ここはクロアチア。イストラ半島にあるウマグ(Umag)です。私たちが初めてクロアチアで滞在する街。
この旅も七日目に入りました。今回の旅は自転車で走る距離は押えてあるので、まだあまり疲れはありませんが、今後のこともあるので今日はビーチでのんびりすることにしました。このあたりは美しいビーチが続くことで知られています。
ビーチの前にウマグの旧市街を覗いてみます。
ウマグの旧市街は小さな半島状のところで、その南はビーチに、北は港になっています。かつてここは島だったようです。
港のすぐ横には整った形の広場(Trg Slobode)があり、その奥に聖母マリアと聖ペレグリン教会(Uznesenja Blažene Djevice Marije)があります。
教会は18世紀半ばに再建されたもので、このバロック様式のファサードは未完成です。その隣に独立して建つヴェネツィア風の鐘楼は高さ33mで、17世紀の半ばに建てられています。
内部の装飾はバロック様式にしてはかなり控えめです。ファサード同様、この内部も未完成なのかもしれません。
飾られている絵画はそれなりに古いもののようですが、この時はミサが行われていて、それ自体はほとんど鑑賞できませんでした。
広場と教会を眺めたら旧市街を廻ります。
しかしこの旧市街はとても小さく、ループになった全長300mほどの細い通りがあるだけなので、あっという間に元の広場に戻ってきてしまいます。
ウマグは、近くでローマ時代のヴィラの跡が発見されていることから、そのころから存在していたと考えられています。
その後の歴史はこのあたりの他の都市同様に様々な勢力下に置かれます。ビザンチン帝国、フランク人、ヴェネチア共和国、フランス、オーストリア、イタリア、そしてユーゴスラビア。
小径の上の洗濯物はヨーロッパの伝統ですね。
上を見上げて走れば、石造のアーチが架かっています。
アーチの門は城壁や街の入口など、内外を隔てるところに設けられるものが多いですが、このすぐ先は海なので、これもそうしたものなのかもしれません。
ここには10世紀に造られたという街の壁が残っているそうです。
あっという間に港に出てしまいました。これまで海辺の街はイタリアのトリエステやスロヴェニアのピランなど、いくつか通ってきましたが、ここは街の規模や知名度に比べると、海のアクティビティがかなり多いように感じました。
遊覧船、グラスボート、イルカ&ホエールウォッチング、ダイビング、フィッシング・ツアー、ヴェネツィア観光ツアーと様々です。クロアチアは国全体が観光に力を入れているようですが、この小さな街でさえそれを感じることができます。
港はおおらかな造りで、旧市街の前に三つの埠頭が飛び出しているだけで、あとは無造作に小舟が接岸されています。
ぐるりと廻って、湾を通して旧市街が眺められるところにやってきました。聖母マリアと聖ペレグリン教会の塔は遠くからでもよく目立ちます。
港の反対側のこちら側には大規模なマリーナがあり、湾の中に大きなヨットがたくさん浮かんでいます。
さて、港から旧市街を眺めたら、ビーチに向かいます。このあたりにはずっとビーチが並んでいるのでどこに行っても良いのですが、昨日通るはずだった北部へ向かってみることにしました。
基本的にこのあたりの海沿いの道は遊歩道で、車が通らないので快適です。この遊歩道をちょっと行くとすぐにビーチが現れます。さらに進んで橋を渡り、ウマグのすぐ北にあるモンテロール(Monterol)に入ると、円形の入り江状のビーチが見えてきます。
海の中に大きな水上遊具が置かれたこのビーチは、波がほとんどなく、安心して水に浸かれそうなので、まずここでひと泳ぎすることにしました。
この時の気温は33°Cと暑く、水に入るのにはちょうどいいです。
『クロアチア初泳ぎ! 楽しい〜』 と、はしゃぐサリーナ。
30分ほど水に浸かったら、次のビーチを目指します。
このあたりの海辺には松林があり、涼しくて快適に自転車に乗れます。
カラパン湾(Uvala Karapan)です。
先ほど私たちが泳いだモンテロールのビーチはとても狭い入り江でしたが、ここはもっとずっと開けていて気持ち良さそう。
カラパン湾の北に突き出たカトロ岬(Rt Katoro)を越えると、白いビーチ・パラソルが並んだ並んだ。
このすぐ内側には高級そうなリゾートホテルが建っているので、ここはおそらくプライベート・ビーチでしょう。
ザンブラティヤ湾(Uvala Zambratija)に出ました。
ここは車道のすぐ横で磯が広がっています。このすぐ先には砂浜もありますが、こちらの人々は特に砂浜を好むということでもなさそうです。
ちょっと車道を走ったあとは細い地道に入ります。
ここは海にごく僅かに出っ張ったところで、シュピッツ岬(Rt Špic)という名が付いています。日本だったらこんな小さな出っ張りに名が付くことはないと思いますが、こうしたところはお国柄とでも言うのでしょうか。
シュピッツ岬の先にもワイルドな道が続いています。土の色はご覧のように真っ赤です。
日本でも有名なクロアチアの世界遺産ドゥブロヴニク(Dubrovnik)の風景で目に付くのは真っ赤な瓦屋根です。これは赤土で焼いたテラコッタで、アドリア海沿岸で良く用いられています。その赤土というのはおそらくこんな色なのでしょう。
地道が終わり、松林の中を行く舗装路になると、周囲はキャンプ場です。このキャンプ場の端にスーパーマーケットがあったので、つまみと飲物を仕入れ、近くのビーチへ。
ここはラコ湾(Uvala Rako)で、小型のボートが吊り下げられた小さな埠頭のようなものが二本、海に突き出ています。
その先のサヴドリヤ(Savudrija)岬には、19世紀の前半に地元の石を使って建てられた、クロアチアまたアドリア海でもっとも古い灯台が見えます。これは石炭ガスによって点灯された初めての灯台だそうです。
一休みしたら、海にザブン。水は澄んでいてとてもきれい。ここは岩場なので、小さいけれど魚がたくさん泳いでいて楽しい。
おやつを食べながら喉を潤し、一時間ほどチャパチャパしているとちょうど正午になりました。
クロアチアはスロヴェニア同様にワインの産地で、この近くには Cuj や Coronica といった優秀なワイナリーがあります。午後はこうしたワイナリーのいくつかを廻ろうと思います。
とりあえずやってきた道を戻って、適当なところでお昼にすることにします。
ザンブラティヤで車道に出ると、ここの直射日光下の気温は43°C ! 数値だけみるとドヒャーっという感じですが、日向を走る時間はそう長くはなく、すぐに木陰に入れるので、これはそんなでもないです。
それでも木陰のあるヴェラ・ドラガ(Vela Draga)ビーチに入るとひと息付けます。
カラパン湾に入り、ゆったりと弧を描くビーチでひと泳ぎ。
お腹が空いてきましたが、適当なレストランを見つけられないまま、なんだかんだでウマグの近くまで来てしまいました。
港に入る直前のプンタ(Punta)のミラマーレ・プロムナード(Šetalište Miramare)にビーチが見えるレストランがあったので、ここでお昼にすることにしました。
前菜にイストリア風サラダを、メインにちびイカ焼をやってみました。
イストリア風サラダはなんと葉っぱの上に生ハムが載っているものでした。このあたりはイタリア文化圏とも言える場所なので、生ハムも名物なのかもしれません。
ちびイカ焼は私たちの好物の一つです。シンプルな料理ですからイカの鮮度と味が決め手です。しかしこのあたりでは、海辺で食べればこれは大抵どこでもおいしくいただけます。
昼食を終えたらなんだかまったりしてしまって、ワイナリー巡りに行く気がなくなってしまいました。暑いしね。
ま、ちょっとクロアチアのワイン造りも見てみたかったのですが、ワイン自体はどこでも飲めるのでこれはパスすることにして、宿でゆっくり寛ぐことにします。
ウマグ港のマリーナまで戻ってきました。
ここにはボートやヨットが所狭しと並んでいます。
ゆっくり半日をビーチで過ごし、宿で一休みしたと思ったらもう21時近く。夕食に行かなければならない時刻です。
この時間になるとあまり遠出はしたくないので、宿のすぐ傍のレストランに向かいました。
前菜にシーフード・サラダ(Sal.plodovi mora)、メインにメルルーサのフライ(pohani oslić)を。
シーフード・サラダはホタテの貝柱のマリネで、これは美味。メルルーサは日本ではあまり馴染みのない魚ですが、こちらではごく一般的なもので、英語で言うところのヘイク(Hake)。この魚は実はマクドナルドのフィレオフィッシュに使われていたものです。
さて、今日はビーチでだらだら過ごしましたが、明日は少しだけ走ります。パレンジャーナ鉄道跡を辿ってトリュフの森がある丘の上の町、モトヴン(Motovun)に行ってトリュフを食すのだ。