スラヴォニツェ
今日もいいお天気。 チェコに入ってから一週間が過ぎましたが、これまでほぼ晴れの日が続き、旅は順調に進んでいます。
今日から舞台は南ボヘミア地方から南モラヴィア地方へと移ります。
下にスラヴォニツェ
南ボヘミア地方の南東の端にあるスラヴォニツェを出発。
スラヴォニツェは小さな丘の下にあるので、まずは上りです。 数分走ればスラヴォニツェの街が後ろの草原の下に見えるようになります。
丘を上る
そのスラヴォニツェに別れを告げ、穏やかな丘を上って行きます。
道脇は昨日までと同様に、麦畑と牧草地。
放牧されている牛
その牧草地には時折、放牧された牛がのんびりと草を食んでいます。
ピーセチュネーのお城
30分ほど走ったところにあるピーセチュネーにはお城と思われる建物が建っていました。
その後ろに建つ煙突はおそらくかつてのビール工場のものでしょう。 こうした煉瓦造りの古い煙突を見かけたら、それはビール工場のものと思ってまず間違いありません。
チェコは極端にいうと町ごとにブルワリーがあるほどで、それらはかつてその地を納めていた領主が作らせたのだろうと思います。
グリーンウェイ
今日の道はプラハとウィーンを結ぶ自転車ルート・グリーンウェイの一部で、ほぼオーストリアとの国境に沿って進みます。
グリーンウェイは自転車専用道ではなくごく普通の道ですが、チェコはそもそも交通量が少ないので車の心配はありません。 そしてサイクリストもいることはいますが、ここまでは思ったほど多くはありません。
ヒナゲシ
道端にはポツポツとオレンジのヒナゲシが咲いています。
国境警備の掩蔽壕
地図でこのあたりを見ると妙な記号がたくさん並んでいます。 英語でBunkerとなっているその正体はいったい何だろうと思っていたら、実はこんなものでした。
畑の中にはあちこちにコンクリートの塊のようなものが見られます。 掩蔽壕(えんぺいごう)です。 これは冷戦時代の遺物で、当時東側だったチェコは、西側のオーストリアとの国境付近にこうした掩蔽壕をたくさん置いたのです。
ランツィージョフ
チェコは意外に村の数が多く、数kmごとに現れます。
その多くは民家が数十戸しかない小さなものですが、たいてい教会を持っています。
田園
そうした村の外の風景はこちら。
麦畑が広がり、ところどころに森。 そして穏やかな坂道。
ヴラチェニーン
今日の行程のほぼ半分のところにあるヴラチェニーンに到着。 ここでうまい具合にカフェをみつけたので一休みです。
カフェとはいってもそこでコーヒーを飲んでいる人はまったくいません。 モーターバイクでやってきている人々も全員が昼間からビールです。 これはチェコ人が大のビール好きだからですが、どこにでもノンアルコールビールが置いてあるからでもあります。 アルコールが入っていないのはビールではないと思っている方も多いと思いますが、ここチェコではノンアルコールでもちゃんとしたビールとして認められています。
街外れの十字架
ヴラチェニーンの村を出ると道端に十字架が建っていました。
こうした十字架はたいてい村から1km〜2kmほど外側に建っていることが多く、これは魔除けと旅人の安全を祈る目的があるのではないかと思います。
ウルヘルチツェ
チェコの村には時折その規模にふさわしくない巨大建築が現れることがあります。
これもそういったものの一つで、お城なのかなんなのかはわかりませんが、とにかく、なんでこんなものがここに? と思わされることが良くあります。
ディイー川
そのウルヘルチツェ村から一丘上り、下った先に流れているのがディイー川。
このあたりのディイー川はのたくった蛇のような流れで、周辺の森とともに豊かな自然を残しています。
ディイー川沿いを行く
ここからグリーンウェイはディイー川を離れ、オーストリアとの国境に沿って南東へ向かいますが、私たちはディイー川に沿って北東に進むことにします。
この道はこれまでと様相を変え、森の合間に開かれた小さな畑の中を行くようになります。
ポドフラディー・ナト・ディイーの遺跡
現在のチェコの元は10世紀頃成立したボヘミア王国で、その後神聖ローマ帝国に属すことになります。
ここはそのボヘミアを出てモラヴィアに入ったところですが、このあたりにも当時の遺跡がたくさん残されています。 道脇には彫刻を載せた柱が建ち、その先の丘の中には壊れかけたお城のようなものの壁が見えています。
森の中を行く
森の中の坂道を上り、
花畑の脇を行く
ディイー川を離れると、畑の中を行くようになります。
ここは珍しく、真っ白な花畑。
スタリー・ペトジーン
花畑の先に小さな塔が見えてきます。
ここスタリー・ペトジーンも小さな村ですが、いつでも村の目印はこうした教会の塔です。
スタリー・ペトジーンからヴラノフ・ナト・ディイーへ
スタリー・ペトジーンからはさらに枝道となる自転車ルートに入ってみます。
しかし、道の印象はこれまでと大きく変わることはなく、周囲は麦畑。
ヴラノフ城
道の右側がいつの間にか谷になり、その先に鬱蒼とした森が見え出します。
その中に突然とても大きな建物が現れたと思ったら、それがヴラノフ・ナト・ディイーのお城でした。
ヴラノフ湖
ヴラノフ・ナト・ディイーの街はそのお城の下にありますが、街に向かう前にこのあたりではリゾート地となっている、ダムで塞き止められたディイー川を覗いてみることにしました。
少し前に見たディイー川は小さな流れでしたが、その川はここではほとんど湖という雰囲気で湖面にはヨットがたくさん浮かび、岸では水遊びをしている人々の姿も見られます。 ここは地図ではv.n.Vranovとなっています。 v.n.はどうやら貯水池という意味のようなので、ここではここをヴラノフ湖と呼ぶことにします。
ヴラノフ・ナト・ディイー
しばしこの湖の雰囲気を楽しんだあと、坂道を下ってヴラノフ・ナト・ディイーの街に入ります。
正面の高台にはヴラノフ城がバ〜ンと聳えています。
そしてこれまでは思ったほど多くはなかったサイクリストですが、この街に入ったとたんにとても多くなりました。 これはここがリゾート地であり、国立公園内でもあり、そしてオーストリアからも近いということが影響しているのでしょう。
ペンジオンのオーナー親子とパソコン談
街に着いたらまずやるのは宿探し。 宿の当たりは事前に付けておきますが、いつでもうまくそこに泊まれるとは限りません。 ここでは最初の宿は人が居らず(こうしたことは結構ある)、二番目の宿は満室、その二番目の宿主が連絡してくれて泊まれることになったのがこの新しいペンジオン(ペンション)です。
しかし親子四人で経営しているここで、じょうずに英語を話せる人はいません。 そこで登場するのがパソコンの翻訳機能。 チェコ語から英語は同じヨーロッパ言語だからか、ほとんど問題なく訳されるようです。 こうして筆談ならぬパソコン談で盛り上がったのでした。
お城の森
部屋で一休みしたあとは、ディイー川の対岸の上にあるヴラノフ城へ向かいます。
お城へのアプローチは車道の脇にある森の中の遊歩道を行きます。
森の中からヴラノフ・ナト・ディイーの街を見る
その木々の合間からはちらちらっと街の建物が見えます。
ヴラノフ城入口
森を抜けると左手に石の橋が架かり、その先に元はゴシック様式の要塞だったという12世紀建造とされるお城が現れます。
ヴラノフ城中庭
このお城は17世紀の火災後、現在のバロック様式の宮殿に建替えられたそうです。
お城からヴラノフ・ナト・ディイーの街を見る
お城の下にはヴラノフ・ナト・ディイーの街が広がります。
街の先にはダムで塞き止められ湖のようになったディイー川を抱える森が広がり、そこから細くなった川が、木々の緑に沿ってうねって街の中に流れ込んでいます。 ディイー川はここからオーストリアの国境に沿って南東に流れて行きますが、その一帯は国立公園に指定されています。
ふくろうさん
お城見学のあと街に下ると、小さな広場では子供たちが楽しそうに綱引きをしていました。 綱引きってどこにでもあるんですね。
その広場の片隅にちょっとめずらしい光景がありました。 目隠しをされた鷹をはじめとし、猛禽類がずらりと並んでいます。 実はチェコの鷹狩はユネスコの無形文化遺産に指定されているのです。
下から仰ぎ見るヴラノフ城
下から仰ぎ見たヴラノフ城です。 まさに要塞にふさわしい場所に建っているといえますね。
静かな流れのディイー川
そしてその足元に流れるのは、あのディイー川です。