ウェラン
今日は『美しい村』を二つ巡り、ワロン地域を代表する景観の一つである、スモワ渓谷にたたずむフラアン村を眺めます。
昨日と打って変わり、ウェラン(Wellin)の朝は快晴でとても気持ちいい。
ウェランを出る
まず30km先の『美しい村』グロス・フェイズ(Gros-Fays)を目指しますが、しばらくは昨日やってきた幹線道をソイェ(Sohier)方面に戻ります。
ロンプレ
2kmほどで隣村のロンプレ(Lomprez)の教会が見え出します。ベルギーはどの村にもみんな大きく立派な教会があります。
ロンプレで道が方向を変えると、それまでの下り基調が上りに変わり、周囲は牧草地に。そのうち森をかすめて進むようになります。
小さな森を抜ける
ソイェからの道が合流し少し行ったら、幹線道からカントリーロードに入ります。
まずここは森の中。
見渡す限りの丘
この森を抜ければ、そこは丘の上の草原。
ベルギーの中でもアルデンヌ地方は簡単にいえば田舎で、見渡す限り穏やかな丘が続く、のどかそのもののの景色が続きます。
ジャンブの教会
この草原の下に小さな集落が見えてきます。ジャンブ(Gembes)のようです。
ここにも立派な教会が建っています。
丘を行くサイダー
ジャンブからいったん小さな川まで下ると、今度は穏やかな上り。一度丘の上に出ると、高層建築など一切ないので、360°ぐるりと地平線が見渡せます。この広い景色は気持ちいい。
しかし穏やかに見える丘も、それは景色が広いからで、上り坂は結構急勾配。10%超えはあたりまえということもしばしばです。
アルデンヌの丘
グレード
牛の横をかすめ、森を抜け、ぐわ〜っと下るとグレード(Graide)です。ここは道沿いに建物が並び、1km少々行くと駅に出ます。
出発から2時間、そろそろお茶にしてもいいよね、とカフェを探しますが、ここまでどこにもそれらしいものはありません。
牧草地を行く
駅を出るとすぐに人家がなくなり、周囲はまた牧草地に。
オイジー
この牧草地を下ってバイヤモン(Baillamont)に出ると、そこで幹線道に合流します。幹線道とはいっても、日本でいえば県道以下の造りで交通量もごく少ないのですが。
ここからからオイジー(Oizy)まではこの道を行きます。
オイジーからグロス・フェイズへ
オイジーの先でまたカントリーロードに入り、『美しい村』グロス・フェイズを目指します。
ヤギさん?
道が穏やかにカーブを描いて下ると、グロス・フェイズに到着したようです。
村の入口には、童話にでてくるようなかわいらしい動物がいました。日本で見かけるのとはちょっと違うけれど、これはヤギさんでしょうか。
グロス・フェイズの教会
この村はなぜか日本語版の『24の美しい村』には紹介がありませんが、オリジナルの仏語版で紹介されています
グロス・フェイズの民家
幹線道から離れたこの静かな村には、きれいな花で窓辺を飾った家や、
頁岩でできた家
この近くで採れた、粘土やシルト、泥が固まってできた細粒の堆積岩である頁岩(けつがん、shale=シェール)で造られた伝統的な家が並んでいます。
頁岩
頁岩の頁の字が本のペイジを意味するように、この岩は薄く層状に割れやすい性質があるといいます。この割れ具合が建設材料にするのに好都合だったのでしょう。
グロス・フェイズでくつろぐサイダー
この周辺にはブナの森があり、かつてのタバコ栽培で使われた乾燥場も残されているそうですが、これはどこにあるのかわかりませんでした。
シャトー・フェルム
これは17世紀のシャトー・フェルム(農場付きのお城)で、
納屋
こっちはたぶん、その付属の納屋。
グロス・フェイズ
シャトー・フェルムから見たグロス・フェイズです。
グロス・フェイズからスモワ川へ
グロス・フェイズからはヴレス=シュル=スモワ(Vresse sur Semois)に向かいます。予定では幹線道に出て下るつもりにしていましたが、なんとなくスモワ川(La Semois)に下る道のほうが良さそうだったので、こちらを行ってみることにしました。
これが運の尽きで、道は荒れたごろごろの砂利道に。強烈な下りなのに、押したり引いたり。。あとでOpen Street Mapでここを見ると、ちゃんと破線でした。Open Street Map、なかなかいいですね。
スモワ川からヴレス=シュル=スモワへ
とにかく、なんとかスモワ川に下りました。そこからはスモワ川沿いを行く方法と内陸を行く方法がありますが、スモワ川沿いはヴレス=シュル=スモワまで続いているかどうか自信がなかったので、ここは安全を取り、内陸の道を。
ヴレス=シュル=スモワ
グロス・フェイズ方面から下ってくるN945に合流し、小川を横目に下ると、スモワ川が流れるヴレス・シュル・スモワに到着。
ヴレス=シュル=スモワのレストラン
ここまでレストランはおろか、カフェさえ見かけませんでしたが、この村にはレストランが数軒集まっているので、その中の一軒でお昼に。
レストランのテラス席に荷を解くサイダー
最初のレストランがいい感じだったので、迷わずにそのテラス席に荷を解きました。
マース・ピルスとモート・シュビット・クリーク
周囲で飲まれているビールを見てみると、まず、左のマース・ピルス(Maes Pils)。これはベルギー第2位のビールメーカーが作るピルスナータイプです。
そして右はなんと『突然死(Mort Subite)』という、恐ろしい名のビール。かつては伝統的なランビック(自然発酵ビール)を作る独立した醸造所でしたが、現在はマース・ピルスと同じ会社が作っています。写真はクリーク(Kriek)で、サクランボの一種を漬け込んで熟成させたもの。爽やかで、サイクリングのあとなどにぴったりです。
おかみさんとクワック
この店のおかみさんが面白いビールグラスを持ってやってきました。
このクワック(Kwak)のグラスは、馬の上でもビールが飲めるように考案されたものなのだそうです。ちょっとフラスコみたいで面白いけれど、グラスを置けないじゃあないか、とお思いの方もいるでしょうね。でもちゃんと専用の置き台があるからご安心あれ。
スモワ川の石橋
ヴレス=シュル=スモワにはスモワ川が流れています。この川はリュクサンブール州のアルロンにその流れを発し、フランスのマース川に流れ込んでいます。
ここには18世紀のものだという石橋が架かっています。
スモワ川の石橋を渡るサイダー
この石橋を渡るとすぐ、
ラフォレ
『美しい村』ラフォレ(Laforêt)に入ります。
Laforêtはフランス語で森を意味する言葉で、その名のとおりこの周辺は緑が多い。
結晶片岩で造られた家
家々はこの土地の石切り場で採掘されたという変成岩の一種の結晶片岩で造られ、ドアや窓は、石やレンガまたは木材で縁取られています。
結晶片岩は長瀞の岩畳や四国の大歩危、小歩危などで見られるものです。
ラフォレの裏通り
ほぼ単一の材料で作られた村は、どこでも美しい。
ラフォレの教会近くその2
日本にもかつてはそうした村がたくさんありましたが、石造と木造の違いもあり、こんな具合に残っているところはほとんどありませんね。
共同の水場
この村の端っこには、かつて使われてた共同の水場がいくつかあります。
スモワ川と橋
ラフォレからはスモワ川に沿って、ロシュオー(Rochehaut)に向かいます。ラフォレ側の道を進めば、森の中を行く地道が2kmほど続くと分かっています。対岸にはもしかしたら舗装路かもしれない道があります。しかし、ここには対岸に渡る橋がない。少なくとも地図には。しかし、グーグルマップで面白い写真を見かけたので、物は試しと、川辺に下りてみました。
すると、なにやら橋らしきものが見えてきます。
スモワ川を渡る植物を編んだ橋
そこにあったのは、こんなとてもユニークな橋です。
橋をくぐるカヌー
背の低いこの簡単な橋の下を、上流からやってきたカヌーがたくさんすり抜けて行きました。
植物で編んだ踏み板
骨組みは木ですが、床板になるところは細い木の枝かなにか、そんなものを編んで作られています。
かなりギシギシいますが、ちゃんと対岸まで渡ることができました。
スモワ川沿いを行く
この橋のおかげで対岸に出ることができ、結局そこも少しの間地道ではあったのですが、効率よく進むことができました。
舗装路の車道に出たら、スモワ川に沿って進みます。この辺りのスモワ川はヘビのようにのた打っていて、とても複雑な景観を造っています。
ロシュオーへの上り
スモワ川はさらに蛇行を続けますが、アレ(Alle)を過ぎると道は川を離れ、上りになります。この道は森の中を進み、眺望はほとんどありません。ただひたすら上るだけです。
森の先になにか気配を感じると、急に勾配が穏やかになり、視界が開けます。ここがロシュオー(Rochehaut)で、気配は観光客のものです。
ロシュオーからフラアン村への眺望
ここからの、大きな蛇行をして流れるスモワ川対岸のフラアン(Frahan)村への眺望は、アルデンヌを代表する景色として、よく観光パンフレットの表紙を飾っています。
TOP写真を見てもらうとよくわかるのですが、アルデンヌの丘の頂部はほぼ同じ高さで、川まで200mほどの落差があります。この落差がアップダウンを生み出しているのです。
ディケアッシュとパーム
ちょうどいい展望のところに、その名もビュー・ポイント(Le Point de Vue)というカフェがあるので、ここで一休み。
ここで飲まれているビールを紹介すると、左のディケアッシュ(Diekirch)の生はピルスナータイプで、ベルギーではなくルクセンブルクもの。
右のパーム(Palm)は、フレミッシュ・ブラバンド州(Flemish Brabant)のステーンフッフェル村(Steenhuffel)で、250年以上に渡り作り続けられているビール。こちらは上面発酵タイプです。
ロシュオー
フラアン村への眺望を満喫したら、ロシュオーを出、本日の宿泊地ブイヨン(Bouillon)に向かいます。
フラアン村
ロシュオーからはスモア川に沿って南に向かいます。下には先ほどとは別角度からのフラアン村が見えています。
ププアン
この先は森の中をスモワ川まで下ります。とはいっても、ここにも当然アップダウンはあるのでした。
そしてププアン(Poupehan)の先でスモワ川に出ます。
スモワ川
ここで対岸に渡るとその先は、
スモワ川からの上り
当然のように上りとなります。森の中を、エッサ、エッサと上って行きます。
コルビオン
この上りの途中で村が見えてきました。コルビオン(Corbion)です。この村はフランス国境のすぐ近くにあります。
村を過ぎ、フランス国境の森まで上ると勾配は穏やかになり、緩やかなアップダウンを始めます。
ブイヨンへの下り
フランス国境を離れれば森が開け、下り坂になります。この坂の先に人家が見え出すと、ブイヨン(Bouillon)に到着です。
ブイヨン
ブイヨンはスモワ川の畔に佇む小さな町で、その街を見下ろすようにして丘の上にお城が聳えます。
ジュピラーとゴドフロア
観光案内は明日にして、今宵のビールを。
左のジュピラー(Jupiler)はベルギーでもっとも飲まれているビールの一つです。ラガータイプで、たいていのカフェで生が飲めます。
右のゴドフロア(Godefroy Rousse)ですが、ゴドフロア(Godefroy de Bouillon)は第1回十字軍の指導者の一人で、エルサレムの初代聖墓守護者となったこの街の英雄です。現在は、先日訪れたプルナウ(Purnode)のデュ・ボック醸造所(Brasserie Du Bocq)で作られています。きれいな琥珀色。
突き出し
突き出し文化は日本だけかと思っていたら、それはベルギーにもありました。
日本では居酒屋でですが、ベルギーではレストランで。どのレストランでもというわけでないのですが、夕食の時には出てくることが多いようで、大抵2〜3品。これに料金は掛からず、ちょっとした前菜になります。
仔羊のグリル
本日のメインは仔羊にしてみました。ここのヴォリュームは少ない方だけれど、これで一人前。大抵日本の4倍くらいの量が出て来るので、私たちはいつも、前菜とメインをそれぞれ一品一人前注文し、シェアしています。
さて、明日は休養日で自転車は休み。ブイヨンの街の散策を楽しみます。