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ツール・ド・ピレネー 1

大西洋から地中海へ

第1ステージ Biarritz ~ St.Jean-Pied-de-Port
開催日 2008.07.31(木)晴れ
参加者 サリーナ/サイダー
総合評価 ★★
難易度 ▲▲
走行距離 76km

ローランの道を行く
ローランの道を行く

コース紹介

800kmにわたるツール・ド・ピレネーの第一ステージは、フランス南西部の大西洋ビスケー湾に面するリゾート地のビアリッツを出発、アドゥール川をさかのぼり、ニーヴ川との合流点にあるフランス・バスクの中心地バイヨンヌを経て、サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の道のフランス側の要所サン・ジャン・ピエ・ド・ポーまで。 途中には赤茶色の窓や扉が特徴であるバスクの家々があり、ローランの道と呼ばれる川沿いのすばらしい道を通ります。

サン・ジャン・ピエ・ド・ポーはピレネー山脈の麓の街で、巡礼者たちはここからピレネーを越えてサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指しますが、私たちはここからピレネーの懐に飛び込むのです。


プロローグ:ポー → バイヨンヌ ~ ビアリッツ 20km

7月30日(水)晴れ

大西洋を愛でる

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バチカンのサン・ピエトロ大聖堂からローマの街を見渡すポーのピレネー大通り

2008年夏、涼しい所はないかな? 標高の高いところなら少しは涼しかろう、ということで日本を脱出、向かう先をピレネーに決めました。 前日東京からパリを経由し、ローカル線で向かった先はフランス南西部のポーという町です。 この町はピレネーへの眺めが売り物の一つになっていますが、この日は晴れてはいるものの空気の透過度があまり良くなく、残念ながらうっすらとしかピレネーは見えませんでした。 写真はピレネー大通りと呼ばれる通りで、空気が澄んでいれば、ピレネーの山々がくっきりと見えるところだそうです。

ポーからは電車で大西洋近くのバイヨンヌに移動しました。 ポーの駅の切符売り場にはクレジット・カードで買う自動販売機が並んでいますが、このタイプの自動販売機は使ったことがなく、ちょっと不安があったので窓口に並びました。 しかしこの列が進まないことといったらありません。 一人に10分くらい掛かることもあります。 乗車予定の列車が遅れていたのでなんとか間に合いましたが、やはり見知らぬ国で切符を買うのは少し大変ですね。

バイヨンヌバイヨンヌ

バイヨンヌは大西洋のビスケー湾からアドゥール川をさかのぼった、ニーヴ川との合流点にあるフランス・バスクの中心地で、ニーヴ川の両岸にまたがり、カテドラルがある左岸をグラン・バイヨンヌ、バスク博物館がある右岸をプチ・バイヨンヌと呼びます。 プチ・バイヨンヌで腹ごしらえしたあと、バスク博物館を見学。 バスクには山のバスクと海のバスクがあり、山のバスクは羊飼いと林業、海のバスクは漁業をしていたことなどがわかるようになっていました。 自転車ロードレース好きの方ならバスクと言えばインデュラインやエウスカルテルといったところでしょうが、両者とも同じバスクでもスペイン側なので、この博物館に案内はありませんでした。(笑)

グラン・バイヨンヌグラン・バイヨンヌ

この日はちょうどバスクのお祭りで、周辺各地からこのバイヨンヌに人々が集まってきていました。 白い衣装に真っ赤な腰巻きとネッカチーフがバスクのお祭りの衣装のようです。 本当はビアリッツではなくこのバイヨンヌに宿を取りたかったのですが、もともと宿が少ない上、お祭りのせいでそれは叶いませんでした。 

アドゥール川沿いをビアリッツへアドゥール川沿いをビアリッツへ

グラン・バイヨンヌでカテドラルをちらっと覗いたあとは、アドゥール川沿いを大西洋に向かいます。 今回の旅の副題は『大西洋から地中海へ』ですからね。 ここには自転車道が整備してあり気分良く走れました。

『ウリァー!』 とフランスでの最初の一漕ぎのサリーナ、ちとばかり力が入っています。 実はちょっとした向かい風なのです。

ビアリッツの海岸ビアリッツの海岸

川を眺めつつ7~8km走ると、ついに大西洋が姿を現しました。 日はちょうど西に傾きつつあり、逆光の中の真っ黒な海に遠くの波がダイヤモンドのように鋭く反射しています。 浜辺では写真のようにのどかな風景が。 ここビアリッツはフランスの有名なビーチリゾート地で、もの凄い観光客です。

ビアリッツの海岸を走るビアリッツの海岸を走る

この海岸のすぐ内側には、ビーチに行くための歩行者と自転車専用の道がずっと続いています。 この道はよく手入れされ、砂に埋もれることもなく4~5kmほど続きますが、実はそこから町へは超激坂を上らなければなりませんでした。

ビアリッツもお祭りビアリッツもお祭り

あへあへしながら激坂を上り、灯台を越え、ビアリッツの中心部にやってくると、そこもお祭り。 そうそう、男子がかぶるベレー帽もバスクの特徴だそうです。


第1ステージ:ビアリッツ(0m) ~ バイヨンヌ ~ サン・ジャン・ピエ・ド・ポー(186m) 76km

7月31日(木)晴れ

ローランの道はアップダウン! 熱射病で危うしサリーナの巻

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ビアリッツのスタート地点ビアリッツのスタート地点

今日からいよいよピレネーに向けて走り出します。 スタートは標高0mの大西洋はビアリッツ、ここからピレネーを縦走し、地中海まで到る計画です。 朝8時、まだ海岸には人っ子一人おらず、朝日が顔を出したばかりですがすがしい。

バイヨンヌのニーヴ川沿いの街並バイヨンヌのニーヴ川沿いの街並

まずは昨日立ち寄ったバイヨンヌへ向かいました。 バイヨンヌでアドゥール川に注ぎ込むニーヴ川沿いに良さそうな道があるからです。 このニーヴ川を遡って行くと目的地のサン・ジャン・ピエ・ド・ポーに到着します。 バイヨンヌの朝も昨日の喧噪はどこへやら、とても静かで朝日を浴びたきれいな街並が楽しめました。

ニーヴ川沿いの自転車道を行くニーヴ川沿いの自転車道を行く

ニーヴ川沿いには快適なサイクリング・ロードが見つかりました。 なんとこの道にはサンティアゴ・デ・コンポステーラへ続く道しるべがありました。 人々は古来よりこの道を辿り、サンティアゴ・デ・コンポステーラへ向かったのでしょう。

バスクの家々バスクの家々

10km少々続いた川沿いの快適なサイクリングロードがエラウリッツで終わり、ウスタリッツという町に入りました。 このあたりはバスクの特徴である赤茶色の窓や扉の家々が続きます。 ほとんどの家の木製の扉類はこの赤茶色に塗られていますが、どういうわけか、ごくまれにこの色が緑になることもあります。

ウスタリッツ付近のニーヴ川ウスタリッツ付近のニーヴ川

ここからは川沿いの道がなくなるので、幹線のD932を行くか、川を渡り、対岸のジャッォウを通る道を行くか迷いましたが、やはり裏道のほうが面白かろうとジャッォウへと向かうことにしました。

古代ローマの水道橋ジャッォウ付近

この道、最初は穏やかで車もいないので快調でしたが、しばらくすると上りになり、ジャッォウから次の村までは下り、そして再び上り、下り、上り… これらの村々は残念ながら期待したほど面白みのあるものではありませんでした。

コンボ・レス・バインスの丘の上コンボ・レス・バインスの丘の上

最後はグワ~っと川まで下り、そこからすごい角度の坂を上るとどうにかコンボ・レス・バインスに着いたよう。 ここまででもう、へろへろ~、のサリーナでした。 この高台からはこれから向かう山が見渡せました。 今日の終着点サン・ジャン・ピエ・ド・ポーはあの山の先なのです。 ロードサイドのブラセリーで休憩したあと、ローランの道の始まりである次の町イツァッソウへ向かいました。

イツァソウのレストランにてイツァッソウのレストランにて

イツァッソウは小さな村ですがレストランがあるので、ここで昼食にしました。 パラダイスという、ちょっとというかだいぶ大げさな名のこのレストランは、テラスに大きな木があり涼しく快適です。 サラダに生ハム、メインに鴨をいただきましたが、このサラダにカニかまぼこが入っているのにびっくり。 カニカマって世界に普及しているんですねぇ。 しかし鴨はなかなか美味でした。

ローランの道に向かうローランの道に向かう

さて、腹ごしらえがすんだあとはいよいよローランの道です。 ローランの道って、あのローランの歌のローランが通ったとされる道ということでしょうか? ローランの道へと続くこの道はどんどん下り、再びニーヴ川まで出ることになります。

イマナカノトモダチイマナカノトモダチ

途中の教会の側で出会ったこのおじさん、

『君たち中国人かい? 日本人かい?』 と聞いてきます。 日本人だよと答えると、

『お~そうか、じゃあダイスケを知っているか?』 といいます。

『ダイスケ? なんだそれ?』 ダイスケが名前だってピンとこなかったので。

『ダイスケはこっちじゃあ有名なんだ、自転車乗りだぞ、イマナカっていうんだ!』 というではありませんか。

『ダイスケ、イマナカ、自転車乗り、お~そうか、今中大介か、それなら知っている。』

『お~、そうか、知っているのか、お前、ダイスケの友だちか? オレは友だちだ。 あいつは今どうしている?』

『友だちじゃあないけれど、彼は有名な自転車選手だから知っているのさ。 もう選手はやめたけれど、自転車関係の仕事をしているみたいだ。』

『お~、そうか、しばらくぶりにあいつに連絡してみよう。 君たちのことも話しておくよ。 じゃあ、いい旅を!』

ローランの道を行くローランの道を行く

おじさんと分かれるとすぐにローランの道に入ったようです。 ニーヴ川もずいぶんと細くなり、その脇を細い道が続いて行きます。 川にはところどころに古い石造の橋が掛けられています。

アップダウンの連続アップダウンの連続

川があり森があり景色はすばらしく、気分は最高なのですが… 実はこのローランの道、アップダウンの連続なのでした。

ヨレヨレ上るサイダーヨレヨレ上るサイダー

しかも古い道だからか斜度がきつい。 7~8%はあたりまえ、10%越えの箇所がたびたびやってきます。 加えて午後になり強い日差しが襲ってきています。

『ローランの道って超級だったのか! わしゃ~もうだめじゃ~』 とサイダーに泣きが入り、ヨタヨタ~と木陰に倒れ込みます。 するとちょうどそこには川への降り口がありました。 服を脱いでジャブンと川に飛び込むサイダーでした。

テルミニ駅ビダライのニーヴ川

川でちょっとリフレッシュして再び走り出します。 このローランの道を10kmほど走ると、ビダライという小さな村に到着。 ここからイーアルセまでは山の中の細道D608を行く予定でしたが、ここまででもうへろへろになっていたのでルートを変更、幹線のD918を行くことにします。

幹線でイーアルセへと向かう幹線でイーアルセへと向かう

この幹線道、思ったほど車は多くはなかったのですが、カンカン照りで日差しを遮る物がなく、アスファルトが太陽を反射して、暑く苦しい。 ほとんどフラットで走るのには支障がないものの、少し面白みに欠けた道でした。 しかしずっと脇目で見ていた当初予定していた山道は、もしかするとダート、とうてい越えられそうになかったので仕方がないな。

テルミニ駅水浴び

この幹線道にちょっと飽きたので、イーアルセからスペインの国境へ向かうD948に入りました。 少し遠回りになりますが、こちらのほうが楽しそうだと思ったのです。 しかしこれが災いのもとに。 この道、ごくわずかに上りで、暑い! とにかくここも暑いのです。 日本のようにデレデレジトジトという暑さではなく、カッと熱い感じです。 こんな日は現地の方も水浴びで体を冷やしています。 ここで私たちも水浴びをすれば良かったのですが…

サン・ジャン・ピエ・ド・ポーへサン・ジャン・ピエ・ド・ポーへ

サン・エティエンヌに到着したときには暑さでサイダーもサリーナもぐったりでした。 サン・エティエンヌからサン・ジャン・ピエ・ド・ポーに向かうD15に入ったとたんに、これが、激坂の連続、あぁ… そしてついにサリーナの足が止まり… ほとんど熱射病寸前のよう。 へろへろ~と木陰に倒れ込み、しばし動くことができません。 気を取り直して進むも5分もしないうちにまたダウン。 これを繰り返すこと数回。

目の前にはサン・ジャン・ピエ・ド・ポーを抱えるピレネーの山が見えているのに、なかなかその山は大きくなってこないのでした。

サン・ジャン・ピエ・ド・ポーサン・ジャン・ピエ・ド・ポー

上りを終えフラットな道になったものの、サリーナの足は足がクランクを回しているのか、クランクが足を回しているのかわからないほどです。 こうして最後の5kmに1時間も掛かってしまったのですが、ヨロヨロしながらもついにサン・ジャン・ピエ・ド・ポーに到着。 激坂と暑さというちょっとした試練を受けた一日となりました。

さて、サン・ジャン・ピエ・ド・ポーは古来より、サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の道のフランス側の要所の街で、ここからロンセスバージェス(仏名ロンスヴォー)を超えてパンプローナに入るのが代表的な巡礼ルートの一つとなっています。 現在ではこの街を巡礼の出発点にする方も多いとのことで、クレデンシャル(スタンプ帳のようなもの)を発行してくれる巡礼事務所もあります。 そんな訳でか、街はその大きさに比べ、多くの観光客や巡礼者で賑わっていました。

街の中央にはバイヨンヌに流れる、あのニーヴ川が流れていました。 川と白い壁、茶色の瓦、古い石造の橋、テラスを彩る真っ赤な花の対比が印象的な美しい町です。

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