鴨川の内陸にある高鶴山の麓で、朝窓の外を見るとうっすらと白い。今朝寒くて霜が降りたのかなと思っていると、宿のおかみが、
『明け方には雪が降っていましたよ。』 とおっしゃいます。
え~、道、凍結していないだろうな、、とちょっと不安になりますが、空は昨日と打って変わって青空。これなら今日は暖かくなるかなと思いきや、天気予報では冷たい北風がビュービューとのこと。え~、今日はいったいどうなる?
外に出ると素晴らしい青空です。その青空から白いものが落ちてきます。タンポポにしては早すぎるし、いったいこれは、、、
『ひゃ~、雪だよ~』 と空を見上げたサリーナが叫ぶ。
しかしその雪も出発の準備をしているうちに止んだようです。高鶴山の麓から山の南を通るカントリーロードを進みます。道脇の斜面には白い水仙がたくさん。
山側には夏みかんが生っており、田んぼの際にも水仙が咲いていたりと、この道はのどかでいい雰囲気です。穏やかなアップダウンを繰り返しつつ、のんびり進みます。
日なたの道路にはすでに雪はなくなっていますが、日影になっているところには一部残っていたり、凍結したところもありました。しかしそんなところはごく一部で、あらかた問題ありません。
県道186号の手前で竹ノ中から三原川東岸の細道に入ります。この道は一昨年の企画でも通り、その時の印象がとても良かったので今回も使うことにしました。今年は寒いのか前回は大きな蕾みをつけていた梅も、まだまだという感じです。
この道は西側が大きく落ち込んでいて三原川などが望めるので、開いた雰囲気があり気分がいいのです。
反対の山側は道際まで急な斜面が迫っていたり、林の中を抜けたりと変化もあります。
三原川東岸の細道を下り県道へ出たあと、さらに西にある小高い山を越える道に入りました。この道は比較的新しいもののようで、舗装がきれいです。入口は穏やかな上りですが、ぐるっと廻って向きが変わるとそこからが凄かった。超がつく激坂です。
えっちらおっちらと押し上げたので、写真撮るのを忘れちゃった。。
そしてそのピークからはこちらも超激坂の下り。林の中を抜けるいい感じの道なのですが、舗装はコンクリートのノンスリップ仕様。下るのが恐ろしくて平地よりスピードが出ない。そしてこの下りの写真も残念ながらありません。
ブレーキレバーを握りしめて下った先は広いいい道で、その周囲はまさに田舎の風景です。
その風景を楽しみつつ国道410号を横切り、軽い丘越えをすると再び山間の田畑に出ます。海に山、田んぼに畑、水仙に菜の花、そしてのどかな田舎の風景がある房総ってすばらしい!
県道296号を横切りまたまた軽い丘を上ると、その小さなピークが南房総市と館山市の市境です。ここで一息入れたあと、九重へと向かいました。
九重のコンビニで、フェリーで浦賀水道を渡ってやってきたカズちゃんが合流。ここから本日のメインイベント、千倉林道、畑林道へと向かいます。
まずは田んぼの中を通り、次に内房線に沿って千倉の駅付近まで出ます。ここまではほとんど車の通らない道でしたが、県道187号だけ少し通りがあります。でもまあこれも知れたものです。
千倉の駅前からはできるだけ細道を選んで進みます。途中にある高家神社(たかべじんじゃ)は料理の神様を祀る神社で、魚を手を触れずに包丁と箸だけで捌く包丁式という行事で有名です。
前方に山が見えてきました。あの山の中に千倉林道があります。
高家神社を過ぎて枝道を進めばそこは本当にひっそりとした道で、林道へのアプローチに相応しい感じです。薮に畑に小山と、なんともいえない雰囲気が漂います。
山間が狭まり、広かった空が徐々に木々に覆われ緑が多くなると、いよいよ林道に突入です。
広いメインロードに出たあと西へ進むと、すぐに千倉林道の入口がありました。ごく僅かに上りの道が左に分岐して行きます。これが千倉林道で、黄色い林道を示す標識があります。
千倉林道に入った直後はこんな感じ。比較的きれいな舗装で、穏やかな上りが続いています。空はまだ広くて、明るい。このあとすぐにトンネルが現れますが、このトンネルはコンクリートで出来ており、素掘りのものではなくちょっとがっかり。でもトンネル内は照明が皆無なので真っ暗です。
トンネルのあとは少し下りますがすぐにまた上りとなります。勾配は若干きつくなるものの、大したことはありません。山は鬱蒼とした感じはなく、まだまだ明るい。ふと気が付くとなぜか道幅が広がっています。この先で先頭のムカエル、
『あっ、キツネがいた~』 と叫ぶ。
『え~、犬なんじゃあないの~』 と眉毛にツバを付けるサイダー。
『いえいえ、シッポがふかふかでキツネっぽかったですよ。』 とビジターのカズちゃん。
ちょっと斜度が増したところに二つ目のトンネルが登場です。入口側は日影でブレブレの写真しかないので出口側を。このトンネルにはコンクリートが吹付けられていました。
トンネルを出ると景色が一変します。まず杉林が現れ、そして竹林。道は細くなり、その上に杉と竹が覆い被さっています。廻りの空気がとたんにひんやりとしてきます。
この杉林と竹林の不思議な空間がしばらく続きます。天空の覆いがちょっと途切れたところで日の光が通り、木々の緑がそれを反射してとてもきれいです。
先ほどの竹は太く林という感じでしたが、こちらは細く、薮という雰囲気です。このあたりはかなりワイルド。
いい感じ!
そうそう、我らがジーコマリアによれば、千倉林道と畑林道のルート上のどこかに猪獲りの罠があるとのこと。このあたりかな。
杉林に竹林、そして竹藪の次は千両の畑です。千両はきれいな赤い実をつける植物で、お正月の飾りに良く使われます。ということで、このあたりの千両はどこも収穫済みのようでした。ところで千両の畑ってどれがそう? 実はみんなが立っている後ろの塀のようなものの中なのです。
千両は半日陰、木漏れ日が当たるところを好み寒さに弱いので、こんな囲いの中で育てられるのでしょう。ちなみにこの囲いは竹を細く割ったもので出来ていて、天井というか上部も覆われています。
この千両の畑からちょっと下った畑の集落が千倉林道の終点のようです。そこには館山方面から来る立派な道が開通していました。その道路を横切り、畑林道の入口がある道に入ります。この道は畑林道の分岐点からちょっと先で終わるので、その終点の様子を見に行くことにしました。
結構大きな千両の畑がいくつかあり、その先に民家が数軒建っています。なるほど道はそのすぐ先で行き止まりでした。しかしその突き当りから右手に延びる幅一間ほどの地道が見つかりました。どうやらその地道は白浜ダムへと続いているようです。
おっと、ここで薮からなにか飛び出したと思ったら、それはお猿さん。結構丸まると太っていましたよ。昨日はタヌキ、今日はキツネと猿、このあたりにはまだまだ野生の動物がたくさんいるんですね。
ちょっと戻って畑林道に突入。畑林道は入口付近はおっとりした普通の道ですが、交通がほとんどないようで、木の葉や枝、そして崩落した小さい岩のかけらが結構目に付きます。そしてあらかたが上りです。
小さなトンネルを二つくぐりぬけ、薄暗い杉林を抜けて行きます。ちょっと勾配がきつくなったかなと思ったら、その上りの先に現れたのがこのトンネル。
お~~
トンネルの手前の両側は切り立った岩状の塊。おそらくこれは道を通すために一つの塊を削り取ったのでしょう。その表面には縞状の模様が刻まれています。さらにそれを覆う緑の苔。そしてトンネルの上にもすごい縞模様が。
この縞々、トンネルの内部まで続いています。よく観察するとこの縞、ごつごつした石のようなところと、粘土のような黒っぽい部分から成り立っています。粘土のようなところは火山灰が固まったものかな。伊豆大島のバームクーヘン地層大断面を思い起こします。
とにかく圧巻のトンネルです。
出口側の雰囲気は入口側以上に独特です。より高い切り通しの岩肌が苔やちょっとした緑に覆われ、その上に樹木が斜めに生えています。日の光が浅く、薄暗い。
その先ではこんな奇妙な木が道の上を完全に塞いでいます。ジャングルでは日の光を受けるために他の植物より一段と高く伸びることに命を掛けているような種があると聞きますが、この木もきっと太陽の光を求めて、道の上まで張り出して来たのでしょう。
とても面白い地層が浮き出たトンネルの周辺はとても神秘的でした。このトンネルのあとは白浜へ下るだけです。少し下り、カーブに差し掛かると前方に白浜の海岸が見えてきます。お天気なら輝く海が見えるのですが、いつの間にか空は雲に覆われていて、残念ながらこの日の海は白っぽい。
竹薮の中を抜けるようにして道は下って行きます。この道が下り終わったところが畑林道の終点のようです。
白浜の畑にはキンセンカがオレンジ色の花を咲かせていました。ここにも一足早い春がやって来ているようです。
さて、本日のメインイベントはこの白浜で終了。あとは海岸道を上って、おいしいお昼を食べるだけです。
向かうは潮風王国。ここはジオポタ黎明期、最初の長距離ツーリング房総-鹿島よりお世話になっているところです。道の駅になっていて新鮮な魚介がたくさん。もちろん観光客でいっぱいです。リーズナブルなレストランがありますが、この日は30分待ちと大混雑。冷たい風がビュービューのテラス席なら待ち時間0なのですが。。
ゆっくり潮風王国でお昼タイムを過ごした私たちは、その後海岸線を北上して本日の終着地、千倉駅に辿り着きました。
山間に咲く水仙と田舎の田んぼ、小高い山をいくつか越える楽しいアップダウン、竹薮の千倉林道、バームクーヘン・トンネルの畑林道と、どれも素晴らしかったです。