1996.08.16(金) サン・ミゲル・デ・アジェンデ
今日は、まずグアナフアトからサン・ミゲル・デ・アジェンデまでバスで移動します。距離は約80km、1時間半くらいの行程です。
というわけで、やってきましたサン・ミゲル・デ・アジェンデ。グアナフアトと同じくコロニアル時代の雰囲気を残す街ですが、グアンフアトよりはかなり小さくのんびりした印象です。
小さな街ですが、立派な教会がありました。サン・フランシスコ教会です。この教会は1778年から建設が開始され、20年以上かけて完成したそうです。
そのため建設時期によって様式が異なるそうで、ファサードはチュリゲラ様式なのですが、この塔は1799年に建てられたためネオクラシック様式。
この街は、銀の交易をつなぐルート上の重要な位置にあって発展してきたそうです。そして、スペインからの独立戦争の初期の英雄イグナシオ・アジェンデの出身地で、1826年、その名に因んで街の名称が変更されました。
1900年代前半にメキシコ政府が歴史地区に指定し、その後、美しいコロニアル都市として観光客を魅了するようになりました。また歴史的建築だけでなく温泉もあり、外国人居住者が増えていったそうで、芸術家が集まる芸術の街とも言われています。
そんな街角を曲がると、突然目に飛び込んでくる巨大な建物が。ラ・パロキア教会(Parroquia de San Miguel Arcángel)です。思わずガウディですか?と質問したくなります。
このラ・パロキア教会は16世紀の街の誕生とほぼ同時に創設されたそうですが、地震による被害を受けて18世紀初頭にバロック様式で再生され、その後1880年から1890年にかけてネオゴシックの新たなファサードが建設されたのだそうです。
このネオゴシックのファサードを設計したのは司教の要請を受けた石工の棟梁だったそうで、ガイドブックによれば、宣教師がヨーロッパから持ち帰った1枚の絵はがきをもとにゴシックの塔を再現したのだという。
そう思うと、何となく職人の手仕事感の温かみも感じます。
このピンクの石材を使った独特の建物は、この街の大きな観光名所となっています。
教会前にはフルーツジュースやスナックを売る露店が出ていました。
そんな街角の露店でおやつを買って早速かじるサリーナ。
食べ歩きは楽しい~
ぶらぶらと、パステルカラーの壁が続く街なかを散策します。
お土産屋さんもありますが、山に囲まれた静かな街は人通りも少なくのんびりムード。
石畳の道は緩やかな坂になって続いています。
こちらは壁の下半分をカラーにしていますね。色の違いはやっぱり自分の家の目印っていうことでしょうか。
イグナシオ・ラミレス(エル・ニグロマンテ)文化センターに立ち寄ってみました。元は1765年に完成した修道院の建物だそうです。中庭を囲む回廊があり、中央には泉が設けられています。
現在は芸術文化を学ぶ学校として、また作品を展示するアートギャラリーとして使われています。
散策を続けていると、鉄格子の門の中に並ぶコンドミニアムを発見。この街では珍しいものですが、外国人居住者向けの集合住宅でしょうか。
歴史地区のほとんどは街区いっぱいに外壁がつながり、建物や住宅内部と通りが隔てられているつくりになっています。
そんな外壁に取り付けられた街灯。入口にあるので玄関灯でしょうか。各家庭で思い思いに付けているのか、いろいろステキなデザインがあって楽しい。
ところで、明日はサン・ミゲル・デ・アジェンデを離れてバスでメキシコシティへ向かいます。5時間もかかりメキシコシティ到着は夜になるため、あらかじめホテルを予約しておくことにしました。『ここは、スペイン語で任せて』とサリーナが単独で突撃。大丈夫か?
旅行会社を見つけて飛び込んだサリーナ。オフィスには愛想のよい女の子たちが5、6人働いています。メキシコシティのホテルを予約したいと相談すると、親身になっていろいろと紹介してくれました。
予約している間に女の子と楽しくおしゃべりします。
メキシコ女子:どこを旅してきたの?
サリーナ:キューバに行ってきたよ。
メキシコ女子:いいわね~(羨ましそうなため息)。キューバには魅力的で情熱的な男性がたくさんいるんでしょ? あなたは結婚を申し込まれた?
サリーナ:何千回も申し込まれたよ。
メキシコ女子全員:ええっ!(みんながこちらを振り向く)
何千回はもちろんオーバー(笑)、でも何回か結婚を申し込まれたのはホントです。キューバ男は女性を見るとすぐに声をかけ、結婚を申し込んでくる人も少なくありません。
メキシコ女子:メキシコでは男の子は皆アメリカに出稼ぎに行って、地元は女の子ばかりなのよ。日本人の旅行者も大抵女性ばかり。男性はなかなか来ないわ(ため息)。
サリーナ:じゃあ日本に帰ったら、周りの男性にメキシコ旅行をお勧めするね。
メキシコ女子全員:ポル・ファボール(お願い)!
あら、みんな聞いてたのね。声を揃えてお願いされたのにはビックリしました(笑)
1996.08.17(土)~08.18(日) メキシコシティ
翌日。5時間のバスの旅を終えて、メキシコシティのホテルに到着した時には、あたりは暗くなっていました。便利な場所のホテルを紹介してくれた旅行会社の女の子に感謝。
ホテルの目の前はアラメダ公園という大きな公園です。
その次の日は日曜日。明日は朝のフライトで日本へ向かうので、今日が実質的な旅の最終日です。せっかくのメキシコシティなので、有名なメキシコ国立人類学博物館など、文化活動中心に過ごしてみることにしました。
写真はホテルの窓から見た朝のアラメダ公園。公園の奥にフランツ・マイヤー博物館の丸いドーム屋根が見えます。
そして、アラメダ公園の入口にあるのはメキシコ近代化の父と言われるベニート・フアレス大統領の大理石のモニュメント。
さて、メキシコシティの散策開始です。まずはアラメダ公園内にある国立芸術院宮殿(Palacio de Bellas Artes)。
1905年着工、革命による中断を経て1934年に完成したこの大理石の劇場は、メキシコ随一の劇場と言われているそうです。ウィーンの建築のようですね。
今晩はここでメキシコの民族舞踊をアレンジしたバレエ・フォルクロリコが上演されるということで、チケットをゲット。夜が楽しみです。
国立芸術院宮殿のすぐ南東の街区には、サン・フランシスコ教会があります。
この教会は1525年の創設と言われており、現在の教会の建物は1716年に完成したもの。そして、1766年に付随してバルバネラ礼拝堂が建てられました。このバロック様式の礼拝堂の入口が現在の教会の主要な入口になっています。
続いて足を向けたのは、もう少し南にあるサン・フアン市場。かなり大きくてきれいな感じの市場で、観光客もよく訪れるようです。
市場の裏手からは、どんどん商品が運び入れられていきます。カートに積まれているのは鶏肉。
街角には屋台も出ています。食べ歩きが大好きな私たち、ここでサンドイッチを買ってお昼にします。
メキシコの屋台のサンドイッチは、中身がとても充実していて美味しいですよ。
そして今日のメインイベント、国立人類学博物館にやってきました。
建物の入口では若者たちが民族舞踊を踊っていたので、しばし見物。お客さんの拍手喝采を浴びています。
展示を見てみましょう。時代と文明ごとに分かれ、この部屋は『先古典期(Preclásico)』。紀元前2,300年頃~紀元100年頃までの時代です。
農耕が始まり、土器や土偶が次第に洗練され複雑になっていきます。発掘された状態を再現した展示も。
こちらはティオティワカン文明の部屋。紀元前2世紀~紀元6世紀頃まで栄えた文明です。
写真は建物の部材とのことで、石でできており、高さは2m以上あります。
ここには、ティオティワカンで発掘されたケツァルコアトルの神殿が実物大に復元され、当初の彩色が施されています。
牙を剝く頭は羽毛を持つ蛇(ケツァルコアトル神)、貝は水を示し、そして四角い顔のようなものは王権を示す頭飾りではないかと言われているそうです。
ティオティワカン文明の衰退後、メキシコ中央高原北部を制したのがトルテカ文明で、7~12世紀頃に栄えたらしい。
渦巻きや人の顔などのレリーフが施されたこれらの四角い石柱は、建築部材の一部とのこと。
これもトルテカ文明です。この戦士像は4.6mの高さがあり、トゥーラにある遺跡の中央神殿の屋根を支えていた柱なのだそう。
そして、メシカ(アステカ)文明の部屋へ。メシカの人々は12世紀頃からメキシコ盆地に定住を始め、1428年頃からスペイン人によって征服される1521年までメキシコ中央部で帝国として栄えました。
この部屋では、3.6mと巨大な石の円盤『太陽の石』に目を奪われます。1790年にメキシコシティの中央広場から発掘されたそうで、1500年代初頭に作られたものと考えられています。この文様は、アステカの人々の時空を超えた世界観を表しているとも。
続いてこちらはメキシコ湾岸室。メキシコ湾岸にはいくつもの文明が発生していたそうですが、この部屋で目を引くのはやはりオルメカ文明。
紀元前1,200年頃から紀元前後に栄えたといわれるオルメカ文明で有名な巨大な頭石像がここにあります。
オルメカ文明は中央アメリカ古代文明の母と呼ばれていますが、詳しいことはわかっていません。
こうした石の頭像は17見つかっているといいますが、石材は遠く離れたところのもので、どのように運んできたのか、またこれらの像の顔は黒人の特徴を持つと言われていますが、どのような人たちなのか。。
見応え十分の博物館の見学を終えてホテルに戻り、夕食を終えたら最後のイベント、国立芸術院宮殿のバレエ・フォルクロリコに繰り出します。
大理石にガラスを多用したデコラティブな劇場の建物に、気分は盛り上がります。
見上げれば、丸い天井は美しいステンドグラス。万華鏡を覗いているようです。
そして、バレエが始まりました。メキシコ各地のさまざまな民族舞踊をアレンジしたものとのこと。
衣装や音楽、そして背景もどんどん変わります。
華やかな牡丹のような白い衣装の群舞。
大きなかぶりものの人形のような人が出てきました。スペインでも見たことがあるような?
ダンスと音楽を堪能したら、もう夜も更けていました。楽しかったキューバとメキシコの旅もこれにて終了です。いろいろな人と出会い、そして異なる文化に触れることができて、とても心に残る旅でした。