IHランパートクリークの裏山をよじ登る
今日は朝から一仕事。
ランパートクリーク・ユースホステルの食堂で朝食をとっていると、一枚のちらしが目に付きました。 それには、ここの裏山に登ればすばらしい見晴らしがある、ということが書かれていました。
今日は時間もたっぷりあることだし、出発前にその景色を眺めてみよう、ということで裏山に向かいます。
ロッククライミング
この裏山の登り口はかなり分かりにくいところにあり、その先のルートもあまり確かではありません。 時折ここがルート、ということを示すリボンが木に結ばれています。
すぐさま岩場の上りになり、えっ、本当にここを行くの? と思うような、そそり立つ岩の壁をよじ登ります。
ノースサスカチュワン川と南の山々
その先には素晴らしい景色が待っていました。 下にノースサスカチュワン川、その上にたなびく朝靄、北も南もどこまでも続く山々。
とっても幻想的な景色です。 予定外の山登りでしたが、これは大収穫でした。
サスカチュワン山
朝から幻想的な景色を楽しんだ私たちは、気分よくユースホステルを後にします。 朝の気温は低く、なおかつ山の影で日差しを受けない道路は寒い。 上着を着込んで出発です。
川の向こうには白い頭のサスカチュワン山。
コールマン山
右手には砦のようなコールマン山(3,135m)。
ノースサスカチュワン川とアメリー山
アイスフィールド・パークウェイはいつでも川の脇を走っているのですが、道路からその川はあまり良く見えません。 何カ所かの例外がありますがこのあたりがその一つで、ゆったりとした流れのノースサスカチュワン川が見られます。
サスカチュワン山を後ろに
その流れには上流に来るとぐっと巾が狭まり、ほとんど流れのない池のように見えます。
後ろのサスカチュワン山の背後にはカナディアンロッキー最大の氷原、コロンビア大氷原があるのですが、ここからはその姿を伺い知ることはできません。
サイラス山
アイスフィールド・パークウェイはすごい道です。 次から次へと見事な山が現れては消え現れてはまた消え。
道の先、手前の高い山はサイラス山(3,215m)でしょうか。 ここの山の名前は残念ながらとても覚え切れません。
立ちはだかる断崖
コールマン山が後ろに去ると、行く手には断崖が迫ります。
この断崖には終わりはないのか、と思われるくらいとても長く延びています。
再びノースサスカチュワン川
左手には、再びノースサスカチュワン川が広い流れとなって現れます。
ウィーピングウォール
先ほどから続く右手の断崖は所々が黒いしみのようになっていて、岩の間からは水が滴り落ち、細い滝のようになっています。
この壁はウィーピングウォール(すすり泣く壁)。 ネイミングがユニークですね。
サイクリスト
このアイスフィールド・パークウェイはサイクリストに人気の道で、何人ものサイクリストに出会いました。
彼女は旦那さんと二人のツーリング。 後ろにアシストのバンを従えた本格走行で、ガンバッテネ! と言って私たちを追い抜いて行きました。 こうした本格的なツアーをバックアップするシステムがここにはあるのです。
休憩している彼女たちに追いつくと、バンからさっと補給食を取り出し、私たちに分けてくれました。 カナダの人々はみんな人当たりが良くて親切です。
いいよ上り
ウィーピングウォールの先に直線の上りが見えます。 その先はビッグベントと呼ばれる大きくうねったカーブで、ここから本格的な上りとなります。
先の山の上部には白い氷河。 あの上にはコロンビア大氷原が広がっているはずです。
ビッグベントの上から来た道を見下ろす
えっちらおっちらとペダルを回してビッグベントを廻ります。 上った先にはこんな眺めが。
大きく抉りとられた谷の中に、やってきたアイスフィールド・パークウェイが白い帯となって延びています。
ブライダルベイル滝
ビッグベントの上の山中には小さなブライダルベイル滝が見えます。 ロマンチックな名は花嫁の長いベイルに見立てたのでしょう。
10%超え!
ビッグベントを上ったら下りだろうと思っていましたが、これが大間違い。
ブライダルベイル滝を横にして道の先を見れば、これまで以上のきつい上りが続いています。 8%、9%、そしてついにその勾配は10%を超え、へろへろ~~
ここはビッグベントの手前の直線がややきつい上り、ビッグベントに入ると勾配は穏やかになり、ベントが終わった先できつい上りが5kmほど続くのです。
上に氷河、下にパーカーリッジのトレイルヘッド
えっこらよっこらとこの坂道を上り、大きなカーブに差し掛かるとついに道は下りに転じました。
先にアサバスカ山(3,490m)が見え出し、白い氷河も見えるようになります。 ぐ~っと下ると数台の車が駐車しているのが見えます。 あそこがパーカーリッジのトレイルヘッドです。
パーカーリッジへ
パーカーリッジはアサバスカ山の裾野に張り出した尾根で、アイスフィールド・パークウェイから2kmほど登ったところにあります。
トレイルはまず針葉樹林の中を登って行きます。
高山植物が咲き乱れる
その針葉樹林が開けたところには高山植物の花畑が広がります。
谷は針葉樹で埋め尽くされ、その向こうにはアイスフィールド・パークウェイの反対側の山が見えています。
森林限界付近
さらに視界が開けたトレイルはジグザグを切って徐々に登って行きます。
いつの間にか森林限界を超えたようで、周囲に木々はなくなり、花畑もなくなります。 足元に咲くのはモス・キャンピオンやホワイト・マウンテン・ヘザーといった地味な植物ばかりになります。
尾根をさらに登る
普段歩き慣れていない私たちには少々辛い登りが続きますが、見晴らしが良いので周囲の景色を楽しみつつゆっくり登り詰めます。
一時間ほど登ると、ついに尾根に出ました。
真ん中にアサバスカ山
尾根でこのトレイルは、先にまっすぐ下るものと、尾根沿いをさらに上るものに分れます。 私たちは上に向かいました。 一登りすると先には素晴らしい景色が待っていました。
正面にはアサバスカ山の山頂。
パーカーリッジからサスカチュワン氷河を臨む
左手の谷にはコロンビア大氷原から流れ出すサスカチュワン氷河。 その先にはキャソガード山(3,077m)。 そしてその左には、小さくブライス山が尖った頭を見せています。
ゆっくりとこの景色を楽しみたいところですが、ここは遮るものがないので冷たい風がビュービュー。 吹き飛ばされそうなので、少し下ったところでお昼にしました。
下からアサバスカ山を見る
パーカーリッジから下ると、先ほど尾根で見たアサバスカ山が道の先に見えます。 上から見るのと下から見るのとではやはりパースペクティヴがずいぶん違います。
ここからは穏やかな上りで、サンワプタ峠に向かいます。
サンワプタ峠
サンワプタ峠(2,030m)はアイスフィールド・パークウェイではボウ峠(2,067m)に次ぐ峠で、バンフ国立公園とジャスパー国立公園の境を成します。 道脇にある看板がここから先きがジャスパー国立公園であることを知らせています。
峠を越えるとついにコロンビア大氷原にあるスノードーム(3,520m)が姿を現します。
ドーム氷河を冠るスノードーム(右)
緩いカーブを描きつつ道が下り出すと、スノードームの奥に大きな白い塊が現れます。
あれこそがカナディアンロッキー最大の氷原、コロンビア大氷原の端部で、そこからこぼれ落ちるように氷河が流れ出ているのが分かります。
コロンビア大氷原が迫って来るこの下りは、まさに感動的です。
アサバスカ山の氷河
手前ではあのアサバスカ山が頂部の真っ白な氷河を輝かせています。
見えた、アサバスカ氷河!
そしてその先に、ついに見えた! アサバスカ氷河!!
このアサバスカ氷河の向かいには、カナディアンロッキーの氷河の成り立ちや歴史を解説展示しているアイスフィールドセンターがあり、その中にはコロンビア大氷原の真ん中に立ち、360度の景色を撮影した写真など興味深いものがあります。 氷原の中央から四方八方に伸びる氷河を上から見ると、まるで生き物のようで面白い。 これはグーグルアースなどでも確認できます。
ちなみにこの大氷原で氷の一番厚いところは350mもあるのだとか。
アサバスカ氷河に向かう
私たちはここからアサバスカ氷河の先端に向かうことにしました。
アイスフィールド・パークウェイを離れ氷河近くの駐車場に下り出すと、それまで下に見えていた氷河が上に見えるようになります。 これはなぜかちょっと不思議な感じです。
後退著しいアサバスカ氷河
道端に置かれた標識の4桁の数字はかつて氷河の先端がそこにあった年を示しています。 1844年にはアイスフィールド・パークウェイのすぐ側まであった氷河は年々後退を続けています。 写真の標識は2000年にはこの位置まで氷河があったことを示していますが、それから僅か10年あまりでご覧のとおりの後退ぶりです。
2年前まではこの氷河の先端の一部に乗ることができたようですが、今日では一般的には氷河に触れることはできません。 アイスウォークという氷河上のハイキングツアーがあるので、時間が許せばこれに参加してみたいと思いましたが、これは叶いませんでした。
大きな氷河をいくつも見ることができたこの日ですが、その最後に地球の環境について少々考えさせられることにもなりました。