もどんどん下り… 最初のアプローチ・ロードを通り越してしまいました。
これこそ小さいものの、いえ、小さいからこそ城壁で囲まれているのが良くわかる都市、モンテリッジオーニです。 逆行を浴びた城壁は真っ黒、入り口の門からは光が矢のように出ています。
モンテリッジオーニを廻り込むようにして道路は下っているので、どんどこ下ってしまい、あっという間に下側のゲートへのアプローチ・ロードに到達してしまいました。 ああ~高度がもったいない!
そのアプローチ・ロードたるや、斜度は15%越えの砂利道、即押しです。 いや~押してもきつい!(笑)
このモンテリッジオーニは楕円のような形をしていて、長径が200mほどの小さな街です。 中世の城壁がほぼ完璧に残っているめずらしい例で、城壁都市っていうのがどんなものなのか一目でわかるところがおもしろい。 こんな小さな街でも広場があり教会があり、今ではホテルもバールもインフォメーションもあり、機能として『都市』であるところがすごい!
教会のある広場のバールで、カプチーノとクロワッサンの朝食を取りました。 イタリアのクロワッサンって、たいてい砂糖がまぶしてありちょっと甘い。
東と西の門を繋ぐ細い道が一本通るだけと思われたこの街にも裏道はありました。 その小さな街角には広場とも交差点とも言えないようなちょっとしたスペースがあり、草花で飾られています。 なごやかなほっとする風景です。
2人連れのロードレーサーがパッとやって来て、パッとくぐって出て行った門がこちら。 私たちが行き過ぎた上のアプローチ・ロードをやってくると到着する東の門です。 真っ青な空に突き出る塔は見張り台なのでしょうか。 城壁にはいくつもこういった塔が建っています。
モンテリッジオーニの城壁の外側をぐるっと廻った後、メインロードに戻りしばしダウンヒルを楽むと、ほどなく高速道路との合流点に出ました。 ここから少々車が増えます。 コレ・ディ・ヴァル・ド・エルサの街が近づいているのでしょう。
そしてまもなく目の先の高台にまたまた街が。。
高台の街がどんどん近づいてくるものの、私たちが到着したのはその高台ではなく、下の街の広場。 どうやらこの街は丘の上と下に分かれているらしい。 ガイドブックにはほとんど紹介されていないこの街は、なんでもイタリアのクリスタル・ガラス製品の製造で有名らしく、街のショウーウィンドウはクリスタルガラスでいっぱい。
雰囲気として下の街は新しく、現代的な都市機能を持っているよう。 反対に上の街は古い街で面白そう。 というわけで、下の街はスルーして上の街へ向かいます。
『上の街 あっち!』 の標識を頼りに進むと、下の街でもけっこう歴史がありそうな道沿いをどんどこ行くことになります。 ずっとずっと進んで、再び『上の街 あっち!』が出るとその先にはなにかトンネルのようなものが。
『ありゃ、これで本当にいいの?』 というところで現地の方が、
『上の街はここを行くとエレベーターがあるからそれに乗りなさい。自転車を乗せてもOKよ!』 とのアドバイス。 さすがイタリア、エレベーターに自転車が乗せられます!
さて、そのエレベーターでどんどこ上がると、
『お~、おっ~~つ!』
『す、すごい~~っ!!』
これはまさにため息ものです。 エレベーターの中に急に日が射したと思うと、そこはすでに上の街の小さな広場の中でした。 このエレベーターの上の街の乗降口はなんと全面ガラス張りなのです。 乗降口を一歩踏み出すと、そこにはさっきまでいた下の街のパノラマが広がっていたのです。
そして上の街は、、いきなり中世! 千年以上も前から青空を引き裂くスカイ・スクレパー。 ここにはこういった塔が何本も建っています。
道の分厚く大きな石の舗装は年月を経て丸みを帯び、つやつやと輝き、建物の壁は小さな窓が開くだけで、どっしりした感じ。
光が差し込む正面の広場にはおきまりの教会。 ああ、これぞ中世。
あまり紹介されていないこんな街がイタリアにはそこら中にあります。 やっぱりイタリアってすごい!
建物はみんな歴史あるもので、全部が中世からのものであるとは限らないのだろうけれど、どれもこれも歴史の年輪が刻まれています。
イタリアの歴史ある街の多くは街の保存のために、一般車両の乗り入れを禁止しているところが多く、シエナも先ほどのモンテリッジオーニも、そしてここコレ・ディ・ヴァル・ド・エルサもその例外ではありません。 シエナは大きな街なので許可を受けた車が街の中を走ることも多いのですが、モンテリッジオーニやここではそれも皆無といっていいほどです。
門というか街の入口のゲートになっている建物から一歩出ると、そこにはおそらく門の中よりは新しい建物が続き、その前に車がずらり。
そんなところにちょっとした人だかりがありました。 近づいてみるとどうやら結婚式のよう。 花嫁さんは美しいドレスで、親族と思われる人々もそれなりの衣装を身に纏っていますが、多くの人はごく普通の普段着です。 日本の結婚式とはちょっと感じが違いますね。
その新しい街はそれでもずいぶんと歴史あるものなのでしょう。 えっ、これが新しい街? という感じです。
コレ・ディ・ヴァル・ド・エルサの上の街は思いがけない歴史のプレゼントでした。 その街を後にするとしばらく気持ちいい下りが続きます。 周辺はちょっとした民家と相変わらず耕された畑。
下り坂の遥か向こうの丘の上に、出た~、サン・ジミニャーノ!
下れば下るほどにサン・ジミニャーノの街が大きくなります。 ぼんやりとしていた街の輪郭がはっきりし出すと、そこには何本もの塔が天に突き出していました。
道はいつしかおだやかな上りになり、街が手前の起伏で見えなくなると、いよいよ本格的な上りになります。 快適な気候ですが、上りでは半袖でも汗ばむほどです。
ちょっとよろよろし始めた頃、街の入口のロータリーに到着。 ここからのもう一漕ぎはちょっと辛かった。 道の傾斜が穏やかになると、目の前にサン・ジミニャーノの城壁の門が現れました。 ホッ!
ちょうどそこにあったレストランでまずは腹ごしらえです。 眺めの良いテラスは快適でした。
すばらしい食事の後は街歩きです。 サン・ジミニャーノは中世からの小さな街ですが観光名所なだけあり、かなりの観光客で賑わっています。 ここチステルナ広場は三角形をしていて、周囲には13~14世紀ごろの建物や塔がびっしり。 中央にある井戸(チステルナ)も13世紀のものだそうです。
それでこちらがサン・ジミニャーノの代名詞の塔。 ほとんどなんの装飾もない塔が天空に伸びています。 かつては72本あったそうですが、現在は13本が残るそうです。 このチステルナ広場の廻りには何本も固まって建っています。
これらの塔にはほとんど機能はないそうで、どうしてこんなに塔が建っているのか不思議ですが、かつて中世の貴族たちがその権力と富の象徴として、競ってたてたのだとか。
ロッカ(城塞)跡からの眺めです。 サン・ジミニャーノの北西部を見下ろすとこんな感じ。 廻りに広がる丘陵の広がりがすばらしい! 北東部にはまたしてもあの塔軍団が。(TOP写真) ここではちょっとスケール感を失い、ここはマンハッタン? と錯覚しそうです。
まだまだ見所はあるのですが、ここは塔だけに止めます。 サン・ジミニャーノはとてもちっちゃな町なので城壁の中に宿は見つかりませんでした。 町から2kmほどの田園地帯に宿を取りました。 こちらはその周辺の景色です。 やっぱり丘陵が続く続く!
夜に再びサン・ジミニャーノに戻って夕食です。 夕方から観光客はぐっと減り、昼間の喧噪はどこへやらといった趣です。 いくつかあるレストランの小さな街灯だけが古びた石の外壁をほんのり照らし出し、その下でちょっとした夕飯にありつきました。 食事が終わる頃には僅かにいた観光客の姿はもうほとんど見当たりません。 月の明かりに照らされた、驚くほど静かな街がひっそりと佇んでいました。