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カディス、セビーリャ、メリダ

スペイン+ポルトガル 5

開催日 1991.08.01(木)-08.05(月)

メリダのローマ劇場
メリダのローマ劇場

旅の紹介

◆  スペイン南西部の旅。港町カディスでは大聖堂を訪ね、フェリアに遊ぶ。セビーリャでは豪華なスペイン広場や美術館、そして近郊の古代ローマ都市イタリカへ。さらにローマ遺跡の宝庫メリダでは、劇場や水道橋、ローマ橋に圧倒されます。

地図/カディス:Googleマップ

地図/セビーリャ:Googleマップ

地図/メリダ:Googleマップ

カディス

ベヘール・デ・ラ・フロンテーラベヘール・デ・ラ・フロンテーラ

ハルさん、ショコさん、サリーナの3人で10日間のモロッコの旅を終え、タンジェからフェリーに乗ってスペインのアルヘシラスへ。そして、そこからバスで約3時間のカディスへと向かいます。

途中のバスの車窓からは、アンダルシアの白い村が現れては消えていきます。写真はベヘール・デ・ラ・フロンテーラ。

サンティアゴ教会サンティアゴ教会

カディスは、大西洋に突き出た砂州のような港町です。その歴史は古く、紀元前11世紀頃からすでに港町として栄えていたとか。コロンブスが新大陸に向かったのも、スペイン無敵艦隊が出撃したのも、この港からだといいます。

今はのんびりした地方都市という様相の街で、今宵の宿を見つけたら、荷物を置いて早速3人でカディスの街へ。まずカテドラル広場に行くと、広場はヤシの木に囲まれて南国ムード。

広場にはカテドラルの他にもう一つ、サンティアゴ教会があります。建物は1635年に完成したマニエリスム様式で、バロックの塔が完成したのはその後の18世紀。

カテドラルカテドラル

こちらがカテドラル。バロックとネオクラシックの様式がみられるこのカテドラルは、1722年に建設が始まり1838年に完成。

2つの塔と、中央に金色に輝くドームを持つカテドラルは、街のどこからも見えるシンボルとなっています。

カテドラルの堂内カテドラルの堂内

カテドラルの堂内には巨大なコリント式の列柱が立ち並び、古代の神殿にいるようです。

中央の交差部の大きなドームから明るい光が溢れています。

海辺の道を行く海辺の道を行く

カテドラルの南は、道を隔ててすぐ海に面しています。

その海岸沿いの道を少し歩いて振り返ると、パステルカラーの家並みの上に、カテドラルの金色のドームが見えました。このドームの外壁は金色のアズレージョなんだそうです。

古い家並み古い家並み

街の中をぶらぶらと歩きます。

そういえば、カディスの家々は瓦屋根ではなくフラットな陸屋根ですね。屋根の上にアンテナがたくさん立ち並んでいます。

ペンシオン・セントロ・ソルペンシオン・セントロ・ソル

私たちの宿セントロ・ソルは、港とカテドラルのちょうど中間あたりにあります。

今日の夜はお祭り『フェリア』があるというので、宿でしばらくのんびりした後に出かけてみました。

フェリアフェリア

そのお祭り会場には、メリーゴーランドが回ったり、いろいろなブースのお店が出ています。

大勢の人たちが集まってとても賑やか。

フェリアに来た若者たちフェリアに来た若者たち

若者たちが、『どこから来たの?』などと気さくに声をかけてきます。

お店を冷やかしたりダンスを見たりと、フェリアの雰囲気を楽しみながら夜が更けていきます。

セビーリャ

セビーリャへの途中の風景セビーリャへの途中の風景

翌日、カディスからバスで2時間ほどのセビーリャへ向かいます。

ときどき白い村を通り過ぎながら、乾燥した平原の中をバスは一路セビーリャへ。

セビーリャに到着セビーリャに到着

バスはセビーリャに到着。古い建物が密集するあたりを通り抜けてホテルへ向かいます。

ホテル・ラ・ラビダホテル・ラ・ラビダ

宿泊したのはホテル・ラ・ラビダ。大聖堂に近く、パティオもなかなかいい雰囲気です。

セビーリャの街角セビーリャの街角

セビーリャの観光といえば、もちろんまず大聖堂にヒラルダの塔、そしてアルカサールでしょう。ハルさんとショコさんはそちらへ向かいます。

サリーナはセビーリャに来るのは二度目。前回はそれらの中心部を訪れたので、今回はちょっと郊外に行ってみようと思います。

*前回(1988夏)の旅はこちら

プラサ・デ・エスパーニャプラサ・デ・エスパーニャ

サリーナが向かったのは、旧市街を出て少し南にあるプラサ・デ・エスパーニャ(スペイン広場)。マリア・ルイサ公園の中にあります。

プラサ・デ・エスパーニャは、イベロアメリカ万博の施設としてつくられた建物と広場で、設計はアニバル・ゴンサレス。1914年に着工し、途中さまざまな変更もあり、完成したのは1929年でした。

水路を渡る橋水路を渡る橋

広場は直径170mの半円形で、公園の東を流れるガダルキビル川の方を向き、アメリカ大陸へと繋がることを象徴しています。

中には水路を設け、4つの美しい橋を渡しています。4つの橋は、スペインのかつての4つの王国レオン、カスティーリャ、アラゴン、ナバーラを表しているといいます。

中央の建物中央の建物

万博の終了後はセビーリャ大学の一部とされる予定でしたが、現在はスペイン政府の出張所など公的機関のオフィスや軍事博物館として使われているそうです。

レオンのベンチレオンのベンチ

円弧を描く列柱の広場側には48のベンチが設けられ、それぞれスペインの46の県と2つの群島を表しています。

今回の旅で訪れた県を探してみましょう。これは『レオン』のベンチ。

ソリアのベンチソリアのベンチ

これは『ソリア』のベンチです。それぞれの県の紋章と代表するエピソードが絵タイルではめ込まれています。

半円形のギャラリー半円形のギャラリー

そして、半円形を構成するギャラリーを支える柱は大理石、天井は木組の格天井。

壁に夕陽が射す壁に夕陽が射す

建物の階段を上ってみれば、白い漆喰と美しいタイルの壁にアーチ状の夕陽が射していました。

広大で豪華絢爛な建物と広場に圧倒されたプラサ・デ・エスパーニャでした。

ヒラルダの塔ヒラルダの塔

その夜。夕食に出かけると、ヒラルダの塔がライトアップされて輝いていました。

『やっぱりセビーリャの中心部はすごかったね』『プラサ・デ・エスパーニャも豪華だったよ』などとおしゃべりしながらバルでタパスをつまみ、アンダルシアの夜が更けていきます。

円形闘技場円形闘技場

翌日、引き続き中心部を観光する2人と別れて、サリーナはバスで9kmほど離れたローマ遺跡イタリカを訪ねます。

ここには、紀元前6世紀にはすでに人が住みついていたとか。ローマ人の町がつくられたのは紀元前206年のことで、イスパニアで最初のローマの都市だといいます。ローマ皇帝となったトラヤヌスとハドリアヌスは、このイタリカ生まれだそうです。

闘技場の通路闘技場の通路

円形闘技場は25,000人もの観客を収容し、ローマ帝国の中でも大規模なものの一つだったとか。

闘技場の床下にはグラディエーターや猛獣など、さまざまな闘技用の控えスペースがあったといいます。

イタリカの邸宅跡イタリカの邸宅跡

そして、円形闘技場の南側には豪華な邸宅が建てられており、そのパティオを持つ構造は、後のアンダルシアの住宅形態の起源と言われているそうです。

太陽系のモザイク太陽系のモザイク

この邸宅は、そのモザイクによって『太陽系の家(Casa del Planetario)』と名付けられています。

7つの円の中には曜日にあたる神々が描かれており、中央がヴィーナス(金曜)、その回りに他の6つの曜日が表されています。

ネプチューンのモザイクネプチューンのモザイク

こちらの2世紀頃の建物跡のモザイクには海神ネプチューンが描かれており、半公共的な建物だったと考えられているそうです。

幾何学模様のモザイク幾何学模様のモザイク

こちらは幾何学模様のモザイク。2000年近く前に描かれたアートを楽しめるのは素晴らしいですね。

イタリカの遺跡では、他に浴場跡や水道跡なども見ることができます。

奥にローマ劇場奥にローマ劇場

そして、これらの遺跡群から少し離れ、南の住宅地に囲まれたところにローマ劇場があります。写真の路地の奥です。

この劇場は紀元前後の建設で、5世紀頃には使われなくなり放置され、物置やゴミ廃棄所、家畜小屋などになっていましたが、1970年頃から本格的な発掘が始まったそうです。

サンタ・クルスサンタ・クルス

さて、バスでセビリアの中心部に戻り、少し街歩き。

大聖堂のすぐ西側にあるサンタ・クルス地区は、17世紀には裕福な人たちの居住地だったそうです。曲がりくねった白と黄色の路地の先に、18世紀に完成した白と黄色のサンタ・クルス教会が見えています。

セビーリャ美術館の大回廊セビーリャ美術館の大回廊

こちらは、旧市街の北西にあるセビーリャ美術館(Museo de Bellas Artes de Sevilla)。修道院(1662年築)および教会(1612年築)の建物を、19世紀に改修・拡張して美術館としたもので、回廊やパティオを巡る美しい美術館です。

館内にはスルバランやムリリョ、エル・グレコ、ゴヤといった著名な画家の作品が並び、まさに壮観。

貝のパティオ貝のパティオ

このパティオは『貝のパティオ』と呼ばれています。池を取り囲むアーチの上の丸く黄色い半球の天蓋が貝のように見えるからでしょうか。

メリダ

トラヤヌスのアーチトラヤヌスのアーチ

翌日、バスで到着したのはエストレマドゥーラ州のメリダ。古代ローマの植民地として紀元前25年に創設されたメリダの街の中は、まさにローマ遺跡の宝庫です。

ホテルを出ると、まず『トラヤヌスのアーチ』に出会います。このアーチは名前とは異なり、実はティベリウスによって建てられ、街の中心『フォロ』への入口としてつくられたそうです。

ディアナ神殿ディアナ神殿

アーチを抜けて南へと進むと、列柱の並ぶ『ディアナ神殿』があります。紀元前後の建築で、これも実は名前とは異なり、女神ディアナではなくローマ帝国崇拝のために建てられたと言われています。

この神殿内には16世紀にルネサンス様式のロス・コルボス伯爵邸が建てられていますが、神殿を保存する役割も果たしたのだとか。

ディアナ神殿の柱ディアナ神殿の柱

神殿の柱はコリント式で、正面の6本の柱は中心部フォロの方を向いています。

円形闘技場へ入る円形闘技場へ入る

神殿の東の方角に円形闘技場とローマ劇場があります。

円形闘技場は紀元前8年に完成し、グラディエーターや猛獣による戦いが繰り広げられたそうです。客席下のアーチを潜って入ります。

円形闘技場の観客席円形闘技場の観客席

観客席に出てきました。石段の上に鉄パイプと鉄板で客席が組み上げられています。

演劇の舞台演劇の舞台

ここで演劇が行われるようで、中央には舞台装置が備えられていました。

闘技場と客席闘技場と客席

円形闘技場は長径126m、短径102m、14,000人を収容する規模でした。

客席上部客席上部

4世紀頃になるとこの円形闘技場は放置され、一部は土に埋もれ、また石材が他の建築の材料として持ち出されることもあったそうです。

ローマ劇場を見上げるローマ劇場を見上げる

続いて、隣にあるローマ劇場にやってきました。

舞台の背景には、神殿を2段重ねにしたような列柱が翼を広げたように並び、見上げると大迫力です。(TOP写真も)

ローマ劇場ローマ劇場

この劇場は、円形闘技場より少し前の紀元前16~15年に完成したそうです。

そして、キリスト教が広まると演劇のようなものはモラルに反するとされ、円形闘技場と同様、4世紀頃には放置されてしまったのだとか。

再建された劇場再建された劇場

その後、建物は壊れて土に埋もれ年月の経過とともに忘れ去られ、観客席の上部だけが地上に出ていたことから、ムーア人の王が座った『7つの椅子』などと呼ばれていたそう。

1910年になってやっと発掘が始まり、1933年にはここで演劇祭が開かれるようになりました。ローマ劇場の修復・再建が始まったのは1962年。基壇や柱の跡からその配置を把握し、リビアのサブラタのローマ劇場などをモデルとして再建されたのだそうです。

奇跡の水道橋の南端奇跡の水道橋の南端

さらにローマの遺跡を巡ります。今度は水道橋。

10kmほど北のプロセルピーナ湖から街の西側へ水を引くためにつくられたのがこの水道橋で、『奇跡の水道橋』(Acueducto de los Milagros)と呼ばれています。

川を渡る水道橋川を渡る水道橋

この水道は、メリダの街に入る最後のところでアルバレガス川を越えなければなりません。そのためにつくられた水道橋の高さは、最も高いところで25mにもなります。

こんな水道橋が何世紀もに渡って存続したことへの驚きを込めて、人々はこれを『奇跡の水道橋』と呼ぶようになったとのこと。

花崗岩とレンガ花崗岩とレンガ

水道橋は、花崗岩とレンガを組み合わせてつくられ、花崗岩のグレーとレンガの赤が、この美しい水道橋の特徴となっています。

柱をつなぐアーチは全てレンガですが、川の水流を受ける中央の箇所のみ、頑丈にするため花崗岩が使われています。

サン・ラサロ水道橋サン・ラサロ水道橋

メリダにはもう一つ、街の東側に水を引くための水道橋があります。それがこのサン・ラサロ水道橋。

実は、この水道橋は16世紀に再建されたもので、ローマ時代につくられた水道橋は3つの柱が残るのみです(写真なし)。

サン・ラサロ水道橋のアーチサン・ラサロ水道橋のアーチ

16世紀のサン・ラサロ水道橋も、力強いアーチが並び、なかなか趣があります。

とはいえ西の水道橋の繊細なアーチや柱を見ると、やはりそちらは『奇跡の…』と呼びたくなりますね。

井戸のあるパティオ井戸のあるパティオ

さて、今日のメリダの観光は終了です。メリダで私たちが泊まったホテルは、パラドール・デ・メリダ。

このパラドールは、ローマ時代の神殿跡に18世紀に建てられた修道院を改装したものです。写真は到着した時の昼間のパティオ。赤い日よけがかけられ、パティオは赤く染まっています。

室内室内

歴史的な建物の雰囲気を継承し、家具なども落ち着いてとても感じのよいホテルでした。

ローマ橋ローマ橋

翌日。今日はバスでカセレスへ移動しますが、その前にメリダ最後の観光を。街の東を流れるグアディアナ川に架かるローマ橋です。

この橋は、紀元前25年の植民都市メリダの創設と同時に建設されたそうで、中州を挟んだ橋の長さは790m、60のアーチで構成されています。

ローマ橋とルシタニア橋ローマ橋とルシタニア橋

アーチの下には、半円形の水切りと小さな放水用のアーチ。これらが川に映り、いくつもの円形をつなぐリボンのような景色が続いていきます。

そして、その向こうに見える白い大きなアーチは、新たにつくられたサンティアゴ・カラトラバ設計のルシタニア橋。新旧の美しい橋のアーチの競演です。

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