B&Bの朝食は、海とスカイ島を眺められる素敵なロケーションだ。今朝は曇り空だが、雲は薄い。日中の晴れ予報に期待が高まる。
朝食メニューだが、フルブレックファスト以外にキッパー(ニシンのひらきの燻製を焼いたもの)があるというので頼んでみた。塩味のきいたキッパーにはスクランブルエッグが添えられる。そういえば、サーモンにもスクランブルエッグだった。
今日はエッグ島への1日遠足だ。10時15分発のフェリーのスケジュールに合わせてB&Bを出発する。
フェリーはエッグ島、マック島、ラム島を回る1日1往復しかない。このフェリー、そんなに大きくはないがカフェを備えている。
空は雲に覆われており風が意外に強い。エッグ島を目指すフェリーはマレーグ港から南西へ向かう。昨日エッグ島を眺めたルー半島が見えた。
出港から1時間ほどするとエッグ島が大きく見えてきた。その向こうのラム島は中央の山並みが雲で隠れている。
エッグ島に到着。少しずつ青空が広がってきた。走る気分が盛り上がってくる。
エッグ島で下りた人の中には徒歩のトレッキング組が多いが自転車の人たちも2〜3組いた。
彼らのあとから私たちも自転車で海辺の通路を通って島に入る。
エッグ島は、南北9km、東西5km、面積31平方キロメートルの小さな島だ。このあたりの諸島群の名称は 'Small Isles'。「小さい島たち」。。とまさにそのままの名前だが、エッグ島はその主な4島の中ではラム島に次いで2番目に大きい。
まずはまっすぐ北のクリーデール(Cleadale)を目指す。クリーデールは島の中では最も人が住んでいるところで、舗装路が続いている。
エッグ島の住民は80人ほど。もともと住んでいたのではなく移住者が大半だそうで、1997年に居住者が皆で元の所有者から島を購入したという。島は「エッグ島ヘリテージ・トラスト」が所有し管理している。
少し上ると後ろに海が見えてきた。雲は少しずつ薄れ薄日が差してきている。
気温も上がってきており20度を超えている。これまでにない温かさについに雨具を脱ぎ、腕まくりで走るサイダー。
サリーナも脱雨具。小さな丘を越えると、正面にラム島が見えてきた。雲も上がってきて山々の頂までくっきり見える。
島の北部の海岸を目指して下る。エッグ島は本土側からみると台地状にみえたのだが、実は細長いテーブル台地の麓に広い平原がある。
台地から平原に下るカーブの台地側はヘザーが咲く岩場で、海の向こうにラム島の全貌が現れる。劇的な風景の変化が楽しい。
ここをがーっと下ればすぐに海のレベルに達する。海辺は近く、ラム島がどんどん大きくなる。
さらに北を目指して走る。途中には何軒か民家がある。
左手を眺めるとライグ湾(Bay of Laig)の美しいビーチが見えた。その向こうはごつごつした丘陵地だ。
舗装路の分かれ道になった。鳴き砂の海岸Traigh na Bigilの方向に向けて、左手の道を行く。背景はテーブル台地だが、こうして見るとテーブルというより砦のようだ。
左手にはライグ湾、右手にはテーブル台地の道を直進する。
すると、舗装路は民家の前で突然終わりとなった。この民家の脇に自転車を置き、ここからは徒歩での散策開始である。
ライグ湾の眺めを楽しみつつ、牧場の中を北へ向かう。
雲がかなり薄れ、青空がここかしこに現れてきた。牧場に広がる草地の中、正面には険しい頂を抱えるラム島がどど〜んと聳える。
一方、振り返って見れば、エッグ島の中央には背骨のような台地が連なっている。久しぶりの青空と日の光が眩しい。
牧場の広がる進行方向の先に見えてきたのは、鳴き砂の海岸Traigh na Bigilだ。
見晴らしのよいここらの牧場エリアでお昼にすることにした。持ってきたサンドイッチのお弁当を広げる。牧場の草地の向こうの海、そしてラム島を眺めながらりんごをかじるサイダー。
雲はどんどん晴れてきた。久しぶりの日差しの中、牛たちは機嫌良く見晴らしのよい草原で草を食む。
お弁当の昼食を終えて、鳴き砂の海岸Traigh na Bigilに近づいてみる。前方から、すでに鳴き砂海岸を訪ねた帰り道の男性に出会った。港を出発してすぐに追い抜かれたサイクリストで、私たちが暑さで上着を脱ぐために止まっていたら「トラブルですか?」と声をかけてくれた若者だ。挨拶を交わしてすれ違う。
これがTraigh na Bigil。ゲール語で“きゅるきゅる鳴く砂浜”という意味だとか。今は海水面が高いが、乾いた砂地を歩くと音がするという。
ここで下りても砂は鳴かなそうなので、私たちはラム島を望む砂浜の美しい眺めを上から楽しんで、浜をあとにした。
鳴き砂の浜を背にすると、今度は目の前に絶壁の台地が帯状に広がっている。下の草原には黄色い花が咲き乱れていた。
南のライグ湾にはTraigh Chlitheというビーチがあるが、そちらは遠巻きに眺めながら牧場のプチ・ハイキング開始。
さっきは牛ばかりだったが、内陸側に歩いてきてみると白い羊の群れ。私たちの前を歩き、近づくと前方に逃げる、というのを繰り返す。横に逃げたらどうよ〜
民家の脇を抜けると、舗装路に出た。空は快晴になり、心地よい海風を受けながらしばらく進む。快適快適、と楽しそうなサリーナ。
しかし、このままの道を行くと、自転車を置いたところまではぐるっと回り道になる。大変だからショートカットしようね(マップでも道はありそうだし)、と入った通路はすぐに薮となり、しかも足下はところどころ泥でグジョグジョだ。
「ぎや〜、どうすんの!」とサリーナが叫んだときには、既に後退するも前進するもままならない場所まで来ていた。もう前進しかない。
「いやあ、大変だったね〜」と薮を抜けたサイダー。一見何事もなさげに見えるが、実はサンダルに靴下の出で立ちなので、足はグッチャグチャなのだった。
ともかくも無事自転車まで到着。今度は来た道をしばらく南下し、正面に見える烏帽子のようなアン・スグールを目指す。
北側の眺めとはここでお別れだ。Traigh Chlitheのビーチと海に浮かぶラム島を目に焼き付ける。やっぱり晴れの日はいいですねえ。
舗装路を南へ進むと、ハイキングの数組とすれ違った。みんな、久しぶりの好天を楽しんで輝く笑顔だ。自転車の親子連れにも出会った。上り坂、がんばれ!
小さな丘を越えると島の南側の海が見えてきた。羊たちが遊ぶ一本道をどんどん進む。
快調に進んできたが、「おっと待った」とサイダー。この道をそのまま進むと、下って港まで戻ることになるが、エッグ島最高峰のアン・スグール方面へは右折して丘を回った方がいい。
その分かれ道からはダート。そもそもエッグ島にある舗装路は、先ほど通ってきた港から北のクリーデールまでの一本道のみ。あとはダートあるいは道なき道、というわけだ。牧場のゲートを通過しながら進む。
ダートな上に、上りもあったりする。ヨロヨロと丘を上るサリーナ。
上れば海も見える。背後にはイギリス本土の陸地が広がっている。ヨタヨタと上るサイダー。
牧場のエリアも終わり、周囲は荒野だ。細かいアップダウンとカーブを繰り返しながらダートを走る。
そして、いくつ目かのアップとカーブを終えると、広い荒野の真ん中にアン・スグールが現れた(TOP写真)。
アン・スグールはエッグ島の最高峰、標高393mの山だ。青空の下、恐竜の背びれのような山の姿に盛り上がるサイダー。
左前方の海を見れば、小さな島影はSmall Islesの4島の一つ、マック島だ。
右手にアン・スグールと恐竜の背びれ、左手に海とマック島と、豪華な景色を堪能しながらゆっくり進んでいく。
周囲の荒野は薄紫色のヘザーで覆われている。その荒野から突き出た岩の背びれ。「アン・スグールに上ってすごい景色だったよ〜」というトレッキングのカップルに出会った。健脚ですね!
自転車で通れそうな道はここでおしまいだ。アン・スグールはふもとからの眺めを楽しむだけにして、港に戻ることにした。
印象的な山並みに別れを告げて、港に向かって走るサリーナ。北も南も、エッグ島は絶景が広がり楽しい。
さて港までの道だが、先ほど通ってきたダートの途中右手に牧場のゲートがあり、そこを通過すると草っぱらの牧場の真ん中ダートを下っていく。するとお次は森の中のゴロゴロ石ダートの急坂下り。いろいろ大変だったので、ここの写真はありません。
ようやく勾配の緩い温和なダート道に出た。港はもうすぐだ。
港が見えてきた。ここにはレストラン・バーがあり、フェリーが来るまでゆっくり休憩することにした。ビール片手に店の裏手のテラス席に腰掛けると、上空を何かが飛んでいる。「ゴールデンイーグルだよ」と双眼鏡を構えた男性が教えてくれた。
この自然豊かなエッグ島、島を管理する「ヘリテージ・トラスト」は電気の供給も出がけ、島内の電力はすべて太陽、風、水による再生可能エネルギーだそうだ。
テラスでまったりしていると、いつの間にか16時を過ぎていた。あわてて自転車にまたがり桟橋へ向かう。危ない危ない。このフェリーを逃すと今日はもう本土に戻れないことになる。
16時25分にエッグ島の港を出航。フェリー内のカフェでくつろいでいると、トレッキング姿の若者が「1週間エッグ島にいたけど、晴れたのは今日だけだったよ〜」。いやはや、お疲れさまでした。
楽しい遠足を終えて港に着けば、柔らかな音色が聞こえてきた。はしけの間でバグパイプの練習をするおじさんがいた。私たちもしばらく足を止めて演奏を楽しんだ。
もう18時なのだが、まだ日は高い。港に面するコーナーの2階には、昨日夕食を楽しんだレストラン「コーナーストーン」がある。
今日の晩ご飯はどこにしようかな〜、とあたりを見回しながら走るサリーナ。レストラン数軒が並ぶ先に我らのB&Bがある。絶好のロケーションだ。
今日は本当に久しぶりの青空で、最高の遠足だった。道路から上ったところにあるB&Bからは、左に一日を過ごしたエッグ島、右にラム島が夕陽を受けて輝いていた。
B&Bで休憩したあと、夕食はすぐ近所のChalchain Innで、エール片手にホタテのソテー・バルサミコソース、サーモンソテー・テリヤキソースに舌鼓。
食事を終えると21時過ぎ、陽が沈んだばかりのスカイ島上空では夕焼け雲が茜色に美しく染まり、しばらく見とれる私たちだった。
明日はいよいよ旅の主目的の一つ、スカイ島に渡る。