今日は、いよいよピコス・デ・エウロパのハイキングや周辺散策の拠点となるポテスまでの移動で、まずは東に向かいます。朝食をホテルで済ませ、8時半に出発。
朝の気温は14度。スペインのこの時間帯はまだ『早朝』、ようやく青くなってきた空にそびえる山々には朝もやがかかっています。
東に行くには幹線道路をまっすぐ走るルートもありますが、小さな村を巡りつつ見晴らしのよさそうな尾根道を通ってみよう、といういつものサイダーの提案で最初から上りです。
早朝から上り。。とへたれそうになるサリーナですが、しばらくすると霧が晴れてきてピコス・デ・エウロパの山々の景色が見え始めました。上れば上るほど景色が良くなっていきます。おお〜すばらしい!というわけで気分も上々、ルンルンと上ります。
約200mの上りでほぼ尾根道の頂上に到着。ここからは、緩いアップダウンを繰り返しながら大西洋との間を隔てる山塊や南に広がるピコス・デ・エウロパの景色を楽しむことができます。
ピコス・デ・エウロパは『ヨーロッパの頂』という意味で、大航海時代、アメリカ大陸から帰ってくる船が初めて目にするヨーロッパの光景だったことに由来するそうです。
尾根道の最初の村アランガスを走り抜けるサイダー。赤い瓦屋根の家々が30軒ほど並んでいるここには民宿もあり、このルートの中では大きめの村です。
少し開けたところに出てきました。両側は牧草地になっていて、カウベルの音だけが響く中、太陽に向かって東へ走っていきます。
そんなところにも小さな集落があります。そして、ほんとうに小さな教会も。
前方をみると、尖った山の頂が何重にも連なっています。こんな山の景色はあまり見たことがありません。氷河がつくった地形でしょうか。
すばらしい景観を堪能しつつ、この道を走るのは我々2人だけ。何とも贅沢なルートです。
尾根道の回りには小さな村が点在しています。昨日訪れたアシエゴのように、牧畜で暮らす人々の村なのでしょう。
周辺の村は、この尾根道からさらに急傾斜のダートを上ったり下りたりしてたどりつくところがほとんど。よって、村の景色を眺めるだけでどんどん先へ進みます。
尖った山々を背にして教会の尖塔が見えました。アジェス(Alles)という村に到着です。少し大きめの村なので、ちょっと立ち寄ってみることにしました。
教会に至る道はきれいに整備され、おなじみになったアストゥリアスとスペインの旗が飾られています。
尖塔のある教会は、エルミータ・デ・ヌエストラ・セニョーラ・デル・ロサリオです。エルミータという名称ですが、立派な教会でした。
教会は閉まっていて残念ながら入れず、すぐ前のバルで休憩です。爽やかな気候と雄大な景色を愛でながら休んでいると、通りでは人々が朝の散歩をしながら挨拶を交わしています。
気持ちのよい尾根道はそろそろ終わり、アジェスからは下りです。
振り返ると、エルミータの尖塔と尖った山並みが連なっていました。
アジェスからは2kmほどで幹線のAS-114に合流します。ここからは、再びカレス川に沿って東進です。
途中、小さな吊り橋が架かっていたのでちょっと寄り道。正面には石灰岩の大きな岩山がそそり立っています。
そして、その下を流れるのはカレス川。川に沿って幹線のAS-114が走っています。
カンタブリア山脈とピコス・デ・エウロパに囲まれて、このあたりの道路は谷間の川沿いにつくられています。そこを離れると、ほとんどは激坂の山道になってしまいます。
11時近くなり、次第に暑くなってきました。幹線はほぼフラットですがそれなりに車が通り、木陰もありません。
5kmほど走ったところで幹線を離れ、カレス川を渡り脇道へ。幹線を通れば、さらに4kmほど先のPanesまで走ってからポテスへ南下するN-621に入ることになりますが、ここで脇道に入ればN-621への近道となるはずです。
という脇道はやっぱり激坂で、しかも砂利道ダート。へこへこと自転車を押します。
少し上ると舗装路になり、小さな教会の脇を抜ければ丘の上のロブリゲーロの村に入ります。
舗装路になっても上りは続きますが、周辺の山々も見渡せて気分は爽快。
ショートカットの丘を下り、川を渡ります。これはデバ川で、この川に沿ってここからは幹線のN-621を南下します。
このN-621は幹線といっても対向車がすれ違うのがやっとの細い道で、『急峻な谷間の道』という意味の『デスフィラデーロ』と呼ばれています。しばらく行くと、デバ川沿いの並木道に入りました。
木漏れ日の中を渓流の音を聞きながら進みます。このあたりは、この道路がアストゥリアス地方とカンタブリア地方の境界となっています。
道の両側を見上げれば、岩山が屏風のようにそそり立っています。そのわずかな谷間を通る道は驚くほどフラット。天から山脈にくさびを打ち込んだような、こんな谷がどうやってできたのでしょうか。
石灰岩の岩山は削られたような荒々しい岩肌をみせ、空洞になっているところも。今にも崩れ落ちるんじゃないかといった様相です。
しばらく進むと、道路はカンタブリア地方に入ります。奇岩を眺めつつ走る道はほぼ平坦なものの、時刻は正午、真上からの強烈な日差しを浴びて焼けこげそうです。
正午を過ぎたところで、この道沿いの唯一の町ラ・エルミーダに到着しました。岩山を背景に道沿いに続く小さな町ですが、カフェテラスを見つけてとにかく日陰に滑り込む。
時刻は12時半。スペインでは昼食には相当早い時間ですが、昼食OKとのこと、ラッキー! ここには外国人観光客もよく訪れるようです。日替わり定食メヌー・デル・ディアで、焼きイワシやチーズカツレツをいただきました。
ゆっくりまったりして出発は午後2時。岩山に囲まれたラ・エルミーダを後にします。
ここにはホテルも数軒あり、デバ川では親子連れが水浴びをしています。
実は、ラ・エルミーダには温泉もあります。左前に見えるのが、温浴施設のあるホテル・ラ・エルミーダ。60度の温泉水には体によいミネラルが含まれる、と説明にありました。
まだまだ岩山の谷間の道が続きます。
ごつごつした岩山の間を進む道は、
くねくねと蛇行しながらずっとデバ川に沿って続いています。
ラ・エルミーダから7kmほど走ったところで少し脇道に入り、レベーニャに立ち寄ります。ここには、1893年に国の史跡に指定されたサンタ・マリア教会があるのです。
分岐点から600mほどで、岩山を背にしたサンタ・マリア教会の塔が見えました。
この教会は10世紀頃、レベーニャの貴族によって建てられたものだと言われています。その後、教会にポーチが追加され、1896年には全体の修復と併せて手前の塔が建てられました。
教会はプレロマネスクのモサラベ様式で、イスラムの影響を受けた馬蹄形アーチと柱が特徴的とのこと。しかし扉は閉まっていて中に入れず、とにかく暑いのと昼食で満腹だったので、教会の裏の日陰でしばらく昼寝をすることにしました。
1時間ほど昼寝して自転車に戻ってみると、誰かがこんなメモを残していてくれました。『やあ!教会が開くのを待っているのだったら、今日は月曜日なので休みだよ。明日は10時過ぎから開くからね』 ありがとう、でも明日は来られない。残念ながら内部を見ることは叶わず、サンタ・マリア教会を後にしました。
しばらく走ると両側に迫っていた岩山が徐々に後退し、景色が広がりを見せ始めました。両側は丘陵地となり、その先にピコス・デ・エウロパが望めるようになります。
道路は広くなり、両側に家が並んできました。そして、この地域の中心の町ポテスから約1km手前にあるオヘドという町に、私たちがこれから3泊するホテル・トスカーナがあります。午後5時に到着したホテルでは、気さくなおじさんが迎えてくれました。
ホテルで2時間ほど休憩した後、ポテスまで散策と夕食に出かけました。
ポテスは、ピコス・デ・エウロパの観光拠点となる町だけあって、中心のカピタン・パラシオ広場は大勢の観光客で賑わっています。
周囲をピコス・デ・エウロパなどの山々に囲まれ、デバ川とキビエサ川が合流するポテスは、カンタブリア地方の最も西に位置するリエバナ地域の中心地です。その歴史は古く、石造りの橋や塔、貴族の館などが中世の街並みの雰囲気を漂わせています。最も目立つ建物、インファンタードの塔は15世紀に建てられたゴシック様式で、現在は展示施設とされ屋上は見晴し台になっています。
さすがはリエバナ地域の中心地、ここにはレストランやバルが軒を連ねています。どこがいいかな〜と歩きつつ、次第に静かな通りへ入っていきました。
人通りが少なくなったオビスポ通りの一角のテラス席に誘われて座ったレストランで、とりあえず生ビールのカニャを一杯。ぶどう棚のテラスでまったりするいい雰囲気で、ここで夕食をとることにしました。
そこで頼んだのは『コシード・レバニエゴ』。この地域の名物で『リエバナ地域の煮込み』という意味ですが、メニューの表現がよくわからない。『コシード・レバニエゴ』の下に、『スープ』『ガルバンゾ豆』『子牛』『チョリソ』など、いろいろ書いてある。お店のマダムが言うには2人で1つで充分、とのこと。そして出てきたのは、確かにまずスープ。そして『キャベツの煮たの』、『ガルバンゾ豆と子牛の煮たの』が続く。どうやら、全体がコシード・レバニエゴという煮物で、そのスープと具が別々に出てくるようです。う〜ん、いい味だけど激大量でおなかいっぱい!
満腹のいい気分でオヘドのホテルに戻った私たち。明日はいよいよピコス・デ・エウロパのハイキングです。