005 F.クープラン/第13組曲/ドレフュス

アルバムの写真J.S.バッハのオルガン曲を取り上げたので今度はバロックの鍵盤楽器のもう一つの雄、チェンバロの曲を紹介します。 チェンバロ(独、伊)、ハープシコード(英)、クラヴサン(仏)はいずれも同じ楽器のことで、各国の呼び名です。 ピアノに似た形態をしていますが、発音原理はピアノが弦をハンマーで打つのに対し、チェンバロは爪のようなもので弾きます。 ピアノよりどちらかというとギターに近いのですが、構造上、音の強弱は付けられません。

僕は、幼いときに少しだけピアノを習ったことがあるが、すぐにやめてしまいました。 飽きたことも原因だとは思いますが、実は僕は、あまりピアノの音が好きじゃなかった。 その後もずっとこの傾向は変わっていない。 そんな僕がはじめてチェンバロを耳にしたのは、やはり中学生のときでした。 今まで聴いたことのない、独特の音に僕はすっかり夢中になってしまいました。 その中でも特に好きなこの曲を紹介します。

F. クープラン(1668-1733)はJ.S.バッハとほぼ同時代のフランスの作曲家で、大クープランとも呼ばれフランス・バロックの黄金期を築いた人です。 フランス人というのは作曲家も演奏家も本当に独特の音色を持っていて特別な味わいがありますが、クープランの洗練はその極みといえるでしょう。 組曲の名のとおり、いくつかの曲がまとまって一つの曲を成しています。 その一つ一つの曲にはタイトルが付いていて、『花さくゆり』だとか『胸飾りのリボン』だとか、極め付けは『肉色のドミノ』! なんか良くはわからないけれど楽しい。

このレコードについて

クラヴサン曲集から第13組曲と第11組曲が納められています。
どちらも一曲数分の曲が組み合わさったもので、それぞれ一つだけを聴いても楽しいです。

演奏者のユゲット・ドレフュスはフランス人の女性。 非常に柔らかい演奏をする人で、特に第13組曲が絶品です。 フランスの作曲家+フランスの演奏家+女性 で本当に独特の音楽がここにある。

使用楽器はダウド製作で1761年製作のエムシュ(クラヴサンの名製作家)のコピー。 これは古楽器と呼ばれるものです。 古楽器というと非常に古いものという印象を与えるでしょう。 しかし、現実には1700年ころの楽器がそのまま使えるということは少なく、当時の楽器を修理したり、コピーして新しく作ることがあります。 これらはオリジナル・インスツルメントとかヒストリカル・インスツルメントそしてピリオド・インスツルメントなどと呼ばれ、日本では最近まで古楽器と総称されてきました。 現在これらの呼び方はその内容にふさわしいものに再定義されようとしていますが、まだそのいづれも市民権を獲たとまでは言えないようなのでここではこれらの総称として古楽器と呼ぶことにします。 この演奏では古い楽器をモデルとして近年新しく製作された楽器が使われているのです。

レーベル:DENON


彼女のこの曲は1981年来日時の演奏で聴いた。 この時の楽器はシュッツェ製作のブランシェのコピー。 レコードのそれより、やや線が細く感じられたが、多彩な音色と、レコードでは聴き取れないような微妙なニュアンス、胴鳴りの豊かな余韻など、楽しませてくれた。


※ クラヴサンには実は古楽器ではない、現代的な楽器もあります。 これらはまさに現代のピアノのような強靱なフレームに、ハンマーのかわりにプレクトラム(爪)を付けたようなもので、古楽器とはまったく印象が違った音が出ます。 こちらもいずれ紹介する機会があるでしょう。

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uploaded:2004